日本版「CUBE」の黒幕は?ネタバレあらすじや生き残りのその後を解説
シチュエーションスリラーの金字塔『CUBE』(1997)を日本版にリメイクした映画『CUBE 一度入ったら、最後』(2022)。大まかな展開は原作と同じですが、登場人物の設定やストーリーの追加要素など日本版ならではの見どころがあります。 本記事では、日本リメイク版のあらすじや原作との違いなど徹底的に解説していきます! ※映画のネタバレを含みます。注意してください。
『CUBE 一度入ったら、最後』あらすじ
閉じ込められた6人に殺人トラップが襲いくる
ある日突然、謎の立方体(=CUBE)に閉じ込められた男女6人。彼らの職業は、エンジニア、団体職員、フリーターと全員バラバラで、何の接点もありませんでした。 ここがどこなのかも、閉じ込められた理由も、何ひとつとしてわからない。そんな状況で脱出を試みる彼らに、熱感知式レーザーや火炎噴射など、殺人的なトラップが襲いかかります。体力と精神力がすり減っていき、極限状態のなかで人間の本性があらわに……。 次第に恐怖と疑心暗鬼に陥りますが、仕掛けられた暗号を解明しなければ、このCUBEから抜け出すことは絶対に叶いません。出口が存在するかもわからない道のりを、“生きる”ために進む。果たしてその先で、彼らは無事に脱出できるのでしょうか?
【感想・評価】原作ファンにとっては“ひどい”?
オリジナル版は低予算・無名キャスト・全編通して立方体の部屋の中で完結していますが、本作は有名人を起用して、回想シーン多め。オリジナルの閉塞感や曖昧感は薄れていますが、その分話の分かりやすさはありました。
冒頭のシーンはトラップは違うもののオリジナル版と寄せたカメラワークや内容でテンションが上がりました。ただやはり全年齢対象にしてしまっただけあり、その後の日本版オリジナル展開は少し残念……。岡田将生はキャラも相まってめちゃくちゃ良かったです。
『CUBE 一度入ったら、最後』結末までのネタバレ
被験者一覧
【起】目が覚めると謎の立方体「CUBE」の中に
上下左右に扉がある立方体、どこかの扉を開けるとさらに同じ立方体が続く「CUBE」。ある男は立方体を進んでいきますが、仕掛けられたトラップにより腹部を刺され死亡してしまいます。 目を覚ますと立方体の部屋にいると気付いた主人公・後藤。部屋には彼の他にフリーターの越智と中学生の千陽がいました。彼らは皆なぜこの部屋にいるのか分かっていません。 さらに他の部屋から井手という男が加わります。井手は自らの靴を使ってトラップを確認しながらこの部屋までたどり着いていました。そしてしばらくして唯一の女性・甲斐も加わってキューブからの脱出作戦がスタートします。
【承】脱出方法が判明?負傷しながらも先へ進む
慣れたようにどんどんと部屋を進んでいく井手。その途中で会社役員の安東が加わり6人で脱出作戦することとなります。 部屋に閉じ込められている理由も出口への手がかりもなく体力が徐々に消耗していく中、後藤が扉付近に3組の数字が書かれていることを発見しました。そして「トラップのある部屋は素数が数字に含まれている場合」と、その法則を見抜いたのです。 ついに脱出の糸口を掴んだ一行でしたが、全ての部屋がトラップに囲まれている部屋に着いてしまいます。仕方なく音に反応してトラップが作動する部屋を移動。移動中に越智が靴を落としたことによって安東は負傷してしまいますが、なんとか先に進んでいきます。
【転】仮説が崩れて仲間割れする6人
端の部屋を目指して移動していくと、なんと最初の部屋に戻ってきてしまい、仮説が崩れたことで一行は混乱。すると部屋全体に振動が伝わります。部屋が時間毎に動いていたのです。 つまり出口に向かう部屋に入れば脱出できるということ。希望を持った一行でしたが、誤って千陽がトラップ部屋に落下してしまい、後藤と井手が救出に向かいます。救出は成功したものの井手はレーザーポインターで撃ち抜かれて死亡してしまいました。 一行は井手の思いを背負い移動を再開します。すると今度は鉄格子で2グループに分けられました。後藤のグループが先に進むとスクリーンが現れ、後藤の過去が映されたのです。父の虐待、虐待を苦に自殺した弟……。後藤は叫ぶしかありません。
【結末】「CUBE」の黒幕は誰?衝撃のラスト
もう1つのグループでは、喧嘩から越智が安東を殺害してしまいます。その顔には笑みがこぼれていました。 後藤は端の部屋から靴を落として高さを計算。999の部屋に行けば出口に行けると導き出しました。越智と合流し999の部屋を目指します。しかし越智が全員を巻き込んで死のうとしていたという事実が明らかに。後藤が越智の揉み合いの末、トラップが作動し越智は串刺しになりました。 999の部屋には甲斐が先に到着していました。後藤は千陽を999の部屋に行かせますが、そこで扉が閉まり自分はキューブに取り残されてしまいます。 出口目前の甲斐と千陽。千陽は脱出しましたが、甲斐はキューブへ戻りました。そして再び彼女は内通者として被験者に加わったのです。
【考察】杏の正体や黒幕の目的は?
