2018年9月29日更新

無音の牢獄『クワイエット・プレイス』衝撃ネタバレ!息もできない1時間33分のすべて

(C)2018 Paramount Pictures. All rights reserved.

劇場での予告映像から漂う緊迫感に実はすでに腰が引けぎみ。ホラー『クワイエット・プレイス』を、なぜか公開前に初鑑賞。音を封印された世界で生きる家族の物語に恐怖しつつ、涙もありの見どころをご紹介したいと思います。

強いられた静寂。「無音の牢獄」で生きのびる家族の運命

エンドロールに流れるキャストは、たったの6人。舞台はほとんどアメリカの片田舎にある農場の周辺のみ。CGが使われているのはごくごく一部で、ほぼ全編が役者の演技。しかもセリフは、「パパー!」まで合わせてほぼ15個。 『クワイエット・プレイス』はこのように、はっきりと低予算感が漂う作品です。なのに、気がつけば息を潜めて観入っている始末。その理由はまさしく「音をたてたら即死」しそうだったから、でしょう。 ささいな音を感知して襲いかかり、有無を言わせず切り刻んで殺す「何か」。生きるために強いられる静寂の世界は、さまざまな自由を奪われた「無音の牢獄」。観客までそこに幽閉されてしまったような錯覚すら覚えるほど、臨場感溢れる物語が展開されます。 ポップコーンを食べるのもはばかられる緊迫の1時間33分。その恐怖の源がどのあたりにあるのか、一部ネタバレあり、でご紹介しましょう。

家族がいるから、怖くなる【物語のはじまり】

クワイエット・プレイス
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『クワイエット・プレイス』の恐怖の源のひとつが、家族。冒頭、夫と妻、長女と長男、そしてまだ幼い次男の5人が、荒れ果てたスーパーマーケットを訪れるシーンから、物語は始まります。 家族とのお買い物は本来、幸せに満ちたものであるハズ。ですが、両親の表情から緊張感が消えることはありません。時に浮かべる笑顔も、どこか強張ったもの。極端に物音に怯えながら、周囲を警戒している様子が伺えます。 観客に伝わってくる事実は、ごくごく限られています。世界で何かが起きている、ということ。家族が手話で語り合っていること。そして末っ子が手にしたスペースシャトルのオモチャが「ヤバそう」なこと。 やがて嫌な予感は的中。長女のささかな思いやりが悲劇的な事件につながり、家族とともにいる幸せが、家族がいることの恐怖へと変わってしまいます。物語は早くも、逃れようがない緊迫感で観客を静寂の世界へと取り込んでいきます。

家族しかいない、から怖くなる【悪夢のような世界の謎】

クワイエット・プレイス
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ここから始まるのは、「4人家族」の物語。父親のリー・アボット(ジョン・クラシンスキー)、妻エヴリン(エミリー・ブラント)と長女のリーガン(ミリセント・シモンズ)、長男マーカス(ノア・ジュプ)が、文字どおりひっそりと息をひそめながら、肩を寄せあうように生きる日々が描かれていきます。 リーガンは聴覚障害を持っています。補聴器をつけ、言葉を発することがまったくできません。そして自分の行いが招いた悲劇に、心を痛め続けています。マーカスも、呼吸器系でしょうか、なんらかの慢性疾患を抱えているようです。けれど家族にとって最大の問題はおそらく、少なくとも生活圏内では彼らだけが生き残っている、という極限的事実ではないでしょうか。 新聞の見出しで、世界各地で「何か」が人を襲い始め、ほどなく人類の文明が崩壊してしまった……らしい、ことなどが観客に伝わってきます。リーはモールス信号でSOSを呼びかけていますが、反応はありません。それでも父と母は、子供たちの未来を守るために、生き延びる道を模索し続けます。 誰も助けてくれない「クワイエット・プレイス」で、たった4人だけで生きる先が見えない日々。そこには果たして「希望」が生まれる余地があるのでしょうか。

家族が増えるから、さらに怖くなる【静かに追い詰められていく日々】

クワイエット・プレイス
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普通だったら何よりも素晴らしいことが、『クワイエット・プレイス』の場合は潜在的な恐怖へと変わってしまいます。それは、エブリンの妊娠。427日目を過ぎ、すでに臨月を迎えています。 新しい生命は、紛れもなく幸せと未来の象徴であるべき。けれど音をたててはいけない世界で新生児が生き延びることなどできるハズもありません。なにしろ赤ちゃんは、大きな声で泣くのが「お仕事」なんですから。 産声を挙げた瞬間、待っているのは即、死。エヴリンの膨らんだお腹は、それ自体が悲劇へとつながる爆弾なのです。絶望へのカウントダウンは、物語序盤からすでに始まっています。 リーが、お腹が膨らんだエヴリンを愛おしげに抱きしめながら、嬉しいのに悲しいような「ギリギリ」の表情を浮かべるシーンがあります。父親としての複雑な心境を見事に表現した、素晴らしい演技でした。

