映画『オールド』ネタバレあらすじ考察!衝撃の結末ラストを伏線から徹底解説 なぜ老化が急速に進んだのか?
スリラーの鬼才M・ナイト・シャマランが監督・脚本・製作を手がけた映画『オールド』。“1日で老いて死ぬ”謎のビーチからの脱出を目指す家族の恐怖とサバイバルを描く、新感覚の謎解きタイムスリラーです。 この記事では、『オールド』のあらすじや伏線をネタバレありで解説し、作品を考察します。 ※本記事は、映画『オールド』の重要なネタバレを含みます。未鑑賞の方はご注意ください。
映画『オールド』結末までのネタバレあらすじ
奇妙なビーチのルール
楽しいバカンスを過ごすために、南国の美しいビーチへやって来たキャパ一家。彼らは人里離れた秘境に到着すると、すぐさまその美しさに魅了されます。 しかししばらくして、長男のトレントが海を漂流して来た女性の死体を発見。そこから楽園ムードは一変し、さらに子どもたちが急速に成長していく様子に驚愕し始めます。 急速に“年を取る”謎のビーチ。子どもたちの成長からここでは1時間が2年に相当し、1日居れば48年分の年齢を重ねることになると判明します。 峡谷を通って来た道に戻ろうとしたり、岩を登ったり、海を泳いで渡ろうとすると途中で気絶してしまい、脱出する術が見つかりません。携帯電話の電波もつながらず、彼らは完全にこのビーチに閉じ込められた状態となってしまうのです。
【結末ネタバレ】ビーチの正体&黒幕は……?
トレントたちが見つけた過去の犠牲者の持ち物と思われるノートには、ビーチの周りを囲む岩は細胞を急速に成長させる特殊な鉱石で、何百年もかけて上昇して現れたのでは?という考察が書かれていました。 なぜ峡谷や海から脱出できないのかという問いには、深海から急浮上するように、急速な時の経過に体が順応できずに気絶してしまうのではないかという考えが浮上します。 実は彼らが来たリゾートホテル自体が製薬会社の新薬治験施設であり、この特殊なビーチを使ってこれまでにも数々の治験者が犠牲になっていたのです。 トレントと姉のマドックスは両親が老衰で亡くなった後も脱出をあきらめず、鉱石の影響を受けない珊瑚礁の間を泳いで脱出に成功。ホテルで知り合った警察官に犠牲者のノートを渡し、告発したのでした。
【ネタバレ】まさかの黒幕!二度見したくなる伏線を辿る
伏線1:ウェルカムドリンク
リゾートホテルを訪れた際に、各々に配られていたウェルカムドリンク。それぞれの“好みを考慮して”作られたというそのドリンクの中には、実は密かに各治験者向けの治験薬が入れられていました。 出迎えたホテルのマネージャーやスタッフも、製薬会社の治験施設であることを承知の上、治験者の家族たちを受け入れていたのです。製薬会社の目的は、新薬の臨床試験を1日で行うこと。つまり普通だと時間がかかる治験を、このビーチで短縮させていたのです。 こうして知らないまま治験薬を飲まされ、マネージャーに勧められるまま治験場となるビーチへ向かわされていた家族たちは、それぞれの持病に対する治験者であることも知らされずに犠牲になっていきました。
伏線2:持病持ちのゲストたち
製薬会社は持病のある患者の情報を、彼らが処方薬を受け取る時に収集しており、治験者に選んだ人物にこのホテルの格安情報を個別に送っていました。腫瘍を持つキャパ家の母親プリスカも、この情報からホテルを選んでいます。 パトリシアはてんかんの持病を抱えており、朝食の場面で1度発作を起こしていました。パトリシアが飲まされたてんかんの発作を抑制する治験薬は、彼女の発作を16年も抑えたことが後に研究者から言及されています。 研究者たちは犠牲となった治験者に対して短い黙祷はしますが、基本的にこの犠牲は「多数を救うための尊い犠牲」だと考えている様子。しかし犠牲者たちの痕跡を消し去ることも徹底しており、その冷徹さが伺えます。
伏線3:イドリブからの手紙
