2019年8月24日更新

【インタビュー】『ロケットマン』監督デクスター・フレッチャーが語る制作秘話 「ボヘミアン」と同時進行していた?

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デクスター・フレッチャー監督インタビュー『ロケットマン』
©️ciatr

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デクスター・フレッチャー監督来日インタビュー

『ロケットマン』デクスター・フレッチャー監督インタビュー
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前任者の解雇を受け、ノンクレジットながら大ヒット作『ボヘミアン・ラプソディ』の最終監督を務めたことでも知られるデクスター・フレッチャー監督。2019年8月、彼は主演のタロン・エジャトンとともに新作『ロケットマン』をひっさげて来日した。 伝説的ミュージシャン、エルトン・ジョンの半生をミュージカルとして綴った本作は、愛に飢えた彼の幼少期から音楽的才能の開花、そしてスターダムを駆け上がった彼の、きらびやかな衣装や派手な生活の裏に隠された心の闇に切り込んでいく。 10年以上前からエルトン・ジョン本人と彼の夫デヴィッド・ファーニッシュらによって企画が進められてきた本作だが、フレッチャーが監督を務めることになったのは、まさに運命といえるだろう。 これまでミュージカル映画『サンシャイン/歌声が響く街』(2013)や、伝記映画『イーグル・ジャンプ』(2016・未)などを手掛けてきた彼が、その2つの要素が融合した本作のメガホンをとったのはキャリアの集大成にも思える。しかも偶然とはいえ、その直前には前述の通り『ボヘミアン・ラプソディ』にも携わることになったのだ。 2019年8月14日、来日したフレッチャー監督に『ロケットマン』についてインタビューを行い、本作に対する熱い想いを伺うことができた。 ※インタビュー後半では映画の内容について触れられています。該当部分は作品鑑賞後にお読みいただくことをおすすめします。

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「ボヘミアン」の依頼を受けたときにはもう『ロケットマン』に着手していた

デクスター・フレッチャー『ロケットマン』
© 2018 Paramount Pictures. All rights reserved.

フレッチャーが、監督降板劇の末に伝説のロックバンドQueenの伝記映画『ボヘミアン・ラプソディ』を仕上げたことはよく知られている。その経験が『ロケットマン』の製作に与えた影響はあったのだろうか。

「ボヘミアン」の最終監督をしたことで、本作を製作する際に良い影響はありましたか?

「「ボヘミアン」の監督依頼があったときにはすでに本作に着手していた。『ロケットマン』の作業をつづけながら「ボヘミアン」の撮影も進めていったんだ。混乱したけど、いい経験になったと思うよ。 両方とも70年代のゲイのロックスターの話だけど、僕としてはまったく違う映画だと思っている。アプローチもまったく違う。「ボヘミアン」は別の誰かのアイディアで作られたものだけど、『ロケットマン』は僕のヴィジョンだ。「ボヘミアン」に関してはただ手伝いに行ったという感じ。 でもそんなに難しいことではなかった。確かに挑戦ではあったよ。水曜日に話をもらって月曜日から撮影開始っていうスケジュールだったから、準備する時間もなかったけど、いい経験になった。」

タロンは10年後、20年後にはダニエル・デイ=ルイスのような名優になるだろうと期待している

タロン・エジャトン(エガートン)、デクスター・フレッチャー『ロケットマン』
© 2018 Paramount Pictures. All rights reserved.

フレッチャーと主演のタロン・エジャトンがタッグを組むのは、2016年の『イーグル・ジャンプ』以来2度目となる。 その間にエジャトンは大ヒットシリーズ「キングスマン」に主演し、世界的に知られる俳優となった。フレッチャーから見て、俳優としての彼にどんな変化があったのか聞いた。

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タロン・エジャトンとの仕事は2度目ですが、俳優として彼が変わったと感じた点はありましたか?また、俳優としての彼の良さはなんだと思いますか?

