2025年6月18日更新

映画『サブスタンス』ネタバレ考察&あらすじ紹介!ラストの意味とは?スーはデミ・ムーア演じるエリザベスの妄想なのか?

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映画『サブスタンス』作品概要をおさらい

タイトル 『サブスタンス』
原題 『The Substance』
日本公開予定日 2025年5月16日
上映時間 142分
監督 コラリー・ファルジャ
メインキャスト デミ・ムーア , マーガレット・クアリー , デニス・クエイド

第77回カンヌ国際映画祭で上映されるやいなや大好評を博し、脚本賞を受賞した『サブスタンス』。バイオレンス映画『REVENGE リベンジ』(2017年)などで知られるコラリー・ファルジャ監督がデミ・ムーアを主演に迎え、社会にはびこるルッキズムやそれに振り回される女性を描いたボディホラーです。 デミ・ムーアは本作での怪演が高く評価され、ゴールデングローブ賞主演女優賞(ミュージカル・コメディ部門)を受賞。新たな代表作とも言えるほどに注目を集めました。

【ネタバレなし】映画『サブスタンス』あらすじを紹介

50歳の誕生日を迎えた元人気女優のエリザベス(デミ・ムーア)。容姿の衰えによって仕事が減っていくことを気に病んだ彼女は、若さと美しさと完璧な自分が得られるという違法薬物「サブスタンス」に手を出してしまいます。 薬を注射するとエリザベスの背中が破け、中からスー(マーガレット・クアリー)という若い自分が現れました。若さと美貌に加え、これまでのエリザベスの経験を持つスーは、エリザベスの上位互換とも言える存在で、たちまちスターダムを駆け上がっていきます。 サブスタンスには「活性剤の使用は1回のみ」、「使っていない体には点滴の必要がある」、そして「1週間ごとに入れ替わらなければならない」というルールがありました。しかしスーは、次第に入れ替わりに不満を持つように。ついにスーは入れ替わる時間を遅らせるために、エリザベスからさらに若さを吸い取っていきます。

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映画『サブスタンス』のあらすじをネタバレ解説

映画『サブスタンス』 デミ・ムーア
(c)The Match Factory

エリザベスとスーの互いに対する狂気

あるときようやく目を覚ましたエリザベスは、自分の体が急速に老いていることに驚愕します。自信を失くした彼女は、入れ替わりの間も引きこもって暮らすようになってしまいました。 そんなエリザベスの暮らしを知ったスーは、不満を爆発させます。そして彼女はエリザベスの髄液をビンに保管し、入れ替わりをせずに暮らすように。しかしその髄液も底をつき、サービスに助けを求めると、「母体と入れ替わらないと体液は戻らない」と言われます。 しかたなくエリザベスと入れ替わったスー。しかし完全に老婆の姿になってしまったエリザベスは激怒します。サブスタンスを中止しようとスーの体に注射を刺すエリザベスでしたが、途中で気が変わりスーを揺り起こします。 目を覚ましたスーはエリザベスが自分を始末しようとしていたことを悟り、怒り狂って彼女を殺してしまいました。そして大晦日の特番に出演するため、スタジオに向かいます。

やりすぎ?ボディーホラーがすぎるクライマックス

スタジオで突然体調が悪くなったスーがトイレに駆け込むと、ボロボロと歯が抜け落ちてしまいます。その後も体の崩壊は止まらず、焦ったスーはまだ活性剤が残っていることを思い出し、急いで家に戻ることに。 「活性剤の使用は1度だけ」というルールを破って活性剤を注射するスー。しかし彼女の背中から出てきたのは、この世のものとは思えない醜いモンスターでした。 モンスターになってしまったスー/エリザベスは、それでもなんとかスタジオへ。ステージにあがった彼女にスポットライトが当たると、顔に貼っていたエリザベスの写真が剥がれ、現場はパニックに。 警備員に撃たれ、命からがら逃げ出したモンスター。しかし転んだ拍子に体はバラバラになってしまい、エリザベスの顔だけが残ります。ウォーク・オブ・フェイムの自分の名前が刻まれた星まで移動したエリザベスは、そこで満足そうな表情をし、血溜まりになってゆくのでした。

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【考察①】映画『サブスタンス』のスーやモンスターは全てエリザベスの妄想?

