2018年11月14日更新

【解説】『ボヘミアン・ラプソディ』再現度が半端ない5つのポイント。史実との違いは?

© 2018 Twentieth Century Fox

クイーンの伝記映画『ボヘミアン・ラプソディ』が公開されました。世界的に興行収入も高く、鑑賞したファンからの支持も多くされている本作。最も評価が高い部分が、その「再現度」です。本記事では『ボヘミアン・ラプソディ』内の役作りやライブシーンの制作秘話、トリビアなどからその再現度を徹底解説します。

『ボヘミアン・ラプソディ』半端ないって!再現度すごいもん!

公開されるやいなや、クイーンファンのみならず多くの映画ファンの胸をアツくさせている映画『ボヘミアン・ラプソディ』。デビューした1973年頃から、1985年に開催された20世紀最大のチャリティーコンサート「ライヴ・エイド」まで、リードボーカルのフレディ・マーキュリーの半生に焦点を当ててバンドの伝記を描きます。 そんな本作は、兎にも角にも再現度が高いことが評価されています。その背景には、メインキャストの役作りからセットや小道具の作り込みなど、類稀なる努力があったのです。 一体、どこが本物のクイーンと同じで、どこが違うのか、またどうしてその高い再現度を実現することができたのか。本記事でご紹介します。

1. 四人四色!各キャストの役作りと演技力

再現度の話をすれば、まずバンドメンバー4名の役作りについて話すことを避けるのは不可能でしょう。 実際のバンドメンバーであるブライアン・メイ、ロジャー・テイラー二名のアドバイスがあったからこその役作りでした。

ラミ・マレック- フレディ・マーキュリー役

ボヘミアンラプソディ
© 2018 Twentieth Century Fox

『ボヘミアン・ラプソディ』の主演であり、クイーンのリードボーカルであるフレディ・マーキュリーを演じきったラミ・マレック。 『Mr. ロボット』での活躍で知られるマレックは、企画段階で再三にわたって主演俳優が降板する、というアクシデントとプレッシャーの中で「見事にフレディの魂をこの世に蘇らせた」と、鑑賞済みのファンからの評価は絶大。 マレックは、自分がキャスティングされた理由が「顎のライン」であることを、「ジミー・キンメル・ライブ!」で語りました。役作りには一年半かけ、ムーブメントコーチからはフレディが実際にしていたボクシング、長距離走などが彼の歌い方や仕草に大きな影響を与えたとアドバイスを受けていたそう。 また、トレードマークである出っ歯を映画前半では“隠そうとする仕草”にこだわっています。フレディが名声を勝ち得て、自分に自信がついてきた映画後半ではむしろ、大きく口を開けて歌うように変化した点が、彼の心情を詳細に捉えています。 ちなみに、映画でも描かれていましたが、フレディは実際に大の猫好きでした。

グウィリム・リー - ブライアン・メイ役

ボヘミアンラプソディ
© 2018 Twentieth Century Fox

リードギターであるブライアン・メイを演じたのは、グウィリム・リー。『バーナビー警部』や『Jamestown』に出演しています。彼がメンバーの中で最も“クリソツ”であると評判が高く、その背景にはブライアン・メイ自身がセットに訪れてアドバイスをしていたことがありました。 本人以外にも、ムーブメントコーチから動きを徹底的に指導されて役作りに挑んでいたようです。カツラを被り、自分の着ていた衣装を身にまとった彼を見て、ブライアンは「自分自身を見ているようだ」とコメント。仕草などの動作にもかなりの説得力があったようで、その再現度は本人のお墨付きです。

ベン・ハーディ - ロジャー・テイラー役

ボヘミアンラプソディ
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ドラマーのロジャー・テイラーを演じたのは、『X-MEN: アポカリプス』のアークエンジェルとして出演したことで映画デビューを果たしたベン・ハーディ。 映画界ではまだまだ新参者ですが、BBCで放送されたテレビドラマ『イーストエンダーズ』に3年間出演していた経歴を持ちます。『ボヘミアン・ラプソディ』への出演がきっかけで、今とにかく注目を浴びている俳優の一人となりました。 実は彼、人生で一度もドラムを叩いたことがないのに、オーディションで「できる」と言ってしまったのです。その後、監督からオーディションテープは「演奏しているシーンで」という指示があり、慌てて練習したそうです。 正式に起用されると、ハーディは毎日10時間もドラムのレッスンに励みました。テイラーが直接施したミニレッスンもあったそうです。

ジョゼフ・マゼロ - ジョン・ディーコン役

ボヘミアンラプソディ
© 2018 Twentieth Century Fox

他のメンバーに比べて比較的簡潔な言葉で要点を伝える、ベーシストのジョン・ディーコンを演じたのは、『ジュラシック・パーク』で少年ティムを演じていたジョゼフ・マゼロです。あの、ティミーがこんなに大きくなったとは! ジョゼフの演じたベンは控えめで、他のメンバーに比べるといつも後方にいておとなしい性格でしたが、これ自体が実は再現度が高いのです。実際のベンはいつも地に足がついていて、かなり真面目な性格だったとブライアン・メイはDaily Mail誌にて語っています。 また、今回ブライアンとロジャーが演技をはじめとするサポートをしていたのに対し、ベンは映画のセットどころか、一切メディアに登場しませんでした。 彼は現在隠居生活をしていて、ブライアンとロジャーに連絡もとっていないようです。

2. 伝説のライブシーンはこうやって再現された!

