「ナイブズ・アウト2」結末までのあらすじネタバレと感想 グラスオニオンの意味とは?【Netflixで独占配信】
ダニエル・クレイグが主演を務め、第92回アカデミー賞で脚本賞にノミネートされた映画『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』(2019年)。私立探偵ブノワ・ブランが挑む殺人事件の謎を描く同作の続編『ナイブズ・アウト: グラス・オニオン』が2022年12月23日よりNetflixで配信中です。 ※本記事では、「ナイブズ・アウト2」のあらすじや感想などについて深掘りします。本編の重大なネタバレを含みますので、未鑑賞の人は注意してください。
映画「ナイブズ・アウト2/グラスオニオン」のあらすじ
ギリシャのプライベートアイアンドに親しい人々を招待したIT業界の億万長者マイルズ・ブロン(エドワード・ノートン)。地中海に浮かぶ夢のようなバカンスは、ある人物の死体が発見されて一変します。私立探偵ブノワ・ブラン(ダニエル・クレイグ)は、殺人事件を調査することになり……。 副題の「グラスオニオン」とは「片眼鏡・単眼鏡」という意味。探偵ブノワ・ブランが、まるで全てがガラスのように透けて見えているかのような洞察力・推理力を持って真実を解き明かしていくことの比喩であり、ビートルズの楽曲「グラス・オニオン(Glass Onion)」からも影響を受けて付けられました。
映画「ナイブズ・アウト2」結末までのネタバレあらすじ解説
【起】ギリシャの孤島で行われるミステリーゲームが一変
2020年5月。私立探偵のブランは暇を持て余し、お風呂でゲームに明け暮れていました。そんな中、大富豪のマイルズが主催するパーティの招待状が届きます。 一行はマイルズの屋敷「グラス・オニオン」へ。彼はブランを招待していないと言いますが、面白がって参加を認めてもらえました。他には7人の参加者がいて、マイルズに寄生して有名になった友人たちだと判明します。しかし、マイルズを被害者に見立てた推理ゲームが始まった途端、ブランが一瞬で謎を解いて台無しに……! 今回のゲームに乗じて、恨みを持つ者がマイルズを殺害するかもしれない。そんなブランの忠告をよそに、インフルエンサーのデュークが殺害されました。
【承】ブランに届いたパーティの招待状とアンディの秘密
時計が夜10時を回ると、ゲームの演出用に設定されていた停電が発生。ブランは唯一、姿が見えなくなっていたアンディを見つけますが、彼女は何者かに射殺されます。 時は遡って5月13日。ブランに招待状を届けたのはアンディの双子の妹ヘレンで、アンディは自殺に偽装して(マイルズに)殺害されていて、その調査を依頼したのです。アンディの日記によると、マイルズと水素燃料「クリア」を巡って仲違いし、共同経営の会社を追い出されたことが分かります。 数年後、アンディはマイルズの偽証を示す証拠「起業アイデアを記した紙ナプキン」を自宅で発見し、彼と仲間4人の脅迫に乗り出していました。 ブランはアンディの死が報道されていないことを利用して、ヘレンに姉になり変わるよう提案します。
【転】ハリボテだらけの虚像!IT業界の億万長者の正体とは……?
ヘレンは最初からパーティの裏で暗躍しており、姉の日記によって銃弾から守られた後も、死を偽装してグラス・オニオン内を捜索していました。 シーンは現在へと戻り、ブランはマイルズが他人の功績で成り上がったバカだと宣言。デュークの殺害動機も、いち早くアンディの自殺報道を見た彼を口封じするため。マイルズは犯行に及んだ日、アンディの家へ向う途中の彼と帰りにすれ違っていました。 デュークに脅され、とっさにアレルギーを起こすパイナップルジュース入りの酒で殺害。そして、停電中の混乱に紛れてアンディ(ヘレン)を銃で襲ったのでした。 真実が明らかとなり、姉の家から盗まれた証拠の紙ナプキンを発見したヘレンが現れます。
【結末】ミステリー映画らしからぬ実力行使なラスト
マイルズは紙ナプキンを燃やし、ブランの推理には物的証拠がないと言い出します。参加者も彼に加担する姿勢を見せたので、法的に裁く手段が失われることに……。 彼女に助けを求められたブランは、酒とクリアの破片を渡して去って行きました。 セレンは酒を飲み干すと、ガラスのオブジェを手当たり次第に割って火をつけます。そして、マイルズ自身が自慢した方法で「モナ・リザ」のセキュリティを解除。火は絵にも燃え移り、クリアを動力源とする「グラス・オニオン」は大爆発を起こしました。 世界一の名画を燃やした新燃料の開発者。そんな形で名を残すのを避けるべく、マイルズは参加者にヘレンの犯行を証言しろと命じます。 彼らにもはや従う理由はなく、逆にアンディ殺害の証言をすると反発するのでした。
「ナイブズ・アウト2」の感想・評価
とにかくエドワード・ノートンがめちゃくちゃ良い。謎の案内人イーサン・ホークにジャレッド・レト、そしてセリーナ・ウィリアムズ……カメオ出演が豪華すぎる!ブランの同居人(ヒュー・グラント!)も出てきて、プライベートが覗けたのもよかった。
巧妙な推理とかトリックとか、純ミステリーを求める人は物足りないかもしれない。どうでもいいようなことまで伏線になっていて観返したくなる。ラストのシーンはスカッとできて好きだけど、キャスト陣が迫真すぎて笑ってしまった!
