映画『怪物』結末ラストをネタバレ考察!犯人の正体は誰?「怪物だーれだ」の意味とは
映画『怪物』のあらすじ【ネタバレなし】
公開年 | 2023年 |
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監督 | 是枝裕和 |
キャスト | 安藤サクラ , 永山瑛太 , 黒川想矢 |
麦野早織(安藤サクラ)は一人息子の湊(黒川想矢)を育てるシングルマザー。大きな湖のある郊外の町に住んでいます。 生徒思いの教師・保利道敏(永山瑛太)が湊の担任。しかしある日、子ども同士のケンカをきっかけに平穏な日々は暗転します。 彼らの主張は食い違い、次第に社会やメディアをも巻き込んで大事に。早織は担任の保利に叩かれたと学校へ乗り込んで抗議しますが、保利は「母子家庭にありがちなこと」と反論して認めません。 学校側は事件を隠蔽しようとし、保利はメディアから「体罰教師」とバッシングを受けます。そしてある嵐の朝、子どもたちは忽然と姿を消し……。
映画が伝えたかったこととは?
【ネタバレ】映画『怪物』結末までのあらすじ解説
①早織視点の怪物は誰?
大きな湖が近くに見える郊外の町に、息子の湊と住んでいる麦野早織。夫を事故で亡くし、1人で湊を育てるシングルマザーであり、11歳になる息子にはできる限り気をかけていました。 ある晩、駅前の雑居ビルの火災をベランダから見ていると、突然「豚の脳を移植した人間は、人間?豚?」と湊が奇妙なことを言い出します。聞けば、担任の保利先生がそんな研究があると話したとか。その後も湊の様子はおかしくなるばかりで、ある晩は廃線跡のトンネルで「怪物だーれだ」と1人叫んでいました。 耳からは血が出ており、車の走行中に突然ドアを開けて飛び降りてしまった湊。幸いケガは軽く、脳にも異常はありませんでしたが、湊は保利先生に「お前の脳は豚の脳だ」と言われたと告白しました。
これまでの様子から、保利にモラハラと体罰を受けていると考えた早織。校長に訴えますが、校長は先日幼い孫を事故で亡くしたため、その用件があると部屋を出てしまいます。後日改めて保利から謝罪を受けますが、明らかに納得していないよう。あきれて校長に詰め寄りますが、あくまでも学校の見解は暴力でなく「事故」というものでした。 相変わらず湊は沈んだままで、見かねた早織は再び学校へ。しかし保利は「湊は星川という同級生をいじめている」と言い返します。怒り心頭で帰宅した早織でしたが、湊がカバンに着火ライターを隠しているのを見つけ、急に不安に。星川の自宅を訪ねると、彼の腕に火傷の痕があるのを目にします。 ところが、星川は学校で「湊にいじめられたことはない」と証言。さらに保利が湊を叩いていると告白しました。これが決め手となり、小学校では保護者への説明会が開かれ、保利は湊への暴力を認めて公に謝罪し、新聞でも大きく報じられる結果に。
②保利視点の怪物は誰?
