アニメ映画『ジョゼと虎と魚たち』の動画を配信中のサブスクはここ！

田辺聖子の原作小説を2003年に実写映画化し、大ヒットした『ジョゼと虎と魚たち』。車椅子に乗っているジョゼと大学生の恒夫との純愛を描いている作品です。2020年には中川大志と清原果耶などの人気俳優が声優を担当したアニメ映画版が公開され、話題となりました。

大学生である鈴川恒夫は、メキシコにしか生息していない幻の魚に会うため、海洋生物学を学んでいます。メキシコ留学のためにスペイン語の勉強をしつつ、アルバイトで留学資金を溜める日々。 ある夏の晩、帰宅途中だった恒夫は、坂道を滑り降りてくる車いすの少女を助けます。散歩中だった「ジョゼ」と名乗る少女と祖母のチヅは、誰かにいたずらで車いすを押されてしまったことを話しました。 チヅの厚意で晩御飯を共にした恒夫は、チヅからジョゼの面倒を見る仕事を提案されます。謝礼が高額だったこともあり、恒夫は提案を受け入れました。 最初はジョゼから押し付けられる無理難題に戸惑いましたが、徐々にジョゼのことを理解していきます。そんな中で、留学先が決まりそうだという知らせが恒夫に届きます。

鈴川恒夫は、小学生の頃に近所のペットショップで見た魚「クラリオンエンゼル」に憧れる22歳の大学生です。夢のためにひたむきに努力しており、ジョゼに対する態度からは誠実さや優しさが見て取れます。 鈴川恒夫役を演じるのは、俳優であり声優の中川大志です。アニメ作品の声優を務めるのは、映画『ちびまる子ちゃん イタリアから来た少年』(2015年)に続き2作目。映画『パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊』(2017年)で吹替にも挑戦しています。

山村クミ子は「ジョゼ」と名乗る24歳の女性です。ジョゼという名前は、フランスの小説家フランソワーズ・サガンによる小説の作中人物からとったもの。幼いころから足に障がいがあり、車いすを使って生活しています。広い外の世界への憧れがあり、その憧れは彼女の描く絵に表れています。 ジョゼ役を演じたのは、女優であり声優、ファッションモデルの清原果耶です。アニメ映画で声優を務めるのは、映画『台風のノルダ』(2015年)に続き本作で2作目。2019年には歌手としてもデビューしており、幅広い分野で活躍しています。

二ノ宮舞(画像中央)は恒夫が勤めるダイビングショップにおける同僚で、恒夫に片思いをしています。同じく同僚の松浦と共に、恒夫の夢を応援している様子が描かれています。 二ノ宮舞役を演じたのは、女優であり声優の宮本侑芽です。幼いころから劇団ひまわりに所属し、子役として活躍。その後は声優として様々なアニメ作品に出演しています。代表作は、アニメ『SSSS.GRIDMAN』(2018年)の宝多六花役、アニメ『イエスタデイをうたって』(2020年)の野中晴役など。

アニメ映画版の「ジョゼと虎と魚たち」は、実写映画版とは異なる人物設定やストーリーの作品です。原作である田辺聖子の小説からある程度設定を引き継ぎつつも、実写映画版とは全く異なるアプローチを試みています。 例えば、実写映画版では主人公の恒夫は将来の夢を持っておらず、体だけの関係の女性もいるだらしのない若者です。しかしアニメ映画版では、夢に向かってひたむきに努力する青年として描かれています。 また、実写映画版で描かれるジョゼの生活は非常に生々しく、苦しい現実を感じさせるものでした。障がいがある人と共に生きていくことの大変さに耐え切れず、疲弊し葛藤する恒夫の姿が印象的です。 しかしアニメ映画版では貧しさや陰鬱さは除かれ、ジョゼと恒夫が素直に心を通わせる綺麗なラブストーリーとなっています。

実写映画版の「ジョゼと虎と魚たち」は、数々の映画賞を受賞した評価の高い作品です。匂いを感じるほど生々しくリアリティがある生活。そしていびつな愛とエロティシズムの表現は、原作小説に描かれていたものを見事に映像化しています。 一方で、アニメ映画版も非常に高い評価を受けています。美しく色彩豊かなアニメーションを伴った、足の不自由な女性と青年とのピュアなラブストーリー。実写映画版に感動した人は、アニメ映画版の雰囲気に面食らうかもしれません。 しかし、全く別の作品だという前提で見てみると、アニメ映画版も素直に楽しむことができます。

アニメ映画版で目を引くのは、まずは映像表現の美しさです。ジョゼが抱く外の世界への瑞々しい憧れが、色彩豊かなアニメーションで表現されています。ジョゼの心情と重なるように色を変える背景の美しさも、アニメ映画版ならではだと言えます。 また、登場人物たちの真っ直ぐな成長と、お互いを尊重し合う心の交流を描いたストーリーもアニメ映画版の特徴です。美しいストーリーとジョゼや恒夫のひたむきさは、明日を生きることへの希望を強く感じさせてくれます。

実写映画版の『ジョゼと虎と魚たち』では、ジョゼと恒夫の生きる姿が、生々しさやリアリティを伴って映し出されます。足に障がいを持つ人の辛さと周囲の苦しみが、貧しさやエロティシズムと共に描かれています。 1人ではゴミを出すことができないジョゼが、近所の男性に胸を触らせる代わりに捨ててもらっていることを告白するシーンなどは、非常に象徴的です。めまいがするような生々しい現実が表現されています。原作小説のほの暗さを映像として描き切っている作品だと言えます。

韓国映画版についても、登場人物の設定やストーリーが異なる、全く別の映画となっています。韓国版の「ジョゼ」は、独特な感性を持った思慮深い大人の女性として描かれています。また、近年高い評価を受けている韓国映画らしく、映像表現や演出は非常に練られたものです。 韓国映画版には、日本映画版で感じる陰鬱な雰囲気は全くありません。広い世界に憧れる足の不自由な女性と、彼女に惹かれつつもそれまでの生活を捨てられない男性。彼らの恋の行方を描いた恋愛映画、という印象が強いです。

2003年に公開された実写映画版もU-NEXTをはじめとするサービスで配信中です。また、韓国映画版については、2021年現在、日本人向けの動画配信サービスでは未配信の状態となっています。 『ジョゼと虎と魚たち』の映画3作品は、全く異なる作品だと言えます。観た際の印象が全く違うため、3作品を見比べても飽きることはありません。今後韓国版も配信されることに期待したいですね。