2019年8月23日更新

【ネタバレ】映画『ロケットマン』評価感想を紹介 サントラ必聴の新たな名作ミュージカルが誕生!

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『ロケットマン』タロン・エジャトン
©2018 Paramount Pictures. All rights reserved.

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映画『ロケットマン』 はただの伝記映画ではない!?高評価続出のファンタジーミュージカル

グラミー賞5回受賞、シングルとアルバムの総売上は3億枚以上とされ、「史上最も売れたアーティスト」第5位の記録を持つエルトン・ジョン。そんな彼の半生をベースにしたミュージカル映画『ロケットマン』が2019年8月に公開となりました。 エルトン・ジョン自身の音楽で、彼の人生の光と影を見事なミュージカルに仕上げた本作は、エルトン・ジョンのファンはもちろん、ミュージカル好き、エンターテインメント好きに広くおすすめしたい作品です。 この記事では『ロケットマン』のあらすじやキャスト・スタッフ、ネタバレ感想評価から意外なトリビアまで、幅広く紹介します! ※この記事には映画『ロケットマン』のネタバレがあります。本編を未鑑賞の方はご注意ください。

『ロケットマン』のあらすじを紹介

『ロケットマン』タロン・エガートン
©2018 Paramount Pictures. All rights reserved.

イギリス郊外の町に暮らす少年レジナルド・ドワイトは、不仲な両親のもとで孤独を感じながら育ちました。しかし彼は、天才的な音楽の才能を見出され王立音楽院に入学します。ミュージシャンを夢見て古臭い自分の名前を捨てることを決意したレジー。新しい名前は“エルトン・ジョン”です。 卒業後、レコード会社の公募広告を見て応募したエルトンは、同じく応募者のバーニー・トーピンに出会います。彼らはすぐに意気投合し、作詞家と作曲家兼歌手のパートナーになりました。その後、彼らの楽曲が音楽業界の目に留まり、エルトンはLAの伝説的ライブハウスでパフォーマンスすることに。ライブを大成功させた彼は一気にスターダムを駆け上がります。 しかし、素の自分とは違う“エルトン・ジョン”という仮面を被りつづけることで、彼は精神的に不安定になっていき……。

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タロン・エジャトン(エガートン)がその美声を披露

『ロケットマン』タロン・エガートン
©2018 Paramount Pictures. All rights reserved.

本作でエルトン・ジョンを演じるのは、「キングスマン」シリーズやアニメーション映画『SING/シング』などへの出演で知られるタロン・エジャトン(エガートン)です。 エジャトンは前述した「SING」でもエルトン・ジョンの「アイム・スティル・スタンディング」を披露しており、その歌声には定評がありました。しかし、今回世界的スーパースターを演じるにあたって、自分ですべての曲を歌うということもあり、かなりの練習を積みました。 またPeople誌によれば、本作への出演が決まったあと、エジャトンはエルトン・ジョンの自宅に招かれ、彼の夫と2人の子供たちと過ごしたそうです。そして、ジョンは2019年秋発売予定の自伝の原稿をエジャトンに読ませてくれたのだとか。エジャトンは彼と友人として接するうちに、映画のテーマでもある彼の二面性を知ることができたと語っています。

その他主要キャスト

ジェイミー・ベル/バーニー・トーピン役

エルトン・ジョンと多くの作品を共作しているバーニー・トーピンは、彼のキャリア、人生において欠かすことのできない人物です。エルトンが現在の名前に改名したのも、彼の音楽活動の道が開けたのも、トーピンと出会ってから。トーピンは、歌手“エルトン・ジョン”を構成する重要な要素といっても過言ではないでしょう。 そんな重要キャラクターを演じるのは、『リトル・ダンサー』(2000)で主人公ビリー・エリオットを演じた若手実力派俳優ジェイミー・ベルです。

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リチャード・マッデン/ジョン・リード役

リチャード・マッデン『ロケットマン』
©️Supplied by LMK/zetaimage

エルトン・ジョンの当時の恋人で彼のマネージャーも務めたジョン・リードを演じるのは、人気テレビシリーズ『ゲーム・オブ・スローンズ』のロブ・スターク役などで知られるリチャード・マッデンです。 Queenのマネージャーをしていたことでも知られるジョン・リードは、1970年から1998年の長きにわたってエルトンを支えた人物。そのうちの5年間は恋人でもありました。しかし後に横領が発覚し解雇され、裁判沙汰にもなっています。

ブライス・ダラス・ハワード/シーラ・フェアブラザー役

『ロケットマン』ブライス・ダラス・ハワード
©2018 Paramount Pictures. All rights reserved.

