『名探偵コナン 世紀末の魔術師』をネタバレありでまるっと解説 怪盗キッドの目的と真犯人とは?
青山剛昌原作のアニメ『名探偵コナン』の劇場版シリーズ3作目で、タイトルの"世紀末"にふさわしく、1999年に公開された映画『名探偵コナン 世紀末の魔術師』。 ロシアのロマノフ王朝をモチーフにした本作は、当時まだ未解明だった史実を脚色し、実在した人物についても描かれました。コナン映画が実在した人物を描いたのは、本作が初めてです。 さらに主人公・江戸川コナンのライバル、怪盗キッドを筆頭に、灰原哀、服部平次、遠山和葉、高木刑事など初期の主要キャラが劇場版に初集結。原作の展開に合わせ、毛利蘭がコナンの正体に疑問を抱き始める描写も!また本作を機に、怪盗キッドがコナン=工藤新一と気付いている、という設定が生まれました。 ちなみに、劇場版恒例のダジャレクイズで、阿笠博士が出題した初の作品でもあります。 この記事では、そんな初めて尽くしの「世紀末の魔術師」をネタバレありで解説し、怪盗キッドの目的や真犯人の正体などを紹介します。 *本記事には「世紀末の魔術師」に関するネタバレが含まれますので、未鑑賞の方はご注意ください。
映画『名探偵コナン 世紀末の魔術師』のあらすじ
「世紀末の魔術師」の舞台は主に3つに分けられ、前半は鈴木近代美術館のある大阪、中盤が豪華客船、後半が横須賀市の古城で展開します。 1999年、世紀末と言われていた年に、神出鬼没の大怪盗「怪盗キッド」が世を騒がせていました。 キッドが狙うのは、鈴木財閥で発見されたロマノフ王朝の秘宝「インペリアル・イースター・エッグ」で、「黄昏の獅子から暁の乙女へ 秒針のない時計が12番目の文字を刻む時 光る天の楼閣からメモリーズ・エッグをいただきに参上する」という予告状が届きます。 警視庁と大阪府警の合同捜査が決定し、毛利小五郎も鈴木財閥の会長・鈴木史郎から依頼され、コナンと蘭を連れて大阪に向かうのです。 コナンは平次と合流し、警察が推理した犯行推定時刻まで大阪を見物していました。しかしコナンはその最中、予告状の真の意味に気付きます。すでに犯行予告時刻ギリギリで、キッドが盗んだエッグと共に大阪湾上空に差し掛かった瞬間、キッドは何者かに狙撃され……。 コナンはエッグを回収するも、元の持ち主である香坂家の古城に眠る2つ目のエッグと、連続強盗殺人犯「スコーピオン」の存在が浮上するのでした。
映画に登場する重要キャラクター・声優一覧
江戸川コナン/cv.高山みなみ
お馴染みの主人公・江戸川コナンはエッグを狙うキッドを阻むべく、鈴木会長に依頼された毛利小五郎に連れられ、美術館がある大阪へ向かいます。 難波布袋神社でひいたおみくじでは、「旅行 秘密が明るみにでます。やめましょう」との結果が出てしまい、"秘密=正体の工藤新一"かと頭を過りました。コナンの正体を怪しむ蘭、スコーピオンの追撃を躱し、エッグに秘められた世紀末最大の謎に挑みます。 コナンの声優はやはりこの人、高山みなみ。代表作はもちろん『名探偵コナン』ですが、『魔女の宅急便』のキキ役や『らんま1/2』の天道なびき役などで少女の声も演じています。
怪盗キッド/cv.山口勝平
劇場版初登場となった人気キャラクター、月下の奇術師こと、怪盗キッド。ビッグジュエル専門の怪盗ですが、今回はロマノフ王朝の秘宝に目をつけました。 予告状の最後に"世紀末の魔術師"と記し、暗号を解読して追ってきたコナンの先を読んでエッグを盗むも、右目を狙撃され大阪湾に転落。 コナンによりエッグと負傷した彼の鳩が回収され、生死不明となった本人はある人物に扮し、古城にも同行しているようで……。 怪盗キッドを演じるのは、工藤新一も兼役の山口勝平。代表作は『ONE PIECE』のウソップ、高橋留美子原作『らんま1/2』の早乙女乱馬、『犬夜叉』の犬夜叉などがあります。
