楳図かずおの映像化代表作を徹底解説!【『おろち』『猫目小僧』ほか】

2018年10月4日更新

ホラー漫画の巨匠、楳図かずおの作品は、代表作・人気作のどれもが素晴らしい映像作品として再び注目を集めています。今だからこそ観ておきたい、絶対押さえておくべき楳図かずおの映像化作品についてまとめました。

ホラー漫画のレジェンド!楳図かずお

赤と白のボーダーシャツがトレードマークの楳図かずおは、今でいうところのホラー漫画の第一人者として広く知られています。手掛けた作品の多くは、奇想天外な設定と一度目にしたら忘れられないくらいの衝撃的な描写で埋め尽くされています。 そんな楳図かずおが手掛けた作品は、これまでその多くが映像化されてきました。彼の代表作の中からぜひ見ておきたい印象的な映像化作品をご紹介します。

楳図かずおのプロフィール

楳図かずおがその漫画家としてのキャリアをスタートさせたのは1955年のことで、当時は貸本漫画を手掛け、「楳図かずお」意外にもいくつかのペンネームを持っていました。 和歌山県に生まれ、幼少期から27才までを奈良県で過ごした楳図かずお。小学生のころ手塚治虫作品に触れ、自身も漫画家になりたいと強いあこがれを持ちます。 同じように手塚にあこがれた若い才能が巣立っていった雑誌『漫画少年』に何度となく投稿していましたが、なかなか採用されませんでした。 その後、高校卒業と同時に貸本漫画家としてデビューした楳図かずおは一躍人気漫画家となり、恐怖漫画というジャンルの先駆けとなります。1963年ごろに上京し、連載作品、人気作品が増え続けます。 全国的な知名度も上がり、楳図かずおは、ホラー漫画、恐怖漫画の第一人者として広く知られるようになるのでした。

こんな幼稚園児見たことない!強烈ギャグ漫画『まことちゃん』

幼稚園に通う少年を主人公にしたギャグ作品『まことちゃん』

ホラー漫画としての印象が強い楳図かずおですが、お下劣ギャグが満載の『まことちゃん』の作者でもあります。 漫画『まことちゃん』は、幼稚園児・沢田まことを主人公とする痛快ギャグ漫画。連載当時一世を風靡した造語・流行語を多数生み出し、作中には作者の楳図を始め、多数の有名人、人気芸能人が登場しました。

「まことちゃん」が劇場進出!アニメ映画『まことちゃん』【2007年】

エキセントリックな幼稚園児・まことちゃんが劇場で大暴れ!映画『まことちゃん』は、楳図かずお作品初の劇場アニメです原作以上にぶっ飛んだストーリーと炸裂するギャグ、そして漫才コンビのツービートが特別出演していることにも注目。 それ以上に作者の楳図かずおが自ら歌唱し、主題歌を担当していることに驚きです。楳図かずおファンなら絶対見逃せない今作は、2007年にDVD化されています。

不老不死の美少女が見た人間の世界とは?『おろち』

死ぬことも老いることもない少女は……漫画『おろち』

不老不死で特殊な能力を持つ少女・おろちがかいま見た人々の壮絶な人生を描く『おろち』。彼女は永遠に衰えることのない肉体を持っており、100年に一度の眠りにつきながら、関わりのあった人間たちの人生を独特の視点で静かに捉えていました。 原作『おろち』では人の心が抱える闇や、家族や恋人関係の間に渦巻く愛憎を美しくも恐ろしく描いています。

女優の家族の愛憎劇が描かれる!映画『おろち』【2008年】

楳図かずおの名作長編『おろち』が実写化作品として2008年に蘇りました。不老不死の謎の少女おろちを谷村美月、娘に自分の理想を押し付ける気難しい母親・葵とその娘・一草を木村佳乃が一人二役で演じています。 今を時めく人気女優の門前葵には2人の娘がいました。葵は自分と同じように娘・一草と理沙に芸能の世界で成功してほしいと願い、毎日厳しいレッスンを強いています。母の期待に応えようと必死になる2人でしたが、姉の一草はあまり上達せず、毎日叱り飛ばされていました。 娘二人に早く自分の後を継がせたいと焦る葵でしたが、それには門前家の女たちに伝わる恐ろしい秘密があったのです。門前家の女は29才になると体中に醜いできものができるという奇病を持っていたのです……。 成長した一草は、母に瓜二つの容姿となり母の願い通り人気女優となりました。門前家には昔のように女中などもいなくなり、今は一人理沙(中越典子)が家と一草を支えています。長年の眠りから覚めたおろちは佳子という娘になっており、門前家に女中として雇われました。 29才が近づいていることを嘆く理沙と一草でしたが、理沙が養子であることがわかり、その日から一草は狂気に蝕まれていきます。妹の理沙だけが美しいままでいるのが許せないとばかりに、連日激しい虐待を繰り返し……。 母と娘、姉妹同士の愛憎劇と女性の美への狂気的なまでの執着を描いた今作。女優たちの怪演にも注目です。