ラストで明らかになった杏の正体
杏演じる甲斐麻子の正体は、実験を始めた黒幕によって送り込まれたアンドロイドでした。このことは、ラストシーンで彼女の目に被験者たちのデータが写っていた様子からわかります。 彼女が完全に無機質な存在なのか、それとも目だけが機械の改造人間なのかはわかりませんが、彼女はあのキューブを転々としながら、実験を監督し続けている存在であるようです。
黒幕組織の目的は?
原作となった洋画の「CUBE」シリーズでは、この謎のキューブは死刑囚や反政府的な人物を実験台にする研究施設という設定でした。基本的に被験者が生きて外に出られることはないため、死を前提とした実験だったと考えられるでしょう。 日本版では実験の黒幕や目的は明かされていませんが、内通者(アンドロイド)だった甲斐(杏)の様子からその目的を考察することができます。 まず目に写っていたデータ。死ぬか外に出るか、どちらかが果たされた人物には「COMPLETE」、キューブの中に残っている後藤には「CONTINUE」と表示されていました。また、ラストで甲斐は宇野を救出して励まし、外の世界へと送り出しています。 これらから黒幕は、性格の悪い人物を死なせ、性格の良い人物だけを生き残らせるというような選別を目的として実験を行なっていたのではないでしょうか。
【考察】続編はある?生き残り3人のその後は
最後に生き残ったのは3人、宇野千陽と後藤裕一、そして甲斐麻子です。 宇野は外の世界に出て、“前と何も変わらないかもしれない”今後の人生を、これまでよりも前向きに受け入れて生きていくのではないでしょうか。甲斐が背中を押したということは、黒幕組織が今後彼の将来に関わることも、よほどのことがない限りなさそうです。 続いて重傷を負いながらも生き残った後藤のところには「CONTINUE」と表示されていました。彼の生死を決める“選別”は次のゲームに持ち越された(今後も続いていく)と考えられます。 甲斐麻子は生存者というより、最初から生きていなかったという方が正しいかもしれません。彼女は黒幕組織によって使われるアンドロイド。次の実験会場へと入って行ったので、再び同じような実験を監督していくのでしょう。
続編はある?
その後を匂わせるような終わり方だったために続編が作られるのではないかとも噂されていた『CUBE 一度入ったら、最後』。 しかし豪華なキャストを起用したわりに、興行収入は4億5100万円と低め(日本の映画界でヒットの基準は10億円と言われています)なので、続編が制作される可能性は低そうです。その後の展開は各々の想像力に委ねられていると思った方が良いかもしれません。
【ネタバレ解説】原作洋画との違いは?
