2023年2月13日更新

映画『ヘルドッグス』あらすじネタバレをラストまで考察!相関図つきでヤクザ抗争の黒幕を解説

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『ヘルドッグス』
©2022 「ヘルドッグス」製作委員会

深町秋生の小説 『ヘルドッグス 地獄の犬たち』を原作とした映画『ヘルドッグス』が2022年9月16日に公開されました。 次々と明らかになる驚愕の真実、怒涛のアクションから目が離せない本作。この記事ではそんな映画『ヘルドッグス』あらすじをネタバレありで解説・考察していきます。

※この記事には映画『ヘルドッグス』の結末までのネタバレが含まれます。未鑑賞の場合は注意してください。

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映画『ヘルドッグス』あらすじとネタバレ

相関図

『ヘルドッグス』 相関図

結末までのネタバレあらすじ

【起】堕ちた元警官がヤクザ組織に潜入

『ヘルドッグス』(2022年) 岡田准一
©2022 「ヘルドッグス」製作委員会

ヤクザに対する復讐のためだけに生きてきた元警察官の出月梧郎。彼はその獰猛さから警察に目をつけられ、関東最大のヤクザ組織・東鞘会に“兼高昭吾”として潜入することになります。 彼の任務は、組織のトップが持つ秘密のファイルを奪うこと。警察は兼高と「サイコボーイ」と呼ばれ恐れられる室岡秀喜との相性が98%だと調べて、兼高に室岡の相棒になるよう迫りました。 数年後、2人は順調に組織での地位を確立し、神津組組長の土岐からの推薦で会長・十朱のボディーガード役に抜擢されます。 成り上がりながらも兼高は、危険が好きな土岐の愛人・恵美裏と深い仲になっていきました。

【承】サイコキラー室岡と共に組織をのし上がる

『ヘルドッグス』(2022年)坂口健太郎
©2022 「ヘルドッグス」製作委員会

あるとき兼高が警察の上司・阿内と情報共有をしていると、その場に恵美裏が姿を現します。兼高は正体がバレたと慌てますが、実は恵美裏も警察が送り込んだスパイでした。彼女の目的は、東鞘会による象牙の密輸を告発することだったのです。 ボディガードとして十朱とともに行動するようになった兼高。ある日、華岡組のスパイとの会合に女の刺客ルカが潜り込んできます。 拷問場でルカに黒幕を吐かせようとしますが、ルカの体には発信機が入っていました。すぐにマシンガンを持った敵部隊に囲まれた十朱と側近。熊沢組組長の熊沢が体を張って十朱を守り抜きますが、“三羽烏”の1人を失ったダメージは深刻でした。 さらに拷問中だったルカも自殺してしまい、十朱を暗殺しようとした黒幕もわかりません。しかし兼高は亡くなった熊沢の代わりに、十朱の秘書に昇格します。

【転】抗争が激化するなか、その裏にいたのは……

『ヘルドッグス』(2022年)松岡茉優、北村一輝
©2022 「ヘルドッグス」製作委員会

スピード出世した兼高を妬む三神は彼の身辺調査をし、その正体が警察の潜入捜査官だと気づきました。そして熊沢の葬儀の場で、兼高を盲目に慕う室岡にその事実を告げます。 室岡はそんなことを言う三神に怒って殴りかかり、三神を殺してしまいました。殺害現場を1番に目撃した兼高は、室岡に、組織から逃げるよう言います。 兼高が秘書まで上り詰めたため、警察はいよいよ東鞘会を潰しにかかります。実は警察はただ十朱を殺すだけではなく、実権を握る三羽烏も皆潰そうと企んでいました。熊沢を狙った黒幕も警察だったのです。 もう1人の三羽烏・大前田も持病で死に、残るは神津のみ。とうとう阿内は、恵美裏には神津を、兼高には十朱を殺すよう明じます。潜入の終わりを知らされた典子も、マッサージ客であり息子の仇である尾上右近を殺害しにいきました。