香坂夏美/cv.篠原恵美
香坂夏美はフランス・パリで働くパティシエールで、27歳。エッグの最初の所有者だった香坂家の相続人であり、曾祖母から受け継いだ灰色の瞳を持つ美女でした。 船内で出会った小五郎に2つ目のエッグの探索を依頼し、同行を申し出た者も疑わず受け入れるなど、令嬢らしい穏やかな性格です。幼い頃に聞かされた、「バルシェ・ニクカッタベカ」という謎の言葉が妙に記憶に残っていると話し、古城の暗号を解くヒントになりました。 香坂夏美を演じた篠原恵美は、『美少女戦士セーラームーン』の木野まこと/セーラージュピター役が有名で、近年は母親の役を多く演じています。
乾将一/cv.大塚周夫
乾将一は美術商を営む45歳。エッグを狙い、鈴木近代美術館を訪れた来客者のひとりでした。 どこか胡散臭い雰囲気の通り、紳士的な態度の裏に卑劣な本性を隠していて、横須賀の古城にも財宝を盗むために同行します。一行を出し抜きコソ泥のような真似をするも、喜市の仕掛けた防犯装置に阻まれ、最後は右目を撃たれて殺害されました。 乾将一を演じた声優は故・大塚周夫。『ゲゲゲの鬼太郎』のねずみ男、『忍たま乱太郎』の山田先生など数々の代表作を持ち、同じく声優の大塚明夫の父でもあります。
寒川竜/cv.大塚芳忠
寒川竜はフリーの映像作家で、32歳。取材と称して鈴木近代美術館を訪れるも、鈴木財閥会長秘書・西野真人とは面識があり、個人的なトラブルがあるようです。 どういう経緯か、ニコライ皇帝の三女・マリアの指輪を所持しており、それを明かした当日に右目を撃たれ殺害されました。捜査の結果、マリアの指輪と船内で回していたビデオカメラの録画データの紛失が判明し、指輪は西野の船室で見つかります。 寒川竜を演じるのは声優の大塚芳忠。代表作は『機動戦士Zガンダム』のヤザン・ゲーブルや『NARUTO-ナルト-』の自来也などで、報道番組のナレーションでもお馴染みです。
セルゲイ・オフチンニコフ/壤晴彦
セルゲイ・オフチンニコフはロシア大使館一等書記官で、41歳のロシア人。インペリアル・イースター・エッグの本国返還を求め、鈴木近代美術館を訪れました。 日本語が非常に堪能で、屈強な体格とは裏腹に終始、紳士的な態度を取ります。寒川が持つ指輪に興味を示す一方で、本当にマリアのものか疑問を抱いていた様子。古城では隠し通路の暗号にロシア語が使用されていたため、入力する役を任されました。 壤晴彦は声優であり、演劇倶楽部『座』を主宰する俳優、演出家。声優としては吹き替えがメインで、『ラ・ラ・ランド』ほかのJ・K・シモンズ、「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズなどでジェフリー・ラッシュを担当しています。
スコーピオン
スコーピオンとは、国外に散逸したロマノフ王朝の財宝を専門に狙う怪盗。ICPOに国際指名手配を受ける連続強盗殺人犯ですが、正体は判明していません。 必ず対象の右目を撃ち抜き殺害する特徴があり、キッドと寒川の共通点が"右目の狙撃"だったため、コナンはスコーピオンにたどり着きます。使用する拳銃は「ワルサーPPK/S」で、劇中でサプレッサー、レーザーサイト、スコープを装着するシーンもありました。
ロシア・ロマノフ王朝の秘宝「インペリアル・イースター・エッグ」とは