物語は再び駅ビルの火災から、今度は保利の視点で語られます。実はここ最近の湊の奇妙な言動は、星川がクラスの男子にいじめられていることに関係していたのですが、それを保利はことごとく見逃していたのです。 暴力の件も実際は湊が暴れているのを止めようとした時に、肘が湊の鼻に直撃したのですが、湊と星川が嘘の証言をしたため、それが「事実」に。それでも保利は星川が誰かにいじめを受けていることは察して家庭訪問しますが、父親から「あいつは怪物。豚の脳が入ってる」と言われ愕然とします。 保利がいじめの事実を明らかにすることもなく、学校では児童への保利のアンケートが実施され、ついに謝罪会見を開くことに。保利は学校を追われ、恋人も去り、引っ越しの準備をしていましたが、その時湊と星川が書いた作文を見つけ、そこにメッセージがあることに気付きます。 鏡文字で書かれた頭文字を裏から透かして見てみると、そこには「むぎのみなと・ほしかわより」と書かれていたのです。2人の関係性を知り、これまでの湊の言動を意味を知った保利は湊に謝るため自宅へ行きますが、台風が近づく朝、湊は姿を消していました。 保利と早織は一緒に湊を探しに行き、以前湊を見つけたトンネルへ。そこには廃線跡にある錆びた電車があり、土砂崩れで電車も横倒しになっていました。
③湊視点の怪物は誰?【結末ネタバレ】
最後に、湊の視点で物語が再び巻き戻ります。以前から湊は星川依里に対するいじめを良く思っておらず、しかし体面を保つためにそれに加担している自分にも苛立っていました。依里自身も父親や周りに普段から言われているせいか、自分は「病気」だと語ります。 これまでの湊の奇妙な言動の真実は、依里に惹かれつつ何もできない自分に対する苛立ちからくるものでした。それでも2人は徐々に距離を縮めていきます。あの廃線跡の電車は、2人だけの秘密の隠れ家だったのです。 そこで親密な時間を過ごしますが、湊は自分が依里に惹かれていくことに葛藤を覚え始めます。この感情が一体何なのか、どう彼に接したら良いのかわからないのです。 そんな中、依里の父親は彼を無理やり祖母の家に追いやり、転校させようとしていました。湊は依里が父親に虐待されているのを発見し、嵐が近づく晩に2人で電車に逃げ込みます。そこで湊と依里は嵐が去るのを待ち、夜明けを待っていたのでした。 >『怪物』は伏線だらけ!6つのなぜを解説
【ラストシーン】映画『怪物』最後の意味は?2人は死んだのか
湊と依里の関係性こそが、この作品の肝となっています。依里はありのままの自分を受け入れることができない環境で育っており、学校で「将来」について書いた作文には「品種改良」というタイトルを付けていました。 湊も実は父親が亡くなったのが不倫旅行中の事故死であることを知っていて、度々早織に「父さん、生まれ変わったかな」と聞いています。つまり依里は自分が品種改良して“生まれ変わるべき”悪い種子だと思い込んでいて、湊は父親が母親を悲しませた前世から“生まれ変わって”ほしいと考えているのです。 実際2人は何度も「生まれ変わり」という言葉を交わし、嵐の晩に電車に立てこもった時もぼんやりと死を覚悟しながら生まれ変わりを信じていたのかもしれません。そこまで2人を追い込んだのは、もちろん大人たちです。 しかし嵐が去った朝、電車から這い出し、「生まれ変わったのかな」と言う依里に湊は「そういうのはないと思う。元のままだよ」と語ります。「そっか、良かった」と返した依里と、光刺す草むらを駆け抜ける湊の晴れやかな笑顔が印象的です。 伝わってきたのは、「ありのままの自分を受け入れる」というメッセージ。もちろん簡単にはいかないけれど、子どもたちの「将来」を思う時、大人たちが子どもたちと正面から向き合って大切にしていきたい思いではあります。
最後に描かれたのは死んだ後の世界?
物語は2人が電車から這い出し、狭い水路を抜けて明るい草原を駆け抜け、鉄橋の前に来たところで終わります。鉄橋前にあった通行止めのバリケードがなくなっていたことで、多くの人が「2人は死んで、生まれ変わった?」と感じたようです。 バリケードは台風で飛ばされた可能性もありますが、描写としてはまるで「死後の世界」あるいは「生まれ変わり」のメタファーのようでもあります。しかし本作のラストはどちらとも取れるように作られており、観る側がネガティブに取るかポジティブに取るかでまったく逆の効果をもたらしています。 こうした作りにした狙いは、2人の未来は観た側の解釈次第でどうにでも“変わる”ということ。バリケード=障害を取っ払い、2人が幸せに生きられる世界にできるかどうかはわれわれ次第なのです。
ラストは死後の世界?
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【考察】「怪物だーれだ」とは何だったのか?“怪物”の正体とは
この物語の登場人物は、子どもから大人までほとんど全員が嘘をついています。早織に関しては、盲信的に息子の言うことだけを信じて、結果的に「嘘」をつかされてしまいました。 「怪物だーれだ」というフレーズは、劇中では湊と依里が電車の中で遊んでいた「正体当てゲーム」の決まり文句。しかしこの問いかけは、この作品全体の重要なテーマにリンクしています。 人の心に本当の「怪物」を生み出してしまうのは、依里の父親のような不寛容やいじめを見逃す無関心、人と“違う”ということへの偏見と無知こそがその原因ではないでしょうか。「嘘」を発端として、誰もが「怪物」になりえるのです。
【解説】映画『怪物』のなぞを解決!火事の犯人や校長の言動の意味
火事を起こした犯人は誰?
