2018年7月12日更新

【連載】カルト(少数の熱烈な信奉)を産む映画たち④『エスケイプ・フロム・トゥモロー』

© 2013 ©MMXIII BY MANKURT MEDIA LLC

ディズニーは好きですか?ミッキーとかディズニー・プリンセスとか、まあ可愛いですよね。しかし、そんな憧れが恐怖に変わる!ディズニー内で無許可で撮影された、奇跡のトラウマ級カルト作品『エスケイプ・フロム・トゥモロー』を紹介します。

“あの”夢の国での悪夢を描いた『エスケイプ・フロム・トゥモロー』

“ディズニー”。それは物心のつく前から、そして恐らく死ぬ間際まで生活のあちらこちらにある存在。特にテーマパークであるディズニーランドは人々に夢と希望を与え、絶大な愛と信用を寄せるファンを生み出してきました。 あなたも、そのファンの一人ですか?ミ○キーとミ○ー好きですか?ランドの年パス持ってますか?そうですかそうですか。 本日は、そんなあなたにとって「Wake up call(警鐘)」となりそうな、私の大好きなカルト作品『エスケイプ・フロム・トゥモロー』をご紹介したいと思います。 一見しょうもない中年男の奇妙なジャーニーを描いた作品にみえて、現代社会の闇(というかディズニーの闇)を描いたパンクな作品。ダークコメディではありますが、真意がわかるとある意味ホラーな映画です。

フレンチギャルの尻を追いかける変態親父の闘い

エスケープ・フロム・トゥモロー
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あらすじはこうです。 子供2人と妻の家族でディズニーランドに遊びにきた中年男が、いざ入園するって朝に突然リストラを電話で通達される。今から夢の国に行くっていうのに、なんて事してくれるんだ! 妻には口が裂けても言えない……そんな葛藤を心に抱きながら、平静を装ってランド行きのモノレールに家族と乗り込む彼。しかし、そこに2人のフランス人のピッチピチな若い女子が乗り込み、自分の息子を「超かわいい〜」なんて言いながらチラチラ見てきます。身体をくねくねさせながら、歌ったり踊ったりしている陽気な彼女たちを見て、もう彼はニヤニヤが止まりません。 早速ディズニーランドについて、暫くは家族で色々な乗り物に乗って普通に楽しんでいた。しかしですね、先ほど若い女子のフレッシュな身体を見て興奮してしまった彼はもう性欲が爆発寸前。プーさんのハニーハントに乗りながら妻とイチャイチャしようとするも、「子供の前なんだから止めて!」と拒否されてしまいます。 ここから、徐々に妻との間に亀裂が入っていきます。行き場を失った性欲をどうしてくれよう、そんな風にフラストレーションを抱えていた彼の耳に聞こえたのは、遠方ではしゃいでいるあのフレンチギャルたちの声です。 かくして、この変態親父によるフレンチギャルの尻を追いかける闘いがはじまったのです。

事件はイッツ・ア・スモールワールドで起きた

エスケープ・フロム・トゥモロー
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頭の片隅にフレンチギャルを置きながら、家族とアトラクションを楽しむ父。しかし、イッツ・ア・スモールワールドに乗ったときから彼の世界はなんだか奇妙な方向に変化していきます。愛らしい顔で歌を歌ったり、観客に笑いかける人形たちの顔が、一瞬邪悪なものに見える。 俺、疲れているのかな……なんて思いながら、その後息子がバズ・ライトイヤーに乗りたいと言い出すので、妻と娘、自分と息子と二手に分かれて園内を楽しむことにします。 その時、例のフレンチギャルを発見!近くに並べるようにと、アトラクションに走っていったり、彼女達が「超かわいい〜」と言っていた自分の息子を出汁にするんですよね、本当甲斐性のない親父です。 そんな彼に振り回された息子は、最終的に乗りたくもなかったスペースマウンテンに乗る羽目になり、刺激が強すぎてゲロまみれに。妻と合流すると、悲惨な息子の姿を哀れんで自分たちはホテルで休むと言って帰ります。 まだ遊びたいという娘を連れて、再びフレンチギャルを探しにいく父。しかし、その時奇妙な美魔女に会うんですね。この人が、なんだかまるで本当に“魔女”みたいで、自分の豊満な胸元に付けたネックレスの宝石を彼にこれ見よがしに見せます。 すると魔法にかけれられたかのように、何故か次の瞬間その女をホテルの一室でめちゃくちゃに抱いている自分がいる!これから、一見悪夢のような、悪い妄想のような「現実」がこの男に容赦なく襲いかかってくるのです。