ホテルに到着してすぐに、マネージャーの甥であるイドリブと友だちになったトレント。イドリブは暗号を考えるのが得意で、トレントに手紙を渡していました。 トレントたちがビーチへ向かう朝、イドリブはもう1通の暗号の手紙を彼に渡していましたが、実はこれがビーチ脱出のカギとなります。その内容は「僕のおじさんは珊瑚が嫌い」。 最後の生き残りとなっていたトレントとマドックスは、この暗号から珊瑚礁の間を泳いで脱出することを思いつきました。 どうやら以前にもイドリブはこうした暗号の手紙を誰かに送っていたようですが、脱出に成功した者はいませんでした。彼はおじさんが何か悪いことをしていると、気付いていたのです。
なぜ老化?この結末になった理由を考察・解説
「老い」への恐怖を浮き彫りに
『オールド』の根底にあるのは、シャマラン監督が感じた“老い(時間)への恐怖”です。 2021年に50歳を迎えた彼は3人の娘の父でもあり、彼女らの成長スピードを通して時間が身体や心に与える影響を考え始めたのだとか。時の流れに抗う人々を描きつつ、改めて時間、老いと向き合ったことで、撮影後は心境に変化があったそうです。 老いや時間にただ捉われるのではなく、「この瞬間に幸せを感じよう、楽しもうと感じるようになった」と語ったシャマラン監督。本作はそんな彼の思いが反映されているので、「今を大事に生きていかなければならない」と考えさせられる映画になっているかもしれません。
少ない命を犠牲にして多くを救う
この物語のもう1つのテーマは、新薬の治験から思い起こされる「少数の犠牲の上に成り立つ多数の命」の問題。 アメリカでは実際に、説明が十分になされないまま多くの社会的弱者が実験体となり、医療が進歩してきたという側面もあります。 この映画のように、何も知らされず死を伴うような治験をされるようなことは現実にはないと信じたいものですが、もし劇中の研究者のように「人の命を犠牲にすること」への贖罪がたった1分くらいの黙祷で済むものなら、空恐ろしいことです。 本作には、死への恐怖を実感させ命の重さを再確認させることで、人の命の重さに順位をつける想像力の欠けた人たちへの怒りも込められているかもしれません。
【ネタバレ】ビーチでの衝撃的な老化の顛末
キャパ家
ガイ・キャパ(保険数理士)
病を理由に浮気されつつも、妻プリスカを守っていたガイ。精神に異常をきたしたチャールズに襲われた時も、切り付けられながらも必死に守りました。その頃にはすでに視力が著しく低下しており、プリスカより少し前に老衰で亡くなっています。
プリスカ・キャパ(博物館の学芸員)
下腹部に腫瘍を抱えて、行く末に不安を感じ離婚を考えていたプリスカ。メロン大に肥大した腫瘍を摘出した後は健康になりますが、老いで左耳の聴力を失います。ビーチでガイと1日=50年近くを一緒に過ごし、最期は老いとともに過去の諍いすら忘れて穏やかな時間を過ごしました。ガイの少し後に同じく静かに老衰で死去。
トレント・キャパ(キャパ家の長男)
ビーチに来た当初は6歳だったトレント。急速に成長していきなり思春期に突入し、チャールズの娘カーラと性交して彼女を妊娠させてしまいます。夜を迎えた頃にはすでに30代の大人になっており、老衰で亡くなった両親を看取りました。脱出に成功した際には50歳を超えています。
マドックス・キャパ(キャパ家の長女)
当初11歳だったマドックスは、昼前にはもうハイティーンに。カーラとの子どもを亡くし、カーラをも亡くしたトレントをそばでずっと支えていました。両親を看取り、脱出した時には60歳近くになっています。
チャールズ一行
チャールズ(心臓外科医)
ストレスによって休暇を取っていた心臓外科医のチャールズ。母アグネスの死とストレスで、精神疾患が進行してしまいます。錯乱しガイとプリスカにナイフで切りかかりますが、プリスカに錆びたナイフで切られ、全身に毒が回って死亡しました。
クリスタル(チャールズの妻)
チャールズより10歳ほど年下に見える若い妻クリスタル。老化が顕著になるとみるみるシワが増え、低カルシウム血症のため背骨も湾曲し、見られることを恐れて1人で洞窟に隠れていました。トレントたちと遭遇し、動揺して狭い洞窟の中で立て続けに骨折。すぐに治癒するため、体中ボキボキになった状態で死亡しています。