【結末・ラスト】十朱の正体と東鞘会の滅亡

『ヘルドッグス』MIYAVI・岡田准一
©2022 「ヘルドッグス」製作委員会

恵美裏が土岐を殺そうとすると、土岐はすぐさま殺意を感じて彼女に襲い掛かります。土岐はずっと兼高と恵美裏の恋愛関係に築いていて、嫉妬に狂っていました。それでも恵美裏を見逃し、愛していたのです。しかし最後は恵美裏が土岐に注射針を刺し殺害しました。 続いて兼高が十朱に迫ると、十朱は自分が元潜入捜査官で、東鞘会に寝返った身であることを話しはじめます。彼が持っている極秘のファイルは警察の違法捜査の記録であり、東鞘会に手を出せない理由になっていたのです。 十朱は兼高も寝返らないかと誘いますが、兼高は最後までヤクザへの恨みを忘れず、十朱を殺しファイルを奪いました。 一方、兼高の正体をとうとう確信し裏切られたと怒る室岡は、恋人である恵美裏を拉致し、彼を廃墟へとおびき出します。兼高に「自分とこの女とどちらが大切なのか」と迫りました。泣き叫ぶ室岡の一方、兼高は顔色を変えず室岡を銃殺します。 そして十朱から奪還したファイルを警察に渡し、彼の任務は無事完了したのでした。

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映画『ヘルドッグス』感想・レビュー

総合評価
4

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40代男性

出来事は正直追いきれなかったけど、それでも強く感情を揺さぶられた。登場人物たちがとにかくかっこよくて、このスマートさが令和のヤクザ映画か!!若者から見てもかっこいいヤクザ映画なのではないだろうか?最後の展開がちょっとBLっぽくなってて、坂口健太郎良いとこもってくなあと感動。

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30代女性

バイオレンス全開のアクションシーンと緊迫感がすごい!兼高は壮絶な過去に囚われて、復讐のためならなんでもする哀しさと怒りを感じさせる。室岡は兼高にめちゃくちゃ懐いてるけど、兼高には秘密があるのが切ない……。人間関係とか裏での暗躍とか複雑でちょっと混乱しそうになった。

【解説】なぜ十朱は狙われているのか?事件を図解

十朱はなぜ、誰に命を狙われているか、映画だけでは理解しきれなかった人も多いはず。十朱が新たな用心棒を雇ったのは、後継者争いをした敵勢力の生き残りからの報復を恐れたからです。ここでは、物語が始まる前に起こった後継者争いについて解説していきます。

兼高の潜入前

『ヘルドッグス』事件整理図

十朱の先々代、東鞘会五代目会長・氏家必勝が肝硬変により獄中死し、後継者争いが勃発しました。 ①神津太一(六代目)と氏家勝一(和鞘連合)が対立 まずは必勝の右腕だった神津太一と、ボンクラな息子・氏家勝一との間で争いが起こります。神津太一は、和鞘連合組員に撃ち殺されました。 ②神津の片腕・十朱義孝と三羽烏が反撃 神津太一の報復として、片腕だった十朱義孝と三羽烏が和鞘連合の幹部をほぼ全滅に追い込みます。 ③氏家勝一はメキシコに逃亡 幹部を殺され怯えた氏家勝一は国外逃亡。こうして十朱義孝は組長となり、彼と三羽烏が東鞘会の実権を握るのでした。 十朱はもともと潜入捜査官でしたが、②のとき警察を裏切っています。結果十朱は、和鞘連合の生き残りである勝一と、裏切った警察組織をずっと警戒していました。

