2021年1月5日更新

映画『ゴースト ニューヨークの幻』ろくろに込められた意味とは?実は伏線だらけの名シーンをまとめて解説!

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『ゴースト ニューヨークの幻』デミ・ムーア、パトリック・スウェイジ
© PARAMOUNT/zetaimage

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映画『ゴースト ニューヨークの幻』死んでも愛する人を守る、泣けるピュアロマンス

『ゴースト ニューヨークの幻』
© Paramount Pictures/Photofest/zetaimage

1990年バブル崩壊直前、都市に生きる男女が虚飾にまみれた恋愛を繰り広げていた頃に『ゴースト ニューヨークの幻』は公開されました。虚栄に満ちた上っ面の恋愛ゲームではなく、死を迎えてもなお愛する人を守る真っ直ぐなその愛に、多くの人々が魅了されたのです。 ただの恋愛映画に収まらず、サスペンス要素を含んでいたことも人気の理由。主題歌とされていたライチャス・ブラザーズの「アンチェインド・メロディ」も多くの反響を呼びました。 この記事ではまずあらすじをおさらいし、名シーンや伏線となったシーンを解説・考察していきます。

『ゴースト ニューヨークの幻』愛する人に触れられない切なさ【あらすじ】

サム・ウィートとモリー・ジェンセンの2人は、同棲を始めることとなったカップル。しかしサムはモリーに対して、素直に愛を伝えられずにいました。 ある日銀行で怪しい金の動きに気付いてしまったサムは、そのことを親友のカールに話します。翌日モリーと舞台を観に行った帰り道、2人を襲った強盗に殺され、サムはゴーストとなってしまいました。 サムの葬式が開かれ、モリーはカールとともに遺品を整理していました。カールは「気晴らしに公園に散歩に行こう」とモリーを誘います。その頃留守になったモリーとサムのアパートに再び強盗らしき人物が現れ、モリーの身に危険が迫っていることにサムは気付きました。 そこでサムは霊媒師のふりをして商売をするオダ・メイに頼み、モリーを救おうと奮闘。強盗の名前と住所をなんとかモリーに伝えます。 モリーはそのことをカールに相談しますが、強盗犯の家へと向かったカールこそが真犯人でした。カールは麻薬組織のために資金洗浄を行っており、送金コードを奪うためにサムを襲っていたのです。

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【ネタバレ注意】死んでも愛する人を守るため戦うサムの結末

『ゴースト ニューヨークの幻』
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モリーの留守中にカールはアパートに忍び込み、送金コードを入手します。コードによって、カールはリタ・ミラー名義の口座に入金するよう指示を受けました。 そこに帰ってきたモリーにカールは言い寄りますが、怒ったサムは写真立てを突き飛ばします。ゴーストでも物に触れられるようになったのでした。 サムは再びオダ・メイのもとへ向かい、銀行にてリタ・ミラー名義でお金を引き出すことに成功します。しかしその場面をモリーが見ていました。カールはお金がないことに気付き驚愕し、パソコンの画面上に「人殺し」という文字が浮かぶのを見て、サムがゴーストになったことを確信。 モリーからオダ・メイが銀行に来ていたことを教えてもらったカールは、オダ・メイを強盗に襲わせようとします。しかしサムが強盗にものを投げつけると、慌てた強盗は外に飛び出し、車に轢かれました。 サムはオダ・メイとともにモリーのもとへ訪れます。なんとか自分の存在をモリーに信じてもらい、オダ・メイの体を借りてもう1度だけモリーに触れようとしていたところ、カールが現れました。 そしてカールはモリーに銃を向けます。サムは銃を奪い、カールを何度も突き飛ばしました。逃げようとしたカールは、ガラスの下敷きとなり死んでしまいます。 すると天国へと迎える光が天から射し、サムの姿は見えるように。モリーと最後の口付けを交わし、「愛している」と告げて、天に消えていくのでした。

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実は伏線だらけだった!?事件解決の鍵を握る3つのキーワードを解説

作中には事件解決にあとから役立つ伏線が前半から多数登場。まずは「猫」、「地下鉄のゴースト」、「1セントコイン」の3つのキーワードから、これらの存在がどのように事件解決に結びついたのか解説していきます。

