2024年5月31日更新

映画『わたくしどもは。』あらすじネタバレ解説!作品と島の悲しき歴史背景のつながりとは?

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わたくしどもは。
©2023 テツヤトミナフィルム

小松菜奈と松田龍平がダブル主演を務める映画『わたくしどもは。』が2024年5月31日に公開されました。自然あふれる佐渡島を舞台に、2人の男女の来し方行く末が叙情的に描かれる本作。 この記事では、『わたくしどもは。』のあらすじや込められたメッセージをネタバレありで解説、考察していきます

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映画『わたくしどもは。』のあらすじ【ネタバレなし】

公開日 2024年5月31日
メインキャスト 小松菜奈 , 松田龍平
監督 富名哲也

ある日、自分の名前も過去も忘れた女(小松菜奈)が目覚めます。炭鉱で清掃の仕事をするキイ(大竹しのぶ)は、施設内で倒れている彼女を発見し、家に連れて帰りました。そこでミドリという名をもらった彼女は、館長(田中泯)の許可を得て、キイと同じ清掃の仕事に就きます。 あるとき猫の気配に導かれ、ミドリは1人の男性(松田龍平)に出会います。彼もまた名前も過去も覚えていないと言い、ミドリは彼をアオと呼ぶことにしました。 それからともに時間を過ごすようになった2人でしたが、ある日ムラサキ(石橋静河)という女性が現れ、ミドリはアオと彼女の親密な様子に心乱されます。

映画『わたくしどもは。』あらすじネタバレ

【起】謎めいた炭鉱町

わたくしどもは。
©2023 テツヤトミナフィルム

橋の上に並んで立つ男女。女は男に「生まれ変わったら、今度こそ、一緒になろうね」と言い、男は頷きました。 ある炭鉱町で、旅行客が見物を楽しんでいます。その後について掃除をしている女性に、旅行客たちが気づく様子はありせん。 その後、施設内で白い服を来た女性が目覚めます。戸惑った様子の彼女を発見したキイは、彼女を家まで連れて帰りました。キイはアカとクロという2人の少女と一緒に住んでおり、目覚めた女性に夕食を勧めます。自分の名前すらも覚えていないという女に、アカが「ミドリ」という名前を提案し、それ以降、彼女はミドリと呼ばれるようになりました。 キイはミドリを館長に紹介し、ミドリは清掃の仕事に就くことに。キイとともに真面目に仕事をこなしていたミドリは、あるとき猫の声を聞き、その気配をたどっていきます。

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【承】ミドリとアオの出会い

猫の気配を追ってミドリがたどり着いたのは、廃墟のような部屋でした。そこには欠けた器に猫用のミルクが用意されています。そこでミドリに声をかけたのは見知らぬ男性。その部屋で暮らし、警備員の仕事をしているという彼は、やはりミドリと同じく自分の名前も思い出せませんでした。 翌日、ミドリはきれいな器にミルクを入れてやってきますが、男は欠けた器が好きだったと言います。ミドリは彼に「アオ」と名前をつけ、それから2人は一緒に過ごすことが増えていきました。アオはミドリの声に聞き覚えがあると言います。そんなある夜、アオは炭鉱のトンネルで全身がただれた男を発見しました。うめき声を上げながらふらふらと彷徨う彼に、アオは声をかけようとします。 一方その頃、高校生の透は自分の部屋で黙々と縄を編んでいました。彼は同級生にいじめられていたのです。家に帰ると、彼は人知れず紅を引き、襦袢を羽織って踊ります。その夜、彼はろう者の母から、うちにはお父さんがいないから、あなただけが頼りだと言われます。

【転】町に隠された秘密

縄を持って森にやってきた透を見かけたアオ。透は縄を木にかけ、首を吊ろうとしていました。アオが「君はまだここに来るべきじゃない」と言うと、縄が切れ、透は自殺に失敗します。 ある日、1人のバスガイドがバスに乗り込みます。その後、町にムラサキという女が現れました。ムラサキはアオの暮らす部屋に現れ、ミドリと鉢合わせます。彼女はアオについてなにか知っているようでしたが、アオはやはり彼女についても覚えていないようでした。 そんななか、館長に呼び出されたキイは「49日経ったので、町を出ていくように」と言われます。自分がなにか悪いことをしたのかと戸惑うキイ。しかしその日キイは家に戻らず、やがてアカとクロもミドリの前から姿を消しました。

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【結末】ミドリとアオの正体とは?美しいラストに心奪われる

わたくしどもは
©2023 テツヤトミナフィルム

ある日、森にある橋にやってきたミドリは、自分の過去を思い出します。生きていたころ、ミドリとアオは、愛し合いながらも結ばれることが許されず、ともに橋から身を投げて心中したのです。アオは以前からそれに気づいていました。 2人はバイクに乗ってトンネルの中を駆け抜けていきます。しかしバイクがスリップし、2人の体は道路に投げ出されます。ところが2人は痛みを感じず、怪我もしませんでした。それでミドリは自分はすでに死んでおり、この町は死者たちがさまよう場所だと確信します。 やがて彼女は生前のアオとの関係を思い出しました。愛し合っていた2人は、死後に再会を果たしたのです。