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兼高の潜入後

①海外に逃亡していた勝一が怪しい動き 勝一が再び動き出したという知らせを聞いて、十朱は新しく護衛を雇います。ここで兼高が潜り込むことに成功しました。あるとき「勝一を華岡組が匿っている」という噂がたち、華岡組を探ることにします。 ②華岡組との会合の場に殺し屋が送られてくる。 華岡組との会合で、殺し屋を送りつけられた十朱。怒りに狂ってアジトまで殺し屋を連れ帰った結果、発信機をたどられて大戦闘になります。三羽烏の1人で十朱の秘書だった熊沢伸雄が死にました。もう1人の三羽烏・大前田も病死します。兼高は護衛から秘書に昇進しました。 ③兼高・吉佐が十朱・土岐を殺害 秘書にまで上り詰めた兼高は十朱を殺害、もう1人の潜入捜査官・恵美裏は土岐を殺害し、東鞘会は滅亡します。漁夫の利的に警察組織が勝利を収めたのでした。

なぜ十朱は殺られたのか?すべての黒幕は警察

『ヘルドッグス』MIYAVI・北村一輝
©2022 「ヘルドッグス」製作委員会

警察は反社会組織を潰すために内部抗争を煽ろうと、刑事や一般人を潜り込ませて噂を流し、殺し合いを激化させていました。 最初に潜入捜査をさせられた十朱は、警察組織とヤクザ組織との間で葛藤するうち、冷酷な警察組織よりも、義理人情を重んじるヤクザを選びました。 自ら東鞘会の幹部に自分の正体を明かし、彼がいる限り警察は簡単には手が出せないとアピールして組織のトップへと上り詰めたのです。 裏切りの際十朱は、原作では阿内と自分の同僚であった木場を殺害しています。阿内と木場は友人を超えた深い関係性にあり、阿内はその恨みも込めて十朱を執拗に追っていたのでした。 また「刑事に人殺しも許可して潜入捜査させていた」という事実は、明るみに出れば警察組織にとっても命取り。そこで兼高に十朱を殺して極秘ファイルを奪うをいう任務が課せられたのです。

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【考察】ラストのその後兼高はどうなったのか?

原作では

原作では兼高は、十朱を殺してファイルを手に入れたあと警察にそれを返します。しかしそれだけにとどまらず、彼はそのコピーをマスコミにも送りつけました。 警察とヤクザの癒着という大スキャンダルを表沙汰にした兼高は、警察からもヤクザからも狙われる存在になったことでしょう。それでも兼高は、自分の正しさを追い求めて貫いたのです。 しかしそんな捨て身な行動ができたのは、彼がなにも持たない、自分以外に守るべきものがない存在だったから。映画では恵美裏という大事な存在がいるため、同じ行動はとれないと考えられます。

吉佐恵美裏というオリジナルキャラクターの存在

『ヘルドッグス』(2022年)松岡茉優
©2022 「ヘルドッグス」製作委員会

映画では、兼高は十朱を殺害してファイルを取り返すことに成功し、任務完了となります。しかし室岡に恵美裏を拉致され、彼を殺してまで彼女を救うという行動に出ました。 その後、兼高がどうなったのかは描かれません。しかし原作のような捨て身の作戦に出ることはなかったのではないでしょうか。 映画オリジナルキャラクターの吉佐恵美裏は、兼高にとって大切な存在となりました。彼女を守るため、兼高は警察に従順に生きることになるのかもしれません。

【原作との違い】十朱の正体は最初から割れていた!

違い①:兼高の過去がもっと根深い

幼い頃に、家の隣のスーパーで、初恋の相手を含む4人の女性店員がヤクザに殺害された事件の第一発見者になった出月梧郎。 事件のトラウマとヤクザへの憎しみから彼は剣道の腕を磨き、警官になります。上野などの交番勤務を経てその検挙率が認められ、組織犯罪対策部特別捜査隊、通称「ソトク」から引き抜かれました。 引き抜かれた当初は潜入捜査という任務に違和感や葛藤を感じながらも、ヤクザへの恨みや昇格の条件を胸に、任務を遂行していくのです。 映画でも出月が過去の事件によってトラウマとヤクザへの復讐心を抱いていることは描かれていましたが、彼の原点となるヤクザへの恨みや潜入捜査への葛藤の描写は、原作より弱めに描かれていました。