家族の無事を祈りたい、から怖くなる【観客もともに無音の牢獄へ】

クワイエット・プレイス
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追い詰められていくアボット家の人々。リーガンの葛藤が深まるにつれて、家族の絆に少しずつほころびが入り始めます。いつも一緒にいたハズなのに、気がつけばエヴリンだけが家に残されてしまうことに。危機は、そんな時にこそ訪れるものです。 実際に夫婦であるジョン・クラシンスキーとエミリー・ブラントはもちろんですが、日本ではほぼ無名に近いミリセント・シモンズとノア・ジュブも含めて「家族」の演技がとても自然でリアル。それは愛し合っているシーンよりも、思いの丈をぶつけ合う時にこそ、強く感じられるかもしれません。 だからこそ、物語が進むに連れて、彼らの無事を祈りたくなるのです。やがて、彼らにこれ以上はないと思える過酷な運命が訪れることが、わかっていても。

検証:「奴ら」はいったい何者なのか【殺戮者か、捕食者か】

クワイエット・プレイス
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「何か」ははじめ、つむじ風のように草むらを駆け抜ける影しか見ることができません。それほど素早い動きで音源=生物を襲います。どこから現れたのか、どういう生物なのかは、劇中でも不明瞭。襲った人間に対する食害についても触れているシーンはなく、なぜ生き物を襲うのかも不明でした。 始めは「影」だった姿がはっきりと認識できるようになるのは、皮肉にも、エブリンがひとり家に取り残され、突然産気づいてしまう時です。鋭利な鉤爪を持つ長大な腕と硬そうな皮膚で覆われた身体を持った姿形は、まるで羽のないコウモリのようです。 なによりも不気味なのは、顔。ビッシリと細長いキバが生えた口元から上は目も鼻もありません。表面は数カ所がパックリと開く構造で、内側に露出した鼓膜のような器官が隠されています。ビラビラが開いてブルブルと震えるシーンは、そうとう不気味です。ちょっと「寄生獣」入ってます。 無慈悲に、そして無差別に有無を言わさず、音を出す生物を襲うさまを見ていると、どちらかといえば生物兵器的な存在に思えます。奇怪なこの存在は、アボット家の周辺に3体いることが確認されています。

家族を守るために、反撃が始まる【続編確定!のラストシーン】

クワイエット・プレイス
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エヴリンの出産がいよいよピークに。よりによってその時、クリーチャーたちが傍若無人にも土足(?)でアボット家に侵入してきます。揃って粘着気質でちょっとやそっとでは探索をあきらめません。パキパキと細い木の枝を折っているようなノイズを発しながら、獲物の姿を探し続けます。 家族の運命ももはや風前の灯か、と思われたその時、救ったのはリーガンでした。ヒントは、彼女の補聴器。人類は初めて、クリーチャーを撃退する方法を手に入れたのです。 ラストシーン、エヴリンは見事なポンプアクションを見せてくれます。あれほど音には神経質だったハズなのに、強い決意を秘めた眼差しで、思っ切りハンドグリップをスライドさせるのです。 その乾いた音はまるで、エヴリンからクリーチャーたちに向けられた宣戦布告。あるいは反撃開始の狼煙、とったところ。続編決定!を強く印象付けていた瞬間です。

「音を立てたら、即死。」の『クワイエット・プレイス』は9月28日から

クワイエット・プレイス
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細かいところを見れば、実はツッコミどころ満載。低予算感も明らか。それでも米国公開での累計興行収入は日本円にして約200億円を記録するなど、想定を超えて大ヒットを飛ばしています。 背景には、優れたホラーとしてのピュアな醍醐味が、まずはあるでしょう。同時に『クワイエット・プレイス』には、極限状態に追い詰められているからこそ硬く結ばれていく家族の絆の大切さが、生き生きと描かれているように思えます。 最後にひとつ。日本でもヒットするだろうな……と確信させてくれたのが、「音を立てたら、即死。」というキャッチコピー。「IF THEY HEAR YOU THEY HUNT YOU」と、かなり直球ど真ん中な本国のキャッチコピーに比べ、すっきり一言ですべての世界観を伝えつつ、しっかり恐怖感と興味を煽ってくれる名コピー、と言えるのではないでしょうか。