【解説】さまよう魂と佐渡島の悲しい歴史

わたくしどもは
©2023 テツヤトミナフィルム

『わたくしどもは。』の舞台は、新潟県佐渡島の金山跡地です。佐渡島は流刑地としても知られていますが、江戸時代にはなんらかの理由で戸籍を奪われた人たちが、「無宿人」として暮らしていました。彼らは金山で過酷な労働を強いられ、数年で亡くなったそうです。富名哲也監督は、佐渡島で無宿人の墓を見て、この作品の着想を得たと語っています。 また、主人公であるミドリとアオは、なんらかの理由で現世では結ばれることができず、心中した恋人同士でした。アオに執着心を見せるムラサキは、生前は彼の妻だったようです。江戸時代には近松門左衛門の人形浄瑠璃『心中天の網島』が上演され、心中が流行ったことがあり、心中が大罪として禁じられた歴史を踏まえています。 本作に登場する過去の記憶がない人々は、死後、成仏するまでの49日間の時間軸をさまよっている人々という設定になっています。しかし、なかには館長のように49日が経っても町にとどまりつづける人もいます。

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【考察】説明を省き、あえて現実離れした演技で観客も物語の世界をさまよう

わたくしどもは
©2023 テツヤトミナフィルム

『わたくしどもは。』には説明的なセリフやカットがほとんどなく、観客もまた登場人物たちのように風景やそこで起こる出来事のなかをさまようことになります。富名監督によれば、これは意図的なもので、細かな設定については「観客の方に自由に解釈してもらえればと思っています」と語っています。ではなぜ、このような曖昧さを良しとしたのでしょうか。 富名監督は主演2人について「物語のキャラクターを演じてもらうというより、ふたりがただそこにいるという存在を映像に刻印したいというのがありました」と語っています。佐渡島の美しい自然の中で、生きた人間ではない主人公2人のやや現実味のない演技が活きています。これは、これまで数多くの作品で実績を重ねてきた小松菜奈や松田龍平にしかできない役だったのではないでしょうか。

映画『わたくしどもは。』の感想・評価

©2023 テツヤトミナフィルム
わたくしどもは。』の総合評価
3 / 2人のレビュー
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30代女性

佐渡島の美しい自然が印象的。現世と来世の狭間をたゆたう住民を、小松菜奈の透明感ある演技、松田龍平の浮世離れした演技で表現していてテーマによく合っていたと思う。登場シーンは少ないけど、田中泯の存在感がいい

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40代女性

現世と来世の間をさまよう魂が、美しい自然あふれる佐渡島の金山跡地で再会する。全体的にゆったりと、静かな時間が流れる雰囲気がまさに死後の世界そのものといった感じ。とらえどころのない松田龍平と小松菜奈の演技が秀逸。

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映画『わたくしどもは。』のキャスト・登場人物

ミドリ役/小松菜奈

ある日、炭鉱の町の施設内で発見された女性。彼女は自分の名前も過去も覚えておらず、町の人に「ミドリ」と名付けられました。清掃の仕事を得たミドリは、ある日、猫の気配に導かれて警備員をしている男性と出会います。彼に奇妙な親近感を持った彼女は、その男性を「アオ」と名付け、一緒に過ごす時間が増えていきました。 ミドリを演じるのは、若手実力派俳優として知られる小松菜奈です。近年の出演作には、『糸』(2020年)や『余命10年』(2022年)などあります。

アオ役/松田龍平

炭鉱の町で警備員として暮らす男性。ミドリと同じく自分の名前も過去も覚えていませんでしたが、ミドリによって「アオ」という名前を与えられます。他の町民が気づいていないあることに気づいているらしく、不思議な言動を見せることもあります。 アオを演じるのは、大島渚監督の『御法度』(1999年)で主演デビューした松田龍平。その後も活躍をつづけ「探偵はBARにいる」シリーズなどの代表作のほか、近年ではドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』(2021年)への出演でも話題になりました。

キイ役/大竹しのぶ

大竹しのぶ

炭鉱の町で清掃の仕事をしているキイ。町の施設内でミドリを発見し、家に連れて帰ります。彼女は面倒見がよく穏やかな性格で、「アカ」と「クロ」という2人の少女と暮らしていました。館長に頼んでミドリに清掃の仕事を斡旋し、ともに働きます。 キイを演じるのは大竹しのぶ。1973年に芸能界デビューした彼女は、1975年にはNHKの朝ドラ『水色の時』でヒロインを務めました。その後も仕事が途切れることはなく、森田芳光監督の『黒い家』(1999年)などでの怪演でも知られています。

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ムラサキ役/石橋静河

石橋静河

ある日突然町に現れたムラサキは、アオと親しげな様子を見せ、ミドリを動揺させます。 ムラサキを演じるのは、ダンサーとしても知られる石橋静河です。コンテンポラリーダンサーとして活動していた彼女は、2015年に舞台『銀河鉄道の夜 2015』で女優デビュー。2017年には映画『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』で初主演を務め、多くの新人賞を受賞しました。その後、ドラマ『東京ラブストーリー』や映画『あのこは貴族』(ともに2021年)など、幅広く活躍しています。

館長役/田中泯

田中泯

町を管理する館長は、普段あまり姿を見せず、謎めいた人物です。 館長を演じる田中泯は、ダンサーとして世界を股にかけて活躍してきました。ダンスやオペラの公演で主演・振付を担当する一方で、2002年の『たそがれ清兵衛』で俳優デビュー。映画『メゾン・ド・ヒミコ』(2005年)や大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(2022年)などに出演しています。

映画『わたくしどもは。』のあらすじをネタバレありで解説しました

小松菜奈と松田龍平のダブル主演が話題の『わたくしどもは。』佐渡島の美しい自然を背景に、現世と来世の間をさまよう魂の交流が描かれます。 『わたくしどもは。』は2024年5月31日から公開中です!