ボヘミアンラプソディー
© 2018 Twentieth Century Fox

本作の冒頭、そして圧巻のクライマックスシーンを飾ったのは、20世紀最大規模といわれる伝説のライブ「ライヴ・エイド」です。 映画の中でフレディがエイズに冒されていることを知っているのは、我々鑑賞者と、メンバーのみ。そんな中、美しいピアノのメロディーラインからはじまる『ボヘミアン・ラプソディ』の「ママ、僕は死にたくないよ。たまに思うんだ、生まれてこなければよかったとさえ」。 そして歓喜と共に歌い上げる『Radio Gaga』の「ラジオよ、聞き流される雑音になんかならないで。少年少女にとってのバックグラウンドサウンド成り果てないで」という歌詞たち。 挙げていくともはや全てのフレディが歌い上げた言葉・歌詞、そしてサウンドの意味が深すぎる。もうこれが泣けて仕方ないのです。 しかし、実はここが史実と違う点。実際にフレディがエイズの診断を受けたのは1985年で、「ライヴ・エイド」の後のことでした。

ボヘミアンラプソディ
© 2018 Twentieth Century Fox

このシーンの撮影は7日間に渡り、ステージとバックステージのセットはボヴィンドン空軍基地に作られました。フレディが亡くなるまで彼のパーソナルアシスタントを務め、現在クイーンの歴史コンサルタントをしているピーター・フリーストーンがセットの作成、小道具の配置に関してアドバイスをしていました。 例えばフレディのピアノの上のお酒やコーラ、カメラの向こうの母親にキスするタイミングなど、本当にそっくりそのまま! また、何より細かいのがクイーンの前に出演していたU2のメンバー(本人ではない)の存在です。フレディがステージに上がる前にすれ違っていたり、大量の群衆の中に「U2」と書かれた大きなカードがあったり。ピーター・フリーストーンはこういった舞台裏の情報も提供していて、これにより会場の再現度はほぼ100%といっても過言ではないクオリティに達したのです。 本人は、実際のアドバイスを受けて制作されたステージをみて「壁の剥げ方、ペンキや水道管のサビまで再現されている」と大絶賛。ブライアン・メイも「後ろにあるアンプやペダル、タバコの吸い殻や灰皿、コークのカップに至る細部までそのままだった」とコメントしています。 ちなみに、大量の観客はセットで撮ったエキストラの映像とCGを組み合わせて作られたもの。エキストラの数は900人で、多くが若者だったことから当時のクイーンを知らない者が多く、曲を覚えさせることが実は何よりも課題だったそうです。

3. 総数1万点近くに及ぶ衣装へのこだわり

ボヘミアンラプソディ
© 2018 Twentieth Century Fox

さて、そんな再現度バリ高な本作ですが、それは決してセットの再現にとどまりません。衣装に関しても、かなり細かい部分までこだわり抜かれています。 特にフレディ役のラミ・マレックの衣装合わせは、トータル50時間ほどかかっており、主に1970から1980年にかけてのフレディのファッションに焦点が当てられています。 日本の着物を部屋着として着用しているシーンも、彼が着物の大ファンだったことをしっかり描きたいという背景があってこそでした。

ボヘミアンラプソディ
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また、先述した「ライヴ・エイド」のシーンでフレディが着ているベストのネックラインの深さが足りないと、主演のラミ自身が意見をする場面もあったようです。その結果、1.27センチ改善したことで完成度がグッと高まったのです。細かいけど、この1.27センチ深いか深くないかで印象が全然違うはず! さらに着用していたボクシングシューズは、アディダスに再生産を頼むという気合いの入り方。素晴らしいですね。

ボヘミアンラプソディ
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また、ブライアン・メイは自身のアーカイブの中からツアー用のガウンやビロード生地で光る襟のついたジャケットをはじめ、数点の衣装をグウィリムに貸しました。彼の着ている衣装は“本物”なのです。 そんなこんなで全体の衣装の数は、メンバー4人だけでバス一台分、エキストラを入れると総数8000〜1万点近くになったとのこと!

4. 劇中の歌・音楽はフレディの声“だけ”ではない!

ボヘミアンラプソディ
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楽曲に関しても、単純にフレディの声を使用していただけではない点にこだわりを感じます。音楽スーパーバイザーのベッキー・ベンサムによると、本作の楽曲にはオリジナル音源とフレディの音声、そこにラミ・マレックと一部プロ歌手の肉声を使っているのだそう。 また、レコーディングシーンの撮影が行われたのは、あのビートルズやピンク・フロイドが実際に使用していたアビーロード・スタジオです。 余談ですが、レコーディングといえば、クイーンの音楽性が理解できず「『ボヘミアン・ラプソディ』は売れない」と否定したEMIレコードの社長レイ・フォスターは、実在する人物ではありません。 おそらく、ロイ・フェザーストーンという実在のレコードプロデューサーから影響を受けたキャラだと考えられています。しかし、フェザーストーンはクイーンの大ファンでした。

『ボヘミアン・ラプソディ』映画館が幻のライブ会場となる

ボヘミアンラプソディ
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映画のキャッチコピーやセールス文句は、略語が流行っている近年において時には映画の雰囲気と一致しない印象を与えてしまうことがあります。特に最近はPRの一貫でSNS上でのハッシュタグを用いるものが多く、本作は「#ボヘミアン胸アツ」と展開されていました。 しかしですね、これ、本当にその通りなんです。「胸アツ」という表現がしっくりくるのです。 ラスト20分、映画館は「ライヴ・エイド」の会場となり、フレディの想いとメンバーの友情に涙が止まらないファンが大量発生。何度でも劇場で観たい、何度でもフレディにまた会うことができる、そんなアツい作品です。