劇中に3回も出てくる駅前ビルの火災シーン。それぞれの視点で語られる中で、いくつかのヒントが点在していました。依里が持っていた着火ライター、それを火災の晩に現場近くですれ違って落としたのを見た校長。そして死んだ猫を火葬しようとして依里がそれを持っているのを知り、奪い取った湊。 この時湊が「ガールズバーに父親がいたから?」と聞きますが、彼は「お酒を飲むのは健康によくない」と答えていました。これは肯定とも受け取れます。
湊の不自然な行動の理由とは
湊が不自然な行動ばかりしていたのは、依里への複雑な気持ちに戸惑っていたから。髪の毛を切ったのは、いじめられ「病気」と言われている依里に髪を触られたからでしょうか。この時はまだ、依里への気持ちは負の部分が強いよう。 しかし靴を隠され裸足で帰る依里に片方のスニーカーを貸したり、彼がいじめを受けている最中にどうしたらいいかわからず暴れ出したりと、少しずつ湊の心は依里に傾いていきます。 序盤で早織が湊の水筒から泥水が出てきたことに驚いていましたが、それも依里が駅前ビル火災に使ったのかもしれない着火ライターで猫を燃やそうとしたことに慄いて、とっさに水筒に泥水を入れて鎮火したためでした。
鏡文字で作文を書いた理由とは
依里が鏡文字を書くのは、彼に学習障害があることを示しています。しかしそれを利用して、誰にも気づかれない方法で湊との関係性を作文に封じ込めていました。 それでも作文に書いたということは、少なからず保利先生に向けたメッセージではあったのかもしれません。実際2人は「保利先生、気付くかな?」「気付かないよ」というやり取りをしていました。 普通とは逆さまな文字を書くという行為は、普通とは反対の自分を認めたかった、あるいは認めてほしいという気持ちも垣間見えます。
校長先生の不可解な行動の意味
校長が孫を亡くした事故は、実は校長自身が轢いてしまったのでは?という噂がありました。またスーパーで子どもに足をかけて転ばせたり、不祥事をもみ消そうとしたりと早織の視点では校長は不可解な人物としか映りません。 ところが後半の保利や湊の視点に移ると、実は校長が子どものためを思って行動していたことがわかります。実際のところ孫を轢いてしまったのは校長なのかもしれませんが、だからこそ子どもたちを守るという鉄壁の決意で校長職に戻ってきたようにも見えます。 依里が放火の犯人である可能性や、湊と依里の関係性も知っていたと考えると、やはり校長の様々な言動は彼らを守るためだったのかもしれません。
インターホンに巻かれていたガムテープ
依里の父親は、本作の大人の登場人物の中でもかなり異常です。学歴主義でアルコール依存症、“男らしくない”息子を病気だと思っていて、さらには彼のありのままを容認できずに「人間に戻す」とまで言い放ちます。 湊との仲も怪しんでいたようで、急に祖母の家の近くに転校させようとし、湊には「病気は治った」と嘘をつかせました。言うことを聞かなければ暴力で従わせようとするという、絵に描いたような抑圧的な父親です。 湊が訪問した時にインターホンにバツ印のガムテープが巻かれていたのも、この父親の仕業でしょう。
映画『怪物』の感想・評価
事なかれ主義を貫く学校側の態度と、いじめを見逃している状況が問題の根本を見つけられなくしている。何よりも登場する大人たちがみな、子どもたちに向き合おうとしていないことが問題。子どもたちの必死の抵抗が切ない。
親・先生・子どもたちの3つの視点から各々の物語が語られ、その組み立て方がサスペンス仕立てになっていて、スリリングに感じる。キャストは演技派ばかりで、特にメインの子役たちの演技に見入ってしまった。
映画『怪物』キャスト・登場人物一覧
麦野早織役/安藤サクラ
本作の主人公・麦野早織役には、『万引き家族』以来是枝監督と2度目のタッグとなる安藤サクラが出演。早織は11歳になる息子の湊を育てるシングルマザーで、夫を事故で亡くしてから湊と2人で暮らしています。 同作以外にも映画『百円の恋』(2014年)やNHKの朝ドラ『まんぷく』(2018年)でヒロインを務めたことでも知られています。 本作での安藤について是枝監督は、「2作目のお付き合いでしたが、前回とはまた全く違う凄みのある役を見事に体現していただきました」とコメントしています。