SF色が光る名作!『漂流教室』

教室ごとクラス全員異空間へ!漫画『漂流教室』

楳図かずおのSFサバイバル作品がこちら、ある学校の1クラスが教室ごと近未来に転送されてしまい、そこでの生活を余儀なくされた様を描く異色の作品です。 主人公がタイムスリップしたり、異空間に転送される作品はこの作品の登場までにも多数あったかとは思いますが、教室ごとクラス全員移動してしまったのは前代未聞です。 主人公・翔の小学校では、ある日爆発が起き、翔たちクラスは教室ごと荒廃した未来世界へと飛ばされてしまいました。教室の外は砂漠のような荒れた景色が広がっており、水や食べ物などは見当たりません。 教師たちはパニックに陥り、生徒の中にも暴走しだす者が現れ始め、教室の中には絶望的な空気が漂い始めます。 しかし、翔たちは過去の世界の母親と交信することに成功し、力を合わせて荒廃した未来で生き延びていくのでした。

『漂流教室』の映像化作品

『漂流教室』を原作とする映像作品はいくつか存在します。 まず、1987年に大林宣彦監督作品として映画化され、後に日米合作のOV作品として『漂流教室 (DRIFTING SCHOOL)』がリリース、そして2002年にドラマ『ロング・ラブレター〜漂流教室〜』が放送されました。 実写化作品の中でも特に注目しておきたいのが、連続テレビドラマとして放送された『ロング・ラブレター〜漂流教室〜』。この作品は、常盤貴子と窪塚洋介のW主演で放送当時話題を集め、原作とは大きく異なる設定のストーリー展開も見どころです。 主人公が小学生である原作から、教師を主人公にし高校のクラスを舞台にしたスケール間の大きな切ないSFヒューマンドラマとなり、今作ならではの魅力が味わえます。

入門編としてぴったり?『楳図かずお恐怖劇場』【2005年】

楳図かずおの長年のファンはもちろん、若い世代のファンにもおすすめな最良の映像作品が誕生しました。2005年に公開された映画『楳図かずお恐怖劇場』です。 『蟲たちの家』、『まだらの少女』など楳図かずおの傑作短編を集めたオムニバス映画『楳図かずお恐怖劇場』。 こちらの映画に収められているのは、上記の作品に加え、『絶食』、『ねがい』、『プレゼント』、『DEATH MAKE』で、これらはどれも楳図かずお作品の中で非常に人気の高いものばかりです。

実写映画『楳図かずお恐怖劇場』から『蟲たちの家』のあらすじ

美しく聡明な妻がいながら若い女性と不倫の恋に興じている蓮司(西島秀俊)。しかし彼の妻・留以子(緒川たまき)は、彼の浮気に気づいているのか少し前から自宅に閉じこもったままです。以前は快活で社交的な性格であったはずの妻。 毎朝蓮司は、留以子のためにカット野菜を用意して彼女が閉じこもっている部屋に運んでいるのですが、一体彼女の真意は……。

予知夢を見る能力を持つ少年が遭遇する恐怖『神の左手 悪魔の右手』

衝撃のスプラッター作品!漫画『神の左手 悪魔の右手』

予知夢を見る能力を持っている少年が主人公の『神の左手 悪魔の右手』は、楳図かずお作品屈指のスプラッター作品。口から大蛇などのおぞましいものが飛び出したり目からハサミが飛び出したりします。 今作の主人公の想(そう)は、人の怨念やどす黒い感情を察知するとそれを予知夢として見るという特殊能力を持っていました。そんな彼が見る夢は、友人や姉が悲惨な目に合い悶え苦しむおぞましいものばかり。一体その恐ろしい夢にはどんな秘密が隠されているのでしょうか。

原作の世界観を名作B級ホラーとして再現!映画『神の左手 悪魔の右手』【2006年】

楳図かずお作品の中でも特別グロテスクでスプラッター描写も満載な『神の左手 悪魔の右手』も実写映画化されています。なんと作者本人もワンシーン出演しているところにも注目。今作は、原作の中の『黒い絵本』というエピソードを元に作られたものです。 ソウ(小林翼)は人の悪意を察知すると予知夢を見るという不思議な能力を持った少年です。ある日、ケガを負ったわけでもないのに彼の首から血が噴き出すという奇妙な事件が起きました。事件の前にソウは、恐ろしい夢を見ていたのです。 それは、見知らぬ男が少女たちが次々に殺されていく様子を描いた絵本を娘に読み聞かせているという夢でした。姉のイズミ(渋谷飛鳥)は、ソウの身に危険を感じ、夢に現れた男の行方を突き止めることにします。 男は少女ばかりを狙う連続殺人鬼で、実際に殺した少女たちの様子を絵本に描いていたのです!男の娘は足が不自由で寝たきりのような生活でしたが、ある日自宅の冷蔵庫に恐ろしいものを発見してしまい……! 狂気の殺人鬼にして足の不自由な少女の父親である男役を務めた田口トモロヲの鬼気迫る演技が圧巻の作品です。映画『神の左手 悪魔の右手』は、原作漫画の恐怖やグロテスクさはそのままに現代的なB級スプラッター・ホラーとして見事に生まれ変わっています。

