2018年6月28日更新

幻の名作『暗殺のオペラ』とは?【あらすじ・解説】

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イタリアの巨匠ベルナルド・ベルトルッチ監督の1970年公開の映画『暗殺のオペラ』。40年以上もの月日を経てデジタルリマスター版が2018年限定公開されることになりました。今回は、不朽の名作とも言われる本作を徹底紹介していきます。

1970年公開の映画『暗殺のオペラ』のリバイバル上映が決定

イタリア出身の名監督ベルナルド・ベルトルッチが手がけた1970年公開の映画『暗殺のオペラ』。ベルトルッチ監督の名を世界的に知らしめることになった本作が、40年以上もの月日を経てリバイバル上映されることになりました。 本作はアルゼンチン出身の作家ホルヘ・ルイス・ボルヘスの小説を原作に、ファシズム時代に英雄として称された父の死の真相を探る男性の姿を、美しいオペラのメロディーとともに描き出した作品です。 公開当時世界中から注目を集め、そして40年以上もの月日がたった今見ても色褪せることない『暗殺のオペラ』を今回は徹底紹介していきます

『暗殺のオペラ』のあらすじ

『暗殺のオペラ』の舞台は1960年代の北イタリアの田舎町。本作はその街で英雄として称えられている父の死の謎を探るべく訪れた、父と同じ名前を引き継いだ青年アトスが真相を突き止めるまでを描いた作品です。 アトスの父であるアトスは約30年前その街でアンチファシズムとして戦っており、オペラ劇場でムッソリーニの暗殺を計画していたにもかかわらず、誰かがその計画を密告し、逆にそのオペラ劇場で暗殺されました。 父の愛人であったドライファから父の死の真相を突き止めてもらいたいと依頼されたアトスは、その街に足を運び追求を始めます。 本作はそんなアトスの姿を、イタリアの美しい田舎町を背景にして父アトスが活躍していた過去と交差させながら追った作品です。

豪華キャスト陣

『暗殺のオペラ』は公開当時、イタリア映画を彩っていた俳優陣がこぞって出演しています。 一人二役を演じたジュリオ・ブロージ、愛人役を演じたアリダ・ヴァリ、さらに生涯を通して数多くのイタリア映画に数多く出演したティノ・スコッティなどのキャストが本作に花を添えました。 次の項目で、主役を演じたジュリオ・ブロージ、そして父の愛人役を演じたアリダ・ヴァリを紹介していきます。

一人二役に挑戦!ジュリオ・ブロージ

本作で主人公アトス、そしてアトスの父であるアトスを演じたジュリオ・ブロージ。 ジュリオ・ブロージは1967年に映画デビュー後、数多くのイタリア映画に出演しており、特に1974年公開の『モレルズ・インヴェンション(原題)』ではデンマーク生まれでフランス映画を中心に活躍するアンナ・カリーナと共演し話題となりました。 また、ギリシャの巨匠・テオ・アンゲロプロスによる1983年の映画『シテール島への船出』で主演を務めています。 本作では一人二役という難しい演技を見事に演じきっています。

『第三の男』のヒロインとして知られるアリダ・ヴァリが、愛人役で登場

アリダ・ヴァリ
©Photofest

父アトスの愛人であり、息子アトスに真相解明を依頼したドライファを演じるのは、イタリア出身の女優・アリダ・ヴァリ。 その美貌と演技力で2006年に亡くなるまで実に100本以上のイタリア映画に出演したアリダ・ヴァリは、まさにイタリアを代表する女優の一人と言えるでしょう。 またイタリア映画以外にも、1947年公開のアルフレッド・ヒッチコック監督の『バランタイン夫人の恋』で主演したり、カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞し映画史に残る名作として高い評価を受けた映画『第三の男』のヒロイン役を演じるなど、アメリカ映画やイギリス映画でも活躍をしました。 本作でも数多くの映画で披露したアリダ・ヴァリの美しさ、そして演技力をたっぷりと堪能できます。

メガホンを取ったのは、巨匠ベルナルド・ベルトルッチ

ベルナルド・ベルトルッチ
©Allstar Picture Library

『暗殺のオペラ』でメガホンを取ったのは、イタリア出身の巨匠ベルナルド・ベルトルッチ。 1941年に北イタリアのパルマで生まれたベルトルッチは、1962年にわずか21歳の時、『殺し』で映画監督デビュー。 『暗殺オペラ』と同年に公開された『暗殺の森』では、ファシズムの台頭と崩壊という政治的テーマを一個人の視点で上手く映像化しました。また1972年公開の『ラストタンゴ・イン・パリ』では「芸術かポルノか」という議論を巻き起こすに至るなど、様々な話題作を取り続けています。 そして1987年公開の『ラストエンペラー』でアカデミー賞作品賞、監督賞など数多くの賞を受賞し、名実ともに巨匠と呼ばれるに至りました。 本作ではまだ監督としては駆け出しであった時代のベルトルッチ監督の類い稀な才能を、美しい映像と音楽、さらに綿密に練られ、計算され尽くしたストーリー展開から感じることができるでしょう。

