映画『イレイザーヘッド』カルト映画の名作を徹底解説!デヴィットリンチ監督が伝えたかったメッセージとは
賛否が分かれる映画『イレイザーヘッド』の解説を紹介
カルト映画の代名詞として映画界の歴史に残る名作『イレイザーヘッド』。公開から40年以上たった今もなおファンから根強い人気を誇ります。この記事では、観たら一生忘れられない映画とも言われる『イレイザーヘッド』とは一体どのような作品なのか、1つずつ深堀っていきましょう。
映画『イレイザーヘッド』あらすじを紹介【ネタバレ注意!】
泣き止まぬ奇形児に耐えかね、家を出てしまう妻・メアリー。夫・ヘンリーは不器用ながらも仕方なく子育てすることに。 さまざまなストレスを抱えていたヘンリーはラジエーターの中に不思議な劇場を見つけ、ほっぺにコブのついた女性が歌って踊り、細長い謎の生き物を踏み潰す様子を眺めます。するといつの間にか自分の首がもげ、奇形児の首と代わり、自分の首は子供に拾われてしまう幻覚を見るのでした。 また、妻がいないのをいいことに隣人と浮気したヘンリーは、浮気相手が他の男と部屋へ入っていく様子を目撃します。なぜか笑い声をあげる奇形児。ヘンリーはハサミで奇形児に巻かれた包帯を切断すると、中には内臓が剥き出し状態でした。ヘンリーは内臓をもハサミで突き刺すと、奇形児は首が膨張しそのまま死亡してしまいました。 ヘンリーは隕石が爆発する夢を見て、真っ白な霧に包まれる中、異形の少女と抱き合い踊るのでした。
主人公のヘンリーはデヴィットリンチ監督自身だった
非常に難解でグロテスクな映画という印象の強い『イレイザーヘッド』ですが、主人公・ヘンリーはデヴィッド・リンチ自身が投影されているという説も。 作中において、ヘンリーは泣き止まぬ奇形児の子育てをせざるを得ない状況となりますが、デヴィッド・リンチも娘の誕生後泣き止まむ我が子に悩まされ、「自分はもう芸術家として終わりだ」と嘆いていました。 ヘンリーのシャツの着方(第一ボタンまで絶対に閉じる)もデヴィッド・リンチのスーツの着方と同様。得体の知れない奇形児は、デヴィッド・リンチにとっての赤ん坊=怪物のような存在ということを表しているようです。
謎多き映画『イレイザーヘッド』秘められたメッセージとは?
『イレイザーヘッド』では、何も考えずに観てしまうと理解しがたく、非常に難解な映画です。しかし、難しい映画でありながらも、人間の根底に流れるグロテスクで生々しい感情を、ありのまま描いた作品とも言えます。 デヴィット・リンチ自身が体験した、恋人に子供ができてしまったことに対する焦りやネガティブな感情などに真正面から向き合い、人間がどれだけ身勝手なのか、人間はどれだけ欲に塗れているのかなどを描いているのです。
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ヘンリー役の俳優は5年間ずっと同じ髪型だった
『イレイザーヘッド』は製作に約5年かかってしまったため、主人公・ヘンリー役を務めた俳優ジョン・ナンスは、鉛筆の先についた消しゴム(イレイザーヘッド)のようなボサボサなヘアスタイルを5年もの間ずっと保持していたとのことです。
赤ちゃんの正体は牛の胎児という噂の真相とは?
包帯に包まれており内臓が丸出しの奇形児に関しては、どのように撮影したのか注目が集まりました。しかしデヴィッド・リンチ自身はその点について、「知ってしまったらきっと気持ち悪くなってしまうよ」と言い、明確に答えていません。 ファンや評論家の間では、「牛か羊など、家畜の胎児を使っている」、「デヴィッド・リンチが作ったミニチュア」などといった憶測が広がっており、監督はどの説についても何も言及していないようです。
衝撃の事実!モノクロ映画にした訳はグロすぎる描写にある?
『イレイザーヘッド』はモノクロ映画ですが、その理由はあまりにもグロテスクなシーンの連続だから。公開当時の主流はカラーであったものの、非常に過激なシーンの数々をカラーで映し出すとあまりにも生々しいため、モノクロにせざるを得ませんでした。
一回だけじゃ理解できない!リピート必須の『イレイザーヘッド』
一度鑑賞しただけでは到底理解しきれない映画『イレイザーヘッド』。その複雑難解な内容から、リピート鑑賞必須の作品と言えるのではないでしょうか。 単なるオカルト映画、グロテスク映画と侮ることなく、人間の本質や欲望を描いた作品として鑑賞し直し、考察を重ねてみるのも面白いかもしれません。