2018年7月2日更新

『グッバイ・ゴダール!』を観る前にあなたが観るべき映画8本

© LES COMPAGNONS DU CINÉMA – LA CLASSE AMÉRICAINE – STUDIOCANAL – FRANCE 3.

2018年7月13日に公開となるジャン=リュック・ゴダール監督と2番目の妻であるアンヌ・ヴィアゼムスキーとの生活を描いた話題作『グッバイ・ゴダール!』。今回本作を鑑賞する前に観ておくべき映画8選を紹介します。

アンヌ・ヴィアゼムスキーの自伝が原作!『グッバイ・ゴダール!』

フランス映画史に名を残した重要な女優の一人であり、フランス映画界の巨匠ジャン=リュック・ゴダール監督の2番目の妻として名を馳せたアンヌ・ヴィアゼムスキー。 彼女の自伝的小説『それからの彼女』を原作にした2017年公開の『グッバイ・ゴダール!』はカンヌ国際映画祭に出品され、高評価を得ました。そしてその話題作がついに日本で2018年7月13日に公開されます。 今回は本作をより楽しむことができるよう、本作鑑賞前に観ておくべき映画を8本紹介していきます。

フランス映画界で活躍した伝説の女優・アンヌ・ヴィアゼムスキー

フランス映画界で活躍したアンヌ・ヴィアゼムスキーは1947年、ドイツのベルリンで生まれました。 1964年に16歳でロベール・ブレッソン監督の『バルタザールどこへ行く』で女優デビューを果たします。そして1967年にジャン=リュック・ゴダールの『中国女』に出演し、女優として開花するとともに監督と恋に落ち、結婚。そして彼の2番目の妻としての生活が始まりました。 しかし二人の結婚生活は長くは続かず、のちに離婚。その後もアンヌ・ヴィアゼムスキーは女優としてフランス映画界で、また小説家、脚本家としても活躍し、2017年に『グッバイ、ゴダール!』がフランスで公開された直後に亡くなるまで、幅広く活躍しました。

二人の結婚生活

先の項目で紹介した通り、ジャン=リュック・ゴダールとアンヌ・ヴィアゼムスキーは1967年公開の映画『中国女』をきっかけに出会い、公私共にパートナーとなります。 すでに数々の話題作を世に送り出し、フランスのみならず世界中から注目を浴びていた監督との生活は、ヴィアゼムスキーにとって初めてのことばかりで刺激的なものでした。 しかし当時フランスで活発となりつつとあった五月革命運動に傾倒していく監督と、女優としての視野を広げていきたいアンヌ・ヴィアゼムスキーの生活は、次第にすれ違っていきます。そして結婚から約5年で事実上破綻、1979年に正式に終止符を打つこととなりました。

1. アンヌ・ヴィアゼムスキーのデビュー作『バルタザールどこへ行く』(1966)

1964年公開のアンヌ・ヴィアゼムスキーのデビュー作『バルタザールどこへ行く』。本作はロバのバルタザールの目を通して人間の愚かさや醜さを描いた作品で、アンヌ・ヴィアゼムスキーは主役であるバルタザールの唯一の心の拠りどころである少女マリーを演じています。 毎回素人を起用し、感情を徹底的に抑えた演技を要求することで知られるロベール・ブレッソンが監督したこともあり、本作でのヴィアゼムスキーは優しい心を持ちながら世の中の不条理に心を傷める悲しき少女を抑えた表現で演じています。

2. ジャン=リュック・ゴダールの長編映画デビュー作にして、ヌーヴェルヴァーグの金字塔『勝手にしやがれ』(1960)

『バルタザールどこへ行く』公開から遡ること6年。今やその名を知らない人はいないと言っても過言ではないジャン=リュック・ゴダールは、記念すべき長編映画デビュー作となる『勝手にしやがれ』を発表しました。 ゴダールとフランソワ・トリュフォーが原案を書き、ゴダールがメガホンをとった本作は、フランス映画界に旋風を巻き起こしたヌーヴェルヴァーグの記念碑的作品とも言われています。 手持ちのキャメラでの撮影やジャンプカットなどの技法を用い、また即興演出を取り入れるなど、それまでの映画にはない斬新な手法の連続で、公開当時は賛否両論を巻き起こしましたが、今では映画史を語る上で外すことのできない映画です。

3. 2人の出会いのきっかけとなった『中国女』(1967)

『バルタザールどこへ行く』で女優デビューしたアンヌ・ヴィアゼムスキーと、『勝手にしやがれ』で監督となったジャン=リュック・ゴダールが初めて組むことになったのが、1967年公開の映画『中国女』です。 中国の文化大革命が世界中の青年たちに影響を与えていた1960年代後半のパリで、毛沢東思想(マオイズム)に傾倒していく若者たちを描いた映画です。 自身がマオイズムに傾倒しつつあったジャン=リュック・ゴダールがメガホンを取り、アンヌ・ヴィアゼムスキーが主役の女子学生を演じた本作は、ヴェネツィア国際映画祭で審査員特別賞を受賞しました。 本作は映画そのものも高く評価された作品ですが、二人の出会いの映画、さらにはゴダールが自らの映画に政治的思想を顕著に表し始めた作品としても知られています。

4. 鑑賞には覚悟が必要?『ウイークエンド』(1967)