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違い②:十朱がモグラだと知った上で潜入

『ヘルドッグス』MIYAVI (十朱)と部下(熊沢)
©2022 「ヘルドッグス」製作委員会

映画では兼高は「東鞘会のトップである十朱が持っている情報を取り返す」ことを任務として言い渡されていました。しかし十朱が元警察官で兼高と同じ潜入捜査官だったことは知らされておらず、終盤で十朱自身の口から聞かされることになります。 しかし原作では、もともと十朱が潜入捜査官であることが明かされており、それが理由で警察が東鞘会に手を出せないということも兼高は知っていました。警察の一枚上手なずる賢さが、映画より顕著に描かれています。

違い③:結末が全然違う!原作では全員破滅の道へ

映画では、兼高が殺したのは十朱と室岡だけでした。 しかし原作では阿内などの協力を得て、ヤクザ組織幹部ほぼ全員を殺害しています。また警察の資料をマスコミにリークすることで、この件に関わった警察官を破滅の道へと突き落としました。 兼高もまた警察とヤクザの両方を裏切った者として、茨の道を進むことになります。

違い④:キャラクターの変更

相性98%!?坂口健太郎との熱い絆

ヘルドッグス 兼高 岡田准一 室岡 坂口健太郎
©2022「ヘルドッグス」製作委員会

原作と映画の大きな違いは、室岡の存在感です。室岡は、原作ではそこまで強い印象を与えるキャラクターではありませんでしたが、映画では兼高との“相性98%”など、彼の相棒としての存在感が強調されています。 兼高と室岡の関係性は映画版の見どころの1つです。室岡にとって兼高は、唯一心を許した相手でしたが、兼高は任務のために彼を利用していたに過ぎません。兼高にも葛藤はあったものの、最終的には本来の目的のために室岡を“裏切る”ことになりました。 真実を知った室岡の怒りと哀しみが爆発し、兼高と命を取り合うシーンは圧巻の迫力です。

映画オリジナルキャラ・松岡茉優の役どころ

ヘルドッグス 土岐 吉佐 北村一輝 松岡茉優
©2022「ヘルドッグス」製作委員会

松岡茉優が演じる吉佐恵美裏というキャラクターは、原作では料亭を営む40代のおとなしい女性で、物語にはあまり影響しませんでした。 しかし映画では、松岡がキャスティングされたのと同時に「刺激がお好きなボスの愛人」、「兼高とも道ならぬ関係を持つ」と改変されています。彼女の正体と兼高との関係は、ストーリーの結末が変わるほどの大きな役割を持っていました。

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原作小説の感想・レビュー

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殺人も前提とした潜入捜査をさせる……。まさに「警察小説の枠を超えた問題作」。ヤクザを潰すことが目的とはいえ、憎んでいたはずのヤクザになって殺人を犯している自分自身に葛藤し、やがて組織にいるうちに自分の正義がグラつきはじめる主人公に、どこか共感してしまいました。ヤクザ組織内の描写が生々しく、まるで自分がそこにいるような感覚にもなりました!緊張感がすごかった……。

(30代女性)

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冒頭から引き込まれました!暴力、裏切り、拷問の怒涛の展開で、一気読みしてしまいました。主人公は応援せずにはいられないし、無邪気なサイコキラー室岡や、つかみどころがないハンサムなボス・十朱など、“ぶっ飛んでいるけど愛すべき魅力的なキャラクター”が多いので、バイオレンスだけどとても好きです。

(20代男性)

映画『ヘルドッグス』裏社会に生きる男の生きざまにシビれる!

岡田准一と坂口健太郎が、裏社会でのし上がっていく最凶のコンビを演じる映画『ヘルドッグス』。原作からの大胆な改変にも注目したい本作。 映像でしか表現できない激しいアクションとともに、裏社会の男の生きざまに浸りましょう。鑑賞後には原作も一緒に読むと2倍楽しめるはずです。