2023年5月26日更新

映画『コーダ あいのうた』ネタバレ感想考察!最後の手話の意味とは?絶賛された結末は実話なのか

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『コーダ あいうのた』
© 2020 VENDOME PICTURES LLC, PATHE FILMS

第94回アカデミー賞で作品賞など3冠に輝いた映画『コーダ あいのうた』。聴覚障がい者の家庭で育った健聴者の少女を主人公にした心温まるヒューマンドラマです。 この記事では、本作のあらすじ感想をネタバレありで紹介します。最後の手話の意味からテーマを考察し、アカデミー賞受賞の理由も解説します。

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映画『コーダ あいのうた』作品概要

タイトル 『コーダ あいのうた』
公開日 2022年1月21日
上映時間 112分
キャスト エミリア・ジョーンズ , トロイ・コッツァー , マーリー・マトリン , ダニエル・デュラント

映画『コーダ あいのうた』のあらすじ【ネタバレなし】

コーダ あいのうた
© 2020 VENDOME PICTURES LLC, PATHE FILMS

ルビー・ロッシ(エミリア・ジョーンズ)は、海辺の町で両親と兄の4人で暮らしている高校生。父フランク(トロイ・コッツァー)兄レオ(ダニエル・デュラント)は漁師で、家族の中でルビーだけが耳が聞こえます。ルビーは幼い頃から家族の「耳」となり、漁師の仕事も毎日手伝っていました。 新学期から合唱部に入部したルビーは、顧問の先生に歌の才能を見出され、音楽大学の受験を勧められます。歌うことが好きだったルビーは戸惑いながらも家族に相談しますが、母ジャッキー(マーリー・マトリン)は家業の方が大事だと大反対。レッスンもあきらめ、ルビーは今後も家族の耳となる決意をしますが……。

映画『コーダ あいのうた』感想・評価

コーダ あいのうた
© Apple TV+/Photofest/Zeta Image
コーダ あいのうた』の総合評価
4.5 / 2人のレビュー
吹き出し アイコン

20代女性

手話がすごくカッコよかった!フランクが歌うルビーの喉に触れて、振動で歌声を感じようとしているシーンが一番良かった。耳で聞こえるものでなくても、伝えられることはたくさんあるんだなと思った。

吹き出し アイコン

30代男性

予想できる展開ではあるものの、結末に向かうまでの過程がすばらしかった。リアルな手話の演技が圧巻で、手話ってカッコいいと気付かされるほど魅力的。歌声もきれいで、歌唱シーンは鳥肌が立った!

『コーダ あいのうた』結末までのネタバレあらすじ

【起】耳の聞こえない家族と歌が好きな高校生ルビー

マサチューセッツ州の港町に住む漁師一家のロッシ家は、陽気な父フランクと母ジャッキー、兄レオと高校生のルビーの4人家族。新学期、ルビーは密かに思いを寄せるマイルズが合唱部に入るのを見て、自分も入部することに。 しかし聴覚障がい者の家庭で育ったルビーは、これまで「言葉が変」と言われてきたことで、人前で歌うことを怖がっていました。そんなルビーに顧問のV先生は歌の才能を見出し、ボストンのバークリー音楽大学の受験を勧めます。

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【承】漁師組合の新設とルビーの進路

『コーダ あいのうた』ダニエル・デュラント、トロイ・コッツァー、エミリア・ジョーンズ
© Apple TV+/Photofest/Zeta Image

その頃、漁港では政府の介入によって魚の価格が下落し、漁師たちが不満を募らせていました。集会ではフランクとレオの通訳として、ルビーが家族の意見を代弁。ロッシ家は自分たちで魚を売る漁師協同組合を立ち上げることを決めます。 ルビーはV先生のレッスンを受けていましたが、組合の仕事が多くなるにつれ遅刻することも増え、レッスンに集中できません。さらに家族に音大を目指すことを打ち明けますが、家族は彼女の歌声を聴くことができないため、本当に才能があるのかわからないままでした

【転】家族の反対とルビーの葛藤

両親に家業の方が大事だと反対され、葛藤する気持ちを抱えたルビーは翌朝の漁をさぼり、マイルズと秘密の湖で特別な時間を過ごします。 しかしルビーがいないまま漁に出たフランクとレオは、たまたま政府の監視員が同乗する中で、緊急の無線に気付かないまま漁を続けていました。危険を感じた監視員は、漁を続けるなら必ず健聴者を乗船させることを申し付けます。このことを知ったルビーは、夢をあきらめて家業を助けることを決意しました。

