2023年6月16日更新

『時をかける少女』の千昭が「未来で待ってる」と言った真相とは?正体を徹底ネタバレ考察

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時をかける少女

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青春SFアニメ映画『時をかける少女』は、2006年に公開された細田守監督作品。原作は筒井康隆の同名小説ですが、本作では原作から約20年後の出来事が描かれています。 今回は作品のキーパーソン・間宮千昭の徹底解説に加え、「未来で待ってる」というセリフの意味について考察してみたいと思います!

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『時をかける少女』千昭の正体とは?

時をかける少女

真琴の学校に転校生としてやってきた千昭の正体は、未来人です。千昭は、この時代のこの季節にしか現存が確認されていない「白梅ニ椿菊図」という絵画の実物を見るという夢を抱いていました。そして、未来からクルミ型の装置を使ってこの時代にタイムリープしてきます。 この絵画は「魔女おばさん」と呼ばれる真琴の叔母・和子が、博物館で修繕中の絵画でした。和子によると、この絵は数百年前、戦争と飢餓で世界が終わろうとしている時代に描かれたもの。 千昭はタイムリープをしてまでこの絵をみたいと現代にやってきますが、千昭とこの絵画との関係や、そこまで強いこだわりを持つ理由は謎めいたままになっています。

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千昭が生きていた時代はどんな世界なの?

時をかける少女

千昭は、真琴や同級生の功介と3人でキャッチボールをしたりカラオケに行ったり、ごくごく普通の高校生活を過ごします。そのなかで、千昭は地上に川が流れていることや、空の広さ、自転車に乗ったことなどを、初めての体験として後に語るのです。 おそらく、千昭のいた世界は地上に住めないほど荒廃した環境で、「白梅ニ椿菊図」が描かれた時代のような終わりがみえている世界なのでしょう。 千昭たちが何気なく過ごす日常シーンの背景には、真っ青な青空や入道雲、鮮やかな夕焼けといった、誰もが目にしたことのある日本の夏の景色が描かれています。 その時代を生きる真琴たちにとっては代わり映えしない風景を、廃れた未来から来た千昭がどんな思いで眺めていたのか、その胸中を考えると切ないものがありますね。

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「未来で待ってる」の意味を徹底考察してみた

『時をかける少女』
©「時をかける少⼥」製作委員会2006

『時をかける少女』のなかでも大きな謎として残るのが、ストーリーのクライマックスでの真琴と千昭のやり取りの真意です。 ラスト1回のタイムリープを使って千昭が未来に帰る際、千昭は「未来で待ってる」と真琴に伝えます。それを受け、真琴は「うん、すぐ行く。走っていく。」と言って、2人は別れます。 千昭は真琴を抱きしめるものの、告白したりキスをすることなく終わってしまう2人。果たして、このシーンや千昭のセリフにはどういった意味が込められていたのでしょうか?

【考察1】もう真琴に会えないことを悟って絵に思いを託した?

もし千昭のいた時代が百年単位で先の未来なら、もう一度タイムリープでも使わない限り2人が会うことはないと考えられます。そして、千昭がもう二度と会えないことを覚悟していたとしたら、告白やキスをすることで真琴が自分への未練をこの先ずっと抱いてしまうことを避けたいと思ってもおかしくありません。 この場合、「未来で待ってる」は、絵を通じての再会を意味しているかもしれません。真琴の「走って行く」という言葉とは少しニュアンスが合いませんが、真琴はあの絵が千昭の時代にも残っているようになんとかしてみると別れ際に伝えています。 真琴が、彼女自身の時間の流れの中で絵を未来に繋げ、千昭はそれを未来で受け取るという約束の言葉だったのかもしれません。

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【考察2】告白でも別れでもない、前を向くための決意表明だった?

本作で何度も繰り返し出てくるキーワードのひとつに「前を向く」があります。そこをふまえて、別れの言葉についても考察してみました。 別れのシーンで、2人はそれぞれ目を背けていた出来事に改めて向き合い、次の一歩を踏み出そうとしています。千昭は元の時代へ帰るという現実と向き合い、真琴はなんとなく目を背けていた進路や未来に向き合おうとするのです。 千昭は、未来をまっすぐ見つめる真琴に、これまで以上に心惹かれたのかもしれません。だからこそ、告白や別れの言葉によって、2人の関係性に名前をつけてしまうことで、真琴がそれに囚われてしまうことを避けたかったのではないでしょうか。真琴にはいつまでも前を向いていて欲しかったのです。 自分の存在が未来への足かせとなってしまうことを望まない千昭は、「自分も前を向いて頑張るよ」という気持ちをあの言葉に込めるのが精一杯だったのかもしれません。

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【考察3】その後タイムリープを開発する真琴の将来を知ってたから「未来で待ってる」?

時をかける少女

一番非現実的な考察ですが、この後真琴がタイムリープの開発に携わり、実際に未来に行くことを示唆しているというパターンも考えられます。 真琴が一番最初にクルミ型装置を手にしたのは、学校の理科準備室でした。真琴は進路の話の際、理系とも文系とも決められずにいましたが、もし理科準備室になんらかの意味が込められているのだとしたら、将来理系の道へ進むという暗喩かもしれません。 真琴がそういう道を歩むことを、未来人の千昭なら知っていた可能性はあります。とはいえ、目の前にいる現代の真琴が本当にその道を進むかどうかの確証はありません。 だから、千昭はありったけの「また会いたい」という気持ちを込めて、自分の住む世界、つまり「未来で待ってる」と伝えたのではないでしょうか。未来で2人が再会する、こんなハッピーエンドも観てみたいような気がしますね。

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『時をかける少女』千昭と真琴の未来はあなたのなかで紡がれる

『時をかける少女』
©「時をかける少女」製作委員会2006

今回3つの考察を考えてみましたが、実際監督がどんな結末を想定してこの作品をつくったのかは明かされていません。 そして最後の別れのシーンでは、キスをせずに優しく真琴を抱き寄せる瞬間、千昭の瞳は前髪に隠れてしまっています。多くを物語ってしまう瞳を隠すことで、より千昭の真意はつかみにくいものとなっているというわけです。それこそが、2人の未来はあなたが想像してくださいというメッセージなのかもしれません。 10代のごく限られた時間で得られる高校生活と青春の日々に、思いを馳せずにはいられない映画『時をかける少女』。観る人によって様々な思いがよぎる本作は、作品を観たときの自分の年齢や環境によって、また違った思いを千昭や真琴に見出すことができる何度でも観たい作品なのです。