『ナイルパーチの女子会』のあらすじネタバレを結末まで！最終回は怖い？

女性同士の友情をテーマにした柚木麻子の小説『ナイルパーチの女子会』。2021年には水川あさみ主演でドラマ化もされました。 この記事では、本作のあらすじをネタバレありで解説し、ドラマ版についても紹介します。 ※本記事にはストーリーのネタバレが含まれているため、未視聴の人は注意してください。

都内の大手商社に勤務する志村栄利子には、密かな楽しみがありました。それは、同い年の主婦が綴る人気ブログ「おひょうのダメ奥さん日記」。絶妙な脱力感と筆致で記されている日記を読むことで、日々のハードワークも癒されるのでした。 一方「おひょう」こと丸尾翔子は、スーパーで店長を務める夫と2人暮らし。偶然にもある日、栄利子は近所に住んでいた翔子とカフェで出会います。実は2人には、同性の友だちがいないという共通のコンプレックスがありました。 急速に仲良くなる2人でしたが、翔子が数日ブログを更新しなかったことで、その関係は思わぬ方向へ進んでいきます。

女性同士の友情と、その関係性の破綻を描く柚木麻子の長編小説『ナイルパーチの女子会』。 本作は2015年に第28回山本周五郎賞を受賞した話題の1冊です。人との距離感がうまくつかめない栄利子と翔子の友情がどう破綻していくのかを、鋭くとらえています。 原作では2人の関係が綻び始めるのは翔子が数日ブログ更新しなかったためでしたが、ドラマではメールの返信が数日なかったことで栄利子がストーカーと化していきます。

急速に仲良くなった2人でしたが、理想の友情を思い描く栄利子が次第に暴走し始めます。たった一度お茶しただけなのに、一日に何十通ものメールを送ったり、ブログから翔子の家を特定して押しかけたりと、その行為はほぼストーカーそのもの！ しかも栄利子自身にはその自覚はありません。友だちならこれくらいのことは当たり前だと思っているからです。栄利子は高学歴で美人キャリアウーマン、世田谷に実家がある裕福な境遇といった完璧さがありますが、唯一「女友達がいない」という点にコンプレックスを抱いていました。

栄利子の行き過ぎた行為に、はっきりと拒絶を示した翔子。しかし栄利子は「自分に対して誤解があるからだ」と思い込み、それを正そうとしてますます関係をこじらせていきます。 初めは何もかも完璧な栄利子に憧れを抱いていた翔子も、彼女の異常性を感じ取り、次第に距離を取り始めました。そもそも栄利子は翔子を下に見ていて、社会的地位が上である自分の方が信頼されると思っています。 それもあり「自分が正しい」ことを譲らず、関係がこじれるのは翔子の方に問題があると言うのです。ファミレスで堂々と自分の正論を翔子にぶちまけた栄利子でしたが、翔子は「もう連絡しないで」と店を後にしました。

翔子に拒絶された栄利子は、その慰めに同僚の杉下と寝てしまいます。杉下は同じ会社の派遣社員・高杉真織と婚約中。 高杉はコミュ力が高いため女友達が多く、栄利子が勝てる相手ではありませんでした。栄利子は高杉に許してもらう代わりに「営業部の男全員と寝る」という無理難題をふっかけられてしまいます。 この事件で休職して引きこもった栄利子は、翔子のブログから彼女が水族館にいること知ると飛び出しますが、そこで翔子の浮気現場を見てしまいます。その証拠写真をネタに、栄利子は翔子に「親友ごっこ」を強要するのでした。

謎すぎるタイトル『ナイルパーチの女子会』の「ナイルパーチ」とは獰猛な肉食魚のことで、この物語での栄利子の姿を暗喩しているよう。 小説は柚木麻子の巧みな言葉遣いと説得力ある文章に感服！ドラマはとにかく水川あさみ演じる栄利子のストーカーぶりが怖すぎると評判です。 栄利子と翔子、どちらかに自分に似たところがあると気付いてしまうと、急にこの物語が他人事ではなくなり、心をえぐり始めます。誰にでも「他者に認められたい」という承認欲求が少なからずあるもの。 これは単に女性同士だけでなく、あらゆる人間関係にも当てはまるものかもしれません。

『ナイルパーチの女子会』のドラマ版は、2021年1月期にBSテレ東「土曜ドラマ9」枠で放送されました。 主人公の栄利子を演じたのは、コメディから社会派までジャンル問わず幅広い役柄を演じる水川あさみ。翔子役には、朝ドラ『花子とアン』の宇田川満代役で知られる山田真歩がキャスティングされました。 実力派2人の演技合戦が秀逸で、お互いに「女友達がいない」というコンプレックスを抱きつつ、相手のことを思いやれないまますれ違っていく感情を見事に表現しています。

女性同士の友情の真実を鋭く描いた小説『ナイルパーチの女子会』。ドラマ版も原作に忠実に描かれ、2人の実力派女優の共演によって話題となりました。同性の友だちとの関係に悩んだ時、そっと手に取ってみたい1作です。