少女、母、赤んぼ……女性の怖さがここに!『赤んぼ少女』

肉親の愛憎劇がいちばん怖い!漫画『赤んぼ少女』

幼い頃にじつの両親んと生き別れてしまった不幸な境遇の少女・葉子。彼女はやがて両親と再会を果たし、裕福な家庭での幸せな毎日を手に入れたかに見えました。しかし、彼女の両親には恐ろしい秘密があり……。 これまで少女や女性の抱える闇を独特のタッチで描いてきた楳図かずおでしたが、今作でもその表現は新たな世界に到達しています。かつて失った家族を再び取り戻した少女に襲いかかる悲劇と恐怖とは。ぜひ作品で確かめて見てください。

役者の名演技が更なる恐怖を呼ぶ、映画『赤んぼ少女』【2008年】

楳図かずおの『赤んぼ少女』2008年に実写化、豪華なキャスト陣が見事に楳図ワールドを再現しています。 15年前に家族と生き別れになってしまった少女・葉子(水沢奈子)は念願叶って両親と再会することができました。葉子の両親は南条夫妻で、2人とも葉子との再会を喜び、早速家に招き入れてくれました。 南条夫妻と共に暮らすことになった葉子でしたが、それから南条家の周りで奇妙なことが起こり始めます。 実は、南条家には葉子の他にタマミという娘がいたのですが、彼女は家族が生き別れた15年前からずっと赤ん坊の姿のままでした。母・夕子(浅野温子)はタマミの面倒をかいがいしく見ていましたが、姉・葉子が現れたことにより父・敬三(野口五郎)の態度は豹変しました。 葉子に嫉妬を覚えたタマミは、徐々に凶暴化していき、南条家では次々に恐ろしい事件が起こっていくのです。

異形の少年の奮闘劇!『猫目小僧』

猫の妖怪と人間の間に生まれた少年!『猫目小僧』

猫又でありながら人間のような見た目をしている猫目小僧は、妖怪の世界を追われ人間界をさまよいながら一人生きていかなけらばならない身の上となりました。楳図かずおの『猫目小僧』は、妖怪にも人間にもなれない異形の少年の奮闘と人間たちとのおかしな交流を描く作品です。 漫画『猫目小僧』は1967年に連載が開始され、1976年には『妖怪伝 猫目小僧』としてテレビアニメ化されています。

良質のB級ホラー作品として『猫目小僧』は蘇る!【2006年】

アニメ化もされていた楳図かずおの人気作『猫目小僧』が、映画作品として2006年に蘇りました。 田舎の村に引っ越してきたまゆか(石田未来)達一家でしたが、早々に関根という男から、村に伝わる妖怪・ギョロリ(竹中直人)の話を聞かされてしまい、不安に感じます。 その後、弟の浩は猫のような目をした不思議な少年に出会いました。その少年は妖怪・猫目小僧でその唾液には不思議な力があります。 猫目小僧の唾液に触れると、浩のひどい喘息もまゆかの顔のあざもすっかり治ってしまいました。一方、村に伝わる妖怪・ギョロリは封印を解かれ、村の人を次々に殺していきます。ギョロリの姿を誰も知らないためか、村の人たちは異形の猫目小僧のことを疑い始め……。

初監督作品!『マザー』【2014年】

楳図かずおが77歳にして初めての長編映画の監督を務めた作品がこちら。映画『マザー』は漫画家「楳図かずお」の自伝的作品ともなっているホラー映画です。 新人編集者の若草さくら(舞羽美海)は、かねてから大ファンだった漫画家・楳図かずお(片岡愛之助)の手がける最新作であり自伝の担当編集者に抜擢されます。張り切るさくらでしたが、楳図へ取材を行ううちに、彼の母の存在が気になり始めます。 思い返してみると楳図の作品はどれも母との関係が影響されていると思われるものばかり……。気になったさくらは、思い切って楳図の故郷を訪れてみることにしました。一方、楳図は亡き母の面影に悩まされており……。 女性の愛憎の恐ろしさや、美しさへの執着や強迫観念といったものをこれまで漫画作品の中で繰り返し描いてきた楳図かずお。この映画作品には彼の作品世界の原点となるものが描かれています。

これからも実写化に期待!楳図かずお作品

これまでもその作品が数多く映像化されてきた楳図かずお。2000年に入ると彼の名作がこぞって実写映画化されました。役者陣が名演技で再現する楳図ワールドは、原作とはまたひと味違った輝きを放っています。2018年現在以降も、楳図作品はきっとどんどん実写化されていくことでしょう。