2019年9月10日更新

アニメ映画『時をかける少女』の気になるポイントを考察!なぜ愛され続けるのか【細田守監督作品】

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過去に実写作品も多数制作されてきた『時をかける少女』。細田守が監督を務めたアニメ映画版は、原作とは少し異なる設定があり、考察要素が散りばめられています。今回は本作の謎を解説しながら、作品の魅力に迫っていきます!

目次

アニメ映画『時をかける少女』の気になるポイントを考察!なぜ愛され続けるのか【細田守監督作品】

2006年に公開されたアニメ映画『時をかける少女』は、細田守監督作品を代表する名作のひとつです。映画公開当時はそれほど注目を集めていたかった本作。しかし、公開後は口コミを中心にじわじわと興行成績を伸ばし、実に9ヶ月以上にわたって公開されることとなりました。 原作の面白さはもちろん、細田守監督による大胆な設定変更や、複雑に絡み合う伏線が多くの観客を虜にしたのです。映画公開から10年以上が経ってもつい繰り返し観たくなる『時をかける少女』。この名作アニメに秘められた魅力と考察ポイントを解説します。

『時をかける少女』のあらすじを紹介!幾度となくメディアミックスされてきた名作

『時をかける少女』の原作は、筒井康隆による同名小説です。この小説は1967年に刊行され、原田知世主演の実写映画『時をかける少女』(1983年)で一躍有名になりました。この原作では中学3年生の芳山和子が主人公となっています。 今回取り上げるアニメ映画『時をかける少女』は、実写映画版から約20年後が舞台。主人公は紺野真琴に変わり、原作で主人公だった和子は彼女の叔母として登場しています。 原作もアニメ映画も、主人公の少女がある日タイムリープを経験し、未来からやってきた青年と恋に落ちるという大筋は同じです。アニメ映画の場合は、現在とさらに20年前の出来事も絡めた伏線が楽しめるようになっています。

千昭の「未来で待ってる」発言にはどんな意味があるのか考察!

本作が多くのファンに長く愛されている大きな理由のひとつに、様々な考察が楽しめる点が挙げられます。ここで取り上げる未来人・間宮千昭が真琴に放った「未来で待ってる」というセリフにも、いくつもの解釈があるのです。今回は2つの視点から考察します。

「未来で待ってる」のは真琴が残すと言った「絵」のこと?

千昭が未来からわざわざ真琴の時代にやってきたのは、この時代のこのタイミングでしか所在が確認できていない絵画「白梅二椿菊図」を実際にその目で観るためでした。「未来で待ってる」の意味を、「この絵に未来で会えることを待ってる」と解釈する場合、千昭はもう真琴と生きて会えないことを悟っていると考えられます。 別れの前、真琴はこの絵が千昭の時代まで失われないように残していくと宣言しました。この言葉通り、真琴が絵の修繕や保存に尽力して、後世に残すことができたとします。そうすれば、千昭の知っていた未来は変わり、絵の残っている未来がやってくるのです。 そして、後世に受け継がれた絵を目にした千昭は、この絵画の向こう側に真琴の存在を感じることができます。実際に会えなくても、絵画を通じてお互いの存在を感じ合い「再会」することができるのです。

千昭のやさしさだった?

千昭は未来からやってきた人物です。それだけに、簡単に人が未来に行けないことや、真琴の住む世界と自分がいた世界の違いなどもよく理解していたはずです。 しかし、そう頭で理解していても、「必ず会える未来がある」と信じる真琴を前に、はっきりと「無理だ」ということはできなかったのでしょう。そして、千昭もまた強く真琴に惹かれていました。なおさら、真琴を突き放すようなことは言えなかったはずです。 結果として、千昭は「待ってる」と彼女に伝えました。千昭から真琴に何かを望む言葉ではなく、ただただ「自分が待っている」という一方的な言葉を投げかけたのです。それは、これから自分のいない未来を歩むことになる真琴への、千昭なりの優しさだったのでしょう。

物語のカギを握る「白梅二椿菊図」とは?

千昭がタイムトラベルをしてまで観に来た絵画「白梅二椿菊図」。劇中では、魔女おばさんこと芳山和子が務める博物館で修復されている絵画です。この絵は、実際には存在していません。 和子によって、大きな戦争や大飢饉が起きた時代に描かれた絵であること、観ていると心温まる絵であることが説明されています。それ以外の説明がなく不明な点も多い絵ですが、千昭がこの絵に大きな意味を見出していたことは確かです。 彼は真琴に時代の空の広さや川の様子を、初めて見たと言っていました。この発言から、彼の時代はまったく違った風景が広がっていることが想像できます。もしかしたら、変わり果てた風景の原因に戦争や飢饉があったのかもしれません。 苦しい状況のなか、心温まる絵が生み出されたこと。そのことに、千昭はなにか希望のようなものを感じていたのではないでしょうか。

黒板の落書き「Time waits for no one」にも意味があった?

千昭と真琴にとって鍵となる理科室。その黒板に書かれていた落書きが「Time waits for no one」と「 (゚Д゚) ハァ?」です。前者は直訳すると「時は誰も待ってくれない」という意味になります。後者の顔文字は、おそらくこの英文を書いた人物とは違う人が、それに反論の意味を込めて書いたものでしょう。 英文の内容は、まさしくこの作品で描かれているテーマのひとつです。その瞬間に感じたこと、青春と呼ばれる儚い時間、そういったものは一瞬で過ぎ去っていくもの。それは真琴や千昭にとっても同じです。 劇中ではこの英文がカラオケのシーンでも登場します。千昭が「Time waits for no one」というフレーズが出てくる曲を歌っているのです。 千昭には、未来に帰らなくてはならないというタイムリミットがありました。しかし、日常の心地よさから帰りがたい気持ちが生まれていたのでしょう。そんな自分への自戒も込めて、千昭は歌を歌い、黒板に走り書きをしたのではないかと考えられます。

魔女おばさん(芳山和子)の正体を考察!

魔女おばさんと呼ばれる真琴の叔母・芳山和子は、不思議な人物です。真琴のタイムリープを見抜き、さりげなく真琴へ忠告やアドバイスを送っています。なぜ彼女はタイムリープのことを知っていたのでしょうか。それは、彼女自身が過去に真琴と似たような体験をしているからです。 芳山和子は原作小説の主人公と同姓同名です。アニメ映画版が原作の20年後の世界を描いていて、和子が30代後半という年齢設定からも、彼女はかつてヒロインだったあの和子だと考えられます。 原作では真琴と同じように和子がタイムリープを体験し、その原因が未来からきた同級生の実験だと判明。やがて2人は惹かれ合いますが、未来のルールに従い和子は記憶を消され、同級生は未来へと戻っていってしまいました。 記憶を消された和子が20年の間にどうやって記憶を取り戻したのか、といった詳細は明かされていません。しかし、彼女はかつてのヒロインだったと思って本編を見返すと、また違った見方ができるかもしれません。

アニメ映画『時をかける少女』は繰り返し観ながら青春を味わうことのできる名作

今回は、公開から時を経てなお愛される名作『時をかける少女』について、作中に散りばめられた謎を考察をしてきました。 この作品は観た際の年齢や環境によって、様々な感じ方ができる作品です。とくに大人になってから観る「時かけ」は、まさに「Time waits for no one」を感じさせてくれるでしょう。考察を踏まえつつ、ぜひ何度も繰り返し観てほしい作品です。