2018年7月29日更新

【連載】カルト(少数の熱烈な信奉)を産む映画たち#14『ゼイラム』

ゼイラム&ゼイラム2 Blu-ray BOX  、販売元:バンダイナムコアーツ
(c)1991 GAGA Communications,Inc.  (c)1994 クラウド/ゼイラム製作委員会

『GARO』シリーズで知られる鬼才、雨宮慶太監督の出世作と言えるのが、和製特撮アクションムービー『ゼイラム』。その独特の世界観は、ゴールデンタイムよりも深夜枠がきっと似合います。

目次

「カルトを産む映画たち」とは?

「カルト(少数の熱烈な信奉)を産む映画たち」とは、有名ではないかもしれないけれど、一部の人には熱烈に愛される映画を紹介していく連載です(毎週日曜更新)。

『ゼイラム』から始める雨宮慶太的異世界生活

雨宮慶太監督と言えば、マニアックな人気を誇る特撮アクション作品「牙狼<GARO>」シリーズで広く知られる鬼才。その出世作となったのが、今回ご紹介する『ゼイラム』です。 公開されたのは1991年。雨宮監督にとっては初めての劇場用作品でしたが、この頃からすでに「牙狼<GARO>」シリーズに通じる独特の「ワールド」が濃密に広がっている印象です。低予算ながら、特撮あり肉弾戦ありの見どころ盛りだくさんなエンターテインメント作品に仕上げられました。 第一作の成功を受けて、1994年には同じキャストで『ゼイラム2』を公開。さらに同年OVAとして『I・Я・I・A ZЁIЯAM THE ANIMATION』(イ・リ・ア ゼイラム ジ アニメーション)が全6巻でリリースされています(キャラクター設定は『ウイングマン』などで人気の漫画家・桂正和)。 メジャー級ではなくても根強いファンの支持を受けて、じわじわと人気の輪が広がっていくあたりにも、「牙狼<GARO>」シリーズの「元祖」的なイメージが。雨宮ワールドのディープな世界に、あなたもハマってみませんか?

【あらすじ】殺戮生命体を倒し、閉鎖空間から脱出できるのか?

主人公は、銀河を股にかけて犯罪者を追い詰める腕利きバウンティハンター、イリア。驚異的な戦闘能力を持つ生物兵器「ゼイラム」を捕獲するために地球にやってきました。捕獲用の閉鎖空間「ゾーン」を展開して準備万端、任務遂行も楽勝かと思われた矢先、偶然訪れた電気設備工事会社の社員ふたりが異空間に入り込んでしまいます。 激闘の末になんとか捕獲に成功しますが、ゼイラムの作り出したクリーチャーに襲われてイリアだけがリアル世界へ帰還。転送装置が壊れてゾーンに戻ることができず、さらにゼイラムが拘束から逃れて動き出す事態に。絶体絶命の危地に陥ったふたりを救うために、イリアは奇策に打って出るのでした。 果たしてイリアは、任務を果たすことができるのでしょうか。そして、残忍な宇宙生物に追いつめられた電気設備屋さんたちの運命やいかに。

【キャスト】凛々しく雄々しく美しいヒロイン、イリアを森山祐子が熱演

ハードボイルドでクールなバウンティハンター、イリア役を演じるのは、初映画で初主演となった森山祐子(のちに「ゆうこ」に改名)。日本の女優としては珍しい「戦うヒロイン」を、文字通り体を張って熱演しました。ちょっと凛々しい顔立ちが、男勝りなイリア役にぴったりです。 電気屋さんふたりのコミカルな演技も、この作品の面白さのひとつ。事件的には宇宙スケールなのに、ドタバタぶりはドリフ的なお茶の間感が漂います。女好きだけれど気のいいバツイチ・神谷役の螢雪次朗と、元気で「熱血」な鉄平役・井田州彦との軽妙なやりとりがあるからこそ、ハードなシーンがより引き立ってくるのでしょう。 『牙狼<GARO>』では、主人公の冴島鋼牙をスカルリングの形をした魔導輪ザルバがサポートしていますが、『ゼイラム』ではイリアのサポート役としてAIマシン・ボブが登場。「借金が返せる」など俗っぽさまでかなり進化した高度な人工知能として、独特の存在感をアピールしています。

不気味カッコいいキャラが得意な雨宮監督。太田浩一の劇伴も印象的。

ゼイラム&ゼイラム2 Blu-ray BOX,販売元:バンダイナムコアーツ
(c)1991 GAGA Communications,Inc.  (c)1994 クラウド/ゼイラム製作委員会