本作は探偵と女性依頼人のコンビ、上位カーストが転落する展開は前作を踏襲しつつ、さらにユニークに、コメディチックに仕上がりました。 原題は「Glass Onion: A Knives Out Mystery」。まさに従来のミステリーにナイフを向けるような、斬新な伏線やトリックが随所に散りばめられました。また、豪華カメオ出演やコロナ禍を利用した演出も評価された一方で、犯人のポンコツっぷりは若干の賛否を呼んだようです。
【解説】真の破壊者によって暴かれる「グラス・オニオン」
マイルズの人生において、絵画「モナ・リザ」は革命の象徴。既成概念に縛られない破壊者として、絵のように名を残こすことが彼の目的でした。 しかし実際は、ブランが「グラス・オニオンの透明な中心にいたのはただのバカ。」と言ったように、ペテンが上手いだけの偽物の天才です。ラストのヘレンがモナ・リザと同じ表情、同じポーズなのは、彼女こそ本物の破壊者だとマイルズを皮肉っているのでしょう。 招待状を受け取る際の謎解きでも、ヘレンだけが木箱自体を壊して取り出していました。このシーンは、犯人には相応の動機があり、最後は推理で倒される。というミステリーのお約束に反した、事件の真相とヘレンの復讐を暗示したのかもしれません。 本作の「グラス・オニオン」は、虚栄で覆われた薄っぺらな人間=マイルズのこと。そして、フィルターによって複雑化した真実のことだと解釈できます。
【考察】マイルズたちの関係は現代社会への風刺?
ED曲でもある先述の「グラス・オニオン」は、歌詞を深読みするファンを揶揄しようと、意図的にビートルズの関連ワードが入れられています。 作中でも人間の心理を逆手に取り、チリソースが原因の涙など面白い伏線で観客を惑わせますが、最も思い込みや利益に目が眩んでいたのはマイルズの関係者たち。都合の悪い真実には口を閉ざし、その目で見ていても認識できていないシーンもありました。 中身のない特権階級マイルズと彼に群がる富豪や有名人、その影で割りを食った本物の実業家アンディの関係は、現実でもよくある構図だと思います。一部だけ得する社会で良いのか、思考停止したイエスマンになっていないか、虐げられたら戦うべき(ラストの復讐は法的な問題はある)だと、現代社会に一石を投じるメッセージが感じられました。
映画「ナイブズ・アウト2」キャスト一覧・登場人物解説
ブノワ・ブラン役/ダニエル・クレイグ
主人公ブノワ・ブランは、優れた推理力を持つ有名な私立探偵。紳士的な出で立ちをしており、風変わりでどこか胡散臭く、アメリカ南部訛りの英語を話すキャラクターです。 演じるのは「007」シリーズの6代目ジェームズ・ボンド役で知られるダニエル・クレイグ。イギリス出身ながら、本作のために南部訛りを習得しました。前作『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』ではゴールデングローブ賞主演男優賞にノミネートされています。
マイルズ・ブロン役/エドワード・ノートン
IT業界の大富豪。ギリシャにプライベートアイランドを所有しており、そこが「ナイブズ・アウト2」の舞台となります。 演じるのはアリメカの俳優エドワード・ノートン。映画デビュー作『真実の行方』(1996年)でいきなりアカデミー助演男優賞にノミネートされるなどして注目を集めました。『アメリカン・ヒストリーX』(1998年)や『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』(2014年)への出演でも知られています。
デューク・コーディ役/デイヴ・バウティスタ
かつてはTwitch100万フォロワーを抱えるも、精力剤の販売でアカウントを閉鎖され、マイルズのサポートでYoutube配信を行うインフルエンサーのデューク。 演じるのは元プロレスラーの俳優デイヴ・バウティスタ。「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」シリーズおよびMCUのドラックス役や、『DUNE/デューン 砂の惑星』(2021年)への出演で有名です。ダニエル・クレイグとは『007 スペクター』(2015年)でも共演しています。