映画『サブスタンス』デミ・ムーア
(c)The Match Factory
妄想かもしれない根拠
  1. 「Substance」の意味
  2. 目のアップとハイな状態
  3. 老いは「離脱状態」を表現?
  4. 「Remember You're One」が示唆する言葉
  5. 顔に貼ったエリザベスの写真

『サブスタンス』の物語は、その大部分がエリザベスの妄想だと解釈することもできます。 エリザベスは事故にあった後、危険な薬物にハマって幻覚を見ていたのではないでしょうか。アメリカで「Substance」といえば、ヘロインなどのハードドラッグなど、危険性の高い薬物を指すことがあります。 スーがエリザベスの髄液を接種するシーンでは彼女の目のアップが多用され、ハイになっているような印象を受けます。またエリザベスが自暴自棄になったり、どんどん老いていくのは、薬物の離脱症状や体がボロボロになっていくことを表しているのかもしれません。 「Remember You're One」という言葉は、薬物によってエリザベスがハイのときとそうでないときの気分の違いがあるだけで、実際には分身などいないと解釈することもできます。 またモンスターになってしまったときも、顔に貼ったエリザベスの写真がステージ上で剥がれ落ちるまで、誰もその姿に反応しませんでした。これは表面が取り繕われていれば、その下の醜い本性が露呈するまで問題にならないということを表現しているのかもしれません。

【考察②】エリザベスとスーの名前の真意とは?

「エリザベス」は王族などが使ってきた伝統的で高貴な名前です。本作では「過去の栄光」や「誇り」、「プライド」などを象徴する存在。 「エリザベス」の語源には「God is my oath(神の誓い)」という意味があり、神の言葉に偽りはない、転じて「(嘘偽りのない)本来の自分」を表しているのではないでしょうか。 一方、変身後の「スー」はスーザンの略称で、こちらは「若さ」や「純粋さ」、「性的魅力」など、社会や業界が女性に求める“理想像”を象徴する存在です。 スーといえばキューブリック作品の『ロリータ』(1962年)の主演・スー・リオンが思い起こされます。作中では15歳で大人の男を虜にする小悪魔な役どころを演じきりました。本作のスーはエリザベスが注目されたい、チヤホヤされたいという“理想の自己像”であり、名前だけでなく役どころも重なる部分があります。

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【考察③】映画『サブスタンス』はルッキズムが蔓延る現実の風刺?

映画『サブスタンス』
(c)The Match Factory

エリザベスがフレッドとのデートに行く前、何度もメイクを直すシーンがあります。これは現実にもあることの誇張であり、エリザベスはスーのポスターを目にし、自分が彼女と比べて美しくないと感じているのでしょう。 コラリー・ファルジャ監督の母国フランスでは、2017年の統計で15歳から24歳の女性の死因において、摂食障がい(拒食障がい)が交通事故に次いで第2位となり、社会に大きな衝撃を与えました。 偏った美を助長してきたファッションモデルに対しては、健康的な身体であることを証明する健康診断書の提出が義務付けられ、意識改革が進められています。しかし、いまだに「痩せること=美しくなる」という呪縛に囚われいる人も多くいるのが現状です。 誰かと比べて自分は無価値で愛される資格がないと感じてしまうのは、とくにインターネットやSNSが発達した現代には、誰にでも経験のあることなのではないでしょうか。 本作のタイトルになっている「サブスタンス(Substance)」は、「化学物質、生物学的物質」「本質、中身」「核心、要点」などを意味する言葉です。 エリザベスの「中身」とも言えるスーの存在自体がタイトルになっていると考えられますが、一方で若さと美を追い求めるエリザベスの価値観の「核心」が描かれた作品でもあります。エリザベスは残念なことに社会のルッキズムを内面化しており、若く美しいスーが“よりよい”自分だと思っていました。

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【考察④】パワハラやミソジニズムが消えない社会の風刺?

映画『サブスタンス』デミ・ムーア デニス・クエイド
(c)The Match Factory

ハーヴェイがエビを食べながらエリザベスに解雇を告げるシーンについて、デミ・ムーアはこれが本作で最も暴力的なシーンだと感じたと語っています。 ここで彼はエリザベスに敬意を払うこともなく、彼女の解雇がまるでどうでもいいことのように扱っています。自分の価値を低く見られることは、年齢を重ねた女性だけでなく、誰にとっても耐え難いことです。これはある意味で強烈なパワハラといえるでしょう。 一方でスーの番組のカメラワークは彼女の下半身のアップを多用し、必要以上に性的な印象を与えるものになっています。またハーヴェイはスーに「かわいい女の子は笑顔でいなくっちゃ」と言います。これらのシーンは、性的な魅力こそが女性の価値を決めるというミソジニズムに満ちた社会の価値観を象徴しているのです。

【考察⑤】映画『サブスタンス』ラストの意味とは?