撮影はアカデミー賞撮影賞3度受賞のヴィットリオ・ストラートとフランコ・ディ・ジャコモが担当

『暗殺のオペラ』が名作と呼ばれる理由を語る際、全編を通しての大胆で美しい映像について語ることを避けることはできません。 本作でベルナルド・ベルトルッチ監督とタッグを組み、観客を惹きつける美しい映像を演出したのは、数多くの映画でベルトルッチ監督とタッグを組み、『地獄の黙示録』、『レッズ』、『ラストエンペラー』でアカデミー賞撮影賞を3度受賞したヴィットリオ・ストラーロと、『イル・ポスティーノ』など数多くのイタリア映画を撮影し続けてきたフランコ・ディ・ジャコモの二人です。 反ファシズムという政治的テーマ、暗殺の真相を探るという重いテーマに対比するかのような、本作を通して描き出される穏やかな美しいイタリアの田舎町の光景や大胆な色彩表現は、二人の類い稀な才能から生み出されたものに他ならないでしょう。

原作はホルヘ・ルイス・ボルヘスの「裏切り者と英雄のテーマ」

『暗殺のオペラ』の原作は、アルゼンチンの作家・ホルヘ・ルイス・ボルヘスの短編『裏切り者と英雄のテーマ』です。 1899年にアルゼンチンのブエノスアイレスで生まれたホルヘ・ルイス・ボルヘスは、20世紀後半のポストモダン文学に多大な影響を与えた作家の一人です。夢や迷宮、円環、あるいは神や宗教などをモチーフとした短編作品を1986年に亡くなるまで数多く発表しました 本作の原作『裏切り者と英雄のテーマ』はアイルランドを舞台にした、たった数ページの掌編でしたが、その内容に惚れ込んだベルナルド・ベルトルッチ監督は舞台をイタリアに変えて映像化。こうして、映画史上に名を残す名作が生まれたのです。

意外な結末!【ネタバレ注意】

本作が観客を魅了した理由の一つは、その意外な結末です。 父の死の謎を追求するアトスは、様々な情報や自身の直感から、ついに父の死の真相を突き止めます。 それは、父の暗殺は民衆にアンチファシズムを浸透させるべく、父自身が演出したものだった、という衝撃的な事実でした。つまりムッソリーニ暗殺計画の密告者は父自身で、ファシストたちに自らを殺害させていたのでした。 さらに驚くべきことに、街に住む人々は皆、この事実を知っていたのです。 優美なオペラの調べに乗って展開される、衝撃のストーリー。これこそが、本作が名作と呼ばれる所以です。

名作と呼ばれるその理由を徹底考察!

ここで『暗殺のオペラ』が名作と呼ばれるその理由を改めて考察していきましょう。 本作ではイタリアのみならず世界の歴史を語るに外すことのできない「ファシズム」という重い政治的テーマがストーリーの根底にあります。ファシズムは第二次世界大戦に多大な影響を与えた政治運動です。 本作ではそのファシズムに対抗して戦い、ついには反ファシスム思想を人々に浸透させるため自らの命を犠牲にしたアトスの父が英雄として称えられています。アトスの父の生き方を浮かび上がらせることにより、ベルナルド・ベルトルッチ監督が観客にメッセージを投げかけたかったのは明らかでしょう。 またこのような重い政治的テーマを扱った映画にもかかわらず人々が本作に魅了されたのは、ヴィットリオ・ストラーロとフランコ・ディ・ジャコモのの努力の結晶ともいえる幻想的な田舎町の風景と言えるでしょう。 美しい情景とともに過去と現在が交錯しながら展開されるストーリー、力強いメッセージ性、そして美しい映像が、今もなお人々を魅了し、惹きつけているのではないでしょうか?

リバイバル上映が決定!

映画史上に名を残すといっても過言ではない名作『暗殺のオペラ』。実はDVD化されておらず、現在視聴するのが難しいことでも知られています(VHS版は廃盤)。 しかし、公開から40年以上の月日を経て、2018年7月21日から8月10日の3週間、東京都写真美術館ホールにてデジタルリマスター版が限定公開されることが決定しました。 不朽の名作と言われる『暗殺のオペラ』。映画ファンならずとも必見の一作です。この機会にぜひご覧ください!