【連載#14】今、観たい!カルトを産む映画たち『ゼイラム』和製特撮アクションムービー【毎日20時更新】
連載第14回「今、観たい!カルトを産む映画たち」
有名ではないかもしれないけれど、なぜか引き込まれる……。その不思議な魅力で、熱狂的ファンを産む映画を紹介する連載「今、観たい!カルトを産む映画たち」。 ciatr編集部おすすめのカルト映画を1作ずつ取り上げ、ライターが愛をもって解説する記事が、毎日20時に公開されています。緊急事態宣言の再発令により、おうち時間がたっぷりある時期だからこそ、カルト映画の奥深さに触れてみませんか? 第13回の『エコエコアザラク』(1995年)に続き、第14回は『ゼイラム』(1991年)を紹介します!
『ゼイラム』から始める雨宮慶太的異世界生活
雨宮慶太監督と言えば、マニアックな人気を誇る特撮アクション作品「牙狼
【あらすじ】殺戮生命体を倒し、閉鎖空間から脱出できるのか?
『ゼイラム』の主人公は、銀河を股にかけて犯罪者を追い詰める腕利きバウンティハンター(作中では「探索者」)、イリア。彼女は驚異的な戦闘能力を持つ生物兵器「ゼイラム」を捕獲するために、地球へとやってきます。 捕獲用の閉鎖空間「ゾーン」を展開して準備万端、任務遂行も楽勝かと思われました。しかし、偶然訪れた電気設備工事会社の社員2人が異空間に入り込んでしまいます。 イリアは激闘の末になんとか捕獲に成功しますが、ゼイラムの作り出したクリーチャーに襲われてイリアだけがリアル世界へ帰還しました。転送装置が壊れてゾーンに戻ることができず、さらにゼイラムが拘束から逃れて動き出す事態に。 絶体絶命の危地に陥った2人を救うために、イリアは奇策に打って出るのでした。 果たしてイリアは、任務を果たすことができるのでしょうか。そして、残忍な宇宙生物に追いつめられた電気設備屋さんたちの運命やいかに……。
【キャスト】凛々しく雄々しく美しいヒロイン、イリアを森山祐子が熱演
ハードボイルドでクールなバウンティハンター、イリア役を演じるのは、初映画で初主演となった森山祐子(のちに「ゆうこ」に改名)。当時の日本の女優としては珍しい「戦うヒロイン」を、文字通り体を張って熱演しました。ちょっと凛々しい顔立ちが、男勝りなイリア役にぴったりです。
しかし、森山は2004年に写真集を発表したのを最後に芸能活動に関する情報がなく、2021年1月現在は引退していると思われます。
また電気屋さん2人のコミカルな演技も、この作品の面白さのひとつ。事件的には宇宙スケールなのに、ドタバタぶりはドリフ的なお茶の間感が漂います。女好きだけれど気のいいバツイチ・神谷役の螢雪次朗(ほたる ゆきじろう)と、元気で「熱血」な鉄平役・井田州彦との軽妙なやりとりがあるからこそ、ハードなシーンがより引き立ってくるのでしょう。
「牙狼
不気味カッコいいキャラが得意な雨宮監督。太田浩一の劇伴も印象的
『ゼイラム』が名作と呼ばれるゆえんは、作品としての面白さはもちろん、雨宮慶太監督のカルト的なカリスマ性にあります。 もともとテレビの戦隊モノや『仮面ライダーBLACK』(1987年)などのキャラクターデザインを担当してきた雨宮だけに、まずはクリーチャーの造形が不気味カッコいい!破戒僧を思わせるゼイラムなどは、光の中に立ち尽くすシルエットまでしっかり不穏な気配を発散しています。そのカッコよさを最大限発揮するべく、脚本も雨宮自らが手がけました。 さらに、そのイメージを強烈に脳裏に叩き込んでくれる劇伴にも注目すべきでしょう。音楽を担当したのは、音楽制作ユニット「BUDDY ZOO(バディズー)」の太田浩一。とくにゼイラムが登場するシーンで流れるサウンドが、執拗に観客の不安感を煽ります。
さながらPVのごとく。キュートで耽美なイリアの肉弾戦に萌える
戦闘が始まってしばらくの間、イリアは銃を使っていましたが、ゼイラムには効果なし。ということで、途中から特殊なスーツをまとって肉弾戦に移行します。この戦闘シーンはやはり、本作の重要な見どころのひとつでしょう。
なんと言っても、イリアの表情がいちいちキュート。とくに、ゼイラムの攻撃を腕ひとつで弾き飛ばす時や、拘束するためのデバイスを振りかざした瞬間のクールな「ドヤ顔」に萌えます。アクションも、もちろん素敵なのですが……!
森山祐子のプロモーションビデオを思わせる演出は、雨宮作品に共通するエッセンスのひとつです。たとえば「牙狼
20数年が経ってなおトラウマ。ゼイラムの白い顔に気をつけよう
戦うヒロイン、イリアのキュートさとは対照的に、子供が見たら確実に悪夢を見そうな不気味な存在が、ゼイラムの……顔です。それも唐傘形状の頭部に張り付いている白い顔。これがシンプルに怖いのです。作品のレビューを見るとトラウマになっているファンもいるようなので、苦手な人は注意してください。 なにしろ、映画『エイリアン』(1979年)のインナーマウス(第2の顎)よろしく伸縮自在で、牙をむいてかじりついてくるタチの悪い代物。文楽のカラクリ人形を思わせるパックリ開いた口が、気味の悪さを煽ります。 その上『ゼイラム2』では、この口から卵を産むという離れ業まで見せてくれるのです。
『ゼイラム』に続いて見るべきは?『鉄甲機ミカヅキ』がオススメ
『ゼイラム』の後、雨宮監督は『人造人間ハカイダー』(1995年)や『タオの月』(1997年)など、やはりカルトな作品を次々に制作。その極め付けともいえる「牙狼
バンダイチャンネルでは、劇場版2作とアニメも配信中
根強いファンからの支持を受けて、『ゼイラム』と『ゼイラム2』の2作品を収録したHDリマスター版Blu-rayが2017年2月にリリースされました。Amazonのカスタマーレビューでは、星4.5を獲得しています! 動画配信サービス(VOD)では、バンダイチャンネルで劇場版2作と、OVA『I・Я・I・A ZЁIЯAM THE ANIMATION』が揃ってレンタル配信中。第1作のみであれば、Amazonプライム・ビデオやU-NEXTの見放題作品にラインナップされています。 ちなみに、『鉄甲機ミカヅキ』もバンダイチャンネルでレンタル配信中です! どちらも20年以上前の作品ですが、その楽しさは今なお色褪せることはありません。雨宮ワールドをぜひ1度、味わってみてください。
次回の「今、観たい!カルトを産む映画たち」は?
連載第14回は、独特かつディープな世界観でじわじわと人気を集めた、雨宮慶太監督による特撮SFアクション『ゼイラム』を紹介しました。魅力的なヒロインと演技上手なバイプレーヤーたちの熱演に加え、特撮アクションとしての醍醐味がたっぷり詰まった本作は、今もなお見応え十分です。 次回の連載では、ラジー賞で5冠達成!?そんな不名誉とは裏腹に愛され続ける伝記映画『愛と憎しみの伝説』(日本劇場未公開)を紹介します。第15回もお見逃しなく!