2020年6月29日更新

映画『ブラック・スワン』を徹底解説!現実だったのはココだけ!?【ネタバレ注意】

『ブラック・スワン』
© Fox Searchlight Pictures

ナタリー・ポートマンがバレリーナ役でアカデミー主演女優賞に輝いた『ブラック・スワン』は、主人公の妄想と幻覚に彩られた映像が独特なサイコスリラー。その謎めく展開をネタバレありで徹底解説します。

目次

映画『ブラック・スワン』を徹底解説!【ネタバレ注意】

ダーレン・アロノフスキー監督によるサイコスリラー『ブラック・スワン』。バレリーナの主人公ニナを演じたナタリー・ポートマンが迫真の演技で魅せ、アカデミー主演女優賞を獲得した名作です。 バレエ「白鳥の湖」の主役に抜擢されたニナが、プレッシャーで精神を崩壊させていく姿を描いています。本作は、ニナの妄想によって展開に矛盾や謎が生じ、どこまでが現実でどこからが妄想なのかが曖昧なことが特徴です。ここでは『ブラック・スワン』をネタバレありで解説していきます。

『ブラック・スワン』の詳しいあらすじ【ネタバレ注意】

「白鳥の鳥」のプリマは誰の手に?

ブラック・スワン
©Fox Searchlight Pictures/Photofest/ゲッティ イメージズ

ニナはニューヨークの一流バレエ団に所属する若きバレリーナ。青春のすべてをバレエに捧げ、同居する母エリカはそんなニナのステージママ的な存在となっていました。 演出家のトマはバレエ団の次の公演「白鳥の湖」のプリマを選出するため、オーディションを開催。それまでのプリマだったベスは外されます。新人の中で候補に挙がったのは、ヴェロニカとリリー、そしてニナでした。 プリマが務める「白鳥の女王」は純粋無垢な白鳥と邪悪で官能的な黒鳥の両方を踊る才能が求められ、生真面目すぎるニナは白鳥は表現できても黒鳥を踊るには経験が足りません。ニナはトマに直談判しに行きますが、突然キスされ、驚いて彼の唇を噛んでしまいます。

ニナには性的な経験が足りなかった

トマを怒らせたと思い、主役は絶望視していたニナでしたが、思いがけず白鳥の女王に選ばれます。トマはニナの意外な一面に気付き、彼女に可能性を見出したのです。 ニナは次公演のためのパーティで華々しく紹介されますが、その代わりにベスは引退を告げられます。ロビーでベスに「トマを誘惑してプリマに選ばれた」と罵られ、ショックを受けるニナ。その後トマにも黒鳥を演じるには性的な経験が足りないと指摘を受け、さらに衝撃を受けます。 翌日からトマによる厳しい指導が始まりますが、やはり性的魅力を感じないと責められ、ニナは次第に精神的に追い詰められていきます。やがて様々な幻覚や妄想に取り憑かれ、代役となったリリーが、プリマの座を奪おうとしているとさえ感じるようになります。

過保護な母との確執

ある晩、干渉しすぎる母に反発しかけたところに、リリーが訪ねてきます。勢いでリリーとクラブへ出かけたニナは、そこでドラッグを初体験し、その場でナンパされた男性と体を重ねました。 自宅に戻ったニナは母とまた言い合いになり、リリーと自室にこもって二人で性行為に及びます。しかし翌朝起きるとリリーは消え、慌てて稽古へ出るとリリーが白鳥の女王として踊っていました。 実はリリーはニナの部屋に泊まっておらず、自宅での出来事はニナの妄想。これ以降ニナの妄想はさらにひどくなり、公演初日を控えた晩、舞台裏でトマとリリーが抱き合っている場に遭遇するも、リリーはニナの姿に変わるという幻覚まで見るように。ついには自分の体に黒鳥の羽根が生える幻覚に襲われ、気絶してしまいます。

役に囚われたニナが迎えた公演初日

『ブラック・スワン』
© Fox Searchlight Pictures

公演初日の夕方、目を覚ましたニナに母が「体調不良だと連絡した」と告げます。感情を爆発させたニナが止める母を乱暴に振り切って劇場へ向かうと、すでにリリーが代役として準備していました。 それを無視して白鳥の準備を整えるニナ。第一幕は順調に進んだものの、途中で幻覚に囚われて床に落ちる失態を演じてしまいます。楽屋に戻ると、そこに黒鳥のメイクをするリリーの姿が。揉み合って割れた鏡の破片でリリーを刺したニナは慌ててその死体を隠し、黒鳥として第三幕の舞台に出ます。 すべてを解き放ったニナはまるで黒鳥の化身のごとく情熱的に踊り、観客の大喝采を浴びます。舞台を降りたニナは、誰にはばかることもなくトマと熱い口づけを交わしました。

【解説】すべてはニナの妄想だった?

元々プレッシャーに負けて自分の背中を引っ掻くという悪い癖を持っていたニナ。しかし指の爪から血が滲んで皮を引き剥がすなど、劇中にはニナの痛々しい自傷の妄想が描かれます。それはすべて、ニナの精神崩壊がもたらす幻覚。 特にその妄想が彼女に致命傷を与えるのが、リリーを刺したシーンです。楽屋でリリーと言い争ったことはニナの妄想であり、実際に体を刺されたのは、他ならぬニナ本人でした。 つまり、ニナは自分で自分を刺したのです。次第に黒鳥という役柄に取り憑かれていったニナが、自分自身の裏の一面を認めることができず、それが幻覚となって現れていたと考えられます。

【解説】なにが現実だったのか?ニナが迎える衝撃の結末

第三幕の後、楽屋にリリーが訪れたことで、自分で自分を刺したことを悟ったニナ。第四幕のため白鳥の衣装に着替えたその純白の腹部には、赤い血の染みが滲んでいました。 第四幕が始まっても、ニナはそのまま完璧に踊り続け、最後に白鳥が崖から飛び降りて自ら命を絶つシーンを演じ切ると、恍惚とした表情で拍手が巻き起こるのを聞いていました。しかしニナの腹部はすでに真っ赤に染まっており、驚いたトマが助けを呼ぶ声が響きます。 ここで、唯一ニナの妄想ではなかったのが、自分を刺したという事実であることがわかります。自分が理想とする「完璧なバレエ」を踊り切り、ステージライトを見上げるニナの顔には満足な面持ちが広がっていました。

『ブラック・スワン』プレッシャーに追われ続けた真面目なバレリーナの悲しい末路

妊娠でバレリーナとしてのキャリアを諦めた母に、常に「あなたのため」と言われ続けて生活を管理され、自由に青春を送ることができなかったニナ。その抑圧された感情が、ニナの二面性を密かに形成していたのではないでしょうか。それを解き放つきっかけを作ったのはトマとリリー。 プリマとしてのプレッシャーに押し潰され、精神的に追い詰められた挙句に自らの命を断つことは確かに悲しい末路です。しかしニナにとっては自分が目指す「完璧なバレエ」を実現でき、なお自由な精神も手に入れたことを考えれば、これも幸せな結末といえるかもしれません。