【ネタバレ】『ちはやふる 結び』の見え方が変わる!かるた5首の意味を考察
高評価作『ちはやふる 結び』はかるたの意味を知ればもっと面白くなる!【ネタバレあり】
映画「ちはやふる」シリーズの完結編である『ちはやふる 結び』(2018年3月17日公開)。テンポの良いストーリー展開やキャストの役柄とのマッチなど、本作の魅力は様々ですが、忘れてはいけないポイントがあります。 それは「かるた」そのもの。作中で印象的に登場する歌の数々には、登場した理由や深い意味が隠されており、それを知っていれば「結び」がさらに面白くなるはず!この記事では歌の意味を登場シーンと絡めて解説します。 ※この記事は『ちはやふる 結び』本編のネタバレを含んでいるので未視聴の方は注意してください。
①「みちのくの」:部室で菫が眺めている「恋の歌」の一つ
「陸奥の しのぶもぢずり 誰ゆゑに 乱れそめにし われならなくに」/河原左大臣
「みちのくの」は、瑞沢かるた部・新入部員の花野菫(優希美青)が部室で眺めていた「恋の歌まとめ」のうちの1首。作中ではこの歌がきちんと映るようにフォーカスされています。 意味は「陸奥で織られるしのぶもじずりの衣の模様のように、乱れる私の心。誰のせいでこうなったのでしょうか。」というもの。叶うはずのない高貴な女性への恋心を歌った男性の歌です。 この前のシーンで、太一(野村周平)に「新が千早に告白したこと」をバラしてしまった菫。これに対する太一の反応から、彼が本当に千早を想っていることを察したことで「みちのくの」の歌が印象的に取り上げられたのだと思います。 つまり、「みちのくの〜」=太一の心情であり、同時にそれを眺める菫の太一への恋心も表現されていると言えます。
②「ホトトギス」:部室の「茶道部の畳」の間で千早が見つけた歌
「ほととぎす 鳴きつる方を ながむれば ただありあけの 月ぞ残れる」/後徳大寺左大臣
「ほととぎす」の札は、太一が去った後のかるた部の部室で「茶道部の畳」の間に千早(広瀬すず)が見つけた歌。スピンオフ『ちはやふる 繋ぐ』にて、肉まんくん(矢本悠馬)がこっそり隠した札と同じものでもあります。 この歌の意味は「ほととぎすの鳴いた方向を向いたが、ほととぎすの姿はなく、ただ夜明けの下弦の月だけが残っているのであった。」というもの。 そして、この歌中の「ほととぎす」は太一のことを指しています。というのも、この札を見た直後、千早が号泣する姿と、太一との思い出が走馬灯のように流れたことから、ほととぎす=太一がもういないということを千早が改めて実感したことが言えるため。歌の意味を知ると、より千早の悲しみが伝わってきます。
③「こいすてふ」:部活の帰り、奏ちゃんと菫の会話中
「こいすてふ わが名はまだき 立ちにけり 人知れずこそ 思ひそめしか」
部活の帰り道、太一への恋心と、新(新田真剣佑)の告白を告げ口してしまったことを相談した菫に対して、奏ちゃん(上白石萌歌)が話に挙げた歌です。これは後述する「しのぶれど」と対になる歌で、1000年前に行われた「歌合わせ」にて最後まで優劣が付かなかったのだと奏ちゃんは言います。 意味は「恋しているという私の噂がもう立ってしまった。誰にも知られないように、心ひそかに思いはじめたばかりなのに。」と言うもの。これは、千早への告白がかるた界隈で噂になっている新の歌だと言えます。(それにしては大胆な場所で告白していますが……) そして1000年前と同じように、現代で「しのぶれど」と「こいすてふ」は再び競い合うこととなります。
④「しのぶれど」:部活の帰り、奏ちゃんと菫の会話中
「しのぶれど 色に出でにけり わが恋は 物や思ふと 人の問ふまで」/平兼盛
「こいすてふ」と優劣を競い合った歌で、意味は「私の恋心は誰にも知られまいと隠してきたが、ついに堪えきれず顔に出てしまったのか。何か物思いがあるのかと人が尋ねてくるほどに。」というもの。 これは、千早への恋心を必死に隠しながら彼女のそばにおり、且つ千早以外の人にはその恋心を知られている、太一の歌だと言えます。 前述したように、「しのぶれど」と「こいすてふ」は再び競い合います。瑞沢と藤岡東が戦った全国大会決勝戦で4人全員が運命戦になり、その札が上記の2首だったのです。そこで、どちらを敵陣に送るか選択を迫られた太一が選んだのは「しのぶれど」。 そして太一が選んだ札が最後に読まれ、瑞沢は優勝します。これは、かるたや恋心と真剣に向き合った太一が報われた瞬間であり、「結び」の名シーンの一つだと言えます。
⑤「花の色は」:周防名人の予備校講演中に登場した歌
「花の色は うつりにけりな いたづらに わが身世にふる ながめせしまに」/小野小町
この歌は、名人である周防(賀来賢人)が予備校での講演の最後に学生に紹介したものです。「花の色が褪せてしまったように、私の美しさも衰えてしまったわ。」という時の流れを憂いた気持ちが歌われています。 この歌を紹介した際に周防は「時の流れには誰も(小野小町も)逆らえないけど、この歌は1000年先に届いた。君たちは一瞬を永遠に止める力がある。」と呟きます。さて、ここで言われている永遠とは一体何なのでしょうか。 そこで挙げられるのは「瑞沢かるた部」ではないでしょうか。なぜなら、千早が後輩たちに「瑞沢かるた部がずっとずっと、1000年先も続くように!」と部を託しているセリフや、実際に千早が指導者となったかるた部の様子が映されているから。ここから、今後も瑞沢かるた部が続いていくことが暗示されていると思われます。一時は廃部の危機にもあった瑞沢かるた部を永遠に変えたのです。
⑥「ちはやふる」:冒頭、名人・クイーン戦で登場【結末ネタバレ注意】
「ちはやふる 神代もきかず 竜田川 からくれなゐに 水くくるとは」/在原業平
あまりにも有名なこの歌は「結び」では、冒頭の名人・クイーン戦で登場。詩暢(松岡茉優)が取ったこの札を札ガールである千早が手渡しします。この歌は元々在原業平がかつての恋人を想って詠んだもの。また、新にも言われているようにこれは千早の歌でもあります。
そして注目すべきなのは、「結び」 のラストシーンで千早がかるたクイーンに輝いたことが明かされますが、そのことが暗示される際に、同時にこの歌が取り上げられていること。 例えば、全国大会決勝にて千早も含む全員が「ちはやふる」を取られてしまうシーンがありますが、この直後の筑波くん(佐野勇斗)の一言によって空気が軽くなり、同時に千早の動きも軽くなります。それはまるで、クイーンのかるただと皆が驚くほど。
つまり、ここで将来千早がクイーンになることが暗示されていますが、そのきっかけは「ちはやふる」の歌であるという訳です。
『ちはやふる 結び』は2019年3月29日地上波放送!
『ちはやふる 結び』は2019年3月29日に「金曜ロードSHOW!」にて夜9時より地上波初放送されます。 放送時には、是非かるたの意味を思い起こしながら観てみてください。千早たちの感情や青春とのリンクに感動するはず。