『ゴースト ニューヨークの幻』
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サムとモリーは、フロイドと名付けられた猫を飼っていました。フロイドはゴーストになったサムの気配も感じ取ることができる様子。これがストーリーの伏線だったのです。 フロイドの敏感さに気付いたサムは、強盗犯からモリーを守るためにフロイドを興奮させます。するとフロイドはモリーを襲おうとした強盗犯に襲いかかって顔を引っ掻き、モリーを見事救いました。 ちなみに強盗犯の顔に残ったフロイドによる引っ掻き傷は、車にひかれゴーストとなった時には消えているようです。

地下鉄のゴースト

サムが強盗犯を追うために地下鉄に乗り込もうとすると、「自分の縄張りだ」とサムを追い出そうとするゴーストがいます。その時地下鉄のゴーストはガラスを割っていました。 そのことを覚えていたサムは、ゴーストであっても物に触れ動かす方法を彼から学ぼうと気付くのです。サムがモリーを守ることができたのは、地下鉄のゴーストのおかげでもあると言えるかもしれません。

1セントコイン

サムとモリーが同棲を始めた夜、サムは瓶に入れられた1898年の1セントコイン(ペニー)を見つけます。サムはその1セントコインを、同棲を始めた記念にとモリーにプレゼントしました。 モリーはその後、瓶に入れたまま1セントコインを大切に取っておきましたが、サムが亡くなった後に階段からわざと瓶を落とし、割ってしまいます。 そのコインが、後にサムにチャンスを与えることになるのです。サムがいくらモリーを守ろうとも、なかなかゴーストの存在を信じられないモリー。 そこでサムはオダ・メイから1セントコインをもらい、コインを宙に浮かせてみせます。その光景を見たモリーは、ゴーストとなったサムが本当に存在していたことに気付くのでした。モリーがサムの存在に涙する、感動的な名シーンです。

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『ゴースト ニューヨークの幻』伝説の陶芸シーン!ろくろは男性器のメタファーだった

『ゴースト ニューヨークの幻』デミ・ムーア、パトリック・スウェイジ
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『ゴースト ニューヨークの幻』と言えば、あの伝説の陶芸シーン。日本でも主婦たちの間で陶芸教室が一躍大人気になりました。実はこのシーンも、後のシーンとの対比のために用いられた、メタファー的な伏線だったのです。 ろくろを回すモリーの背後に腰掛け、愛おしそうに眺めるサム。やがてちょっかいを出し始め、粘土は崩れてしまいます。その後2人で手を重ね合わせながらろくろを回し、棒状に起立し始める粘土。二人は熱い口付けを交わし、体を重ね愛し合います。 実はこのシーンにおける起立した粘土は男性器のメタファー。2人が物理的に存在して、愛し合えていることの証でした。サムが亡き後にもモリーはろくろを回しますが、棒状となった粘土はすぐに崩れてしまいます。こちらは愛する男性の不在を表していたのです。

「愛してる」「同じく」3回のやりとりを解説!2人だけの合言葉に込められた意味

『ゴースト ニューヨークの幻』
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作中サムとモリーの「愛してる」「同じく」というやりとりは3回出てきます。このやりとりが実は、事件を解決に導いた2人の合言葉でもあり、重要なメッセージも示していました。重要な3回のやりとりの意味をそれぞれ解説・考察していきます。

1回目:マクベス観劇の帰り道

サムはとても不器用な男であり、「愛しているの乱用は嫌いだ」と言って、なかなかモリーに愛を伝えませんでした。 2人でマクベスを観た帰り道、モリーはサムにあなたと結婚したいという思いを伝えますが、サムがいつも「愛してる」とは言ってくれないことを嘆き、愛の言葉が欲しいと伝えます。 しかしその時もサムはいつも通り、モリーが「愛してる」と伝えてくれたのに対し、「Ditto(同じく)」としか伝えてあげられなかったのです。そしてその夜、2人は強盗に襲われてしまいます。

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2回目:ゴーストになったサムの存在を証明

サムの亡き後、サムがゴーストになったというオダ・メイの話を信じられないモリー。サムはオダ・メイを通じて「愛してる」と伝えますが、サムは生前に愛してるなんて言ってくれなかったとモリーは言います。 そこでサムは、いつもモリーに伝えていた「同じく」という言葉をオダ・メイに言ってもらい、その言葉を聞いたモリーはゴーストの存在を信じるのでした。 ちなみに「Ditto」というのはアメリカでもあまり頻繁に使われる表現ではないようです。サム特有の口癖としてモリーの思い出に残っていたのではないでしょうか。

