2021年1月22日更新

【連載#1】今、観たい!カルトを産む映画たち『Mr.タスク』 マッドでサイコで愛すべき変態セイウチ映画【毎日20時更新】

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「今、観たい!カルトを産む映画たち」始まります!

フリー画像、壁掛けテレビ、テレビ

1月8日から緊急事態宣言が再発令され、外出自粛の流れが続く今日この頃。この機会に!と動画配信サービスなどを利用し、気になる映画をイッキ見中の人も多いでしょう。しかし、一部の人はネタ切れになりつつあるのでは? そこでciatrでは、おうち時間がたっぷりとある間に堪能したい、カルト(少数の熱烈な信奉)を産んだ映画の連載企画をスタートします! ニッチ過ぎて有名ではないけれど、なぜか引き込まれてしまう……。奥深い魅力を持つカルト映画を毎回1作品取り上げ、ライターが溢れんばかりの愛を持って紹介します。2021年1月15日(金)から、全22回の連載が毎日20時に記事が公開されるので、ぜひチェックしてください!

第1回は『Mr.タスク』!セイウチ男の悲劇!

『Mr.タスク』
©A24/Photofest/zataimage

さて、そんなこんなで記念すべき第1回でご紹介するのは、セイウチ博士によってセイウチ男にされてしまう若者の悲劇を描いた怪作『Mr.タスク』(2015年)です。一般の感覚からはかけ離れた、稀代の変態であるみなさんであれば、知っている人も多いのではないでしょうか。 連載第1回目は、マッドでサイコで愛すべき変態映画『Mr.タスク』を全力で解説していきます。

ケビン・スミス監督と奇妙な広告との運命の出会い!?

『Mr.タスク』
©A24/Photofest/zataimage

2013年6月、監督のケビン・スミスが「1日2時間セイウチスーツを着てセイウチの声を出せば、宿泊無料!」という、謎のネット広告を見つけたことが全ての始まりでした。 監督はこの面白すぎるネタに心を奪われ、「この物語には結末が必要だ」と一念発起し、ついには映画化を敢行。自分が撮らなければ、という使命感のもと、製作が行われました。 そんな不思議な製作経緯を経て、2014年にアメリカで封切られたのがこの『Mr.タスク』です。世にも奇妙なセイウチホラーエンターテインメントとして、公開とともに世間に大きな話題を与え、賛否両論の嵐を巻き起こしました。

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超豪華キャストが集結!

ハーレイ・ジョエル・オスメント
©Brian To/WENN.com/zetaimage

本作で主演を務めるのは、『ダイ・ハード4.0』(2007年)で知られるジャスティン・ロング。演じたウォレスは“明るいクズ”野郎なのですが、その中に何とも言えない悲壮感を漂わせ、魅力を余すことなく発揮しています。 マッドなセイウチ博士・ハワードを演じたのは、クエンティン・タランティーノ監督作品の常連俳優だった故マイケル・パークス。彼のキャリア史上最もサイコで狂気的な役柄を、見事な熱演で表現しました。 またウォレスの友人テディ役には、『シックス・センス』(1999年)で世界中の注目を浴び、天才子役の名を欲しがままにしたハーレイ・ジョエル・オスメント(画像)を起用! 大人になった彼の瞳に残るあの頃の面影に、思わずクスリとしてしまいます。

『Mr.タスク』のあらすじをおさらい!

『Mr.タスク』
©A24/Photofest/zataimage

ポッドキャストを運営する主人公・ウォレスは、『キル・ビル』の真似をして片足を失った少年を取材するためカナダを訪れました。 しかし、その少年が自殺。彼はせっかくの出張が無駄足になることを嫌がり、ふと訪れたバーで「元船乗りの航海の話を聞いてほしい」という広告を見かけます。面白いネタになるかもしれないと、人里離れた元船乗り・ハワードの家を訪れますが……。 実はそのハワードこそ、人間とセイウチの融合を目論む「セイウチ博士」だったのです。 興味津々で元船乗りの話に聞き入るウォレスでしたが、出された紅茶に薬を盛られ、一発KO。次に目が覚めた時には、ハワードに片足を切断されていました。 こうして、イカれたサイコジジイ・ハワードの長年の夢である、セイウチ男作りが始まるのでした。

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伝説のセイウチファイトをあなたは見たか!

セイウチ

『Mr.タスク』は、確かな実力を持つ俳優陣に支えられ、実に狂気的で猟奇的で病的なホラー映画に仕上がりました。 その中でも注目して欲しいのが、物語のラストに勃発する「セイウチファイト」。魅力が薄れる危険性もあるのでここでは多くを語りませんが、その圧倒的なビジュアルに度肝を抜かれること間違いなしです。 セイウチを愛する男がセイウチ男を作り出し、最後に迎える結末とは……。 恐怖に震える人、笑い転げる人、観る人によって受け取り方は様々でしょう。しかし、観ると必ず深く記憶に刻まれる不思議な魅力が詰まったシーンになっています。

しっかり怖い!巧みな恐怖演出!

