©2017 Twentieth Century Fox Film Corporation

『シェイプ・オブ・ウォーター』が生まれた背景とは?デル・トロが伝えたかったメッセージをネタバレ考察

2018年10月29日更新

半魚人と人間の恋愛を描いた映画『シェイプ・オブ・ウォーター』は、2017年度のアカデミー賞において作品賞ほか4部門で受賞。デル・トロ監督が異色なラブストーリーに託した思いとは!?

異種間の良質ラブストーリー『シェイプ・オブ・ウォーター』【超高評価の理由とは?】

『シェイプ・オブ・ウォーター』は、第74回ヴェネツィア国際映画祭のコンペティション部門で金獅子賞を受賞。第42回トロント国際映画祭でも上映され、第90回アカデミー賞において同年最多の13部門にノミネート、作品賞ほか最多4部門で受賞と、超高評価で話題となった映画でした。 半魚人と人間とのファンタジーロマンスという独特な設定だけでなく、特殊メイクから映画界に名乗りを上げたデル・トロ監督らしい、映画のタイトルからエンディングの細部まで施されたこだわりの数々と謎の多くは観客の心を鷲掴みにしました。 なぜここまで評価をされたのか?ラストはハッピーエンド!?それともバッドエンド!?鑑賞後の疑問点をすっきり解決していきます!

『シェイプ・オブ・ウォーター』のあらすじ

シェイプ・オブ・ウォーター
©2017 Twentieth Century Fox Film Corporation

考察していくうえで、まずは内容をおさらいしていきましょう! 舞台は1962年、冷戦中のアメリカ。政府の極秘研究所に、アマゾンで神として崇められていた不思議な生き物(半魚人)(ダグ・ジョーンズ)が密かに運び込まれます。清掃員として働く女性イライザ(サリー・ホーキンス)は、その様子を目撃。生き物の神秘的な魅力に魅かれ、同じ清掃員として働く友人のゼルダ(オクタビア・スペンサー)にも内緒でこっそり会いに行くように......。 幼い頃のトラウマによって声が出せないイライザと半魚人である「彼」は、言葉は使わずともお互いの心を通わせていきます。 ある日研究所内の実験で彼が犠牲になることを知ったイライザは、隣人の画家ジャイルズ(リチャード・ジェンキンス)とゼルダに「彼」の脱走計画への協力を求めます。しかし、そんな彼らを施設で働く軍人のストリックランド(マイケル・シャノン)が追い詰めていきます。 『シェイプ・オブ・ウォーター』は、奇妙な世界観の中で美しく崇高に描かれるファンタジーロマンス作品です。 詳しいキャストやスタッフ、口コミ等が気になった方は以下の作品情報からチェックしてみてください!

独創的な設定"人間と半魚人の愛"が生まれた背景

ルーツはSFホラー映画にあり!

独創的で、今まで見たことのない世界観を楽しむことができる『シェイプ・オブ・ウォーター』は、どのようにして生まれたのでしょうか?一緒に探っていきましょう! まずは本作のルーツについて。『シェイプ・オブ・ウォーター』は、1954年に公開されたアメリカのSFホラー映画『大アマゾンの半魚人』から着想を得てつくった映画であるとデル・トロ監督は公表しています。 この映画ではモンスターとして半魚人が描かれ、人間の女性への恋も儚く散ってしまうという結末でした。「もしも二人が結ばれたら?」と当時6歳であったデル・トロ監督は思い、その思いが元となって『シェイプ・オブ・ウォーター』へと繋がったのです。 デル・トロ監督はパンフレットで「いつかふたりを幸せにしたいと思いながら40年以上を経て、『シェイプ・オブ・ウォーター』になったんだ。」と述べています。

『美女と野獣』に異議あり!

