『パラサイト 半地下の家族』ラブシーン“時計回り”の意味とは?気まずいシーンから見えてくる映画のメッセージ
外国語映画として初めてアカデミー賞作品賞を受賞した『パラサイト 半地下の家族』。韓国の格差をテーマとした重厚なストーリーが絶賛されました。 一方でテレビ放映時には「家族と観るのが気まずい……」とTwitterで話題になったほど実は濃厚なラブシーンが登場するのです。 この記事ではそのラブシーンの内容や監督が込めたメッセージ、さらに考察まで徹底的に深堀りしていきます!※ネタバレを含みますので、注意してください。
『パラサイト 半地下の家族』のラブシーンを解説
「お茶の間を凍らせる」と言われているのが終盤に登場するソファでのラブシーンです。ヌードはないもののかなり気まずいシーンと言われています。 パク家の夫ドンイクと妻ヨンギョは運転手をするギテクの体から地下鉄の匂いがするなど笑いながら話していましたが、徐々にイイ雰囲気に。 ドンイクは胸を触りはじめ、股間にも手をまわします。その際ヨンギョは「時計回りにお願い」「ドラッグを買っていい?」と発言。ヨンギョの手もドンイクのズボンの中に入り、喘ぎ声も大きくなっていき……。 それ以上の描写はありませんが股間にカメラが寄ったり生々しい喘ぎ声が続いたりと、家族で見るのは気が引けるシーンが2分ほど続きます。
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「時計回り」の意味とは?
胸を揉まれたヨンギョはなぜ「時計回り」と言ったのでしょうか。これは性癖だからという理由だけではありません。 劇中でパク家の階段や地下室のドアの鍵は「時計回り」。一方で庭でハンマー投げをするキム家の妻チュンスクの回転、キム家がバイキングで料理を取る流れ、そしてギテクが階段を駆け下りる方向などは全て「反時計回り」になっています。 富豪のパク家は時が進む「時計回り」貧困なキム家は逆行する「反時計回り」という対比になっているのです。ラブシーンはソファの夫婦と机の下の一家、そして「時計回り」の言葉によって貧富の差を如実に表すシーンになっています。
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奥さんはドラッグをやっている?
ラブシーンの「ドラッグを買って」も意味深なセリフです。 このシーン以前に車内で女性用下着を見つけて運転手をクビにした際に「下着を履き忘れるなんて、ドラッグでもやっているのか」とドンイクが言っています。 ドンイクはその下着をプレイに使おうとしました。運転手の件でのセリフがあったため、ヨンギョは「ドラッグを買って」と返したと考えられます。 パク夫妻が貧乏人や麻薬中毒者の設定をプレイの興奮材料にしているとしたら、彼らは「自分たちは貧困層にならない」というある種のファンタジーの世界だと思っているからこそ興奮できるのではないでしょうか。
家族で観ると気まずい?『パラサイト 半地下の家族』ラブシーンには深い意味があった!
唐突なラブシーンに家族と見ていて気まずくなった方も多いかもしれません。しかしながらそのラブシーンにはポン・ジュノ監督のメッセージがあったのです。 また監督はインタビューで映画「パラサイト」のラブシーンについて「(机に隠れる)ギテクと同じ気持ちになってほしかった」と語っており、SNSやレビューの反応から、その思惑は大成功だったと言えそうです。