2019年1月26日更新

多くの人に愛された市原悦子。彼女の人生を振り返る【家政婦は見た!】

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市原悦子 しゃぼんだま

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女優・市原悦子が2019年に他界

2019年の1月12日に、芸歴62年にもなるベテラン女優・市原悦子がこの世を去りました。2012年より、S状結腸腫瘍手術や自己免疫性脊髄炎による休業を発表するなど、近年体調が優れなかった市原。 2018年3月に復帰してからは、NHKの深夜バラエティ番組『おやすみ日本 眠いいね!』などで再び活躍しました。しかし、年末に盲腸のため都内の病院に入院。退院後、2019年に再び入院すると、その一週間後に心不全となり亡くなってしまいました。82歳でした。 そんな市原悦子の多岐にわたるキャリアを振り返りたいと思います。

『まんが日本昔ばなし』のナレーションで親しまれる

勿論女優として知られている市原悦子でしたが、彼女はナレーターというもう一つの顔も持っていました。特に、1975年から常田富士男とコンビでナレーションを担当していた『まんが日本昔ばなし』は、幅広い世代の人から親しまれていました。 『まんが日本昔ばなし』はこの二人が主に語りを行なっているわけですが、市原悦子の声色の変え方のバリエーションが豊富で、一つの話の中で何役もこなす手腕は多くの視聴者をうならせました。主に女子供や、若き青年の声を担当していました。

市原悦子だから成り立った作品『家政婦は見た!』

そして、市原悦子のキャリアを語るうえで欠かせないのが「家政婦は見た!」シリーズ。 市原演じる石崎秋子が上流家庭に「大沢家政婦紹介所」の家政婦として派遣されます。そして、家政婦として働きながら家族がそれぞれ持つ秘密を(盗み)見聞きし、家族が全員揃ったところでそれを洗いざらいぶちまけ、去っていくという痛快ストーリーです。 1997年から土曜ワイド劇場で放送され、同枠では珍しく「人が殺されない」ドラマでありながらも大ヒット。その要因は恐らく、当時の風刺などを交えた家族の秘密を露呈していくというキャラクターを“市原悦子”が演じたからではないでしょうか。 というのも、普通に考えてこの主人公・石崎秋子は誰からも嫌われる存在のはずです。何故なら、人を盗み見たり聞いたりする、いやらしい行為の末、隠していたことを暴露していくのですから。しかし、市原悦子から溢れ出る気品がそれを緩和し、コメディリリーフなものに昇華していました。石崎秋子がここまで愛されたのは、市原悦子が彼女を演じたからだったのでしょう。

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戦争を知る女優として戦争童話の朗読を精力的に行っていた

市原悦子は1936年生まれで、8歳から9歳頃にかけて第二次世界大戦を経験していました。先述の『まんが日本昔ばなし』のみならず数多くの童話の朗読を行なっていた市原は、その経験を生かして戦争童話も精力的に朗読していました。 市原が所属していた俳優座の先輩であり、『ハムレット』で共演した経験を持つ仲代達矢は、彼女の声について訃報を受けた時の心境を語る中で以下のように話しています。 「ただ綺麗というだけではなく、声の質を持って、ものを言うという才能。1500席の劇場で、マイクなしで己の声を通していく力を、彼女は先天的にもっていた。本当に素晴らしい方だった。」

訃報を受けて、周囲の人が語った彼女の魅力

俳優の仲代達矢だけでなく、数多くの著名人がこの度の訃報を受けてコメントをしています。その中でも、彼女が愛情深い人物だったことを、通夜のピアノ伴奏を務めた市原の友人ミッキー吉野はこう語ります。 「1月7日の病室で、市原さんと『夢とご飯の木』ついて話した時、市原さんは『私にとっては愛とパンの木よ』とジョークを言った。彼女はご飯よりパンが好きだったし、夫の塩見哲さんとの愛に生きた人だから……。」 亡くなる間際にも、自分に会いに来てくれる人にジョークを言っていたという市原悦子。まさに、人に愛される人とは彼女のような人なのかもしれません。

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市原悦子の最期

2017年に公開された林遣都主演作の『しゃぼん玉』が映画の、そして『山口発地域ドラマ 朗読屋』がドラマとしての遺作となった市原悦子。通夜では代表作の『家政婦は見た!』をはじめとするドラマ映像が10分間流れ、先述のミッキー吉野によるピアノ伴奏が。それに合わせてダンサーが踊るという異例ではありながらも、明るく彼女を送り出すパーフォマンスが披露されました。 さらに、市原悦子さんの遺言により、彼女は樹木葬で埋葬されることになりました。彼女は火葬ではなく、空の下で眠りたいという気持ちがあったのです。彼女の願いかなって、森をイメージしたグリーンの棺が用意され、関東近郊の森の中にある樹木葬墓地の、5年前に亡くなった夫・塩見哲の横で眠るのだそうです。

多くの人に愛されていた女優・市原悦子

幅広い年齢層に知られ、愛されてきた女優・市原悦子。2015年のテレビ出演では、放送禁止用語を連発するなど、枠にとらわれない生き方を生涯つらぬき通しました。この機会に、彼女が出演していた思い出のドラマや映画を、見返してみてはいかがでしょうか。