2021年7月8日更新

感動の実話!映画『イントゥ・ザ・ワイルド』のあらすじや死因を紹介!

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『イントゥ・ザ・ワイルド』
©︎ PARAMOUNT/zetaimage

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映画『イントゥ・ザ・ワイルド』を徹底解説!

『イントゥ・ザ・ワイルド』(2007年)は実話をもとにしたアドベンチャー・ヒューマンドラマ映画。1990年代初頭にアメリカ各地を放浪していた青年が、アラスカの荒野で遭難するまでを描いた作品です。 実際の事件を克明に調査したノンフィクションを、俳優のショーン・ペンが監督・脚本を務めて映画化したこの作品。アメリカの美しく雄大な自然を背景に、主人公の青年がさまざまな背景を持つ人たちと交流する姿に心打たれます。 この記事では、『イントゥ・ザ・ワイルド』のあらすじや結末、主人公の名言などを解説します。

人生を考えさせられる映画『イントゥ・ザ・ワイルド』のあらすじ

1992年4月、主人公のクリス・マッキャンドレス(エミール・ハーシュ)はヒッチハイクでアラスカのデナリ国立公園・自然保護地域に到着します。 24歳のクリスはアラスカの荒野で「精神的革命」を成し遂げるという、最後の大冒険に乗り出したのです。 荒野に分け入ったクリスは、ハンターなどのために避難小屋として設置されたバスを発見。彼はそこを「マジック・バス」と名付け、狩猟採集生活を送る拠点とします。 この映画は、このようなクリスのアラスカ生活の描写に、彼がそこに至るまでの道のりがフラッシュバックで挿入される構成になっています。 アラスカに来る2年前、アメリカ・ジョージア州の名門・エモリー大学を優秀な成績で卒業したクリス。彼は就職も進学もせず貯金や持ち物を処分してアメリカ全土を放浪する旅に出ました。 名前もアレグザンダー・“アレックス”・スーパートランプと変えてヒッチハイクで各地を旅する彼は、行った先々でさまざまな人たちと交流します。ヒッピーの中年カップル、穀物倉庫の経営者、退役軍人の老人といった人たちが、性格の良いクリスを我が子のように可愛がってくれました。 ですが、彼は特定の人と長く一緒に生活することを拒んで、アラスカの荒野を目指す旅に出るのです。

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アラスカまで旅にでた青年の結末とは?死因を解説

アラスカの「マジック・バス」での孤独な生活を始めて9週間目、1992年7月初旬。トルストイの短編集『幸せな家庭』を読んでいたクリスは、隣人愛の幸福について書かれた一節に感銘を受けます。やがて彼は荷物をまとめ、春に来た道を戻ってハイウェイを目指します。 しかし、ハイウェイの手前で彼に立ちはだかったのは、雪が残っていた春の浅瀬とは違い、夏の雪解け水で川幅30メートルにまで増水した急流でした。 退路を断たれたクリスは、川の水が減る秋まで「マジック・バス」での生活を続けることにします。しかしそこに追い打ちをかけるように、それまで狩猟採集生活を送ってきたクリスの体調が突然悪化します。 急激に衰弱して動けなくなり死期の迫ったことを悟った彼は、この世に別れを告げるメッセージを書き、母の縫ってくれた寝袋のなかで息絶えるのでした。 彼が急速に栄養失調で死亡した原因について映画では、野生のイモによく似た毒性のある野草を食べたことが示唆されています。

実話『荒野へ』をもとに作られた『イントゥ・ザ・ワイルド』

荒野へ

この映画の原作は、アメリカの山岳ジャーナリスト・ノンフィクション作家であるジョン・クラカワーが書いた同名のベストセラーです。映画のタイトル『イントゥ・ザ・ワイルド』を日本語に訳すと原作本の邦題『荒野へ』になりますね。 この本は主人公・クリスの生涯を、彼の手紙や手記、親族や彼と交流した人びとのインタビューをもとに克明に調査して書いたものです。 さらに著者・クラカワーがアラスカの山で命を落としそうになった体験なども交えて、荒野の冒険に乗り出す青年の心理が細かく描かれています。 映画の監督・脚本を務めたショーン・ペンは、ドラマチックな誇張は最低限に抑えてこの原作を忠実に映画化しました。 重要な登場人物やセリフのほとんどはこの書物にもとづいており、映画をリアルで感動的なものとしています。

