名作『ターミネーター2』完全解説 「T2」を紐解くと分かるシリーズの魅力
名作『ターミネーター2』を徹底解説!新作「ニュー・フェイト」との関連性は?【ネタバレ注意】
1991年に公開されたアーノルド・シュワルツェネッガー主演『ターミネーター2』。1984年の『ターミネーター』の続編として製作され、大ヒットを記録しました。これ以降もシリーズとしてリブート作を含め、2015年までに3作が製作されています。 そして満を持して2019年、シリーズ新作『ターミネーター:ニュー・フェイト』が公開。『ターミネーター2』のジェームズ・キャメロンが製作に復帰した、「T2」の物語の正統な続編といわれています。 「ニュー・フェイト」を観る前に、シリーズを通しての関連性も知っておきたいところ。今回はシリーズ最大のヒット作となった『ターミネーター2』を、キャラクターやキャスト、名言などからその魅力を解説していきます。 ※本記事には、作品に関するネタバレを含んでいます。未鑑賞の方はご注意ください!
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「T2」のあらすじ&他のシリーズ作品との関連性を整理
『ターミネーター2』のあらすじ
「ターミネーター」シリーズの基本となる舞台は、人類と機械との戦争が勃発した近未来。1作目『ターミネーター』では近未来から現在に送られてきたロボット「ターミネーター」(アーノルド・シュワルツェネッガー)に狙われる「人類の救世主の母」サラ・コナー(リンダ・ハミルトン)と、人類側から送られたカイル・リース(マイケル・ビーン)とのロマンスが描かれました。 続編『ターミネーター2』は、カイルとの子ジョン(エドワード・ファーロング)を生んだサラが「ターミネーター」を生み出すサイバーダイン社を襲撃し、精神病患者として警察病院に収監されているところから始まります。 母の話を信じず非行に走っていたジョンの前に、未来からターミネーターが2体送り込まれます。1体は前作でカイルを死に追いやったT-800、もう1体は液体金属で変形自在の新型T-1000(ロバート・パトリック)。 しかし今回のT-800は、未来のジョンが過去の自分を守るために再プログラムして送り込んだものでした。本当の敵を知ったサラとジョンは、T-800とともにT-1000と死闘に立ち向かいます。
『ターミネーター3』(2003)と『ターミネーター4』(2009)との関連性
『ターミネーター3』では、青年に成長したジョン(ニック・スタール)と後の妻ケイト・ブリュースター(クレア・デインズ)が主人公に。登場するターミネーターは、ジョンと彼の副官となるケイトを抹殺する目的で送り込まれた最新の女性型T-X(クリスタナ・ローケン)と、彼らを守るため未来のケイトが送り込んだT-800の改良版T-850。本作では、人類に反旗をひるがえす機械側の頭脳「スカイネット」誕生の秘密が明かされます。
シリーズ4作目『ターミネーター4』でついにスカイネットが起こす核戦争「審判の日」後の世界が舞台となり、反乱軍の隊長となったジョン(クリスチャン・ベール)を中心に物語が展開。本作にはジョンの父となる少年カイルや、1・2作目のT-800の試作品も登場します。
5作目『ターミネーター:新起動/ジェニシス』(2015)はリブート作
シリーズ5作目にしてリブート作として製作され、過去作とも少なからず関連がある『ターミネーター:新起動/ジェニシス』。アーノルド・シュワルツェネッガーのシリーズ復帰作でもあります。 シリーズ1〜4作の直接的な続編ではなく、T-800をサラの少女時代から彼女を守る「守護者」とする設定になり、T-1000も登場。1作目でカイルが到達した1984年が、本作では守護者T-800と戦士として育ったサラのいるパラレルワールドとなっています。
キャラクター/キャスト紹介
T-800/アーノルド・シュワルツネッガー
シリーズを通してT-800を演じてきたのは、元ボディビルダーで政治家としても活躍したオーストリア出身の俳優アーノルド・シュワルツネッガー。1作目ではサラを狙うターミネーターとして、2作目以降はサラとジョンを守る守護者として登場する主要キャラクターです。 過去に転送された時、裸で出現するシーンが有名。その後バイカーからライダース・ジャケットと革製パンツとブーツを奪って着用し、サングラス姿がトレードマークになりました。
サラ・コナー/リンダ・ハミルトン
