2018年9月17日更新

【独占回答】『リグレッション』アレハンドロ・アメナーバル監督インタビュー「初期への回帰」

© 2015 Mod Entertainment Mod Producciones Himenoptero Regresion Canada Inc Telefonia Studios Regression A.I.E

『アザーズ』のアレハンドロ・アメナーバル監督の8年ぶりとなる長編映画、『リグレッション』が9月15日(土)より新宿武蔵野館ほか全国順次公開中!イーサン・ホークとエマ・ワトソンが実話に基づくサスペンスに挑んだ本作について、アレハンドロ・アメナーバル監督に伺いました。

『リグレッション』アレハンドロ・アメナーバル監督インタビュー【ciatr独占回答有り】

1990年のアメリカ・ミネソタを舞台に、刑事であるブルース・ケナーが父親の虐待を告発した少女アンジェラ(エマ・ワトソン)の事件を取り調べるうちに、町全体に秘められた巨大な闇に迫ることとなる本作『リグレッション』。 『アザーズ』などで知られるスペインの鬼才アレハンドロ・アメナーバル監督と、実力派俳優がタッグを組む“実話に基づく”衝撃のサスペンスとなっていますが、どういった経緯で本作を撮ろうと思ったのか、スタッフについてなどciatr独占の質疑応答を含めたインタビューをお送りします。

『アレクサンドリア』を撮る前から、サスペンス映画に挑戦したいと思っていた

「前作『アレクサンドリア』を撮る前から、サスペンス映画に挑戦したいと思っていて、可能性のある題材について考えていました。サスペンスやホラーの場合、私は以前からサイコキラーやお化け、悪魔に興味があったのです。それで、悪霊崇拝に関して調べていた時に、アメリカでの悪魔の儀礼虐待の話を読んだのです。 さらに私は、抑制された記憶についてだとか、多重人格障害に関してのドキュメンタリーをいくつか見て、いろいろと調べるにつれて、その2つを合わせることが出来ると考えました。私がそもそも作りたかった悪霊崇拝についての物語で、同時にサイコスリラーでもある作品を。私にとってとても新鮮なアプローチでした。」

アレハンドロ・アメナーバル監督
© 2015 Mod Entertainment Mod Producciones Himenoptero Regresion Canada Inc Telefonia Studios Regression A.I.E

「僕にとってこのプロジェクトはサスペンス、ミステリーへの再訪、僕がキャリア初期に貫いていたジャンルへの回帰という意味も含んでいます。 デビュー作『テシス 次に私が殺される』では、時にホラーは我々に対して催眠術的とも言える影響を及ぼすことを打ち出し、続く『オープン・ユア・アイズ』では夢と現実は共存するという信じがたい可能性を熱く示唆し、『アザーズ』では古典サスペンスの風情を取り戻すという挑戦をしました。 僕はいつも「自分を駆り立てるもの」「自分を突き動かすもの」、そして「全く別の方向性」を探求しながら、さまざまなジャンルに挑戦しているんです。

本作の撮影はアナログ的なやり方を追求した?【独占】

撮影について教えてください。

アレハンドロ・アメナーバル
© 2015 Mod Entertainment Mod Producciones Himenoptero Regresion Canada Inc Telefonia Studios Regression A.I.E

