2021年4月13日更新

泣ける名作SF『ガタカ』作品の魅力とタイトルの意味をネタバレ解説

ガタカ
© Columbia Pictures/Columbia Pictures/Photofest

SFなのに泣ける名作として今でもカルト的人気のある映画『ガタカ』(1997年)。芸術的な映像美に主演のイーサン・ホークやユマ・サーマンなどの美貌が花をそえた作品です。この記事ではこのような映画『ガタカ』の魅力とタイトルの意味を解説します。

目次

遺伝子で運命が決まる近未来を描いた『ガタカ』

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遺伝子で人生が決まる近未来で苦闘する若者たちの姿を描いたSF映画『ガタカ』。1997年の公開当時、批評家から絶賛されながらも興行収入は振るいませんでした。 しかしアカデミー賞のアートディレクション部門にノミネートされ、2011年にNASAの「現実的なSF映画」1位に選ばれるなど、現代でもカルト的な人気があります。 この記事では、SF映画『ガタカ』のいつまでも色あせない魅力タイトルの意味をネタバレ解説します。

『ガタカ』のあらすじとネタバレ

映画『ガタカ』の舞台は、体外受精で遺伝子に欠陥のない受精卵を選別して出産することが常識となった近未来の世界。遺伝子に欠陥を抱えて生まれた子どもは差別の対象となり、社会的地位の高い職業への道は閉ざされています。 主人公であるヴィンセント(イーサン・ホーク)は、両親のひとときの情熱的な愛の結果、遺伝子の選別を経ることなく生まれた青年。彼の遺伝子は、うつ病や注意欠陥障害といった精神的問題の可能性が高いばかりでなく、心臓の欠陥で30年以上は生きられないことがほぼ確実というものでした。 それにもかかわらず、宇宙飛行士になるため努力を重ねてきたヴィンセントは、子どもの時からの夢を実現するため最後の手段に訴えます。 それは遺伝子ブローカーの助けを借りて別人になりすますことでした。整形手術などを経て彼は、データ上は事故で下半身不随となったオリンピック銀メダリストの元水泳選手・ジェローム(ジュード・ロウ)になります。 ジェロームの優秀な遺伝子のサンプル(血液や髪の毛など)を使ってヴィンセントは、宇宙旅行会社・ガタカに就職できました。しかし彼が木星の衛星・タイタンに向けて1年間の航海に旅立つ1週間前、ヴィンセントの上司が殺害される事件が発生。現場から彼のまつ毛が発見されます。

切ないラストに涙する結末

警察の厳しい捜査で何度も窮地に陥るヴィンセントですが、その度に機転を利かせてジェロームとして振る舞い続けます。 その一方で、彼と同じように心臓に欠陥を持つガタカの同僚・アイリーン(ユマ・サーマン)との関係も急速に親密なものへと発展していきました。 いよいよヴィンセントの宇宙船が出発する直前、ガタカの局長が打ち上げに反対するヴィンセントの上司を殺したと告白。疑いの晴れたヴィンセントは無事に宇宙へと旅立ちます。 ロケットの打ち上げを見守り、ヴィンセントが帰ってきた後も一生使える以上のサンプルを残したジェロームは、焼却炉に入って自ら命を絶ちます。 宇宙でヴィンセントがジェロームとの別れ際にもらった封筒を開けてみると、中身はジェロームの遺髪でした。

ヴィンセントは地球に戻ることはない……ジェロームの自殺が語ること

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ヴィンセントの宇宙飛行士になるという夢がかなってハッピーエンドのように感じられる結末ですが、明るい未来というわけでもありません。 ヴィンセントは出生のときに予測された30年という寿命を超えて生きているため、理論的にはいつ死んでもおかしくないのです。 良い遺伝子を持つ弟との遠泳競争に勝ったとき、ヴィンセントは「戻ることは考えず全力で泳いだ」と告げます。さらにジェロームの用意してくれた遺伝子サンプルについても、「自分の行く先では必要ない」と言うのです。 ヴィンセントが宇宙に旅立つことだけに集中して、その後は考えていないことを暗示するセリフと言えます。 一方、ヴィンセントに一生使っても使い切れないサンプルを残して自殺したジェロームは、彼がジェロームとして生き続けることを望んでいたのかもしれません。 ジェロームの遺髪を持って宇宙に旅立ったヴィンセントは、「故郷に帰るのかもしれない」と心中つぶやきます。2人の男の運命が1つにつながる、悲しくも美しい結末と言えるでしょう。

タイトル『ガタカ』やヴィンセント、ユージーンという名前に込められた意味とは?

