『時をかける少女』魔女おばさん(芳山和子)の正体は何者?セリフや原作との関係性を紹介
魔女おばさんこと芳山和子もタイムリープをしていた?

アニメ『時をかける少女』には、主人公・真琴の叔母として芳山和子という女性が出てきます。和子は30代後半、独身で博物館で絵画修復の仕事をしている、ちょっと不思議な雰囲気をまとった女性です。 和子は真琴がタイムリープのことを話題に出しても、特別驚く様子はなく受け入れています。さらに、真琴のタイムリープの使い方に対して意味ありげな忠告をしたり、自分は想い人をひたすら待っていることなどを語るのです。 実は和子は、かっての「時をかける少女」だったのです!20年前にタイムリープを経験し、未来からきた青年と恋をしたのです。 アニメ版を観るだけではわからないのですが、和子がタイムリープをすんなり受け入れたのも、あなたは待つタイプじゃないでしょうと真琴の背中を押すのも、自身が過去に経験した出来事が理由だったのでしょう。
芳山和子は原作の主人公だった【原作ネタバレ注意】
映画の原作は1967年に刊行された筒井康隆による小説で、この作品の主人公が芳山和子でした。和子はある日、理科室でラベンダーの香りを嗅いで倒れます。アニメではクルミ型の装置がタイムリープ機能を持っていましたが、原作ではラベンダーの香りだったのです。 タイムリープの原因を探るうち、同級生の深町一夫が、実はケン・ソゴルという名の未来人だということが明らかに。時間跳躍の研究テストとしてこの時代にやってきたものの、帰れなくなってしまったのです。 一夫は、和子のことを好きになってしまったと告白。和子も密かに心惹かれていたのか、胸をときめかせます。しかし、未来の法に則り、一夫は自分に関わる記憶だけを和子から消し去り、姿を消したのでした。 その先には、ありふれた、だけど彼が存在しない日々が流れていく様子が描かれ、寂しさが残るエンディングを迎えます。
魔女おばさんの正体について伏線を解説
写真の少年たちは誰?ラベンダーの意味とは
アニメのキャラクターデザインを担当した貞本義行は、映画公開と合わせて発売された小説『時をかける少女』(新装版)の表紙を描いています。 その表紙とそっくりな写真が劇中で登場するのです。表紙と同じ立ち位置で和子の両脇に立っている少年は、アニメ版で千昭と功介と関係性が似ている、深町一夫と朝倉吾郎だと考えられます。 また、原作小説で和子がタイムリープをするきっかけとなる「ラベンダー」も、写真の横にしっかり飾られていました。
真琴に語った切ない過去
魔女おばさん・和子も、20年前に未来から来た一夫と切ない恋をし「帰って来る」という言葉を信じ、ラベンダーとともに今も待ち続けています。 「あなたは待つタイプじゃない」と真琴の背中を押したのは、再会を待ち続けた自身の後悔の経験があるからかもしれません。 原作では一夫の記憶が消されるラストであり、アニメでの和子も記憶が戻っているかは明言されていません、しかし、真琴に過去の恋愛を話す様子から、ラベンダーの記憶を繋ぎ止め、今も一夫との再会を願っていると考えられます。
魔女おばさんのセリフが深い?名言を紹介
「魔女おばさん」こと和子は、真琴に対してタイムリープの先輩だからこそ伝えられる名言を残しています。ここでは、代表的な3つの名言を紹介します!
「いい目を見てる分、悪い目を見てる人がいるんじゃないの?」

タイムリープを都合よく利用する真琴に対しての忠告の言葉です。タイムリープを覚えた真琴は、遅刻の回避や抜き打ちテストのやり直し、延々とカラオケを楽しむ、など自分のやりたいことのためにタイムリープを使ってしまいます。 すると徐々にタイムリープの反動が現れるのです。結果として、男子生徒・高瀬に対するいじめ、果穂の怪我、さらに功介の事故(未遂)といった代償が生まれており、和子はこうした"悪い目"を示唆、忠告していたのでした。
「世界が終わろうとしていた時、どうしてこんな絵が描けたのかしらね」
和子「この絵が…描かれたのは、何百年も前の歴史的な大戦争と飢饉の時代…『世界』が終ろうとしていた時、どうしてこんな絵が描けたのかしらね…」
— アンク@金曜ロードショー公式 (@kinro_ntv) July 17, 2015
これは「白梅ニ椿菊図」と名付けられた絵で、現実には存在しません。 pic.twitter.com/ZeInyCJp7m
作中で登場した「白梅ニ椿菊図(はくばいにつばききくず)」について言及したセリフです。 和子が修復したこの絵画こそ、千昭が未来からタイムリープして来るきっかけになりました。千昭は「川や空を見たことがなく、たくさん人がいるところもはじめて」と語っています。 さらに、真琴の「絵画と生きている未来の世界の関係性があるのでは」という問いかけには返事をしなかったこともあり、絵画と同じような「危機の時代」に生きている可能性があるのではないでしょうか。
「待ち合わせに遅れてきた人がいたら、走って迎えに行くのがあなたでしょ?」
和子(魔女おばさん)
— アンク@金曜ロードショー公式 (@kinro_ntv) July 1, 2022
「待ち合わせに遅れて来た人がいたら、走って迎えに行くのがあなたでしょ?」#時をかける少女 #金曜ロードショー pic.twitter.com/7sBET1vhH0
千昭がいなくなってしまい、意気消沈する真琴に語ったセリフです。 功介の命を守るため、千昭は最後のタイムリープを使用してしまいます。さらに、真琴に「未来人」であると明かしたため翌日姿を消しました。 研究室にやってきた真琴に、和子は原作での一夫との恋を振り返り「(待っていたら)こんなに時間が経っちゃった」と語ります。そして「真琴は私みたいなタイプではないでしょ」と、そっと背中を押しました。その夜、真琴は千昭のタイムリープによって、自分のタイムリープ回数が1回残されていると気づくのです。 原作小説での和子が一夫との別れを受け入れたのに対して、アニメ版での真琴は自ら千昭に会いに行くという違いが生まれています。このセリフは結果として、真琴と千昭が「気持ちを伝え合う」きっかけとなりました。
芳山和子が主人公の実写作品も紹介