カサンドラ・アンディ・ ブラント役/ジャネール・モネイ
マイルズと共にアルファ社を創業した元ビジネスパートナー。ストーリーの鍵となるキーパーソン。 演じるのは歌手としても活躍する女優ジャネール・モネイ。第89回アカデミー賞作品賞などを受賞した映画『ムーンライト』(2016年)や、『ドリーム』(2016年)などに出演しています。2020年には、大きな話題を呼んだホラー映画『アンテベラム』で主演をつとめました。
クレア・デレラ役/キャスリン・ハーン
上院議員に立候補しているコネチカット州知事。アンディとは10年来の親友である。 演じるのはアメリカ人女優のキャスリン・ハーン。映画『ドゥ・オーバー: もしも生まれ変わったら』(2016年)や「バッド・ママ」シリーズなどに出演しています。 2021年にはMCUドラマ『ワンダヴィジョン』にアグネス(アガサ・ハークネス)役で出演。アグネスを主演としたスピンオフ企画も進行中です。
監督・脚本はライアン・ジョンソン
前作に引き続き監督と脚本を手がけるのは、アメリカの映画監督・脚本家であるライアン・ジョンソン。2005年に映画『BRICK ブリック』で長編デビューし、サンダンス映画祭審査員特別賞はじめ多くの映画賞を受賞しています。 その後も『LOOPER/ルーパー』(2012年)や『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』(2017年)などの監督・脚本を手がけてきました。 そんなライアン・ジョンソンは、小説家アガサ・クリスティの大ファン。2010年には「アガサ・クリスティの推理小説のような、昔ながらのミステリ映画を撮りたい」と英INDEPENDENTのインタビューに答えています。 「ナイブズ・アウト」はまさにアガサ・クリスティの推理小説にルーツを持つ映画シリーズです。
前作「ナイブズ・アウト」のネタバレあらすじ
世界的ミステリー作家ハーラン・スロンビーが、85歳の誕生日パーティーの翌朝遺体で発見されます。警察は自殺と認定しますが、匿名の人物からの依頼を受けた私立探偵ブノワ・ブラン(ダニエル・クレイグ)が調査することに。 ハーランは次男ウォルター・スロンビーをクビにしたり、孫のヒュー・ランサム・ドライズデールと言い争いをしたりと、パーティーに参加したほぼ全員と問題がありました。つまり全員が容疑者だったのです。 唯一ハーランが死んでも得をしないのが、彼のプライベートナースであるマルタ・カブレラでした。しかし彼女は前夜、薬瓶を間違えてハーランに致死量のモルヒネを投与していました。救急車を呼ぼうとした彼女を止めたのは、マルタを守ろうとしたハーラン。彼は自ら喉を切って亡くなったのです。 嘘をつくと嘔吐してしまう体質のマルタは、それらを何とか隠して証言。やがてハーランが「全財産をマルタに残す」と遺言を残していたことが発覚します。
全てを見抜いたブランは真相を話し始めます。犯人は、ハーランから「マルタに全財産を残す」と聞いていたランサムでした。マルタの薬瓶の中身をすり替え、犯人のマルタが財産を受け取れないよう仕向けたのです。さらに匿名でブランに調査を依頼し、マルタの殺人を暴いてもらおうともしていました。 しかし間違えてモルヒネを投与してしまったマルタ。つまり実際に投与したのは、モルヒネの薬瓶に入っていたいつもの鎮痛剤でした。ランサムは逮捕され、ブランは「自分が関与していることにいつ気づいたの」と聞くマルタに「最初からだ」と答えて立ち去るのでした。
「ナイブズ・アウト2/グラスオニオン」ネタバレ解説を読んでミステリーを堪能しよう!
『ナイブズ・アウト: グラス・オニオン』は古典ミステリーに敬意を払いつつ、全く新しい魅力を追求したジョンソン監督の意欲作!第3弾もNetflixが配給権を持っていますが、2022年12月時点で白紙状態と報じられています。今のうちにシリーズの世界観を予習・復讐しておきましょう。