『ブライトバーン/恐怖の拡散者』はこれまでのヒーロー像を覆す!【ネタバレから続編考察まで】
『ブライトバーン/恐怖の拡散者』はヒーロー映画の枠を超えた衝撃作
2019年公開の映画『ブライトバーン/恐怖の拡散者』を手がけたのは、本作が長編デビュー作となるデヴィッド・ヤロヴェスキー監督です。また、「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」シリーズのジェームズ・ガンが製作を務めました。 「超人的な力を持った少年が邪悪な存在だったら?」という斬新な設定が興味をそそるこの作品。「銀河からやってきたスーパーパワーを持つ男の子」というSFヒーロー設定をそのままに、容赦のないゴア描写を用いて凶悪で残酷な少年の姿を描きます。 主題歌には、ビリー・アイリッシュが歌う大ヒット曲「bad guy」が起用され、無邪気で不気味な雰囲気を引き立てました。そんな、映画『ブライトバーン/恐怖の拡散者』のネタバレありのあらすじや、続編の可能性などを紹介します! ※この記事は映画『ブライトバーン/恐怖の拡散者』のネタバレを含みますので、読み進める際は注意してください。またciatr以外の外部サイトでこの記事を開くと、画像や表などが表示されないことがあります。
『ブライトバーン/恐怖の拡散者』のネタバレあらすじを詳しく紹介
夫妻に降りかかる恐怖の始まり
舞台は2006年のカンザス州ブライトバーン。子供ができず苦しんでいたトリはずっと母になる日を夢見ていました。 そんなある日、ブライア夫妻(カイルとトリ)が営む農場に謎の宇宙船が墜落。宇宙船の中にはなんと人間の赤ん坊がいたのです。夫妻は彼を“贈り物”だと信じ、養子として育てることにしました。そして、その赤ん坊をブランドンと名付け、宇宙船を納屋に隠します。
【12年後】特殊能力に目覚めたブランドンの暴走が止まらない!
トリとカイルに愛情を注がれ、優秀で素直な子供に育ったブランドン。12歳の誕生日が近付くある日、ブランドンの中で何かが目覚め、彼は自身に備わった超能力に気がつきます。 そしてブランドンは、カイルとトリに対して反抗的な態度をとり始めます。さらに奇行を繰り返し、異常な力を発揮。カイルはブランドンを不気味に感じるようになっていました。
ある時、納屋の異変に気付いたトリが駆け付けると、納屋の扉を開けて宙に浮いているブランドンの姿がありました。トリはついに、それまで隠していたブランドンに出会った経緯を彼に打ち明けます。 ショックを受けたブランドンは納屋を飛び出し、不気味なマスクをつけてケイトリンの母親を襲撃。続いてカイルの兄夫婦・ノアとメリリーの自宅に侵入し、帰宅したノアに見つかったブランドンは車ごと地面に叩きつけてノアを殺害してしまいました。 容疑者不明の事件となったノアの死。現場に残されていた「B」を重ねたサインが「ブランドン・ブレイヤー」と読める事から、警察が家を訪ねてきました。 ブランドンの部屋から血のついたシャツを見つけ、彼の犯行を確信するカイル。それまでは息子を信じ続けていたトリも、ブランドンのノートに同様のサインがびっしり書かれているのを発見し、彼が犯人であることを否定できなくなるのでした。
【衝撃のラスト】正体に気づいた母親と、ブランドンとの決着は?
