映画『第9地区』はSF映画の枠を超える超大作!ラストや裏テーマまでネタバレ解説
映画『第9地区』は革新的なSF超大作!【エイリアン地球襲来】
『第9地区』は2009年に公開されたSF映画で、難民化したエイリアンとそれを受け入れる人間の共同生活が生み出す悲劇を、ドキュメンタリータッチに描いています。 「SF×ドキュメンタリー」の革新的手法や人種差別問題に鋭く切り込むストーリーが話題となり、大ヒットを記録。2010年の第82回アカデミー賞では作品賞、脚色賞、編集賞、視覚効果賞の4部門でノミネートされ、受賞には至らなかったものの高い評価を受けました。 南アフリカ共和国出身のニール・ブロムカンプが監督・脚本を務め、気鋭のクリエイターとして鮮烈な長編映画デビューを飾りました。製作には2000年代前半に『ロード・オブ・ザ・リング』三部作を世に送り出した名プロディーサーのピーター・ジャクソンが参加し、作品を成功に導いています。 ※この記事は映画『第9地区』ネタバレを含みますので、読み進める際は注意してください。またciatr以外の外部サイトでこの記事を開くと、画像や表などが表示されないことがあります。
映画『第9地区』のネタバレあらすじ解説【ヴィカスのその後も考察】
宇宙船襲来!?「第9地区」に追いやられるエイリアンたち
1982年、南アフリカ共和国・ヨハネスブルクの上空に巨大な宇宙船が現われます。人類が突入すると、中には無数の衰弱したエイリアンたちの姿が。彼らは地球襲来が目的ではなく、宇宙船が故障して、地球に難破してしまっただけでした。 彼らは難民キャンプの「第9地区」に移され、保護・監視されることになりました。しかしエイリアンたちは知能が低く凶暴なため、たちまち治安が悪化して第9地区はスラムと化してしまいます。
【28年後】謎の液体で自分がエイリアンに?世界中から追われるヴィカス
それから28年後。一部のエイリアンが武器を隠し持っていたのを機にヨハネスブルク市民の怒りや不安は増幅していました。エイリアンたちは「エビ」と蔑称され、人間とのいさかいが絶えなくなります。 超国家機関「MNU」は、ヨハネスブルクから200キロ離れた第10地区に強制移住させることを決定。「エビ」に立ち退きを求める作戦の責任者に抜擢されたMNUエイリアン課のヴィカスは、作戦中に謎の黒い液体を浴びてしまいます。 ヴィカスの身体はエビのDNAに侵食され、変異が進んでいました。MNUは貴重な研究材料として様々な実験を行った後、ヴィカスの臓器をラボで取り出そうとします。ヴィカスは間一髪で脱出しますが、世界中が注目する中、MNUから追われる身となります。
クリストファー・ジョンソンのもとを訪れラボに潜入
逃げ場のないヴィカスは第9地区に逃げ込み、エビの中でも高い知性を持つクリストファー・ジョンソンに助けを求めます。クリストファーによると、変異の原因となった液体は、上空の母船に戻るために地上に隠した司令船を動かす燃料でした。 また、その液体があればヴィカスの身体も元に戻せると言います。ヴィカスとクリストファーは液体を取り戻すため、エイリアンしか扱えない強力な武器を携えてラボに潜入することに。 2人は液体の奪還に成功しますが、液体は司令船を飛ばす量しかなく、クリストファーは「自分の惑星から3年後に戻ってきて、必ず身体を治す」と提案します。しかし、気が動転したヴィカスは司令船を勝手に動かし、撃墜されてしまいました。
MNUに戦いを挑む2人に訪れた衝撃のラストとは?