初代サラ・コナーを演じたのは、本シリーズで脚光を浴びたアメリカ人女優のリンダ・ハミルトン。シリーズ6作目となる『ターミネーター:ニュー・フェイト』(2019)で再びサラを演じています。 スカイネットに対抗するレジスタンスのリーダーで「人類の救世主」となるジョン・コナーの母親。カイルを失った後は自ら鍛え上げた戦士となり、ジョンと未来を守るためにターミネーターと死闘を繰り広げます。
ジョン・コナー/エドワード・ファーロング
サラとカイルの息子ジョンを演じたのは、日本でも大人気だった当時14歳のエドワード・ファーロング。「ニュー・フェイト」にジョン・コナー役で出演し、28年ぶりにシリーズ復帰を果たしました。 少年時代の自分を守るために、再プログラムしたT-800を送り込んだのは未来のジョン。少年ジョンは母が語る未来はホラ話と思っており、T-800が現れるまでは非行に走っていましたが、T-800に護られるうちに心を通わせて慕うようになります。
T-1000/ロバート・パトリック
最新型ターミネーターのT-1000を演じたのは、ドラマ『X-ファイル』のジョン・ドゲット役でも知られるロバート・パトリック。T-1000の徹底した無表情な演技は、斬新な映像表現と相まって衝撃的でした。 T-1000はスカイネットからジョンの元に送り込まれた暗殺者で、液体金属製のターミネーター。銃弾を受けても元どおりになり、触れたものに擬態することもできる正に不死身の代物です。
「T2」の魅力をネタバレありで解説
ジョン・コナーを演じたエドワード・ファーロングの魅力
ジョン・コナー役に決まったエドワード・ファーロングは、その時点ではまったく演技経験のない少年でした。「T2」で映画俳優デビューを飾り、瞬く間にスターに。瑞々しい若さと尖った感覚を持ち合わせ、T-800と固い絆を築く過程を真摯に演じた彼の存在が、「T2」の魅力の一つであることは間違いありません。 特に日本での人気ぶりは本国を凌ぐほどで、日本でだけ歌手デビューを飾ったり、学ラン姿で出演したCMでも親しまれました。 しかし急激にスターダムに上がった代償か、一時は薬物やアルコール依存症でキャリアにも支障が。それでもシリーズ6作目にジョン・コナー役で復帰することがわかり、古参の「T2」ファンも胸を撫で下ろしたことでしょう。
画期的だったT-1000の映像表現
液体金属で出来たT-1000が再生したり模倣したりする映像表現は、監督を務めたジェームズ・キャメロンによって、当時の最先端のVFXを使って製作されました。 変形する際には、3DCGと特殊メイクを駆使して撮影されたそう。1990年初めにはまだ開発途上だった「デジタルモーフィング」の技術も使われ、かなり実験的かつ高品質な映像を創り出しました。 いくら撃ってもすぐに再生し、執拗に無表情で追ってくるT-1000の姿に、多くの人が戦慄したことでしょう。こうした映像表現が高い評価を得て、アカデミー賞では視覚効果賞、メイクアップ賞を受賞しています。
機械を超えたT-800〜衝撃と涙のラスト【ネタバレあり】
製鉄所でT-1000との最終対決に挑んだサラとジョン、そしてT-800。T-1000は液体窒素を浴びて氷漬けになって粉砕されても、溶鉱炉の熱ですぐに溶解して再生。しかし短時間に急激な変化を繰り返したため、機能不全を起こしていました。そしてサラとT-800の猛攻によって溶鉱炉へ転落し、完全に溶解して最後を迎えます。 その前にサイバーダイン社で1984年のT-800のマイクロチップを手に入れていたジョンは、未来のターミネーターの元となるため溶鉱炉へ捨てて消滅させます。自分も同じマイクロチップを内蔵しているため、自らを溶鉱炉へ沈めようとするT-800。 しかしジョンにとってすでに「機械」を超え、父のような存在となっていた彼を「自殺」させるわけにいかず、泣いて止めます。その涙を見て、それまでなぜ人間が泣くのかわからなかったT-800は、初めて感情と命の意味を悟るのです。
「T2」の名言をピックアップ
「Stay here. I’ll be back. (ここに居ろ。すぐに戻る)」
“アイル・ビー・バック”でお馴染みのこのセリフ。1作目で登場して以来、「ターミネーター」シリーズといえばこれというほど浸透している名言です。サイバーダイン社に侵入し、研究室を爆破したジョンとサラが催涙弾を打ち込まれた際、警察のバンを奪いに行くT-800がこのセリフを言っています。もちろん、新作「ニュー・フェイト」でもこのセリフは健在の模様!