SFとしての面白さもありつつ、ジュブナイル小説としても完成されている『時をかける少女』は、様々な時代で実写化や映画化がされてきました。細田守監督によるアニメ版は、タイトルは原作通りですが、内容は原作小説から20年後の世界を描く作品です。 原作小説を映画化した作品のなかでは、1983年版の映画『時をかける少女』が有名です。この「時かけ」は、ストーリーは基本的に原作に沿う形で展開していきます。 アニメをきっかけに原作が気になったという人は、一度この1983年版を観てみてください。アニメ版で魔女おばさんが語っていたかつての青春について、ぐっと理解が深まるはずです。
1983年版の実写映画を
原田知世が和子を演じる伝説映画『時をかける少女』【ネタバレ注意】
1983年公開、大林宣彦監督による『時をかける少女』は、主人公の和子を原田知世が演じています。ほぼ無名の新人を主人公に起用し、大ヒットを記録。アイドル映画のあり方を変えたと言っても過言ではない、伝説と謳われる作品です。 本作はノスタルジーな雰囲気漂う作品で、現代を描いているのに現代ではないような、不思議な錯覚に陥る作品。エンディングで役の姿のままの原田が主題歌の『時をかける少女』を歌い出すというのも、当時は斬新な演出として話題になりました。 この「時かけ」では、原作小説では描かれなかった別れから11年後が描かれます。和子は薬学の道に進み、職場である男性とすれ違うのです。この人こそ、未来へ帰ってしまった一夫だったのです。 しかし、記憶を消されている和子が一夫に気づくことはなく、立ち去ってしまいます。約束通り戻ってきたのに、なんとも切ないすれ違いです。
1983年版の実写映画を
全編モノクロ制作の『時をかける少女』(1997年)【ナレーションは原田知世】
1997年、全編モノクロの映画『時をかける少女』が公開されています。監督は、1983年版『時をかける少女』でプロデューサーを担当していた角川春樹、主演は中本奈奈です。ナレーションを原田知世が担当していますが、作品の存在自体あまり知られていないかもしれません。 この作品の特徴は、原作小説が刊行された昭和40年代を描いている点です。他の派生作品が、制作当時の時代に寄せているなか、作品が生まれた時代を感じ取れるのがこの1997年版といえます。 もうひとつのみどころは、主題歌の『時のカンツォーネ』。この楽曲は『時をかける少女』の作詞作曲を手がけた松任谷由実が、同曲の歌詞はそのままに違うメロディをつけて歌っています。 聞き覚えのある歌詞が、違うメロディに乗って聞こえてくるというむず痒い感覚が、物語のSF性とも相性良くハマっています。
1997年版の実写映画を
ドラマバーションも多数存在!内田有紀や黒島結菜が主演を務めた
『時をかける少女』は、映画化だけでなくドラマバージョンも多数存在しています。1972年『タイム・トラベラー』の名で放送されたドラマを皮切りに、南野陽子が主演を務めた1985年版、内田有紀が主演を務め安室奈美恵や菅野美穂も出演していた1994年版が放送されました。 2000年以降は、お正月番組『モーニング娘。新春! LOVEストーリーズ』内で放送された、安倍なつみが主演を務める2002年版と、2016年版があります。 2016年版では黒島結菜が主演を務め、原作の一夫にあたる翔平役をSexy Zoneの菊池風磨、もう1人の仲のいい同級生・吾朗役を竹内涼真が演じ、イケメンの共演が話題となりました。
2016年版の実写ドラマを
『時をかける少女』の魔女おばさんは元ヒロインだった

アニメ『時をかける少女』では目立たないちょっと不思議な女性として描かれている魔女おばさんこと芳山和子。 彼女も20年前、真琴と同じように不思議な体験と切ない恋を体験した元ヒロインだったのです。和子の記憶が戻っているのかは明言されていませんが、ずっと一夫を待っている一途さには胸を締め付けられるのでは。 「時かけ」は、アニメ版だけでももちろん面白い作品です。一度アニメ版を楽しんだ後は、ぜひ原作小説やそれをもとにした作品にも触れてみてください!ヒロインだった和子のことや、彼女の体験した日々を知ることで、アニメ版の世界がより愛おしく感じられるはずですよ。