【結末】発表会と受験、ロッシ家の決断

コーダ あいのうた
© 2020 VENDOME PICTURES LLC, PATHE FILMS

合唱部の発表会のために、ジャッキーはルビーに赤いドレスをプレゼントし、ルビーが健聴者として生まれてきた時の不安を正直に打ち明けました。一方レオはルビーに「家族の犠牲になるのはおかしい」と、彼女の選択に怒りを示します。 発表会に赴いたロッシ家ですが、ルビーの歌う姿は見えても歌声は聴こえません。それでも周囲の観客たちの反応や拍手の振動で、彼女の歌のすばらしさを体感します。 バークリー音大の受験当日、あきらめていたルビーを起こし、総出で彼女を受験会場まで送り届けたロッシ一家。見守る家族の姿に勇気を得たルビーは手話を交え、心を込めて歌いました。 ルビーの表現力は審査員に認められ、大学に合格。旅立ちの日、家族は抱き合ってお互いの絆を再確認し、笑顔でルビーを送り出したのでした。

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【感想考察】最後の手話の意味とは

『コーダ あいのうた』エミリア・ジョーンズ
© Apple TV+/Photofest/Zeta Image

ルビーがボストンへ出発した時、映画のラストシーンで彼女が家族に向かって差し出した手話が、作品の感想とともに大きな話題になりました。これはアメリカ手話(ASL)で「I Love You」という意味です。 小指が「I」、人差し指と親指が「L」、小指と親指が「Y」で、「I Love You」の頭文字を表しています。よく見るとルビーはさらに、中指を人差し指にかけています。これは「I really love you」という意味で、彼女の気持ちが実によく表れたラストにふさわしい手話だったといえますね。 この作品のテーマは「家族愛」と「10代の成長」ですが、お互いの違いを知り、それを受け入れてなお愛していくという、家族でなくても通じるような普遍的なものでもあるのです。

【解説】映画『コーダ あいのうた』は実話?

『コーダ あいのうた』は実話ではありませんが、リメイク元のフランス映画『エール!』の原作にはモデルとなった家族があるようです。 映画『エール!』は酪農一家でしたが、「コーダ」では漁師一家に変更されています。主人公以外の家族が全員耳が聞こえないという設定は同じです。

タイトル「コーダ」の意味は?

『コーダ あいのうた』の原題は『CODA』で、CODAとは「Child of Deaf Adults」の略語。 聴覚障がい者の親に育てられた子どもという意味です。また音楽用語ではCODAは楽曲の終わりを表す記号で、次の章が始まるという意味もあります。

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【解説】なぜ高評価?アカデミー賞を取った理由

キャスティング

『コーダ あいのうた』マーリー・マトリン、ダニエル・デュラント、トロイ・コッツァー
© Apple TV+/Photofest/Zeta Image

シアン・ヘダー監督がこだわっていたという、聴覚障がい当事者のキャスティング。『愛は静けさの中に』(1986年)のオスカー女優であるマーリー・マトリンをはじめ、本作で男性ろう者初のアカデミー助演男優賞を受賞したトロイ・コッツァー、兄レオ役のダニエル・デュラントはみな聴覚障がいを持つ俳優です。 役柄に沿ったキャスティングが評価されるのは、文字通り「不自然」ではない自然な演技が引き出せるから。本作に重要だった「本当の手話話者」が演じたからこそ、説得力のある作品になったのです。 また、ロッシ家唯一の健聴者ルビーを演じたエミリア・ジョーンズの繊細な演技も高評価を得ています。手話と歌唱という難易度の高いスキルも体得し、手話を交えた歌唱シーンは特に注目されました。

オリジナル要素

『エール!』からの変更点では家業の他にも、弟が兄になっている点が功を奏しているようです。姉が弟の面倒を見るのは自然ですが、妹に世話されることで兄レオのプライドが揺らぐ場面も。 家族の中では一番若く、本来なら自由気ままに青春を楽しみたい10代のルビーが、家族の世話をしなければならない状況。これがルビーのヤングケアラーとしての難しい立場をより際立たせており、この問題に重みを持たせることにもつながりました。

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劇中で使用された楽曲

ルビーが合唱部の発表会でマイルズとデュエットした曲は、タミー・テレルとマーヴィン・ゲイのデュエット曲「You’re All I Need To Get By」。エミリア・ジョーンズとマイルズ役のフェルディア・ウォルシュ=ピーロの美しいかけ合いは、聴きごたえ十分! 劇中ではロッシ一家の“聴こえない”状況を体感するため途中で無音になりましたが、サウンドトラックにはフルバージョンで収録されています。 ルビーが受験当日に歌った曲は、ジョニ・ミッチェルの名曲「Both Sides Now」。邦題は「青春の光と影」で有名ですが、物事には光と影のような両面があり、見る角度を変えれば見方もまったく違ってくるといった意味が込められています。 ルビーは家族が見守る中、この曲に手話を加え、この時の自分の気持ちを素直に表現しながら歌いました。

映画『コーダ あいのうた』のネタバレあらすじをおさらい

耳の聞こえない家族の中で、ただ1人健聴者として生を受けたルビーが葛藤し、成長して旅立っていく物語『コーダ あいのうた』。印象的な手話の会話シーンや心揺さぶる歌唱シーン、そして普遍的なテーマが多くの人の胸を打つ作品となりました。 一度劇場で観た人も、ぜひあらすじや解説をおさらいして、もう一度感動を追体験してみてください!