保利道敏役/永山瑛太
『最高の離婚』(2013年)で坂元裕二作品に出演した永山瑛太も、本作のキャストに名を連ねています。役どころは、小学5年生の担任教師・保利道敏。早織から湊を叩いたと抗議を受け、体罰教師のレッテルを貼られてしまいます。 是枝監督は「永山瑛太さんは初めての出演でしたが坂元裕二さんが瑛太さんに当て書きした役でもあり、もう彼以外ではあり得ない妙な、しかし、愛すべき人物に仕上がっております。」と語っています。
麦野湊役/黒川想矢
早織の息子で、小学5年生の麦野湊を演じるのは黒川想矢。2009年生まれの彼は、『世にも奇妙な物語‘21秋の特別編「スキップ」』(2021年)などに出演している注目の子役です。
星川依里役/柊木陽太
湊とケンカになる小学5年生の星川依里を演じる柊木陽太は、ドラマ『ボクの殺意が恋をした』(2021年)で俳優デビュー。その後『最愛』(2021年)、『ミステリと言う勿れ』(2022年)と3クール連続でドラマに出演するなど活躍中です。 オーディションで選ばれた子役2人について「黒川さん、柊木さん、ふたりとも抜群でした。顔立ちも個性も全く違うのですが、撮影中見事な化学変化を作品にもたらしてくれたと思います」と是枝監督も太鼓判を押しています。
鈴村広奈役/高畑充希
NHKの朝ドラ『とと姉ちゃん』(2016年)をはじめ、数多くのドラマ・映画で活躍をつづけている高畑充希も本作に参戦。保利の恋人である鈴村広奈を演じます。 是枝監督とは以前から「いつか」と約束していたそうで、本作でそれが実現しました。
正田文昭役/角田晃広
坂元裕二脚本作品『大豆田とわ子と三人の元夫』(2021年)などで知られる角田晃広も出演します。役どころは、湊と依里が通う小学校の教頭・正田文昭役。 是枝監督は彼について「角田さんは、元々ファンでしたが「大豆田」でお芝居を拝見して、更にファンになり、お願いしました。登場しただけでちょっと微笑んでしまうんですが、素晴らしい存在感でした」とコメントしています。
星川清高役/中村獅童
歌舞伎という枠を超えて、ドラマや映画などでも活躍する歌舞伎役者の中村獅童は、依里の父・星川清高役で出演。 彼もまた、是枝監督とは以前にいつか一緒に仕事をしようと約束していたそうで、本作でそれが実現しました。
伏見真木子役/田中裕子
坂元裕二作品に欠かせない女優・田中裕子。本作では、湊と依里が通う小学校の校長・伏見真木子役を務めています。 彼女の本作への出演について、是枝監督は「映画はもちろんですが、久世光彦さんと組まれたドラマの大ファンだったのでプレッシャーでしたが、至福の時間でした。怪物でした」と感無量の様子です。
映画『怪物』スタッフ解説
監督は是枝裕和
本作でメガホンを取るのは是枝裕和です。 初監督作品『幻の光』(1995年)でいきなりベネチア国際映画祭の撮影賞を獲得。その後『万引き家族』(2018年)でカンヌ国際映画祭の最高賞パルムドールを受賞し、世界にその名を轟かせました。 自身と近いテーマを描いてきた坂元裕二をかねてよりリスペクトしており、タッグを組めたことについて「夢が叶ってしまいました」とコメント。映画『怪物』について「誰よりもこの作品の完成が待ち遠しいです」と語り、本作への期待度の高さを滲ませています。
脚本は坂元裕二
本作で脚本を務めるのは坂元裕二です。 第1回フジテレビヤングシナリオ大賞を受賞し脚本家デビュー。『東京ラブストーリー』(1991年)など様々なドラマ脚本を担当し、最近の映画作品では菅田将暉と有村架純が主演を務めた『花束みたいな恋をした』(2021年)の脚本にも参加しています。 映画『怪物』に寄せたコメントでは是枝裕和について「世界一の脚本家でもある」と語り、監督へのリスペクトを滲ませました。本作について「自分を好きになれない誰かへのエールになるといいなと思っています」と明かし、鮮烈ながらも希望のある物語になることを匂わせています。
音楽は坂本龍一