『Mr.タスク』
©A24/Photofest/zataimage

ここまで、「セイウチ博士」や「セイウチファイト」など愉快なワードを並べてきました。実はホラー演出の面においても、本作は非常に巧妙に仕上がっています。 中でも特に、冒頭から先述の紅茶KOまでの上質なサスペンス感は秀逸!一見関係ないように思えるハワードの語りが、徐々に「セイウチ」の話題にすり替わる様は、まさに悪魔的な魅力を放つ名シーンです。 彼のセリフの数々は含蓄を感じさせ、機知に富んでいるようでもある。その一方で、「アホかな?」と笑いそうになる要素が実にバランスの取れた構成となっていて、見応えも充分です。 また土台のホラー演出におけるゴア表現(人体破壊及び流血表現)は、猟奇的かつ狂気的に作られており、油断するとあなたに“牙”を剝くでしょう。

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『Mr.タスク』荒唐無稽なだけではない巧妙な構成!

『Mr.タスク』
©A24/Photofest/zataimage

セイウチ男というキャッチーすぎる題材に、多くの興味が集まるのは必然だと言えます。しかし、その巧みな構成力も注目したいポイントのひとつです。 不慮の事故で自分の足を切り落としてしまう「キル・ビル少年」の取材で、はるばるカナダまでやってきたウォレスがハワードに捕まり、自らの足を切断されてしまう。そんな非常に皮肉が効いている構成には、筆者も思わず唸ってしまいました。 また完全なセイウチ男として完成してしまった後で、かつての思い出をクロスオーバーさせることで、現在の惨状がより強調されています。

あの“超”有名俳優の姿も!

ジョニー・デップ
FayesVision/WENN.com

実はこの映画、サプライズで“あの”超有名俳優が出演しています。クレジット表記はありませんが、本編を観れば登場した瞬間に見抜けるほど、雑すぎる変装に驚いてしまうでしょう。 その有名俳優の名はジョニー・デップ。演じた役はギー・ラポワンテと言います。 セイウチ博士を長年追い続ける私立探偵の役なのですが、ジョニー・デップの出演が作品の良いエッセンスになっていました。大作映画で見かける彼とは一味違った、肩の力が抜けた伸び伸びとした演技を披露しており、楽しそうに演じているのが好印象です。 またコンビニ店員役で出演した実の娘、リリー=ローズ・デップとの親子初共演も果たしており、公開当時大きな話題となりました。

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実は続編も?『Mr.タスク』にハマったあなたにオススメ映画2選!

『コンビニ・ウォーズ〜バイトJK VS ミニナチ軍団〜』(2017年)

『コンビニ・ウォーズ バイトJK VS ミニナチ軍団』
©Invincible/Photofest/zetaimage

実はこの映画『Mr.タスク』の続編です。ウォレスが訪れ、道を聞いたあのコンビニ店員の2人が主人公。ジョニー・デップと彼の娘リリー=ローズ、元パートナーのヴァネッサ・パラディも出演しており、デップ家大集合の映画となっています。 テディ役のハーレー・ジョエル・オスメントも、役柄を変えて引き続き出演しました。本作が気に入った人は一見の価値がある1作です。

『ムカデ人間』(2011年)

『ムカデ人間』
©︎ IFC FILMS/zetaimage

言わずと知れた不朽の名作『ムカデ人間』です。『Mr.タスク』から笑える要素を取り除き、本当に恐ろしくて気持ちの悪い部分だけ切り取ったら、こんな映画になるのかも? 本作でホラー耐性ができた、という人はぜひ1度挑戦してみてください。身の毛もよだつハワード超えのイカれジジイが、あなたとの遭遇を待っています。

B級だけど構成とキャストは一級品!異色ホラー映画『Mr.タスク』

『Mr.タスク』
©A24/Photofest/zataimage

『Mr.タスク』は設定が完全なB級ホラーギャグもので、チープなタイトルとビジュアルから勘違いされがちですが、実は一級品のホラー映画!チープさが恐怖をより増大させ、巧みな構成の脚本と演出、超豪華キャストの演技が作品の完成度を高めています。 思いのほかグロ&ホラー描写は抑えられているので、耐性がない人も挑戦しやすいでしょう。 2021年1月現在、『Mr.タスク』はU-NEXTにて絶賛配信中となっているので、気になった人はぜひ観てみてくださいね。

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無限に眠る名作映画!次回の「今、観たい!カルトを産む映画たち」は?

『ポリエステル』
©New Line Cinema/Photofest/zetaimage

記念すべき連載第1回は、セイウチへの愛に狂った老人に人体改造され、青年が「セイウチ男」になっていくホラー映画『Mr.タスク』を紹介しました。 無限に存在しながらも、大衆向け作品の陰で眠っているカルト映画の名作たち。この連載がそうした映画と出会うきっかけとなることを、心より願っています。次回は4DXの先駆け!?匂いのする「オドラマカード」が話題を呼んだ、映画『ポリエステル』(1986年)を紹介。 それでは、連載「今、観たい!カルトを産む映画たち」第2回でお会いしましょう!