「そうだなぁ。彼は細かいことを気にしなくなったというか、自分がやるべきことに集中できるようになったと思う。 僕自身は子供っぽくて、「あいつも成長したな」なんて言える立場じゃないけど、(『イーグル・ジャンプ』で)初めて会ったとき、彼は22歳か23歳だったかな。いま彼は29歳だ。30歳手前から30代っていうのは一般的にも役者として脂が乗ってくる時期だけれど、彼はすごいスピードで成長してきたんだなと今回一緒に仕事をして感じた。すごく勢いがあるよ。 以前からそうだったけど、俳優としての彼のいいところは勇敢なところ、リスクを恐れないところだ。タロンはまだ若いし、今後10年20年でダニエル・デイ=ルイスみたいな名優になるだろうと楽しみにしている。」 ※次の項目では映画の内容について触れられています。作品鑑賞後にお読みいただくことをおすすめします。

名曲「ロケット・マン」のシークエンスはスタッフ一丸となって実現した

『ロケットマン』タロン・エジャトン
©2018 Paramount Pictures. All rights reserved.

映画中盤、自宅で自殺を試みたエルトンがプールの底で幼少期の自分を見るシーンから始まる「ロケット・マン」のシークエンスは圧巻だ。 幻想的なプールの中から病院に運ばれたエルトンは、満身創痍のままドジャー・スタジアムのステージに立つ。名曲「ロケット・マン」は、ロケットが上昇していくようなメロディとは裏腹に、孤独な宇宙飛行士の胸の内が語られる楽曲だ。それが孤独に沈んだ心を抱えながら、きらびやかなステージをこなすエルトンの虚しさにぴたりと重なり、ダイナミックな映像と哀しみや切なさの融合した、不思議で胸を打つシーンに仕上がっている。 間違いなく映画の見どころのひとつであるこのシーンについて、監督に質問してみた。

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プールの底からドジャー・スタジアムでのコンサートに至る「ロケット・マン」のシーンの演出は見事でした。撮影で大変だったことなどあれば教えて下さい。

「ストーリーボードですべて綿密に計画して撮影に臨んだ。幸運にもなんとかまとめることができた、という感じだね。僕としては完全に満足しているわけじゃないけど、それは問題じゃない。 プールの底からスタジアムのステージの上まで、ひとりの男が自分を取り戻そうとする様子が描かれている。すべてのシーンの撮影が挑戦だったし、エキサイティングだった。すべての部門のスタッフが一致団結してあのシークエンスが完成したんだ。 プールの底に子供の頃のエルトンがいて、病院から一気にスタジアムまで駆け抜けていくっていうのは確かに僕のアイディアだけど、それを実現するために力を尽くしてくれたスタッフ全員をとても誇りに思っているよ。」

エモーショナルな傑作ミュージカル『ロケットマン』は2019年外せない一作!

ロマンポルノ、エルトンジョン
© 2018 Paramount Pictures. All rights reserved.

『ロケットマン』には、エルトン・ジョン本人も製作総指揮として参加している。しかし彼は、本作を“スーパースター、エルトン・ジョン”を崇拝するような、表面的な作品にはしないでほしいと語っていたとフレッチャーはいう。あくまでお互いにアーティストとして、対等な立場で映画を作り上げるために非常にオープンで協力的だったそうだ。そのおかげでフレッチャーは、ひとりの人間としてのエルトン・ジョンの、ポジティブな面もネガティブな面も、リアリティを持って描ききることができた。 インタビュー中、終始ユーモアを織り交ぜながら、情熱的に本作について語ってくれたデクスター・フレッチャー監督。『ロケットマン』で描かれるしあわせも哀しみも、わくわくするようなシーンや涙を誘うシーンも、彼のパワーから生まれたのは間違いない。 “実際のファンタジーに基づく”本作は、エルトン・ジョンというスーパースターの人生を描いてはいるが、多くの人に共感と感動を与えてくれる。 映画『ロケットマン』は2019年8月23日(金)から全国ロードショー(配給:東和ピクチャーズ )。明るいばかりではない本作だが、鑑賞後にはしあわせな、楽しい気持ちで映画館を後にすることができるだろう。