漫画『百姓貴族』ネタバレあらすじ＆感想！「銀の匙」作者・荒川弘の農業エッセイ

『百姓貴族』は「ハガレン」「銀の匙」の作者として有名な荒川弘による自伝的農業エッセイです。 農家の変わった日常や破天荒すぎる父、そして荒川自身が農家から漫画家になるまでの話など興味深い話ばかり収録されています。2023年7月7日からはTOKYO MX・BS朝日などでアニメ放送も開始され、ますます注目度上昇中の作品です。 この記事では『百姓貴族』4巻までをネタバレありであらすじ紹介しちゃいます！

『鋼の錬金術師』や『銀の匙 Silver Spoon』など大ヒット作を飛ばし続ける荒川弘。彼女は漫画家になる前、7年間も農業に従事していたのです。 農業に精通した彼女が憂いているのは食料自給率40％しかない我が国の未来でした。北海道開拓農民の一家で育った荒川は担当編集のイシイと農業エッセイを開拓することに。 「飲んだら太る」といった声もある牛乳は季節や牛の体調によって味が大きく異なり、農家の努力は並大抵のものではないと力説します。 じゃがいもの選別では変なものも拾い上げることがあり未開封のポテトチップスが出てきて「せっかちな芋だ」とみんなで食べたという逸話も。農業への理解を深めるエピソードとともに荒川家の日常が描かれます。

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北海道農家のクリスマスは一般人の常識は通用しません。クリスマスツリーは森で自給自足、チキンだって他の農家が家の前にサンタのプレゼントみたいに大きな袋で置いてくれます。柵をなぎ倒すほど雪に大はしゃぎする牛たちの姿も。 1巻で好評だったのか荒川家・父の武勇伝が再び明かされます。崩落した橋を渡るため軽トラでジャンプしたりトラクター作業中にかわいがっている牛を轢き殺しかけたりとにかくスケールのでかい話が続々と飛び出すのです。 さらにひいじいさんは歴史に残る四大鉱害の1つ、足尾鉱毒事件で田中正造とともに闘ったとか。正義のためとはいえ最終的に逮捕状が出て北海道に逃げてきたのでした。

牛は牛舎が新しいと死んでしまう繊細な生き物であったり長男が牧草の塊・ロールベーラに殺されかけたりとあいかわらず農業の知らない世界を教えてくれる本作。3巻では精神的にも肉体的にも強い農業従事者の姿が描かれます。 マタニティヨガに通う荒川は体が硬くバランスも悪いと指摘されるもスクワットだけは異常に出来ていました。なぜから農家の娘だから！搾乳・収穫・おまけに和式便所で足腰は最強だったのです。 「俺にできる事はお前にもできる」という家訓で育った荒川は一時期、日中は農業で夜は漫画という二重生活をこなしていました。上京した彼女は肉体労働のアルバイトを週6で入れようとして「こんなに働かなくていい」と面接官に言われるのでした。

『百姓貴族』というタイトル、これはある意味でリアルな農家の姿です。農家に嫁ぐ女性を可哀想と噂する女性たちが登場しますが花嫁が嫁ぐ彼は百姓貴族で年収数千万円あるというオチが……。 農閑期に多い結婚式も特徴的で、参列者は農家に加えて農具屋やJAなど農家に関わる人々がみな集まってきます。JAのパワーは強くドレスとタキシードを用意した新郎新婦がJAによって牛の着ぐるみを着せられたこともありました。 そして伝説の父はダンプカーの居眠り運転でダンプカーを横転させ内蔵が破裂してしまった過去もあったそうです。それでもヘソの位置がズレただけで元気になった父、スズメバチに体がまだら模様になるまで刺されても平気だったエピソードなど伝説がまだまだ登場します。

荒川弘の『銀の匙 Silver Spoon』は農業高校をテーマにした学園漫画で大ヒットを記録しました。そのリアルな描写の裏には荒川自身の実際に体験した農業経験が活きていたことが本作を読めば一目で分かるほど濃厚な農業事情が描かれています。 中には亡くなった馬が心臓麻痺だったら医者が教えてくれて勝手に解体して「香典返し」として馬肉を分けあうなど少々アウトな農家事情も教えてくれます。あくまで聞いた話と言っていますが果たして……。

農業をしながら漫画を書いていた荒川弘は超人すぎますね。農家での鍛錬があるからこそ過酷と言われる週刊連載を続けていられるのかもしれません。農業に興味がある方や荒川弘作品が好きな方はもちろん純粋にギャグ漫画を探している方にもオススメできるキレキレの笑いが詰まったエッセイです。 この機会に『百姓貴族』をコミックシーモアで一気読みしてみてはいかがでしょうか。