ヴィカスはMNUに確保されますが、護送の途中でナイジェリア人のギャング団に襲われ、今度はギャング団のアジトに囚われてしまいます。ギャング団のリーダーは、エビの肉を食べれば強大な力が手に入ると信じており、ヴィカスの変異した腕を切断しようとしました。 すると突然、アジトに置かれていたエビ用ロボットが起動します。これはギャング団が、エビの武器に憧れてコレクションしていたものでした。ヴィカスはこれに乗り込んでギャング団を一掃し、MNU傭兵部隊に処刑されかけていたクリストファーを救います。 傭兵部隊との死闘の末、クリストファーを無事に母船に戻すことに成功したヴィカスはその後、行方をくらまします。全身がすっかり変異してしまったヴィカスはスラムで集めた鉄くずで、会えなくなった妻に届けるための一凛の花を作るのでした。
【ラスト考察】一人残されたヴィカスのもとにクリストファーは帰ってくる?
クリストファーはラボで仲間が実験材料にされていることを知り、一度惑星へ引き返して仲間を助けに戻ることを決意します。 このことから、彼は決して仲間を見捨てない、厚い義理人情を持っているのではないかと推察できます。ともに闘い、絆が生まれたヴィカスとの約束を守るため、3年後には戻ってくるのではないでしょうか。ヴィカスもそれを信じて待っているはずです。
ただのエイリアン映画ではない!『第9地区』に込められた社会風刺とは?
物語の舞台はニール・ブロムカンプ監督の出身地である南アフリカの首都・ヨハネスブルクで、テーマも同国の社会問題を色濃く反映しています。 南アフリカでは1948年から1994年まで、白人と非白人を差別する「アパルトヘイト」(人種隔離政策)が行われていました。 本作のストーリーは、アパルトヘイトの黒人強制移住政策をベースとしており、人種や肌色の違いをエイリアンの特異な造形に置き換え、差別の構図を分かりやすく表現しています。
エイリアン(=エビ)のモデルとは!演じている俳優はいるの?
「エイリアン(=エビ)」の造形は、ヨハネスブルクに生息する巨大バッタの一種「Parktown Prawn」がモチーフとなっています。 クリストファー・ジョンソンを含むエビたちの動きは、南アフリカの俳優ジェイソン・コープが、動作をデータ化できる「モーションキャプチャ」を使って演じました。 ジェイソン・コープは、エイリアン問題を解説するジャーナリスト・ブラッドナム役でも登場し、ナレーションも務めています。
大迫力のエンタメ映画としても抜群!『第9地区』の魅力が止まらない
激しいロボットバトル、巨大な宇宙船から目が離せない【大迫力のVFX映像】
本作がすごいのは、痛烈な社会風刺をSFジャンルに持ち込んだことに加え、大迫力の映像で「観客の度肝を抜く」というエンタメ映画の真骨頂も体現しているところです。 VFX(視覚効果)初期の作品でありながら、最先端技術を駆使した巨大宇宙船やロボットと傭兵部隊の激しいバトルシーンは、圧巻の出来栄え。VFXアーティスト出身のニール・ブロムカンプ監督だからこそなせる業と言えるでしょう。
【他種族との絆】人間とエイリアンの間にあるのは対立だけじゃない
ヴィカスとクリストファーは、「液体を取り戻す」という共通の目的のもとに一致団結し、人間社会に反旗を翻します。 あくまで利害が一致したことによる共闘でしたが、終盤には本物の友情が芽生えているように見て取れます。立場や価値観に違いはあっても、互いを尊重することで手と手を取り合うこともできるのだと教えてくれているようです。
映画『第9地区』の続編はある?
続編については、ニール・ブロムカンプ監督本人が2017年、ニュースサイトのインタビューにて「新たな作品をつくることを考えている」と述べ、前向きに検討していることを明かしています。その後具体的な動きは表面化していませんが、続報が楽しみですね!
映画『第9地区』はエイリアン映画の王道を打ち破る!
SF映画『第9地区』は、人種差別への社会風刺や友情といったテーマ性、映像・演出における革新性を兼ね備えた、秀逸なエンタメ映画であると言えます。 また、「エイリアン」シリーズや「プレデター」シリーズに代表される「人間VSエイリアン」という単純な対立軸の王道パターンを打ち破った、唯一無二のSF映画でもあります。まだ鑑賞されていない方はぜひ、チェックしておきましょう。