デル・トロ監督はパンフレット内でアンチ『美女と野獣』を表明しています。 「僕は『美女と野獣』が好きじゃないんだ。“人は見た目じゃない”というテーマなのになんで野獣はハンサムな王子になるんだ?」 『美女と野獣』と『シェイプ・オブ・ウォーター』はどちらも異種間の愛を描いてはいるものの、その愛の形には大きな違いがあります。愛とは不変的なものであると考えたデル・トロ監督にとって、ベルと野獣の愛は本物ではないと感じたのでしょう。

イライザと「彼」だから成り立つ異色な愛

作品中で、イライザはジャイルズを説得する際に「私は何?私は喋ることが出来ない。「彼」も言葉を喋ることが出来ない。私たちには何の違いもない。」と発言するシーンがあります。   彼女は生きてきた中で、発話障害を持つこと抜きの彼女自身を見てもらえたことはなかったのでしょう。同じように「彼」も対等な立場でコミュニケーションをとれたことはなく、孤独な彼らにとってそのままのお互いを愛せることに意味があったのだと筆者は感じました。

タイトルに込められたデル・トロの真意

シェイプ・オブ・ウォーター
©2017 Twentieth Century Fox Film Corporation

直訳すると「The shape of water=水の形、水の姿」となります。直接的に作品内でタイトルについて述べられることはありませんでしたが、ワールドニュースサイト「The national」内でデル・トロ監督は以下のように述べています。 「水は形を持たず柔順だ、だから何よりも強い。愛も同じだ。愛は必要に応じて形を変える。愛に狂うのに形なんて関係ないんだ。」 デル・トロ監督は変幻自在である水は愛そのものであると考えたのです。

ラストはバッドエンド?それともハッピーエンド?

確かに味方が全員生き残るわけでも、イライザと「彼」が地上で堂々と結ばれるわけでもありません。そのため鉄板のハッピーエンドとは言えないでしょう。 しかし勧善懲悪劇であることに変わりはなく、「彼」が瀕死状態のイライザを不思議な力で救い、彼女を抱き上げ海へと飛び込む様子が描かれ、誰にも邪魔されない幸せを得たことを観客には印象付けています。 周りは関係なく、“私とあなたの幸せだけをただ願い生きる”というのは本作を通して描かれている最も崇高で美しい考え方であり、二人だけの世界で結ばれたということに関して、筆者はハッピーエンドであると考えました。

アカデミー賞受賞の理由を考察!

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Regram from @theacademy: Guillermo del Toro flashes the winning envelope. #Oscars

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興行収入が良くても、キャストが豪華でも、アカデミー賞を受賞するとは限りません。毎年多くの映画が公開される中で、どうして本作はアカデミー賞を受賞することができたのでしょうか?近年のアカデミー賞受賞作品との共通点を探しながら考察していきます! 昨年の受賞作品『ムーンライト』や『ドリーム』も本作同様に、多様性を受け入れることがテーマとされています。 実際に本作の中では、イライザは口がきけず、ゼルダは黒人として虐げられ、ゲイであるジャイルズにも市民権はありませんでした。特に、ジャイルズが思いを寄せるダイナーの店員に気持ちを伝えた際の分かりやすい対応の変化、そしてそれに続く店員の黒人客への劣悪な対応は、60年代にそれら差別がどれほど当たり前であったかを端的に描いています。 宗教・人種・性別......長い歴史の中で偏見や差別が生まれ、2018年現在にも尾を引くこれらを題材に持ってくることは、政治的・社会的背景を考慮し選考する傾向のあるアカデミーにとって、より評価する対象となったのではないでしょうか?

ただのファンタジーロマンスでは終わらせない『シェイプ・オブ・ウォーター』

シェイプ・オブ・ウォーター (プレス)
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予告編では‟一風変わったファンタジーラブストーリー”という印象を強く受けがちな本作ですが、ファンタジーにはとどまらない愛の神髄、目をつぶってはいけないことの数々、デル・トロ監督のメッセージ性が随所で感じることの出来るバラエティに富んだ作品となっています。 デル・トロ監督の描きたかった本当の愛を感じながら、もう一度観直してみてはいかがでしょうか? 制作の裏側について書かれた以下の記事も、是非チェックしてみてください!