3回目:生前伝えられなかった初めての「I love you.」

サムは作中ほとんどモリーに愛を直接伝えていません。しかしたった1度、ラストシーンで天に消える直前にだけ、「愛している」と口にするのです。生前照れて伝えられなかった愛を、初めてモリーに伝える、感動的な別れのシーンでした。 ここではサムの成長と同時に、あるメッセージを感じることができます。それは「愛を伝えることの重要さ」。 人はいつ会えなくなるかわからない、はかない存在です。だからこそ身近な存在でも恥ずかしがらずに、愛を伝えておかなければなりません。会えなくなったときに後悔しないように。

日本リメイク版も!『ゴースト もういちど抱きしめたい』(2010年)

『ゴースト ニューヨークの幻』は日本でも長く人気を誇り、『ゴースト もういちど抱きしめたい』というタイトルで日本リメイク版も製作されました。 主演は松嶋菜々子、その恋人役をソン・スンホンが演じ、「リング」や「呪怨」シリーズなどで知られる一瀬隆重がプロデューサーを務めます。 リメイク版と言っても原作とは大きく異なり、なんと男女逆転版。松嶋菜々子演じる七海が事故で亡くなってしまい、恋人をそばで見守るストーリーです。

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モリー・ジェンセン役のデミ・ムーアは撮影直前に勝手に髪をバッサリ!?

『ゴースト ニューヨークの幻』
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デミ・ムーアは『ゴースト ニューヨークの幻』にキャスティングされた際には髪を伸ばしていましたが、なんと撮影直前に髪をバッサリ切ってショートカットに。何も伝えられていなかった監督は困惑しますが、撮影した映像を見て、彼女の判断が正解だったと気付いたと言います。 デミ・ムーアは役作りにストイックなタイプで、それぞれの作品でまったく異なる表情を見せるのも人気の理由。 元FBIの人気ストリッパーを演じた『素顔のままで』(1996年)や、『チャーリーズ・エンジェル フルスロットル』(2003年)などでは、『ゴースト ニューヨークの幻』で見られる素朴さとは異なり、セクシーな魅力溢れる演技を見ることができます。

むずかしい“死人”役に本気で向き合ったパトリック・スウェイジ

『ゴースト ニューヨークの幻』
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サム役には数々の有名なハリウッド・スターたちがオファーされていましたが、死人役に踏み切れる俳優が現れず、なかなかキャストが決まりませんでした。そんな中パトリック・スウェイジは、サム役に対し熱い思いを抱き、必ず演じてみせると数々の努力を重ねたそうです。 パトリックの努力は実り、台本を読んだ彼の演技にスタッフたちは涙。名だたる著名な候補者から、サム役を勝ち取りました。

オダ・メイ役は本作でアカデミー賞を受賞したウーピー・ゴールドバーグ

『ゴースト ニューヨークの幻』
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今や大御所女優のウーピー・ゴールドバーグは、霊媒師のオダ・メイを演じ第63回アカデミー賞の助演女優賞を受賞していました。 なんと彼女がオダ・メイ役を演じることになったのは、パトリック・スウェイジのおかげ。パトリックは「ウーピーをオダ・メイに起用しないのであれば、自分も出演しない」と主張していたようです。

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製作はギャグコメディ監督と「死」を扱う脚本家の異色なタッグ

監督:ジェリー・ザッカー

監督を務めたのはジェリー・ザッカー。『ゴースト ニューヨークの幻』では愛とサスペンスを描きましたが、誰もが笑うギャグ映画を製作していたグループ「ZAZ」に所属しており、いわゆるナンセンス・コメディばかりを手がけている監督でした。

脚本:ブルース・ジョエル・ルービン

脚本を務めたのは、ブルース・ジョエル・ルービン。『ゴースト ニューヨークの幻』の脚本を書き上げた時は渾身の出来と感じていたものの、監督として現れたのがギャグ映画監督であるジェリー・ザッカーだったため、はじめは不安を抱いたようです。

映画『ゴースト ニューヨークの幻』愛の尊さのメッセージは人々の心に響き続ける

今もなお珠玉の名作として多くの人に愛されている『ゴースト ニューヨークの幻』。豪華で華やかなキャストが、愛の美しさ、人のはかなさ、そして愛を伝える大切さを教えてくれた普及の名作です。せつなくも愛おしい2人の姿は、数々の名シーンとともに人々の心に刻まれていきました。 死んでも恋人を守り抜くそのまっすぐな愛は、公開から時が経とうとも、これからも人々の心を掴み続けるでしょう。