「ジュラシック・ワールド」シリーズのクレア・ディアリング役などで知られるブライス・ダラス・ハワードが、エルトンの母シーラを演じます。 シーラは結婚に不満を持ち、息子にも関心のない母親です。レジー(のちのエルトン)の孤独感に強い影響を与える人物です。

『ボヘミアン・ラプソディ』のデクスター・フレッチャー監督がメガホンを取る

デクスター・フレッチャー
© Julie Edwards/LFI/Avalon

『ロケットマン』の監督を務めるのは、デクスター・フレッチャー。 彼は、『ボヘミアン・ラプソディ』(2018)でクランクアップまで2週間というところで解雇されたブライアン・シンガーの後任として、同作のメガホンを取ったことでも知られています。 子役としてデビューしたフレッチャーは、自身もエルトン・ジョンと同じように薬物中毒に陥ったことがあるのだとか。「私はエルトンほど有名でもリッチでもないけど、ストーリーのなかで自分の経験を活かして語れることもあるーー若くして成功することの影響をね」とCBCにコメント。 そのうえで本作を「自分にとってもとてもパーソナルな作品。思い入れがある」と語っています。

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サントラも要チェック!『ロケットマン』に登場する楽曲を紹介

Your Song/僕の歌は君の歌

エルトン・ジョンの楽曲の中でも抜群に高い知名度と人気を誇る『Your Song/僕の歌は君の歌』。本作では、この曲が生みだされる瞬間が描かれています。とてもさりげなく、何気ない日常のなかでこの曲が生まれていくシーンは、とても美しく感動的です。 実は、エルトンを演じたタロン・エジャトンは英国王立演劇学校のオーディションでこの曲を歌ったのだとか。本作への出演で、「Your Song」が彼にとってさらに重要な意味を持つものになったのは間違いないでしょう。

Tiny Dancer/可愛いダンサー(マキシンに捧ぐ)

LAの伝説的ライブハウスでのライブを成功させたエルトンとバーニーは、その後スター歌手の家で開催されたパーティーに招かれます。そこでさっそく女性と仲良くなったバーニーを切ない気持ちで見守るエルトン。しかし彼も、このパーティでのちに恋人兼マネージャーとなるジョン・リードに出会います。 このシーンで流れる『Tiny Dancer/可愛いダンサー(マキシンに捧ぐ)』は、ジョンの楽曲の中でもよく知られている優しいラブソング。2人がそれぞれ相手と一瞬のうちに意気投合する様子をうまく表現しています。

Rocket Man/ロケット・マン

本作の表題曲となっている『ロケット・マン』がリリースされたのはエルトンの人気が絶頂であった1972年。この曲は、映画のなかで非常に重要なシーンで使われています。 エルトンがクスリを大量に服用して飛び込んだプールのなかから始まり、目まぐるしくステージをこなしていく彼の姿が映し出されていきます。 大スターになるにしたがってエルトンは日常生活からの乖離を感じはじめ、本物の愛や本物のつながりからはますます遠ざかるばかり。そんな感情を見事にとらえた歌詞と曲、そして映像の融合が魅力的です。 ポップなメロディにのせて、エルトンにキラキラとした影が落ちるようなシーンになっています。

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Goodbye Yellow Brick Road/黄昏のレンガ路

ミュージカル映画という特性上、劇中で歌うのはエルトンを演じたエジャトンだけではありません。物語の転換点となるこの曲を歌うのは、バーニー役のジェイミー・ベル。 Yellow Brick Road(黄色いレンガの道)とは、『オズの魔法使い』に登場するエメラルドの都につづく道ですが、本作ではエルトンが駆け上がったスターダム、そして常軌を逸したスターとしての生活を暗示しています。バーニーはそこから「いつになったら降りるんだ?いつになったら地に足をつける?」と歌いかけます。 自分を見失っているエルトンを助けようとするバーニーの思いは、このシーンではエルトンに届くことはありませんでした。

映画『ロケットマン』の評価・感想【ネタバレ注意】

海外での評価・賞レースでの成績は?

『ロケットマン』リチャード・マッデン、タロン・エガートン
©2018 Paramount Pictures. All rights reserved.

米大手映画レビューサイトRotten Tomatoesで、『ロケットマン』は批評家評価平均89%、観客評価平均88%と高い評価を獲得しています(2019年8月5日時点)。 実在する世界的スター、エルトン・ジョンの半生を題材にしていながら、製作当時から「伝記映画ではない」と強調されてきた本作。 たしかにそのストーリーは、彼の人生にあった実際の出来事や曲がリリースされた順番などがシャッフルされ、ミュージカルとして再構築されています。その点を受け入れられるかどうかで、本作の評価は変わっていきそうです。 また本作は、2019年のでカンヌ国際映画祭で、LGBTを題材とする作品に送られるクィア・パルムにノミネート。ティーン・チョイス・アワードではタロン・エジャトンが主演男優賞にノミネートされました。今後の賞レースにはどのように食い込んでくるのか楽しみですね。

