【連載】カルト(少数の熱烈な信奉)を産む映画たち①『Mr.タスク』

2018年6月11日更新

大型映画だけでは物足りない!そんなあなたへ送る、ニッチだけれど骨太な隠れた名作をご紹介する新連載。第1回目の今回は、その奇抜すぎるルックスで大きな話題を呼んだ『Mr.タスク』の魅力をお伝えします。

カルト(少数の熱烈な信奉)を産む映画たち、始まります!

みなさまはじめまして、ナマステ銀次郎と申します。 このたび「カルト(少数の熱烈な信奉)を産む映画たち」と銘打って、あまり紹介されることのない隠れた名作をご紹介する新コーナーの第1回を担当させて頂くこととなりました。駄文ではございますが、何卒最後までお付き合い頂きますよう、よろしくお願い申し上げます。 さて、そんなこんなで記念すべき第1回でご紹介させて頂きたいのは、セイウチ博士によってセイウチ男にされてしまう若者の悲劇を描いた怪作『Mr.タスク』です。一般の感覚からはかけ離れた、稀代の変態であるみなさまであれば、ご存知の方も多いのではないでしょうか。 今回は、そんなマッドでサイコで愛すべき変態映画『Mr.タスク』を全力で解説してまいります。

第1回は『Mr.タスク』!セイウチ男の悲劇!

2013年6月、監督のケヴィン・スミスが「1日2時間セイウチスーツを着てセイウチの声を出せば、宿泊無料!」という世にも奇妙な広告を見つけたことが全ての始まりでした。 この面白すぎる広告に心を奪われた監督は、「この物語には結末が必要だ」と一念発起し、ついには映画化を敢行。自分が撮らなければ、という使命感の元、制作が行われました。 そんな不思議な製作経緯を経て、2014年にアメリカで封切られたのがこの『Mr.タスク』です。世にも奇妙なセイウチホラーエンターテインメントとして、公開とともに世間に大きな話題と賛否両論の嵐を巻き起こしました。

超豪華キャストが集結!

本作で主演を務めるのは、『ダイ・ハード4.0』で知られるジャスティン・ロング。「明るいクズ」の中にしっとりとした悲壮感を漂わせ、その魅力を余すことなく発揮しています。 また、マッドなセイウチ博士・ハワードには、クエンティン・タランティーノ監督作品常連のマイケル・パークスを起用。彼のキャリア史上最もサイコで狂気的な役柄を、見事に熱演しております。 また主人公・ウォレスの友人テディには、『シックス・センス』で世界中の注目を浴び天才子役としての名声を欲しいがままにしたハーレイ・ジョエル・オスメントを採用しました。 大人になった彼の瞳に残るあの頃の面影に、思わずクスリとしてしまいます。

『Mr.タスク』そのあらすじをおさらい!

ポッドキャストを運営する主人公・ウォレスが取材のため、カナダを訪れます。しかし、当初予定していた取材相手が自殺。せっかくの出張が無駄足になることを嫌がった彼は、ふと訪れたバーで「元船乗りの航海の話を聞いてほしい」という広告を見かけ、面白いネタになるかもしれないと人里離れた元船乗り・ハワードの家を訪れます。 実はそのハワードこそセイウチ博士だったのです。 興味津々で元船乗りの話を聞き入るウォレスでしたが、出された紅茶に薬を盛られ、一発KO。目が覚めた時には両足を失ってしまいました。 こうしてイカれたサイコジジイ・ハワードの長年の夢である、セイウチ男作りが始まるのでした。

伝説のセイウチファイトをあなたは見たか!

『Mr.タスク』は、確かな実力を持つ俳優陣に支えられ、実に狂気的で猟奇的で病的なホラー映画に仕上がっております。 その中でも注目して頂きたいのが、物語のラストに勃発する「セイウチファイト」です。魅力が薄れる危険性もあるので決して多くは語りませんが、その圧倒的なビジュアルに度肝を抜かれること間違いなしです。 セイウチを愛する男がセイウチ男を作り出し、最後に向かう結末とは。 恐怖に震える人、笑い転げる人、見る人によって受け取り方は様々ですが、見ると必ず深く記憶に刻まれる不思議な魅力が詰まったシーンとなっております。

しっかり怖い!巧みな恐怖演出!

