2019年1月3日更新

スピンオフ『アナと雪の女王 家族の思い出』はなぜ低評価なのか?知っておくべきこと

『アナと雪の女王』
© Walt Disney Pictures

2014年に公開され「アナ雪ブーム」を巻き起こした『アナと雪の女王』。しかしスピンオフ「家族の思い出」の評価はイマイチな人も。なぜこんなことが起きたのか、二作品の違いを探ると「家族の思い出」を楽しめる解決策が見つかりました。

「アナ雪」無双状態はなぜ「家族の思い出」まで続かなかった?

ディズニー映画『アナと雪の女王』は2014年に公開されるやいなや、その年の累計興収254億7,000万円の大ヒットを記録。その関連商品が飛ぶように売れ、主題歌や劇中歌も日本中で知らない人はいない、という大勝利の連鎖を引き起こしました。 ところが、『アナと雪の女王 エルサのサプライズ』に続くスピンオフ2作目の『アナと雪の女王 家族の思い出』の評判は『アナと雪の女王』には及ばず、無双状態は続かなかったと言えます。とはいえ、その中でも私を含め「家族の思い出」を楽しんだ人もいることは事実。 なぜ「家族の思い出」は本編(『アナと雪の女王』を指します)ほどの旋風を巻き起こさなかったのか。なぜ評価の高い人と低い人に分かれたのか。二作品を比較しその答えを出した上で、どの視点で見れば両作とも楽しめるのかを愛を込めて解説します。

『アナと雪の女王』にあって「家族の思い出」にないものとは

音楽と物語展開による圧倒的な印象付け

「『アナと雪の女王』で一番印象に残っているシーンは?」と聞かれて思い起こすのは人それぞれバラバラだとは思いますが、きっと『Let It Go』や『生まれてはじめて』などの歌唱シーンをあげる人が多いはず。 例えば、『Let It Go』。国民に魔法の力が露呈し、王国を飛び出したエルサが選択したのは「ありのままでいること」でした。あの歌唱シーンを見ると、最初と最後では衣装だけでなく、表情も全く違います。「少しも寒くないわ」の時の顔なんて、完全に別人のもの。あの“一曲自体で”エルサの今までとこれからの感情が伝わるほど、曲中でストーリーが出来上がっているのです。 さらには、リプライズ版の「生まれてはじめて」(アナがエルサの氷の城を訪れた際に流れた曲)はアナとエルサの心情の掛け合いが見事に表現されており、観客まであの曲の中に吸い込まれるような感覚になるほどの迫力とストーリー性がありました。 『アナと雪の女王』の物語自体は完璧だったとは言えません。誤解を恐れずに言えば、あの劇中歌がなければ「アナ雪旋風」は巻き起こらなかったでしょう。つまり、曲に込められたキャラクターの心情とストーリーのマッチングによる圧倒的な印象づけがあったからこそ、あれだけの大ヒットを記録したという訳です。

では、「家族の思い出」で印象に残っているシーンは?

22分間のうちに6曲も歌っているので、歌唱シーンをあげる確率はもちろん高いと思いますが、おそらく圧倒的1位に君臨するシーンはないのではないでしょうか。 というのも作品自体には起承転結があり、あるピンチを乗り越えハッピーエンドを迎える、という流れは本編も「家族の思い出」も同じなのですが、歌の使われ方が二作品では異なっているのです。 本編では前述したように、シーンと歌の内容が完全にマッチしている上に“一曲の中で”心情の変化が表現されています。一方、「家族の思い出」では、“一曲の中では”心情のアップダウンが存在しません。 具体的には、「お祝いの鐘」と「お祝いをしよう」にはリプライズ版がそれぞれ存在し、前者では一貫して明るい曲調で幸せな気持ちを表し、後者(リプライズ版)では一貫して切ない気持ちを表しています。つまり、本編ではオリジナル版もリプライズ版も関係なく、一曲の中で心情の変化が現れているのに対し、「家族の思い出」では両者を切り離して心情の変化を表しているのです。 そのため、一曲が与える印象が分散したことで、「物足りなかった」という低い評価を引き起こしてしまった、ということが考えられます。

一貫したテーマ、一貫した主人公

また、二作の違いとしてもう一つ挙げられるのが、“主人公が誰なのかはっきりしているか、そうでないか”。 本編の主人公は言わずもがな、アナとエルサ。ヒロインが二人という状況で、今までのディズニーであれば、それぞれに王子様がおり、それぞれが恋に落ちる様子を描いていたかもしれません。「アナを助ける真実の愛って、ディズニー的にはクリストフの愛のことでしょう」と思っていた人は展開に驚いたはず。 実際は王子様との恋ではなく、あくまで主人公二人の姉妹愛を描くことを貫きました。(アナはハンス王子やクリストフと恋に落ちていましたが、それはメインではなかったと言えます。)しばらく離れ離れだった姉妹が、周りの人物たちの力を借りながら本当の愛を知る、そんなテーマで本編は描かれていました。

「家族の思い出」という迷走した邦題が招いた“ 絶対的主人公 ”の崩壊

しかし、「家族の思い出」には絶対的な主人公は存在していなかった。「アナとエルサのクリスマスの話なはずなのに、なぜかオラフが主人公に見えてしまう。」なぜこんな現象が起きてしまったのでしょうか。 これは邦題のつけ方に問題があったと言えます。というのも、原語版のタイトルは『Olaf's Frozen Adventure(オラフのフローズンアドベンチャー)』。しかし、邦題は『アナと雪の女王 家族の思い出』。つまり、邦題だけではオラフが主人公であるということが分からないのです。そうして謎のモヤモヤが生まれてしまったという訳です。 オラフもアナとエルサの家族ですし、物語的にも間違っていません。しかし、「家族の思い出」というタイトルでは、あまりにも抽象的。せめて前作の『アナと雪の女王 エルサのサプライズ』のように「誰がメインなのか」を邦題でも明記するべきだったと思います。 そうすれば「これはオラフが主人公なんだな」と一瞬で視聴者が分かり、本編のような壮大さがないまま22分間オラフの冒険が流されることも予想でき、物足りなさを感じることもなかったかもしれません。

本編とスピンオフ、二作品を同じテンションで観てはいけない

『アナと雪の女王』
© Walt Disney Pictures

ここまで本編と「家族の思い出」 の違いを挙げてきましたが、初めに述べたように両作とも高く評価している人は多くいます。 おそらく、「家族の思い出」にがっかりした人は、この違いを知らずに本編と同じテンションで観てしまったからでしょう。前作の「エルサのサプライズ」が8分だったのに対して、「家族の思い出」は22分もあるので無理もないですが、あくまでスピンオフなのです。 本編ほどの壮大な物語や挿入歌のストーリー性ははっきり言ってしまえば、ありません。しかし、「家族の思い出」の魅力はそこではなく、良い意味でスピンオフならではの軽いエンターテイメント性なのです。むしろ、その壮大さは公開予定の『フローズン2(原題)』に期待しましょう。 『アナと雪の女王 家族の思い出』は可愛らしいオラフが大活躍する姿と新たな名曲を楽しもう、という軽い気持ちで見ることをお勧めします。