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【レビュー】キラキラした闇を照らす友情という名の愛

エルトン・ジョンといえば、ド派手な衣装に身を包み観客の度肝を抜くパフォーマンスをする一方で、繊細なバラードも奏でる世界一のミュージシャン/パフォーマーのひとり、というイメージではないでしょうか。 本作では、ミュージカルシーンの見事な演出、選曲、そしてエジャトンのパフォーマンスに圧倒され、夢のような時間が過ぎていきます。その一方で、孤独なエルトンの心情を表現したシーンには胸をえぐられるような感覚に。 観客もエルトンの成功とその裏に隠された孤独を追体験するような、不思議な感覚になるファンタジックな映像にも惹きつけられる本作。

なりたい自分になることを決意し、名前を変えたエルトンは、その直後に作詞家志望のバーニー・トーピンと運命の出会いを果たしました。ファンの間ではむかしから言われていることですが、特にキャリア前半は“レジナルド・ドワイト”とバーニーのコンビこそが「エルトン・ジョン」というアーティストだった、ということが本作でもよくわかります。 その後きらびやかな衣装に身を包み、成功をおさめる一方で孤独を深めていくエルトンのそばにいたのも、やはりバーニーでした。エルトンは親や恋人からの愛を求めるあまり彼をないがしろにし、ついにはバーニーもエルトンのそばから離れてしまいます。 しかし、最後の最後にエルトンに手を差し伸べたのもまたバーニーでした。非凡な才能と抜群の相性のよさで、創作上のパートナーでもあり親友でもある2人。ありのままのエルトンを理解し、受け入れていたのはバーニーだけでした。彼らの友情という名の愛に胸が熱くなります。

『ロケットマン』のトリビアを紹介

『ボヘミアン・ラプソディ』とは多くの共通点が!?

ボヘミアンラプソディ
© 2018 Twentieth Century Fox

『ロケットマン』と『ボヘミアン・ラプソディ』には多くの共通点があります。 まずは、監督のデクスター・フレッチャー。彼は『ボヘミアン・ラプソディ』でブライアン・シンガーが解雇されたあと、最終監督として映画を完成させました。また、映画の主人公であるエルトン・ジョンとフレディ・マーキュリーは同年代に活躍し、ともにセクシャルマイノリティであることも共通点としてあげられます。 また、「ボヘミアン」でジョン・リードを演じたエイダン・ギレンと、本作で同じ人物を演じたリチャード・マッデンは、ともに『ゲーム・オブ・スローンズ』に出演していました。

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エルトン・ジョンは別の俳優で映画化を望んでいた?

『ロケットマン』タロン・エジャトン(エガートン)
©2018 Paramount Pictures. All rights reserved.

『ロケットマン』の制作が本格的に動き始めた2012年、エルトン・ジョンは本作の主演にジャスティン・ティンバーレイクを希望していたそうです。というのも、2001年にティンバーレイクはジョンのシングル『This Train Don't Stop There Anymore』のMVでエルトン役を演じたため。 しかし結局は彼に連絡することはなく、トム・ハーディやジェームズ・マカヴォイ、ダニエル・ラドクリフらが主演に検討されましたが、最終的に役を射止めたのはタロン・エジャトンでした。

エルトン・ジョンのものまねは禁止だった?

本作でタロン・エジャトンは、すべての歌を自分で歌っています。彼は当初、ジョンの声に似せて歌おうとしていたのだとか。 しかし、本人から「僕みたいに歌おうとするのはやめなさい」と言われたそうです。エジャトンはこのことについて、「彼は僕に自分なりに歌ってほしかったんです。それでなんだか解放されたような、いい気分になりました」と英Attitude誌のインタビューで語っています。

映画『ロケットマン』は2019年8月23日から全国ロードショー

『ロケットマン』タロン・エジャトン
©2018 Paramount Pictures. All rights reserved.

世界的スーパースター、エルトン・ジョンの半生を題材にしたミュージカル『ロケットマン』。主演を務めたタロン・エジャトンの素晴らしいパフォーマンスとファンタジックな映像で、現実離れしたジョンの半生を見事に表現しています。 本作は「伝記映画ではない」ため、実際の出来事や曲のリリース順とは関係なく物語が紡がれていくのです。それでも栄光と転落のジェットコースターを彩る名曲の数々は、観る者のの心を揺さぶります。少年時代から愛を求めつづけた彼は、ひとつだけ確かな絆を持っていたのです。 「愛されたい」という人間の普遍的な欲求を描いた本作。エルトン・ジョンを、そして彼の曲をあまり知らなくても楽しめるエンターテインメント大作に仕上がっています。