本作の重要なテーマである遺伝子にもとづく優生学の問題はタイトルや登場人物の名前にも反映されています。 作中で宇宙旅行の会社の名前である「ガタカ」という単語はG、A、T、Cという4つのアルファベットを組み合わせて作られています。これはグアニン(G)アデニン(A)チミン(T)シトシン(C)というDNAの基本塩基の頭文字なのです。 さらにヴィンセントに良い遺伝子のサンプルを提供するジェロームのミドルネーム「ユージーン」は「良い生まれ」という意味です。「ジーン」は英語で遺伝子を指しますから、良い遺伝子という意味も含まれているかもしれません。 一方、ヴィンセントという名前は「征服/克服する」という意味。遺伝子の欠陥を努力で克服した彼にふさわしい名前ではないでしょうか。

公開から20年色あせない『ガタカ』の魅力

ガタカ
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公開から20年以上たってもカルト的人気を誇る『ガタカ』。ここからはこのような『ガタカ』の色あせない魅力を解説します。

SFなのに感動する!元祖泣けるSF

『メン・イン・ブラック』や『フィフス・エレメント』など派手なアクションに目を奪われた1997年のSF映画。そのなかで『ガタカ』はヒューマンドラマに焦点を置いた点で異彩を放っていました。 遺伝子工学で運命が決まる世界で自分の居場所を求めて苦闘する登場人物たちの繊細な性格描写が、本作を芸術映画に近い作品としています。本作は「サイバーパンク」と関連する「バイオパンク」の代表作としてあげられることが多く、SF映画というジャンルに新たな魅力を加えました。 デザイン的には、過去の最先端のデザインを活用するレトロ未来志向を多用した点が本作を色あせないものとしています。どこかで見たような懐かしさ未来的な感覚が融合して、時代が変わっても古びないデザインです。 電気自動車のデザインは1960~70年代のビュイック、シトロエン、スチュードベーカーの車をモデルにしています。建築物はフランク・ロイド・ライト設計のマリン郡役所など1950~60年代の建物がロケに使われました。

若き日のイーサン・ホーク、ジュード・ロウ、ユマ・サーマンが美しい!

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※劇中のユマ・サーマンとイーサン・ホーク 公開当時20歳代であった主要キャスト3名の若き美貌が映像美を引き立てたことも、本作の大きな魅力でしょう。 主人公・ヴィンセント役を務めたイーサン・ホークは1970年生まれ。青春映画『いまを生きる』(1989年)や『リアリティ・バイツ』(1994年)で注目されるようになったホーク。彼は1995年に『恋人までの距離』に出演して若者に絶大な人気を誇っていました。 一方、ジェロームを演じたジュード・ロウは1972年生まれ。彼が1999年公開のサスペンス映画『リプリー』でアカデミー助演男優賞にノミネートされることになるのはまだ先のこと。『ガタカ』が公開された1997年当時は映画の出演作も少なくフレッシュな印象でした。 ヴィンセントの恋人・アイリーンに扮したユマ・サーマンは1970年生まれ。モデル出身の彼女は『危険な関係』(1988年)のセシル役以来、その美貌が広く知られていました。彼女は本作の撮影中に恋愛関係になったホークとその後結婚して、ハリウッドの話題になります。

人間の可能性と希望を描いた名作『ガタカ』

この記事では何年たっても色あせない『ガタカ』の魅力とタイトルの意味をネタバレ解説しました。 人生で成功するカギは持って生まれた素質か生まれてからの努力か、という昔からの難問も取り上げたSF映画『ガタカ』。ソフト版はアインシュタインやリンカーンといった偉人の遺伝子に欠陥があったという削除された映像も同梱しています。 人間の可能性と希望を描いた作品である『ガタカ』は、主要キャスト3名を始めとする映像美とあいまってSF映画の名作として長く愛され続けるでしょう。