カーラ(チャールズの娘)
当初はトレントと同じ6歳。成長してトレントと性交し、妊娠してしまいます。すぐに出産を迎え、乳児は無事生まれてきたものの、急激な時間の変化に適応できずに即死。崖からの脱出を試みますが、途中で気絶して落下死しました。
アグネス(チャールズの母)
ビーチに来た時点でかなりの高齢であり、孫のカーラと海で少し遊んだ後すぐに様子が急変します。トレントが発見した死体を見たすぐ後、心不全で亡くなりました。一緒に連れてきた飼い犬も同じ頃に急死しています。
その他の人々
ミッドサイズ・セダン(ラッパー)
血が止まらなくなる血友病患者で、精神疾患が進行したチャールズにナイフで滅多刺しにされて失血死しました。トレントが発見した死体の女性は連れで、彼女は多発性硬化症でした。女性はビーチで泳いでいたところ、気絶して溺死したようです。
パトリシア(精神分析医)
ジャリンの妻パトリシアは、てんかんを患っています。朝起こった発作から8時間後、つまり16年後に再び発作が起こり、そのまま死亡。セラピストの姉に会いたいからと、海からの脱出を試みようとした直後でした。
ジャリン(看護師)
パトリシアの付き添いとしてホテルにやって来たジャリン。元水泳選手だったため、海を渡っての脱出を試みますが、途中で気絶して溺死。岸に流れてきたところを、マドックスに発見されます。
映画『オールド』の怖シーンランキング
【3位】プリスカの腫瘍摘出
腫瘍が急速に肥大して、いきなり意識を失ってしまったプリスカ。ガイの決断で、チャールズとジャリンが腫瘍摘出の手術を行うことになります。 ナイフで腹部を切り開きますが、切開した部分はすぐに治って閉じてしまいます。仕方なく、切開部分をガイとジャリンが双方から手で無理やり開き……というシーンはかなり痛々しい!その上、すでにメロン大にまで肥大した腫瘍がまた気持ち悪い場面。 しかし腫瘍を摘出した後はすぐに、切開部分がスーッと閉じていくので「あれ?縫合しなくていいから楽?」といった変な感覚に陥ります。少しして意識を取り戻したプリスカも、打って変わって元気になっていたのがまた奇妙な感じでした。
【2位】チャールズの襲撃
死体の女性の件で、ミッドサイズ・セダンをずっと疑っていたチャールズ。母アグネスを亡くしたことで精神バランスが不安定になり、1人でブツブツ言うことが多くなります。 朝まで6歳だった娘カーラの妊娠・出産に立ち会うという不可思議な状況がさらに精神疾患を進行させ、ついにナイフを手にミッドサイズ・セダンを襲ってしまいました。その後すぐに彼からナイフを奪ったガイたちですが、チャールズはまたナイフを盗み出します。 ガイとプリスカに襲いかかり、ミッドサイズ・セダンと同じように滅多切りに。切られてもすぐに治る無限ループでそれ自体が恐怖!プリスカが錆びたナイフで切りつけた後、チャールズの体に毒が回っていく様子が実に気味悪いものでした。
【1位】クリスタルの死に様
劇中で1番恐ろしい死に様だったのは、クリスタルでしょう。低カルシウム血症という病でカルシウム不足のまま急激な老いを迎えてしまったクリスタル。顔もシワだらけになり、チャールズに「化粧ぐらいしろ」と言われて泣く泣く1人洞窟へ隠れていました。 そんな背骨も曲がった醜い姿を見られたくなかったのに、チャールズから逃げてきたトレントとマドックスに遭遇。暗い洞窟とクリスタルに恐怖し、何度もマッチを擦るトレント。それを阻止しようと向かってくるクリスタルでしたが、骨が脆くなっており、狭い洞窟でぶつかる度にボキボキと折れては治癒を繰り返します。 結局手足が何重にも折れた状態で、ありえない格好のまま息絶えてしまいました。
キャスト・スタッフ一覧
M・ナイト・シャマラン監督