『中国女』と同年に公開されたジャン=リュック・ゴダール監督の『ウイークエンド』。農場の娘役でアンヌ・ヴィアゼムスキーも登場します。 パリに住む夫婦が都会の生活に疲れ、田舎に週末旅行に向かう中、様々な尋常ではない事件に巻き込まれ、やっとの思いで到着した実家で母を殺害、さらにはゲリラに襲われ、夫は殺害され妻は夫の人肉を食する宴に突入するという残酷かつ異様なまでに難解な内容で、公開当時世界中を震え上がらせました。 雑誌「プレミア」が選ぶ「もっとも危険な25本の映画」にも選ばれるなど、鑑賞にはある種の覚悟が必要なほど難解な映画ですが、大渋滞の場面における7分もの長回しなど、見せ場もたくさんあります。 消費文明を皮肉ったこのショッキングな映画を最後に、ゴダールはしばらく商業映画を離れ、政治映画ばかりを撮るようになります。

5. ゴダールも絶賛した究極の不条理映画『テオレマ』(1968)

ゴダールとヴィアゼムスキーの結婚の翌年、1968年に公開されたのが、イタリア映画『テオレマ』。 本作はミラノ郊外に住むブルジョア家庭に突如現れた青年に家族全員が性的に結びつき、そして家庭が崩壊していくという、スキャンダラスかつ不条理な作品です。アンヌ・ヴィアゼムスキーが一家の娘役で出演しています。 本作でメガホンを取ったのはイタリア映画界の異端児とも称されるピエル・パオロ・パゾリーニ監督で、ゴダールや大島渚監督が大絶賛した映画と言われています。

6. ザ・ローリング・ストーンズのレコーディング風景が映し出される異色のドキュメンタリー『ワン・プラス・ワン』(1968)

1968年に公開されたジャン=リュック・ゴダール監督のドキュメンタリー映画『ワン・プラス・ワン』。メンバーが70歳を超えた現在でも精力的に活動を続けるザ・ローリング・ストーンズが名曲「悪魔を憐れむ歌」をレコーディングする風景を撮影した作品です。 しかし、本作は単なるドキュメンタリー映画ではなく、ブラックパンサーによる運動をモチーフにしたドキュメンタリータッチのフィクションシーンも組み込まれており、社会主義に傾倒していた監督ならではの作品となっています。 ヴィアゼムスキーは疑似インタビューに答えるイヴ・デモクラシーという革命家を演じています。

7. フィリップ・ガレル監督が五月革命を描いた三時間の大作『恋人たちの失われた革命』(2005)

ここからは、二人の運命に大きな影響を及ぼした五月革命を描いた映画をご紹介しましょう。 1968年5月10日に勃発したフランスの五月革命は政治的側面だけではなく、フリーセックスや自由恋愛など古い価値観を打ち払う20世紀のルネッサンス運動とも称されました。 その五月革命を背景に、当時の若者たちを描いた『恋人たちの革命』は、2005年のヴェネツィア国際映画祭でフィリップ・ガレルが監督賞を受賞した、三時間に及ぶ大作です。 主人公は革命運動のデモに参加する日々を送る20歳の詩人の青年。兵役を拒否した青年は彫刻家志望の女性に出会い、一瞬にして恋に落ちます。二人は享楽に溺れる日々を送るも、二人の生活は次第に変化してゆき......。 ゴダールに多大な影響を与えた五月革命を取り扱った本作は、『グッバイ・ゴダール!』を観るにあたりぜひ鑑賞しておきたい作品の一つです。

8. ベルナルド・ベルトルッチ監督が映画と革命にオマージュを捧げた『ドリーマーズ』(2003)

この『ドリーマーズ』も五月革命を描いた映画です。『恋人たちの失われた革命』が五月革命に始まる物語であるとすれば、本作は五月革命の到来とともに終わる物語となっています。 2003年に公開された本作は、イタリアの巨匠・ベルナルド・ベルトルッチによる作品で、ヴェネツィア国際映画祭を始め、各映画祭で上映されました。 舞台は五月革命の前夜のパリ。アメリカからの留学生・マシューは、デモで出会った映画マニアのイザベルとテオの双子と親密になり、彼らの思想に引き込まれながら危険な関係を持って行きますが......。 3人の若者の危うい関係性をリアルな性描写を織り交ぜながら描いた作品で、彼らを演じたマイケル・ピット、エヴァ・グリーン、ルイ・ガレル(『恋人たちの失われた革命』を手掛けたフィリップ・ガレル監督の息子)らのフレッシュな演技が高く評価されました。 劇中では様々な映画に対するオマージュやパロディに満ちており、『はなればなれに』や『勝手にしやがれ』とったゴダールの映画のオマージュも登場します。

『グッバイ、ゴダール!』は2018年7月13日公開!

グッバイ・ゴダール プレス
© LES COMPAGNONS DU CINÉMA – LA CLASSE AMÉRICAINE – STUDIOCANAL – FRANCE 3.

フランス映画界の巨匠ジャン=リュック・ゴダールとその2番目の妻である女優アンヌ・ヴィアゼムスキーの生活を描いた『グッバイ・ゴダール!』。日本では2018年7月13日より新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座を始め、全国で順次公開となります。 今回紹介した映画を見て、『グッバイ・ゴダール!』を観る前の予習をしておきましょう。