映画『リチャード・ジュエル』で描かれる事件の背景とモデルになった人物とは?【あらすじ・キャスト】
イーストウッド最新作『リチャード・ジュエル』が日本でも公開!モデルとなった実在の人物と事件の背景とは?
2018年に『運び屋』で監督・製作・主演を務め、その健在ぶりを見せつけたクリント・イーストウッド。次に手がけたのは、アメリカで実際にあった事件と人物に焦点を当てた『リチャード・ジュエル』です。 タイトルに実在の人物の名を冠している本作。実際の事件とはどんなもので、リチャード・ジュエルとは一体何者だったのでしょうか? ここでは、『リチャード・ジュエル』のあらすじやキャスト/登場人物を紹介し、さらに作品の基となった事件と実在の人物「リチャード・ジュエル」について詳しく解説していきます。
映画『リチャード・ジュエル』のあらすじを紹介
1996年7月27日、アトランタ・オリンピック会場。公園のベンチ下に不審なバックが置かれているのを発見した警備員のリチャード・ジュエルは通報し、すぐに避難を促して多くの人々を救いました。 マスコミはこぞって彼をヒーローとして書き立てましたが、数日後に地元紙が“FBIが第一発見者を疑っている”と報じ、一転して犯人扱いを受けることに。FBIによる家宅捜索は2度にわたり、執拗な捜査に精神的に追い詰められていきます。 果たしてリチャード・ジュエルは凶悪な爆弾魔なのか、それとも人々を救った市民の英雄なのか?世論がマスコミに流される中、ジュエルの窮地を救うために立ち上がった弁護士ワトソン・ブライアントは、真実を明らかにすることができるのでしょうか。
映画の基になったアトランタ五輪の爆破テロ事件と実在のリチャード・ジュエルとは?
From director Clint Eastwood - The world will know his name and the truth. #RichardJewell – Only in theaters December 13. pic.twitter.com/YVAhxZ26a1
— Richard Jewell (@RJewellFilm) October 23, 2019
アトランタ五輪の爆破テロ事件とは?
1996年7月27日のアトランタ・オリンピック会場で起きた爆破事件は、「センテニアル・オリンピック公園爆破事件」として知られています。センテニアル・オリンピック公園のベンチの下にパイプ爆弾が仕込まれたバックが置かれたテロ事件で、死者2名、負傷者100名を出す惨事となりました。 警備員リチャード・ジュエルがバックを発見したことで、さらなる犠牲者を出さずに済んだものの、FBIとマスコミによる強引な捜査と報道によって事態は混乱を極めました。ジュエル自身の生活も脅かされ、いわゆる「報道被害」を受けることになります。 約3カ月後の10月、FBIはジュエルを捜査対象から外すことを正式発表し、容疑者として追われる日々は終わりました。その7年後、2003年にようやく爆破テロ事件の真犯人エリック・ルドルフが逮捕されています。
リチャード・ジュエルとはどんな人物だったのか?
リチャード・ジュエルは1962年12月17日、バージニア州ダンビル生まれ。4歳の時に両親が離婚し、母の再婚によって姓がホワイトからジュエルに変わりました。6歳の時にアトランタへ移りましたが、義父が家を出た後は母一人子一人で助け合う生活を送ったようです。 一度は家を出たリチャードでしたが、母が足の手術を受けると聞き、オリンピックの警備員の仕事を得てアトランタの母の家に戻ります。しかしテロ事件が起こった当時、33歳にして母親と二人暮らしという事実が、“マザコン”といったステレオタイプな彼の人物像を報道するのに少なからず影響したようです。 事件の容疑者としてジュエルをスクープしたキャシー・スクラッグスは、彼がFBIがプロファイルした犯人像に近いとし、“事件を起こす動機は、ヒーロー願望と警察への憧れ”として報道。しかし実際は、ジュエルは警察学校で訓練を積んだ警察官であり、警備の仕事に誇りを持って取り組む実直な人物だったのです。 容疑が晴れた後はマスコミを相手取って名誉毀損を問う裁判を起こし、汚名をそそぐことに全力を尽くしました。リチャード・ジュエルは2007年8月29日、ジョージア州ウッドベリーの自宅で、心臓発作により死去しています。
映画の登場人物/キャストを紹介
リチャード・ジュエル/ポール・ウォルター・ハウザー