「インペリアル・イースター・エッグ」とは、ロマノフ王朝の皇帝が皇后への贈り物として、ピーター・カール・ファベルジェの工房に作らせた卵型の宝飾品。 最後の皇帝ニコライ2世の遺産であり、「世紀末の魔術師」の中では1885年~1913年の間に全50個作られ、51個目が発見されます。製作者は香坂夏美の曽祖父・香坂喜市で、ファベルジェの工房で細工師をしていた彼は、"世紀末の魔術師"の異名で称賛されました。 喜市はロシア人の女性と結婚し、ロシア革命後、妻を連れて日本へ渡ります。その後、1921年に妻を亡くし、横須賀市に城を建設。2つで1つのエッグを、一方は城の地下室に埋葬した妻の棺に、もう一方にそのエッグを見つけるヒントを隠して、香坂家に遺したのでした。 エッグは別名「メモリーズ・エッグ」と言い、2つ重ねて地下室の台座に乗せるとニコライ2世の像がアルバムをめくり、壁に一家の写真が写し出されます。 「ロシア革命で家族を喪い、喜市の手引きで日本に亡命したと思われるニコライ皇帝の三女マリアのため。」コナンはそう推理し、一家の写真の中に香坂夫妻のものが含まれていたことなどから、"とある仮説"を導き出しました。
「世紀末の魔術師」事件の真犯人とその目的【ネタバレ】
「世紀末の魔術師」の事件の真犯人は、スコーピオンその人。正体はロマノフ王朝研究家を名乗り、エッグを狙っていた中国人、浦思青蘭(ほし・せいらん/cv.藤田淑子)です。 彼女は史実でもニコライ皇帝一家と親しく、ロシア帝国崩壊の一因を作ったとして暗殺された、怪僧ラスプーチンの末裔でした。浦思青蘭の目的とは、ロマノフ王朝の遺産を先祖の代わりに全てを手にすること。ロマノフ王朝の遺産は、縁の深いラスプーチンのものであると信じていました。 また、本当は中国人ではなくロシア人で、名前の中国語読み「プース・チンラン」はラスプーチンのアナグラムのため、偽名なのは間違いありません。 右目を狙撃するのは、ラスプーチンの遺体が頭蓋骨が陥没し片目が潰れた状態だったのを真似て、彼の無念を晴らそうとしたからです。先祖への執着は非常に強く、エッグを盗んだキッドも、ラスプーチンを「世紀の大悪党」と称した小五郎も右目を狙われています。 寒川には船室に飾っていたラスプーチンの写真を、乾には城で銃にサイレンサーを付けるところを見られてしまい、口封じのために殺害しました。
怪盗キッドはなぜエッグを盗んだのか?【ネタバレ注意】
怪盗キッドがインペリアル・イースター・エッグを盗んだのは、エッグの「正当な持ち主である香坂家の後継者、香坂夏美の元に返すため」でした。 劇中でエッグのサプライズ、そしてコナンの仮説から、夏美の曾祖母こそニコライ皇帝の三女マリアであると示唆されました。ニコライ皇帝の娘たちの中で唯一、マリアの遺体だけは発見されておらず、それが地下室に眠るのは喜市の妻であり、マリアであると思われます。 つまり、夏美と同じように灰色の瞳を持っていた祖母、母、そして夏美自身も、今は亡きロマノフ王朝の末裔というわけなのです。 コナンの推理では、城がマリアの祖国ロシアではなくドイツ風なのは、彼女の実母アレクサンドラ皇后がドイツ人だったことに由来するのだとか。キッドは製作者の子孫という以上に、マリア(ロマノフ王朝)の末裔に返したかった、ということなのでしょう。 ただし、キッドがなぜロマノフ王朝と香坂家の事情を知ったのか、ビッグジュエルと関係ない案件に手を出そうとしたのかは、劇中では明かされませんでした。
怪盗キッドがズルい!ロマン溢れる『名探偵コナン 世紀末の魔術師』は必見!
「世紀末の魔術師」の軸となったロマノフ王朝のマリア生存説は、2007年にアレクセイ皇太子と彼女の遺体が発見され、DNA鑑定によって完全に否定されました。 とは言え、ロマンがある解釈ですし、謎解きを重視したストーリーも魅力的です。ファンの人気も高く、2016年に公式が行った人気投票では全19作品中7位を獲得。ラストでコナンの前に新一に扮して現れ、「謎は謎のままにしておいた方がいい」と告げて行く怪盗キッドが本当にズルいので、まだ観ていないという人は必見です!! そんなキッドは、2019年4月12日公開の第23弾『名探偵コナン 紺青の拳(こんじょうのフィスト)』にて、キーパーソンを務めます。ぜひこの機会に、映画「世紀末の魔術師」を鑑賞済みの方も、キッドの劇場版初登場シーンを観返してみてください!