カイルはブランドンを連れ、2人きりで狩りに出かけます。ブランドンに鹿を追うように言い、その後ろから彼を狙っていました。父親として決着をつけようとしていたのです。
意を決し、ブランドンの頭を銃で撃ちぬくカイル。命中するも、ブランドンの頭には傷ひとつありません。ブランドンが姿を消したかと思うと、逃げるカイルの目の前に出現。目からレーザーを発射し、許しを請うカイルを殺害しました。 カイルに電話をして「あの子がノアを殺した」と伝えるトリ。しかし、その電話に出たのは、カイルを殺した後のブランドンでした。 戻ってきたブランドンは家を破壊し、トリを殺そうとしました。警察も駆けつけますが、とても手に負えません。トリはブランドンが宇宙船の中で怪我をした事を思い出し、宇宙船の破片で彼を刺そうとします。 気付いたブランドンは激怒し、トリを連れて雲の上まで飛び上がり、手を放して地上へ落とします。地上へ戻った彼は事故の生存者を装い、無邪気な表情でクッキーを食べているのでした。
【続編はある?】エンドロールのクリムゾン・ボルトが意味するものとは
映画『ブライトバーン/恐怖の拡散者』は、続編製作の可能性があると見られています。 その証拠に2019年5月、監督のデヴィッド・ヤロヴェスキーがインタビューで「興行的に成功した場合、本作をシェアード・ユニバース(世界設定や登場人物を共有する作品群)として展開する予定だ。」と話しているのです。 2019年7月には、プロデューサーのジェームズ・ガンも続編の可能性を示唆。 自身のInstagramアカウントに寄せられた続編を希望するファンのコメントに対して「続編の話は出ています。今後数年間は他の作品にかかりきりになるから、続編が作られるとしたらその後になるだろう」という旨の返信をしています。 また、本作のエンドロールにも続編の存在をほのめかす描写が。ブライトバーンの各地でビルの崩壊や飛行機墜落などの事件が頻発する映像の中に、ジェームズ・ガン監督の映画『スーパー!』に登場するクリムゾン・ボルトが映っていたのです。 これはつまり、映画『ブライトバーン/恐怖の拡散者』が『スーパー!』と同ユニバースであり、今後シェアード・ユニバース作品として展開していくことを考えられているのでしょう。 興行的な成功が前提にありますが、本作は『アラジン』など注目作品と同じ週の公開だったことが影響したのか、興行収入は予想を大きく下回るものになりました。 しかし、低予算ホラーにしてはヒットしたという見方もあります。続編が製作される可能性も決して低くは無いのではないでしょうか?
特殊能力に目覚めたブランドンの奇行を振り返る
特殊能力に目覚めた少年・ブランドンは、その能力を使って奇行を繰り返します。それは、彼が反抗期だから?それとも……。 かわいい少年から徐々に豹変していくブランドンの、奇行の数々を振り返ってみましょう。
重たい芝刈り機を投げ飛ばす
カイルに芝刈りを頼まれ、快く引き受けたブランドン。大きな芝刈り機のエンジンをつけるため紐を引っ張るも、なかなか動かずイライラして力いっぱい紐を引っ張ります。すると、重たい芝刈り機は空高く舞い上がり、はるか後方へ飛んで行ってしまいました。 驚いたブランドンは、自分の力を確かめるため、勢いよく回る芝刈り機の刃に手を突っ込んでみることに。すると刃はぐにゃりと曲がって動かなくなり、ブランドンの手には傷ひとつないのでした。
朝食中にフォークをかじってひん曲げる
ある日の朝けだるそうに朝食をとるブランドンは、口に入れたフォークを無意識に噛んでいました。異様な音に気付いたカイルが彼の口からフォークを取り出すと、先端はぐにゃぐにゃに。フォークはひん曲がっているのに、ブランドンの歯には全く異常がありません。
同級生の手を握って骨折させてしまう
同級生の女の子・ケイトリンは、ブランドンのことを気味悪く思っていました。授業でブランドンとペアになった時、彼との接触を避け、ブランドンは転倒。先生に「ブランドンが起き上がるのに手を貸すように」と言われたケイトリンはしぶしぶ彼に手を差し出します。 彼女の態度に腹が立ったブランドンは、彼女の手を全力で握ってしまいました。異常な握力によってケイトリンの手は潰れ、手の骨は砕かれてしまいます。
飼っていた鶏を殺害
ある真夜中、カイルは農場で飼っている鶏が騒ぐ声を聞き、狼が襲ってきたのではないかと鶏舎へ確かめに行きます。そこにはブランドンの姿があり、早く寝るようにと声をかけました。 寝室に戻ったカイルは、再び鶏たちの騒ぐ声を聞き、慌てて駆け付けます。するとそこには、1匹残らず引き裂かれた鶏の死体があったのです。トリは狼の仕業だと言いますが、カイルはブランドンの仕業に違いないと感じていました。
『ブライトバーン』はこれまでのヒーロー映画と何が違う?