『ゼイラム』が名作と呼ばれるゆえんは、作品としての面白さはもちろん、雨宮慶太監督そのもののカルトなカリスマ性にあります。 もともとテレビの戦隊モノや仮面ライダーBLACKなどのキャラクター設定を担当してきた雨宮だけに、まずはクリーチャーの造形が不気味カッコいい!破戒僧を思わせるゼイラムなどは、光の中に立ち尽くすシルエットまでしっかり不穏当な気配を発散しています。そのカッコよさを最大限発揮するべく、脚本も雨宮自らが手がけました。 さらに、そのイメージを強烈に脳裏に叩き込んでくれる劇伴にも注目すべきでしょう。担当は、音楽制作ユニット「BUDDY ZOO(バディズー」の、太田浩一。とくにゼイラムが登場するシーンで流れるサウンドが、不安感を執拗に煽ります。

さながらPVのごとく。キュートで耽美なイリアの肉弾戦に萌える。

戦闘が始まってしばらくの間、イリアは銃を使っていましたが、ゼイラムには効果なし。ということで、途中から特殊なスーツをまとって肉弾戦に移行します。この戦闘シーンはやはり、本作の重要な見どころのひとつでしょう。 なんと言っても、イリアの表情がいちいちキュート。とくに、ゼイラムの攻撃を腕ひとつで弾き飛ばす時や、拘束するためのデバイスを振りかざした瞬間のクールな「ドヤ顔」に萌えます。アクションも、もちろん素敵なのですが。 森山祐子のプロモーションビデオを思わせる演出は、雨宮作品に共通するエッセンスのひとつです。たとえば「牙狼<GARO>」シリーズは、イケメン軍団のオンパレード!セリフも仕草も演出もすべてがオンステージ!!なところは、どことなく2.5次元の舞台を見ているような気もします。 『ゼイラム2』ではタンクトップ姿で太ももをあらわにするなど、見事なスタイルを惜しげもなく披露しています。

20数年が経ってなおトラウマ。ゼイラムの白い顔に気をつけよう

イリアのキュートさとは対照的に、子供が見たら確実に悪夢を見そうな不気味な存在が、ゼイラム……の、顔です。それも唐傘形状の頭部に張り付いている白い顔。これがシンプルに怖いのです。作品の「口コミ」の中には、トラウマになっているファンもいる様子。 なにしろ『エイリアン』のインナーマウスよろしく伸縮自在で、牙をむいてかじりついてくるタチの悪い代物。文楽のカラクリ人形を思わせるパックリ開いた口が、気味の悪さを煽ります。その上『ゼイラム2』では、この口から卵を産むという離れ業まで見せてくれるのでした。

『ゼイラム』に続いて見るべきは?『鉄甲機ミカヅキ』がオススメ

『ゼイラム』の後、雨宮監督は『人造人間ハカイダー』や『タオの月』など、やはりカルトな作品を次々に制作。極め付けともいえる「牙狼<GARO>」は、スピンオフも含めてテレビシリーズ、劇場版ともにスケールの大きなシリーズ展開を見せています。 そんな作品群の中で、『ゼイラム』とは少し違ったテイストで楽しめるのが、『鉄甲機ミカヅキ』です。2000年〜2001年にかけて、全6話で放送されたテレビシリーズですが、制作費はなんと10億円。小学4年生の少年が謎の巨大ロボット「ミカヅキ」とともに人類を脅かす謎の生命体「イドム」と戦う物語です。 父と子との絆、仲間たちとの友情といった普遍性の強いテーマを盛り込みながら、決してカッコよくないいじめられっ子が成長していく姿を温かく描き出した物語は、雨宮作品としてはちょっと変化球かもしれません。それでもスイカのカタチをしたモンスターや、ブリキのおもちゃのような巨大ロボットなど、ユニークな設定が印象に残る快作です。

バンダイチャンネルでは、劇場版2作とアニメも配信中

ゼイラム&ゼイラム2 Blu-ray BOX   販売元:バンダイナムコアーツ
(c)1991 GAGA Communications,Inc. (c)1994 クラウド/ゼイラム製作委員会

根強いファンからの支持を受けて、『ゼイラム』と『ゼイラム2』はHDリマスター版Blu-rayが2017年2月にリリースされました。Amazonのカスタマーレビューでは4.5星を獲得。 配信系ではバンダイチャンネルで『ゼイラム』『ゼイラム2』と、『I・Я・I・A ZЁIЯAM THE ANIMATION』が、揃って配信されています。第一作のみならamazonプライムビデオやU-NEXT、YouTubeムービーなどでも配信中です。 魅力的なヒロインと演技上手なバイプレーヤーたちの熱演に加え、特撮アクションとしての醍醐味がたっぷり詰まった『ゼイラム』は、今なお見応え十分。色褪せない楽しさをぜひ一度、味わってみてください。