ディズニー・ランド内を無許可での撮影!奇跡の問題作である訳

エスケープ・フロム・トゥモロー
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本作はまさに奇跡のような映画。何故なら、終始ディズニーランドを映しているにも関わらず、撮影自体は無許可で行われていたからです。その前知識をもってして見ると、よりこの映画のカメラワーク、絵作りの凄さがわかります。B級作品なので、合成しているなとわかりやすいシーンも多々見受けられますが、それはそれで映画に対する愛が伝わる演出になっている。 なにより、自分が行って楽しんでいたあのディズニーランドと何ら変わりのないはずなのに、モノクロで映し出されているだけで、相当不気味で怖いという点も、本作の見所ですね。

「それ、七面鳥じゃないわよ」ディズニーの“徹底的な清潔感”への恐怖

エスケープ・フロム・トゥモロー
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終始不思議で、幻想的な世界観をもつ本作ですが、その中にはかなりダークで思わず背筋の凍るようなメッセージが込められています。 ディズニーランドには、ポップコーンや七面鳥などが売っている屋台がありますよね?主人公も、この七面鳥を皆と同じように買ってベンチで食べていると、隣に座っていた謎の美魔女が突然「それ、七面鳥じゃないわよ」なんて言ってくるのです。 「それは本当はエミューなの。そう知っていたら、買っていた?」と問う彼女に、「うーん、買わないね」と答える主人公。この会話劇が本作の全てを物語っていると言っても過言ではありません。一見美味しそうに見えたり、美しそうにみえたり、綺麗に見えるものもその実体を実はわかっていない。

エスケープ・フロム・トゥモロー
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人々が守られていると信じてやってくる夢の国、しかし彼らは“夢を見させられている”としても、降り掛かってくる災いがある事には変わりないのです。 ネックレスの宝石で主人公に魔法をかけて誘惑し、彼の身体に股がって「私の隠れミッキーを突いて!」なんて映画史に残るような迷台詞を吐いたあの美魔女が、映画後半で自分の正体を明かすシークエンス。 彼女はもともと、ディズニープリンセスとして子供とハグをしていたのですが、裏では可愛い子供を誘拐していたのです。プリンセスから魔女に転落した彼女の、「ランド内で死亡事故は全然起きている。この前はビッグサンダーマウンテンで首切りがあった」という、何とも物騒な台詞にも注目です。 つまり、ランドの中では例え誰かが攫われようと死のうと、それはまるで“なかったこと”にされる。よく、園内にカラスや虫が出ない、ゴミも落ちていないという、ディズニーランドの“徹底的な清潔感”が話題になっていますねよね。本作のラスト5分間の映像は、そんなメッセージを我々に突きつけた、まさに狂気の沙汰としか思えない圧巻のものです。

全ては現実からの逃避行、しかし悪い事は起こる……たとえ夢の国でも

エスケープ・フロム・トゥモロー
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映画の内容は、冒頭から最後までこの一人の男による現実からの逃避行を描いたものです。 リストラからの逃避、妻との結婚生活や父親という役目からの逃避。それに比例するかのように、非日常的なディズニーランドという場所、非日常なフレンチギャルや自分を性的に誘う美魔女というキャラクターが登場します。 一方で妻は夫と違って、非日常的な空間においても子供の面倒を見るという、母としての役割を全うするので、彼らはどんどん精神的に乖離していくのです。 幻想や妄想、悪夢と現実の入り交じったディズニーランドの中で逃避し続けた男の末路。それは恐らく揶揄的に描かれていて、実際は多分そういう事なんじゃ……さてはて、一体どうなってしまうのでしょうね。 あなたももし、逃避したくて夢の国に行きたくなったら、是非この作品を手に取ってご覧あれ。