原作映画『CUBE』(1997年)との違い
- 登場人物の設定
- 謎の簡略化
- 場面の移り変わり
大きな変更点は3つあり、まずは登場人物の設定です。原作の肝となる障害を持った人物がいなくなるなど登場人物の設定が変わり原作を鑑賞済みでも「あの人物が死ぬだろう」という予測ができないようになっています。また内通者がいたというラストの展開も日本版オリジナルでした。 2つ目が謎の簡略化。本作でも素数やデカルト座標は出てくるものの因数や順列を使った謎解き要素がなくなっています。代わりに見取り図を発見する流れが追加されました。 さらに3つ目、もともとCUBEは低予算映画だったため、物語がほぼ全てキューブの中で完結していましたが、日本版では回想シーンが多く撮影され、場面がいくつか移り変わるようになっていました。回想シーンが丁寧に描かれた分、人間ドラマに感情移入しやすくなっています。
原作のあらすじ・魅力
何者かによって謎のCUBEに捕らえられた、警察官のクエンティン、精神科医のハロウェイ、女性学生のレブンら6人の男女たち。冒頭で最初に目覚めた人物は、何もわからないまま移動しようとしますが、網状のワイヤーナイフで切り刻まれます。 死のトラップに怯えつつも脱出を目指すうちに、カザンと名乗る青年が合流。彼らは安全な部屋を示す暗号を解読し、ハッチを使って立方体同士を移動しながら、出口を目指すのでした。 原作は限られたセット、キャスト(全7人)による低予算のB級映画ですが、過激なゴア表現と映像のアイディアで熱狂的なファンを獲得。冒頭のシーンは、たった数十秒で映画の設定を印象づける伝説的な演出として、ファンの間で語り継がれてきました。 映画「SAW」シリーズを筆頭に、影響を受けたと言われる作品が数多く存在します。
究極のB級サスペンスを作ったヴィンチェンゾ・ナタリ監督
B級サスペンスの傑作を生み出し、世界を驚かせたヴィンチェンゾ・ナタリ監督。本作や『スプライス』(2011年)などで見せた、ダークな世界観の作品が特徴です。2019年には、Netflix配信のホラー映画「イン・ザ・トール・グラス」を手掛けました。 『CUBE』は正当な続編が2作作られましたが、彼はどちらにも関わっていません。 今回制作された日本版は、ナタリが世界で初めて公認したリメイク映画となり、彼本人がクリエイティブ協力として参加しました。
キャスト/登場人物一覧
後藤裕一役/菅田将暉
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後藤裕一(29)
エンジニア
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日本版『CUBE』の主演・菅田将暉は、29歳のエンジニア・後藤裕一を演じます。 菅田は2019年に俳優デビュー10周年を迎え、ますます精力的に活動中。2021年1月公開の『花束みたいな恋をした』も、若い世代を中心に話題を集めています。近年の活躍はめざましく、映画『アルキメデスの大戦』(2019)や『糸』(2020)などに主演。 2019年末には、ソロ歌手として「NHK紅白歌合戦」に初めて出場するなど、今最も勢いのある俳優の1人です。 本作の撮影では自分と深く向き合ったことを明かし、「こんな映画です、とカテゴライズするのはとても難しいです。実験的なエンターテインメントを楽しんでもらえたら何よりです」とコメントしました。
甲斐麻子役/杏
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甲斐麻子(37)
団体職員
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37歳の団体職員・甲斐麻子を演じるのは、2016年に公開された主演映画『オケ老人!』以来、5年ぶりの実写映画出演となった杏です。 2016年に双子を出産して以降、映像作品への出演はセーブする傾向にありましたが、『偽装不倫』(2019年)で4年ぶりに連続ドラマに出演しています。 もともと原作を知っており、本作への出演に対する喜びを語った杏。彼女は「CUBEのスタジオセットを目にしたときに、感動したと共に、これは大変だ、とも思いました。ひとつの空間の中で作り上げることはとても大きな挑戦になりました」と、撮影を振り返りました。
越智真司役/岡田将生
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越智真司(31)
フリーター
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31歳のフリーター・越智真司役には、『告白』(2010)や『さんかく窓の外側は夜』(2021)などに出演する人気俳優・岡田将生が起用されました。 映画『僕の初恋をキミに捧ぐ』(2009)、『重力ピエロ』(2009)ほか多数の主演作が評価され、2009年度の映画賞において新人賞を総なめにした岡田。着実にキャリアを重ね、映画『悪人』(2010)などシリアスなものから「銀魂」シリーズなどのコメディまで、丁寧に演じ分ける演技派に成長しました。 本作唯一のセットだったCUBEは、芝居のなかで色々な想像をさせてくれたそう。岡田は「あのセットも僕たち同様にキャストでした。クランクアップしたときは本当に脱出した感覚でした」と、手応えを覗かせるコメントをしました。