ここまで「セイウチ博士」や「セイウチファイト」など愉快なワードを並べてきましたが、本当はホラー演出においても非常に巧妙に仕上がっています。 中でも冒頭から紅茶KOまでの上質なサスペンス感は秀逸で、一見関係ないように思えるハワードの語りが徐々に「セイウチ」に向かっていく様は、まさに悪魔的な魅力を放つ名シーン。 そのセリフの数々は、含蓄を感じさせるようであり、機知に富んでいるようであり、「アホかな?」と笑いそうになる要素が実にバランスの取れた構成となっていて、見応えは十分。 また土台のホラー演出におけるゴア表現(人体破壊及び流血表現)は、猟奇的かつ狂気的に作られており、油断するとあなたに"牙"を剝くことでしょう。

『Mr.タスク』荒唐無稽なだけではない巧妙な構成!

確かにセイウチ男というキャッチーすぎる題材に多くの興味が集まるのは必然的だと言えますが、その巧みな構成力も注目していきたいポイントのひとつです。 不慮の事故で自分の足を切り落としてしまう「キル・ビル少年」の取材ではるばるカナダまでやってきたウォレスが、ハワードに捕まりその両足を切断されてしまうという、非常に皮肉の効いている構成では、思わず唸らされてしまいました。 また完全なセイウチ男として完成してしまった後でかつての思い出をクロスオーバーさせることで、現在の惨状をよりわかりやすいものにしています。

あの"超"有名俳優の姿も!

実はこの映画、いわゆる超大物も出演しております。実名を伏せての出演なのですが、本編をみれば登場した瞬間に見抜けるほど雑な変装となっております。 彼の名前はギー・ラポワンテ。本名をジョニー・デップと言います。 セイウチ博士を長年追い続ける私立探偵の役を演じているのですが、これが作品にとって良いエッセンスになっています。大型映画で見かける彼とは一味違った、肩の力が抜けた伸び伸びとした演技を披露しており、彼自身とても楽しそうなのが非常に好印象です。 またコンビニ店員役で登場した実の娘であるリリー=ローズ・デップとの親子初共演も果たしており、公開当時大きな話題となりました。

実は続編も?『Mr.タスク』好きにオススメ映画2選!

コンビニ・ウォーズ〜バイトJK VS ミニナチ軍団〜

実はこれ『Mr.タスク』の続編です。ウォレスが訪れ、道を聞いたあのコンビニ店員の二人が主人公。ジョニー・デップとその娘・リリー=ローズの他に、妻であるヴァネッサ・パラディも出演しており、デップ家大集合の映画となっております。 ハーレー・ジョエル・オスメントも役柄を変えて引き続き登場するので、本作が気に入ったのであれば一見の価値のある1作です。

ムカデ人間

言わずと知れた不屈の名作『ムカデ人間』です。『Mr.タスク』から笑える要素を取り除き、本当に恐ろしくて気持ちの悪い部分だけ切り取ったような映画となっております。 本作でホラー耐性ができた、という方は一度見てみるのも良いでしょう。身の毛もよだつハワード超えのイカれジジイが、あなたを待っています。

無限に眠る名作映画!

以上、第1回名画座Ciatr・『Mr.タスク』をお送りしてまいりましたが、いかがでしたでしょうか。 間抜けなタイトルと間抜けなビジュアルで勘違いされがちですが、その間抜けさが恐怖をより増大させる巧みな脚本と演出で、1級品のホラー映画となっている本作。 2018年4月現在、Netflixにて絶賛配信中となっておりますので気になった方はお気軽に再生ボタンを押して見るのも良いでしょう。 『Mr.タスク』のようにまだまだ世間に知られていない隠れた名作は無限に存在します。この記事がそういった映画を見るきっかけとなることを、心より願っています。 それでは、また第2回で会いましょう!