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心打たれる名言集

人生において必要なのは、実際の強さより、強いと感じる心だ。

『イントゥ・ザ・ワイルド』(2007年)
© Paramount Classics

このセリフは映画の序盤、ヒッチハイクで知り合った中年ヒッピー女性・ジャンと、海水浴をしているときにナレーションで入るセリフです。 クリスは水が苦手なのですが、ジャンのボーイフレンドに頼まれて彼女と一緒に海に入ることにしました。困難にあえて直面することで、強いと感じる心を手に入れることができる、という意味のセリフと言えるでしょう。 これをきっかけに、それまで関係がギクシャクしていたジャンとボーイフレンドも、この後よりを戻すことになります。 クリスと年齢の近い子どものいるジャンは、アラスカを目指すクリスのために毛糸の帽子をプレゼントしてくれるほど彼を可愛がっていました。

人生の楽しみは人間関係だけじゃない。神はあらゆる所に新たな楽しみを用意してる。物の見方を変えなくては。

『イントゥ・ザ・ワイルド』(2007年)
© Paramount Classics

このセリフは、クリスがアラスカに旅立つ直前、カリフォルニアで知り合いになった老人のロン・フランツに言うセリフ。孤独なロンに、丘に登って外の世界に目を向けるよう促す言葉です。 退役軍人のロンは、沖縄に駐屯していたときにアメリカに残していた妻子が交通事故で死んでしまったため、身寄りがありません。そのためロンはクリスのことを孫のように思って、養子にしたいと言い出すほどでした。 原作でこの言葉はクリスがロンに宛てた手紙のなかに見られ、実在のロンはその後しばらく旅に出たそうです。

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幸福が現実となるのは、それを誰かと分ちあったときだ。

『イントゥ・ザ・ワイルド』(2007年)
© Paramount Classics

この一節は、映画でクリスが死の直前、ボリス・パステルナークの長編小説『ドクトル・ジバゴ』の行間に最後の力を振り絞って書き込んだ言葉です。 クリスの真意は永久にわかりませんが、彼が放浪の末、文明社会に戻ることに意味を見出したことがわかる言葉と言えるでしょう。 原作本でこの書き込みはクリスが体調を崩す直前、7月末に行ったとされています。それから3週間も経たないうちに彼はこの世を去りました。 映画では、複雑な事情から家族や他人にどこかで心を閉ざしていたクリスが、人生の幸福に開眼する感動的な演出になっています。

遭難が相次ぎバスが撤去……作品のシンボルであるバスはどこに?

『イントゥ・ザ・ワイルド』(2007年)
© Paramount Classics

クリスが「マジック・バス」と名付けてそこで生活し最期を迎えたバスは、近くの公道のジョージ・パーク・ハイウェイまで50キロメートル弱。南に25キロメートルほど行くとデナリ国立公園の管理人が巡回して、毎日何百人もの旅行者が通る道があります。 アラスカの基準では人里離れたところにあるというわけではないため、このバスはハイキング旅行者の聖地となりました。 とはいえ、アラスカの自然は過酷なため、2020年までに少なくともハイカー15人が救助隊の世話になり、2人が川で溺れて命を落としています。 このため、「マジック・バス」は2020年6月にアラスカ州兵軍の手でヘリコプターを使って撤去されました。 2020年9月、アラスカ大学北方博物館がこのバスを復元して、野外常設展示とする旨を発表しています。

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心に残る映画『イントゥ・ザ・ワイルド』

この記事では映画『イントゥ・ザ・ワイルド』のあらすじや結末、心に残る名言などを解説しました。 ショーン・ペンの手によって、原作の良さを損なうことなく、アメリカの美しい自然を背景に映像化されたこの映画。主演を務めたエミール・ハーシュの体当たりの演技、ヴィンス・ヴォーンなど実力派の脇役陣、映像に絶妙にマッチしたサウンドトラック、そのいずれもが心に残る作品です。 特にロン役を務めたハル・ホルブルックは本作の演技でアカデミー助演男優賞にノミネートされました。「トワイライト」シリーズでスターになる前のクリステン・スチュワートが、主人公に一目惚れする少女の役で出演しているのも注目! キャンピングカーで生活する女性と放浪する青年の交流など、『ノマドランド』(2020年)と共通する要素もあり、公開から10年以上たっても色褪せない名作と言えるでしょう。