宇野千陽役/田代輝
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宇野千陽(13)
中学生
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13歳の中学生・宇野千陽を演じるのは、今注目を集める子役の1人・田代輝。ドラマの出演は豊富ですが、映画への出演は本作が初めてです。 主な出演作には、ドラマ『ゆとりですがなにか』(2016)、『仮面同窓会』や『ノーサイド・ゲーム』(ともに2019年)などがあります。人気ゲームを舞台化した、『テイルズ オブ ザ ステージ –ローレライの力を継ぐ者– EMOTIONAL ACT』(2018)では、少年アッシュ役で出演しました。 公式コメントでは、出演が決定した時に喜びと同時に不安があったと明かした田代。共演者や制作陣への感謝を述べ、「すべてが衝撃的な内容になっていると思うので、僕自身公開が楽しみです!」と、公開前に期待を語っていました。
井手寛役/斎藤工
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井手寛(41)
整備士
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39歳の整備士・井手寛を演じる斎藤工は、韓国映画の日本リメイク版『時の香り〜リメンバー・ミー』に出演し、2001年に俳優デビューしました。 不倫を題材にした「昼顔」シリーズで知名度を上げ、2012年には映画監督デビュー。2021年には最新作『ゾッキ』(竹中直人、山田孝之との共同監督)が公開、また特撮映画『シン・ウルトラマン』(2022)に主演するなど多方面で活躍中。 斎藤もコロナ渦の公開に思うところがあるようで、「この『CUBE』の正体、核心に迫れる作品になるのではないかと必然を感じています」とコメントを寄せました。
安東和正役/吉田鋼太郎
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安東和正(61)
会社役員
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61歳の会社役員・安東和正を演じるのは、「おっさんずラブ」シリーズの黒澤武蔵役が話題を呼び、若い世代からも人気の吉田鋼太郎です。 同作以外にも、映画「新宿スワン」シリーズや『半沢直樹』(2013)などの話題作に出演し、今や日本の映像作品に欠かせない名バイプレイヤーに。「孤狼の血」シリーズではヤクザ役を演じるなど幅広い演技力も魅力です。 吉田は才能ある俳優陣との共演に刺激を受けたと言い、「逃げ場の無い密室での長時間の緊張感漲る駆け引きは、これまでの俳優人生に於いても初めての経験であり、得難い体験をさせて貰いました」とコメントしました。
スタッフ一覧
監督はMVも手がける映像ディレクター・清水安彦
『CUBE』の日本版リメイクでメガホンを取ったのは、映像ディレクターとして知られる清水安彦。安室奈美恵や嵐、平井堅といった名だたるアーティストのMVも数多く手掛けています。 2019年には本作にも出演する斎藤工、芸人の長野、金子ノブアキと「チーム万力」を結成し、映画『MANRIKI』を公開。本作の撮影はCUBEに入ったようだったと振り返り、「まもなく、あなたもCUBEの中。いや、既に中に入っているのかもしれません」とコメントしました。
脚本は「おっさんずラブ」シリーズの徳尾浩司
日本リメイク版の脚本を手掛けたのは、社会現象となった「おっさんずラブ」シリーズ、『私の家政夫ナギサさん』(2020)の徳尾浩司。舞台演劇を中心に活動していますが、近年は映画やドラマでもヒットが続いており、人間模様やその中で揺れ動く感情の描写が見事です。 本作で極限状態におかれた6人の感情を、見事に描き出してくれました。
音楽は『今際の国のアリス』や『キングダム』のやまだ豊
本作の音楽を担当するやまだ豊は、アニメ「東京喰種」シリーズから中国映画『Cry Me a Sad River』、CMまで、多彩な作品の楽曲を制作してきました。 やまだは第43回日本アカデミー賞にて、映画『キングダム』(2019)で優秀音楽賞を獲得。世界で話題の『今際の国のアリス』(2020)でも、曲で緊迫した雰囲気を演出しています。本作も命をかけた作品なので、ピッタリの起用かもしれません。
『CUBE 一度入ったら、最後』をネタバレ解説・考察でおさらい
日本版は原作とはキャラクターの職業が違っており、主人公・後藤がトラウマと向き合うオリジナルの要素も加えられました。また菅田将暉や杏、岡田将生など日本を代表する俳優の共演も見どころです。 ストーリーは原作を踏襲しており、原作ファンも原作未視聴の方も楽しめる作品となっています!