本作のために2つのピアノ曲を書き下ろしたのが、坂本龍一です。そのうちの1つは特報でも使用されました。 ミュージシャン・俳優としても知られるほか、映画音楽でも『ラストエンペラー』(1987年)でアカデミー賞作曲賞を受賞するなど、輝かしい功績を持っています。 本作については、「誰が怪物かというのはとても難しい問いで、その難しい問いをこの映画は投げかけている」とした上で、「救いは子供たちの生の気持ち。それに導かれて指がピアノの上を動いた」とコメントしています。 2014年から続くがん闘病生活の中でも意欲的に数々の作品を発表していましたが、2023年3月28日に死去。71歳で亡くなりましたが、命続く限り創作活動を続けた生涯でした。
原作はある?これまで描かれた社会問題
映画『怪物』には原作はなく、坂元裕二によるオリジナル脚本です。 作中ではモンスターペアレントを含む学校と親の関係性、いじめを隠蔽する学校の体質、母子家庭・父子家庭などの家庭環境と思春期の子どもたち、先生と生徒の関係などが描かれています。さらにもう一歩踏み込んだジェンダーに関するテーマも含まれているようです。 ここから先は、是枝裕和と坂元裕二がこれまで描いてきた社会問題を振り返ってみます。
「怪物」はだれ?
育児放棄
是枝裕和は映画『誰も知らない』(2004年)で育児放棄されて子どもたちだけで暮らす家族を描き、坂元裕二はドラマ『Mother』(2010年)で親に捨てられた過去を持つ女性が捨てられた子どもを育てようとする姿を描きました。 両作品は現代社会の影で起きている悲劇をはっきりと描き、大きな注目を集めることに。これにより社会へ改めて育児放棄の実情を知らしめることとなり、子どもたちを保護するセーフティネットの必要性を訴えることとなりました。
疑似家族
是枝裕和は映画『万引き家族』(2018年)や『ベイビー・ブローカー』(2022年)で血の繋がりを持たない人々が家族のような存在になる過程を描き、坂元裕二はドラマ『anone』(2018年)で天涯孤独の少女と死に場所を求める人たちがともに過ごす様子を描きました。 現代社会は人間関係が希薄であり、地域コミュニティどころか家族関係からもあぶれてしまう人々がいます。2人はこれらの作品を通して社会の闇に隠れる新たな家族のかたちを提示し、「自らの手で一緒に生きていく人を選ぶ」という道を示すことになりました。
赤ちゃんポスト
是枝裕和は『ベイビー・ブローカー』(2022年)で韓国に存在する赤ちゃんポストを扱った物語を描き、坂元裕二は『Mother』(2010年)で捨てられた子どもとその成長を描きました。 子どもを産みそのまま遺棄してしまう痛ましい事件も起こる昨今。2人の作品は子どもに対する悲劇的な面を描くと同時に、捨てられた子どもにも救いの手が差し伸べられることはあるという希望を描きました。 両作品は社会に改めて赤ちゃんポストや捨て子の存在を知らせると同時に、捨てられた子どもや“捨てた”親の本当の気持ち、ひいてはその問題を内包している社会に対しての強いメッセージも込められていたように思えます。
加害者家族
是枝裕和は映画『DISTANCE』(2001年)で無差別殺人事件を起こした加害者の遺族を描き、坂元裕二はドラマ『それでも、生きてゆく』(2011年)で加害者家族と被害者家族の関係性を描きました。 凄惨な事件が起きたとき、まずフォーカスが当たるのはほとんどの場合が被害者家族。一方加害者家族はSNSでの個人情報流出や誹謗中傷、また近隣住民からのバッシングなど、見えない部分で大きな苦しみを抱えています。 両作品は正義を振りかざし悪と定めた人に過度な攻撃を加える現代社会に警鐘を鳴らし、誹謗中傷が安易に行われる現状を戒めることになりました。
映画『怪物』のネタバレあらすじを読んで考察しよう
日本最高峰の監督と脚本家がタッグを組んだ注目の映画『怪物』は、2023年6月2日に全国公開されました。 この奇跡のタッグを見逃す手はなし!劇場で見逃してしまった人は、DVD宅配レンタルや動画配信サービスでチェックしてみてください。本当の「怪物」とは何なのかを目撃しましょう。