メガホンを取ったのは、「アンブレイカブル」シリーズなどで知られ、スリラー映画の名手と呼ばれるM.ナイト・シャマラン監督です。 出世作にして代表作『シックス・センス』(1999年)は、緻密な伏線の数々と驚愕の結末が映画ファンを魅了し、今なお語り継がれる名作。時には批評家の間で賛否を呼びながらも、這い寄るような恐怖とどんでん返しを様々なテーマで描いてきました。 本作は『ミスター・ガラス』以来約3年ぶりの新作となり、同作で組んだスティーヴン・ジェイシュナイダーが製作総指揮に名を連ねています。
ガイ役/ガエル・ガルシア・ベルナル
一家の父役で主演を務めるのは、メキシコ人俳優のガエル・ガルシア・ベルナルです。 主演ドラマ「モーツァルト・イン・ザ・ジャングル」シリーズでは、破天荒な指揮者を好演し注目を集め、ゴールデングローブ賞主演男優賞を獲得。その他にも、映画『モーターサイクル・ダイアリーズ』(2004年)や『リメンバー・ミー』(2018年)などの話題作に出演しました。
プリスカ役/ヴィッキー・クリープス
ルクセンブルク出身の女優ヴィッキー・クリープス(ビッキー・クリープス)が、一家の母親を演じます。2018年公開の映画『ファントム・スレッド』でヒロインに大抜擢された彼女は、ドイツ語、フランス語、英語、ルクセンブルク語の4か国語を話す多才な女優です。
トレント役/アレックス・ウルフ
急激に大人の姿になってしまった息子・トレントを演じるのは、アメリカの俳優アレックス・ウルフです。 アレックスは人気シリーズ映画「ジュマンジ」の最新作2作に出演している若手俳優。他にもホラー映画『ヘレディタリー/継承』(2018年)を代表作としています。
マドックス役/トーマシン・マッケンジー
同じく急激に成長してしまった娘を演じるのは、新進女優トーマシン・マッケンジーです。 彼女は2014年に『ホビット 決戦のゆくえ』でハリウッドデビューし、『足跡はかき消して』(日本劇場未公開)では、ベン・フォスターの娘役に抜擢。ユダヤ人の少女に扮した『ジョジョ・ラビット』(2020年)でさらに知名度を上げ、ネクストブレイク候補の筆頭になりました。
カーラ役/エリザ・スカンレン
『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』(2020年)で三女ベスを演じ、有名女優たちと肩を並べたエリザ・スカンレンも本作『オールド』に出演。 2021年2月には主演映画『ベイビー・ティース』も公開されるなど、今人気急上昇中の若手女優です。
チャールズ役/ルーファス・シーウェル
イギリスで舞台俳優としても活躍するルーファス・シーウェル。詳細な役柄は不明ですが、映画『ダークシティ』(1998年)や『ROCK YOU!』(2001年)などを代表作にもつ彼も本作への出演が発表されています。
原案はフランスのグラフィックノベル『Sandcastle』
『オールド』の原案は、フランス人作家ピエール・オスカー・レヴィと、作画のフレデリック・ピーターズによるグラフィックノベル『Sandcastle』です。 大筋は映画と同じで、ビーチに閉じ込められた男女13人の1日を描くストーリー。彼らは奇妙な出来事に混乱し、適応し、ついには諦観の域まで達します。シャマラン監督は娘にこの小説を教えてもらい、次々とインスピレーションが湧いたそう。 自身の老いへの恐怖や驚きに重なるものを感じ、映画にしたいと思ったと言います。ただし“着想を得た”だけで、原案と異なる展開が用意されるでしょう。 映画のネタバレにはならないので、気になった人はぜひ読んでみてください。
映画『オールド』ネタバレあらすじの結末にはシャマラン監督のメッセージがあった
2020年のコロナ禍の中で撮影された、M・ナイト・シャマランの最新作『オールド』。これまでとはまったく違った“閉塞感漂う”時代に作られ、人の生死が身近に感じられる時だからこそ、観るべき作品なのかもしれません。 老いは誰にでも来るものであり、ガイとプリスカが最期に悟った境地は「時間に打ち勝とうとするのではなく、この瞬間を堪能すること」。シャマラン監督が感じた「今を生きることの大切さ」を、ぜひ劇場で体験してみてください。