ラストシーンで顔だけになってしまったエリザベスは、ウォーク・オブ・フェイムの自分の名前が刻まれた星までたどり着き、ヤシの木と星空を見上げて息絶えます。 ウォーク・オブ・フェイムの星は映画冒頭にも登場していますが、このときは真上からのショットで、下を向いているエリザベスの顔は見えません。彼女は人が作り上げた星(スター)である自分を見て、社会の作った地位や名声、そして美の基準にとらわれていたのです。 しかしラストシーンで彼女は、空を見上げて本物の星を見ています。ウォーク・オブ・フェイムに行ったことから、彼女が最後まで過去の栄光にしがみついていたと考えることもできます。しかし反対に、空を見上げたエリザベスは、社会の押し付けた価値観から解放されたと考えることもできるのではないでしょうか。

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『サブスタンス』のメッセージが詰まっている注目シーンを解説!

冒頭の卵が分裂するシーン

上記予告の30秒〜始まる冒頭シーン。卵が真ん中に1つ割られ、注射を打つときれいに2つに分裂します。映画をすでに観た方なら、この描写がエリザベスとスーの関係性を象徴している*と理解できるでしょう。同時に、老化と関連する細胞分裂の比喩とも解釈できます。 この卵の冒頭シーンはエリザベスのようなサブスタンス接種者の一人称視点から描かれており、観客を一気に当事者として引きずり込む秀逸なオープニングです。

エリザベスやハーベイ(プロデューサー)が食べ物を貪るシーン

デミ・ムーアは、エリザベスに番組の解雇を伝えるハーベイの食事シーンを「作中で最も暴力的なシーン」だと振り返りました。ハーベイが食事を「貪る」姿は、生々しく気持ち悪さを覚えるはず。 英語では「meat」や「shrimp」は男性器を指すこともあり、性的な対象として女性を消費するハーベイを表すため、誇張して表現されているともいえます。

ラストの血まみれシーン

終盤でモンスターの姿が明るみになってしまったエリザベス。モンスター化したエリザベスが正面に映るシーンでは、観客の後頭部まで画面に入っています。そしてモンスターの血飛沫が飛んでくるのです。 傍観者として観ていた我々にもその血を浴びせてきました。他人事では終わらせない、監督の執念を感じさせます。

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『サブスタンス』が影響を受けている名作映画とは?

コラリー・ファルジャ監督は、本作に影響を与えた作品として、2作品を挙げています。1つ目がデヴィッド・クローネンバーグ監督の『ザ・フライ』(1987年)です。天才科学者・セスが転送装置に混入していたハエにより、体に異変が生じ始めるというストーリー。 本作や『ザ・フライ』のようなボディホラーは「人間の姿から逃れたい、変身したい、身体が受け付けないことをしたい」という願望から成り立っている、と監督は語っています。 2作品目は、ダーレン・アロノフスキー監督の『レクイエム・フォー・ドリーム』(2000年)です。こちらは番組出演のために痩せようとドラッグに手を出してしまう未亡人サラが主人公、本作と通ずる内容です。 「愛されたい、注目されたい」という強迫観念が、摂食障がいや無茶なダイエットに繋がると共通点を語っています。

映画『サブスタンス』メインキャスト紹介!デミ・ムーアが美と若さに取り憑かれた女優役を怪演

エリザベス役/デミ・ムーア

映画『サブスタンス』デミ・ムーア
(c)The Match Factory

50歳になり、老化による容姿の変化から仕事を失うことを恐れているエリザベス。若さと美貌に執着する彼女は、違法薬物「サブスタンス」を使って完璧な自分になろうとします。 エリザベスを演じるデミ・ムーアは、『セント・エルモス・ファイアー』(1988年)や『ゴースト/ニューヨークの幻』(1990年)で爆発的な人気を獲得。幅広い作品に出演し、アイドル女優から演技派へと評価を高めていきます。 40歳のときには『チャーリーズ・エンジェル フルスロットル』(2003年)の役作りのため、約2600万円以上をかけて全身整形したことでも話題になりました。 本作でのスーの搾取によって完全に老婆の姿になってしまったエリザベスが、サブスタンス中止を決断するシーンの撮影では、6〜9時間かけて全身に特殊メイクを施し、1〜2時間程度しか撮影ができなかったといいます。 また数年前から自分は俳優としてはもう終わりかもしれないと思っていたというムーアですが、本作でゴールデングローブ賞主演女優賞(ミュージカル・コメディ部門)を受賞。キャリアのなかで初めて重要な賞を獲得しました。