銀河から来た赤ん坊が農場で夫婦に拾われ、実はスーパーパワーを持っていた……。この展開はDCコミックスの「スーパーマン」にそっくりだと思いませんか?強靭な肉体、怪力、超高速移動、飛行、目から熱線放射など、能力もほとんど同じです。 出生に訳ありの無邪気な子供が冷酷な存在になっていく様子は、悪魔の子ダミアンが大人たちを恐怖に陥れるホラー映画『オーメン』(1976年)にも似ています。 しかし、ブランドンは生まれながらの“悪魔の子”などではありません。正義のヒーロー、スーパーマンになれる存在の少年です。この作品は、「選ばれし少年がヒーローになっていくストーリー」をまるで鏡写しにしたように、運命の残酷さを皮肉たっぷりに描いているように感じられます。 逆を言えば、スーパーマンも何かが違えばこうなっていたかもしれないという、ある種のパロディ的な作品でもあるのです。 さらに、これまでのヒーロー映画とは違い、攻撃によって血と肉片が飛び散り無残な姿になる描写は、ある意味リアル。アメコミヒーロー映画絶頂期に一石を投じる、漫画的なヒーロー映画へのアンチテーゼでもあるのはないでしょうか? 『ブライトバーン/恐怖の拡散者』のブランドンは、スーパーヒーローを再解釈した全く新しいキャラクターとして、これまでのヒーロー像を覆す存在だと言えるでしょう。
『ブライトバーン/恐怖の拡散者』に見る家族愛【信じる母と疑う父】
映画『ブライトバーン/恐怖の拡散者』では、家族愛についての描写も印象的です。愛する息子の様子が突然理解できなくなると、親は戸惑うもの。奇行が激しくなってからも母親としてトリがブランドンを信じ続ける一方、カイルは何かおかしいと疑い始めます。 やがて真実に気付いた両親は、恐怖に打ち負け、ブランドンを「悪」としか見えなくなってしまいました。 子どもにとっても、親からの疑いの眼差しは辛いものです。さらに、両親につかれている大きな嘘を知り、最後は裏切られることになりました。 親子の愛は時に脆く、タイミングやふとした事で壊れてしまうこともある、という事なのではないでしょうか?どこまで子供を信じるべきなのか、というテーマについて、全ての親に考えさせる映画でもあります。
ディズニーを解雇?『ブライトバーン』はジェームズ・ガン監督の復帰作
映画『ブライトバーン/恐怖の拡散者』の製作を手掛けたのは、「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」シリーズを監督したジェームズ・ガンです。 彼は2018年7月、約10年前にTwitterに書き込んでいた不謹慎なジョークが問題視され、ディズニー社は「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」シリーズ3作目の監督から彼を解雇しました。 シリーズの出演者らが「不謹慎ジョークの内容には共感しない」としながらも彼の復帰を求め、オンライン請願サイトには約35万人の再雇用を求める署名が集まったことなどから、2019年3月に復帰。 そのため、映画『ブライトバーン/恐怖の拡散者』は、同時期公開の映画『アベンジャーズ/エンドゲーム』とともにジェームズ・ガン監督の復帰作となったのです。 「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」シリーズ3作目は、2023年にアメリカ公開予定。またジェームズ・ガンは、2021年公開予定の『ザ・スーサイド・スクワッド (原題)』の監督&脚本も担当しています。
『ブライトバーン/恐怖の拡散者』の生んだ新しいヒーローに注目!
スーパーヒーローの能力を悪に使う少年という、新たなキャラクターを生み出した『ブライトバーン/恐怖の拡散者』。ホラー、SF、ドラマなど、ジャンルの壁を超えたミックスジャンル的映画です。 シェアード・ユニバース展開され、ブランドンはスーパーマンやアイアンマン、ジョーカーたちと並んで人々に愛される、いや、恐れられる存在になって行くのかもしれません。今後の展開にも期待しつつ、奥深いテーマについて考えながらぜひもう一度見てみてください!