「Hasta la vista, baby. (またな、ベイビー)」
“アスタ・ラ・ビスタ”はスペイン語で「またね」という意味。「T2」では“アイル・ビー・バック”の次に有名なセリフではないでしょうか。ジョンに会った初めの頃はマシンらしく固い言葉しか話さなかったT-800に、メキシコへ逃亡中にジョンが教えたくだけた言葉使いがこれ。液体窒素で固まったT-1000に発砲する前に言い放ちました。
「I know now why you cry. But it's something that I can never do. (なぜ泣くのか、今はわかる。泣くことはできないが)」【ネタバレあり】
先述のラストシーンで、溶鉱炉へ入ろうとするT-800を止めて泣くジョンに言った言葉。これまでジョンと行動する中で、人間がなぜ“泣く”のかが理解できなかったT-800ですが、この時初めて人間が持つ感情と生命の意義が“わかった”瞬間でした。このセリフは「T2」の重要なテーマ「機械は心を持つことができるのか」を代弁する言葉であり、ラストでサラが語った未来への希望も引き出しています。
「T2」の正統な続編『ターミネーター:ニュー・フェイト』が公開 本作とのつながりとは?
ジェームズ・キャメロンが製作・脚本を担当し、「T2」以来のシリーズ復帰となる6作目『ターミネーター:ニュー・フェイト』。監督は『デッドプール』(2016)のティム・ミラーが務め、2019年11月8日に日本公開も決まっています。 サラ・コナー役のリンダ・ハミルトンとT-800役のアーノルド・シュワルツェネッガーも復帰し、予告編には歳を重ねた「T2」のT-800と思わしき人物が登場。さらに今作では新たな敵となる最新ターミネーター「REV-9」も現れ、T-1000の液体金属ボディを踏襲しつつ進化させた姿で襲いかかります。 「T2」の正統な続編と銘打たれた本作。「T2」のその後の世界を描く本当の意味での続編ということで、あのラスト以降サラがどんな人生を歩んできたのかが明らかになるようです。
『ターミネーター2』はなぜ今も支持されるのか?シリーズ一の名作を紐解くと見える「ターミネーター」の世界
「機械が心を持つことはできるのか?」が大きなテーマだった『ターミネーター2』。1作目は撃っても死なないターミネーターの恐ろしさに焦点を当てたSFスリラーでしたが、2作目ではその恐ろしさを踏襲しながらも前作のターミネーターを味方に変え、このテーマに重点を置いた点が秀逸でした。 「T2」はシリーズ一のヒット作であり、名作として長年愛されてきた作品。SFの世界でも長年広く主題として用いられてきた「心を持つ機械」をメインに据えて、人類の未来へ希望をつなごうとした意欲作です。 おそらくここに、いまだ支持される理由がありそうですね。「ニュー・フェイト」でサラとT-800がどんな展開を迎えるのか、それを見届けるられるのも楽しみです。