「嵐、雨、そして暗闇をどう描くかが肝でした。私はトロントがとてもよく晴れて非常に寒い場所だという事を知らなかったので、太陽と闘うような毎日でした。シーン全体をリハーサルしてから、最後の最後で撮影をした日もありました。 撮影監督のダニエル・アラーニョは警察署という世界で起きる“退行”シーン全ての雰囲気を、非常にうまく創り出しました。彼は、サスペンスを生み出すのに適した光の量を見つけるのが、とても上手です。私は、カラーコレクション(色補正)や映画の撮影技術に関してはあまり詳しくありませんが、うまくいくか、いかないかだけは分かります。 私はこれまでに、一緒に仕事をした撮影監督の方々から素晴らしい審美眼を教わりました。この映画では、ダニエルが何枚かの写真や絵画を私に見せてくれてイメージが共有できていたので、任せていたんです。我々が確実に意識していた事は、(映像の)デジタル処理に飛びつきたくないという点でした。 今の時代は非常に簡単に出来ますし、すぐに何かを試し、あとはデジタル修正という方法もあります。でも『リグレッション』の世界ではアナログ的なやり方を追求したいと思いました。つまり、実際にアウト・オブ・フォーカスを試し、さらに古い映画と同様に映写したり……殆どの撮影で別のやり方を試したわけです。 人物の内面世界を描くシーンでは、ありがちな夢の世界を作ったり、特殊効果を使わないようにしました。話し合いには時間をかけたけど、結局最もシンプルな方法を選びました。フォーカスやレンズをいじって、可能な限り焦点を歪まるなど、手を加えましたが、どれも撮影時の調整で、デジタル処理はせず、伝統的な手法を使いました。なので、優雅なシーンになっていると思います。」

プロダクションデザインを担当したのは、あの監督の作品を手がけた天才【独占】

プロダクションデザインについて教えてください

リグレッション
©︎MOD PRODUCCIONES

「プロダクションデザインは、キャロル・スピアにお願いしました。彼女は、デビッド・クローネンバーグ監督作品の殆どを手掛ける、天才的な方です。彼女と一緒に仕事を出来て、光栄でした。 一緒に仕事を始めて、自分達の目指す方向がすぐに分かったのです。それは、何もかもがきちんとして清潔で明るい現代の典型的なミネソタの町ではなく、もっと暗くて衰退し古臭い農業の世界、だということ。警察署についても、「この建物は警察署と他の組織が共有していたのではないか」というアイディアを、彼女は出しました。そうするとスリラーのようなジャンルが、より有機的に見えてきます。」

エマ・ワトソンらの衣装を担当したのは?【独占】

エマ・ワトソン
Dennis Van Tine/Future Image/WENN.com

「本作ではソニア・グランデとガブリエラ・ペスクッチという、世界で最も輝かしい衣装デザイナー達と一緒に仕事をするという素晴らしい機会を得ることができました。ソニアがトロントにやってきた時、彼女は直ちにキャラクター達に何が必要かを理解してくれたのです。 アンジェラの衣装を探すのは大変でした。エマ・ワトソンのように定着したイメージのある女優の衣装合わせをすると、何でも着せればいいわけじゃないと気づいてしまう。エマは花とシルクをまとった純潔な少女というイメージが強かったですし、ファッションアイコンとしても注目されていますから。 ソニアはいきなり彼女にスモックを渡したんですけど、エマはとても気に入っていました。私も素晴らしいアイデアだったと思います。このように、素晴らしいアイデアが一つあると役者がキャラクターを開発する上でどれだけ役立つかは、お分かりいただけますよね。 ちなみに、ソニアはブルースに優雅で魅力的に見える服を着させたかったんですけど、イーサンは自分の役をかっこ良くみせたがらなかったんですよ。」

恐怖が謎を深くするサスペンス『リグレッション』は現在公開中!

リグレッション
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“REGRESSION(リグレッション)”という言葉は、退行を意味しています。 監督は「60年代、70年代のスリラー映画、ホラー映画といった私が視聴者として楽しんでいた映画に戻る事。それと同時に、私が監督を始めた大学時代に制作していたような映画に戻ることを意味しています」と語っています。 また心理学を用いて抑制された人の記憶を取り戻す一連の行為(「退行理論」)という意味も持ちます。これが、本作にとってのキーポイントとなることでしょう。 イーサン・ホーク、エマ・ワトソンの共演する、アレハンドロ・アメナーバル監督作『リグレッション』は2018年9月15日より新宿武蔵野館ほか全国順次公開中です。