2021年7月2日更新

『おおかみこどもの雨と雪』のその後は?あらすじを解説&考察しながら魅力に迫る【ネタバレあり】

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『おおかみこどもの雨と雪』
(C)2012「おおかみこどもの雨と雪」製作委員会

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『おおかみこどもの雨と雪』ネタバレあらすじから知られざる考察まで徹底解説!

『おおかみこどもの雨と雪』は、2012年7月に公開された細田守監督の長編オリジナル作品第2作です。第36回日本アカデミー賞最優秀アニメーション作品賞を含む約20近い賞を受賞する快挙を遂げました。 「おおかみおとこ」との間に男女2人の子どもを授かった主人公の花が、わけあってシングルマザーとして田舎で子育てに奮闘する物語。子どもたちが葛藤を乗り越えて自分の生き方を見つけ出す姿には、若者や子育て世代を中心に多くの人が共感しました。 美しい自然描写や余韻のある結末で鑑賞する人の想像力をかきたてるのも本作の魅力の1つ。 そこでこの記事では、『おおかみこどもの雨と雪』のネタバレあらすじから、その後に関する考察や舞台地など、映画をいろいろな視点で観るための情報をまとめました。 ネタバレを含みますので未鑑賞の人はご注意ください!

『おおかみこどもの雨と雪』あらすじ【ネタバレ注意】

本作は、女子大生であった主人公の花が同じ学校の「おおかみおとこ」と出会い恋に落ちていくシーンから始まります。 花は「おおかみおとこ」との間に雨と雪と名付けられた2人の子を授かりますが、「おおかみおとこ」は亡くなり、彼女はシングルマザーとして人里離れた古民家での子育てを決意します。

雨と雪の学校生活は対照的なものに?

おおかみこどもの雨と雪 場面写真

お姉さんの雪はお転婆で積極的な性格。同年代の女の子たちと違ってアオダイショウを腕に巻き付けたり、小動物の骨や爬虫類の干物を集めたり、最初は周囲から浮いた存在でした。しかしある時から、彼女は恥ずかしさのあまり、女の子らしく振る舞おうと決意します。 そんな彼女のためにお母さんの花はワンピースをミシンで縫ってくれます。この青いワンピースは学校でも大人気で、雪は友だちと仲良く過ごすことができました。 ある日、雪のクラスに草平という男の子が転校してきます。雪は初対面の草平にいきなり「ケモノくさい、犬飼ってるのか?」と言われショックを受けてから、彼を避けていました。 しかし、彼女に興味を持った草平がしつこくつきまとったので、雪は思いがけず一瞬だけオオカミに変身し、草平の耳に大怪我をさせてしまいます。 それ以来、学校に行かなくなった雪のもとを草平は毎日訪れて、プリントや給食を届けてくれます。やがて雪は草平と仲直りして再び登校するようになりました。 一方、雪の弟の雨はシンリンオオカミを見たことから自然界に魅力を感じるようになります。彼は近所の山を支配するキツネを「先生」と慕って一緒に野山を駆け巡り、学校を休みがちになりました。

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雨と雪の見つけた自分らしい生き方とは?2人のラストを解説

人間社会に順応していく雪と、オオカミとしての生き方に魅力を感じる雨との間の距離は次第に広がっていきます。 ある晩、雨に次の日はちゃんと学校に来るようにと言う雪と、逆に彼女を山に誘う雨は、自分たちは人間かオオカミかということで意見が対立。2人ともオオカミに変身しての大喧嘩になりました。 雪が小学校6年生になった年の夏、彼女たちが住む地域は記録的な豪雨に何度も見舞われます。 折しも、足を悪くして死期が迫ったキツネの「先生」の跡を継ぎ、山の動物たちのリーダーとなる決意をした雨は、花が止めるのも聞かず山に行きます。彼の10歳という年齢は、人間では子どもでもオオカミとしては立派な大人なのです。

雨の身を案じた花は、豪雨のなか彼を探して山に入りますが、足を踏み外して倒れこんでしまいます。そんな彼女を助けてくれたのはオオカミの姿になった雨でした。 オオカミに変身した彼の姿は、亡き父である「おおかみおとこ」の面影をどことなく思い出させます。朝日の中に彼の雄姿を認めた花は、涙をぬぐって「しっかり生きて!」と雨に別れを告げました。 一方、雪は母親の花が雨を探して山に行ってしまったため誰も迎えに来てくれず、豪雨のなか1人では学校から帰れません。気がつくと彼女は、同じく迎えの来なかった草平と誰もいない校舎で2人きりになっていました。 真っ暗な教室で雪は勇気を振り絞り「自分が半分オオカミである」という母と弟以外は誰も知らない秘密の姿を草平に見せます。今まで苦しかったと言う彼女を、草平は「ずっと分かっていた、誰にも言わないからもう泣くな」と励ますのでした。

ラストシーンの「その後」を考察!雨と雪は2度と会えないのか?