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スー役/マーガレット・クアリー

映画『サブスタンス』マーガレット・クアリー
(c)The Match Factory

「サブスタンス」を使用したエリザベスの分身であるスー。若く美しい彼女は、エリザベスの経験も身につけている、非の打ちどころのない女性です。 スーを演じたマーガレット・クアリーは、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(2019年)や『ドライブアウェイ・ドールズ』(2024年)などに出演してます。

ハーベイ役/デニス・クエイド

映画『サブスタンス』デニス・クエイド
(c)The Match Factory

ハーベイは、エリザベスをテレビ番組の司会者から降板させ、より若くて美しいスターに差し替えようとするテレビプロデューサーです。 ハーベイを演じたのは、『僕のワンダフル・ライフ』(2017年)や『スラムドッグス』(2023年)などに出演しているデニス・クエイドです。

映画『サブスタンス』の監督は、狂気映像ホラーが得意なコラリー・ファルジャ監督

『サブスタンス』でメガホンを取ったのは、フランスの映画監督コラリー・ファルジャ。 2003年に短編映画『Le télégramme(原題)』でデビューした彼女は、初の長編監督作『REVENGE リベンジ』(2017年)が第42回トロント国際映画祭でプレミア上映され、注目を集めました。 そんなファルジャの得意分野は、ボディホラーと呼ばれるリアルでグロテスクな描写の多い作品です。『REVENGE リベンジ』も、複数の男に貶められた1人の女性が彼らに復讐するというシンプルなストーリーながら、容赦ない暴力描写で観る者をあっと言わせました。

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映画『サブスタンス』アカデミー賞5部門ノミネート!実際の評価は??

『サブスタンス』の受賞歴

カンヌ国際映画祭 【受賞】脚本賞 【ノミネート】監督賞、女優賞、男優賞、審査員賞、グランプリ、パルム・ドール
ゴールデングローブ賞 (ミュージカル・コメディ部門) 【受賞】主演女優賞 【ノミネート】作品賞、脚本賞、監督賞、助演女優賞
放送映画批評家協会賞 【受賞】主演女優賞、オリジナル脚本賞、メイクアップ賞 【ノミネート】助演女優賞、視覚効果賞
サテライト賞 【受賞】主演女優賞 【ノミネート】助演女優賞、オリジナル脚本賞
ヨーロッパ映画賞 【受賞】撮影賞、視覚効果賞 【ノミネート】作品賞、脚本賞、撮影賞
セザール賞 【ノミネート】外国映画賞
インディペンデント・スピリット賞 【ノミネート】作品賞、主演俳優賞
全米映画俳優組合賞 【受賞】主演女優賞
英国アカデミー賞 【受賞】メイクアップ賞 【ノミネート】主演女優賞、オリジナル脚本賞、音響賞
アカデミー賞 【受賞】メイクアップ&ヘアスタイリング賞 【ノミネート】作品賞、監督賞、主演女優賞、脚本賞

『サブスタンス』はカンヌ国際映画祭で脚本賞を獲得したのを皮切りに、賞レースを彩ってきました。 ゴールデングローブ賞では、デミ・ムーアが主演女優賞を初受賞。 30年前にあるプロデューサーから“ポップコーン女優”と言われたという彼女は、こうした賞とは無縁だとどん底の気分だったときに本作の脚本を受け取り、まだ終わっていないという天のお告げだと思った、と感動的なスピーチをしています。 アカデミー賞では大本命と目されながら惜しくも受賞を逃しましたが、作品と彼女の演技は高く評価されています。

『サブスタンス』の口コミ

映画『サブスタンス』
(c)The Match Factory

『サブスタンス』の感想としては、「人生で観てきた映画のなかで最高の1作!ショックを受けたし、圧倒されたし、刺さったし、いい意味で?トラウマになった」と絶賛の声も。 また「前作『REVENGE リベンジ』は『キル・ビル』(2003)と『ウルフクリーク/猟奇殺人谷』(2005年)をミックスしたような映画で称賛された。ファルジャ監督は大胆なアイディアと先見の明と持って、恐れを知らずに限界に挑戦している」とする感想もあります。

映画『サブスタンス』でデミ・ムーアの怪演ぶりに溺れる

映画『サブスタンス』、マーガレット・クアリー
(c)The Match Factory

若さと美に執着する女性を描く『サブスタンス』。本作はルッキズムやミソジニズムをテーマに掲げ、デミ・ムーアの怪演で、痛烈に現代社会を風刺しています。グロテスクで衝撃的な映像の連続ですが、現実の社会はそれ以上にグロテスクなのかもしれません。 『サブスタンス』を観て、女性を取り巻く若さと美の呪いについて考えてみるのも面白いのではないでしょうか。