リチャード・ジュエルを演じるのは、1986年10月15日生まれのアメリカ人俳優・コメディアンのポール・ウォルター・ハウザーです。2017年の『アイ, トーニャ 史上最大のスキャンダル』でも、実在の人物であるショーン・エッカートを演じています。 主人公となるリチャード・ジュエルは、アトランタ・オリンピック会場で爆発物を発見し、多くの人々を救った警備員。マスコミによってヒーローに祭り上げられた後、一転してFBIに容疑者とされました。本作は彼の数奇な運命を描いています。
ワトソン・ブライアント/サム・ロックウェル
リチャード・ジュエルをサポートする弁護士ワトソン・ブライアントを演じるのは、1968年11月5日生まれのアメリカ人俳優サム・ロックウェル。2017年には『スリー・ビルボード』のディクソン巡査の演技で、アカデミー賞とゴールデングローブ賞の両方で助演男優賞を受賞しました。 ワトソン・ブライアントは、容疑者として逮捕されたリチャード・ジュエルを救おうと奮闘した実在の人物。マスコミもFBIも世論も、誰もがジュエルをテロ犯と疑う中、たった一人彼を信じ続け、会見では「彼を陥れようとしているのは、政府とマスコミだ」と主張しました。
ボビー・ジュエル/キャシー・ベイツ
リチャード・ジュエルの母ボビーを演じるのは、1948年6月28日生まれのアメリカ人女優キャシー・ベイツ。1990年の主演作『ミザリー』での怪演で、アカデミー賞主演女優賞を獲得したオスカー女優です。 ボビー・ジュエルも実在の人物で、容疑者となった息子を心配する様子が予告編に映し出されています。マスコミの過剰な報道に心を痛め、「息子は人の命を救ったんです」と決意に満ちた表情で会見する姿が印象的です。
キャシー・スクラッグス/オリヴィア・ワイルド
記者キャシー・スクラッグスを演じるのは、1984年3月10日生まれのアメリカ人女優オリヴィア・ワイルドです。テレビドラマシリーズ『The O.C.』でのアレックス・ケリー役で注目を集め、近年では監督業にも進出しています。 キャシー・スクラッグスは、ジュエルがFBIに容疑者とされたことをスクープしたアトランタ地元紙の女性記者。“悪人か聖人か”というタイトルで書かれたその記事をきっかけにジュエル容疑者説は過熱し、世論に火をつけていきます。
トム・ショー/ジョン・ハム
FBI捜査官のトム・ショーを演じるのは、1971年3月10日生まれのアメリカ人俳優ジョン・ハムです。テレビドラマシリーズ『MAD MEN マッドメン』では主演を務め、エミー賞とゴールデングローブ賞で主演男優賞を受賞しています。 トム・ショーはジュエルを容疑者として尋問するFBI捜査官で、彼が犯人である証拠を集めることに躍起になります。予告編では声紋判定のボイスサンプルを得るため、「公園に爆弾がある、爆発まで30分」と言うようにジュエルに執拗に迫っています。
監督はクリント・イーストウッド、原作は雑誌記事から
『リチャード・ジュエル』の監督を務めるのは、本作製作時に89歳を迎えたクリント・イーストウッド。高齢にもかかわらず、いまだ映画製作というタフな現場に情熱を持って挑み続けている稀有な監督です。先日公開された製作現場のメイキング写真でも、真摯に演者と向き合う姿がとらえられています。 本作の企画は当初、レオナルド・ディカプリオとジョナ・ヒルの主演・製作でスタートしたものでした。後に二人は出演は降板しましたが、レオナルド・ディカプリオのアッピアン・ウェイ・プロダクションズは引き続き製作には携わっています。2015年にはクリント・イーストウッドがこの企画に意欲を見せていることが報じられ、2019年に正式なオファーが出されたようです。 『リチャード・ジュエル』の原作は、アメリカの雑誌「Vanity Fair」に掲載されたマリー・ブレナーの記事「The Ballad of Richard Jewell」。テロ爆破事件で翻弄されたリチャード・ジュエルの波乱の人生を綴った衝撃のルポです。
映画『リチャード・ジュエル』の日本公開は2020年1月!全米はショーレースも視野に?
相変わらず社会性の高いテーマを主題にした作品を、意欲を持って撮り続けているクリント・イーストウッド監督。映画『リチャード・ジュエル』はアメリカでは2019年12月13日に全米公開され、アカデミー賞などショーレースに参戦することも視野に入れているようです。 SNSで簡単に他人を誹謗中傷できる現代社会において、リチャード・ジュエルのケースほど教訓になる事件はないのではないでしょうか。実際にこれまでに日本でも「松本サリン事件」といった報道被害による冤罪事件が起きており、とても他人事ではないように感じます。日本では、2020年1月17日に全国公開されることが決定しています。