おおかみこどもの雨と雪

本作のラストシーンでは、雪は人間として生きることを選び、雨はおおかみとして生きていくことを選び森の中へ消えていきます。 それではその後彼らはどうなったのでしょうか? 原作小説の中でも数年後の描写はなく、公式でも特に言及はされていません。 小学校を卒業した雪は、自宅から通える範囲内に中学校がないので、離れた土地で寮生活をしながら学校に通うことになりました。 母親の花は子どもたちのいなくなった家で1人暮らしています。壁には雪の中学校の入学式の写真や、寮から送ってきた手紙や写真が貼られています。 写真の1枚には、草平のようなボサボサ頭の少年の姿も!雪と草平はこれから長い付き合いになりそうですね。 山でオオカミとして生きることを選択した雨は、その後人間に戻ることはなかったようです。山の近くに住む母親とは会うこともあるかもしれませんが、休みのときしか帰ってこない雪とはほとんど会えないでしょう。 ファンの間では、本作の語り部である雪の雨に対する描写の少なさから「雨と雪は一生会うことはなかったのではないか」などの考察がされています。

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細田守監督の描く正解のない「生き方」と「母の愛」

おおかみこどもの雨と雪 

本作に多くの人が共感できる点は、2人の子どもが葛藤しつつ自分の本当の姿を見つける過程と、そのどちらも受け入れる母親の愛です。 雪は幼いころは活動的で、オオカミのような行動をとっていました。しかし、学校で同年代の女の子たちや草平と交流することで、人間として生きていく決意をします。 母親の花は、このような雪のためにきれいなワンピースを縫ってくれたり、草平をもてなしたりして、雪が人間社会に馴染む手助けをしていました。 反対に、幼いころは母親に甘えていた雨は、オオカミやキツネとの出会いをきっかけに、オオカミとしての生き方に目覚めていきます。 雨が生前の父の姿を母親の花に尋ねたり、彼女の制止を振り切って山に行ったりする行動を、花は悩みながらもやはり受け入れます。 どんな形であれ、子どもたちが悩みながら見つけ出したアイデンティティを無条件で受け入れる純粋な母親の愛には感動必至です。

『おおかみこどもの雨と雪』をもっと深掘り!舞台やオマージュ作品は?

「おみやげみっつ たこみっつ」とは?

物語に登場する「おみやげみっつ たこみっつ」というおまじないは、雪が学校へ通うために、万が一おおかみになりそうになったら唱える言葉として花が雪に教えたおまじないです。 おまじないの由来として細田監督は、舞台挨拶でのインタビュー時に「約束をする時の歌『指切りげんまん、うそついたら針千本飲ます』に続く言葉として“おみやげ みっつ たこみっつ”という地方があるそうで、それに由来しています。」と答えています。

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物語の語り部が「雪」である意味

おおかみこどもの雨と雪

『おおかみこどもの雨と雪』では、物語の中に様々な不可解な点が多く存在しているという声も多く存在しています。 そもそも物語の形式が「母親の花から聞いた話を娘の雪が語る」という形式なので、真実ばかりでなく花が嘘の混ざった話を雪に教えた可能性もありうると言われています。 そうすると不可解な点にも納得がいきますね。

『ファンタジア2000』へのオマージュ?

おおかみこどもの雨と雪

物語の中で後半部分の家族3人が雪山を駆け降りるシーンがあるのですが、このシーンは『ファンタジア2000』にそっくりであるため、この作品のオマージュなのではないかと考えられます。 実際に『ファンタジア2000』は、細田監督のお気に入り映画の1つとして挙げられています。ぜひ本編のシーンでこの考察を確かめてみてください!

細田守監督のこだわり溢れる本棚

物語に登場する何気ない本に関しても、「子供たちの成長具合など、その場面ごとに相応しいものを本棚会議というものをやって決めています。ぜひ、本にも注目してください」と発言し、ただならぬこだわりを見せる細田監督。 本の表紙1つをとってもこだわりがあるというのは、さすが、日本を代表するアニメーション監督です。

『おおかみこどもの雨と雪』の舞台は監督の出身地?

本作で花が移住した田舎は監督・細田守の出身地である、富山県里山がモデルとなっています。花が田舎で生活を送っていた古民家も実際に存在しています。 また花が通っていた大学は一橋大学をモデルとしており、花とおおかみおとこが待ち合わせをした喫茶店や、花が大学生時代に働いていたクリーニング屋さんも一橋大学の通りに実際に存在しています。これらのモデルとなった家や店はファンが聖地巡礼に訪れることも。

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『おおかみこどもの雨と雪』を解説や考察でより深く楽しもう!

この記事では、細田守監督作品として未だ根強い人気を誇る『おおかみこどもの雨と雪』のあらすじや考察、トリビアなどを解説しました。 何度観ても泣けると評判の本作。ぜひ、この考察・解説を知った後にもう1度観てみてください!

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