2025年8月13日更新

『国宝』藤駒(見上愛)はその後どうなった?原作と映画の違いを比較解説

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『国宝』 見上愛
©吉田修一/朝日新聞出版 ©2025映画「国宝」製作委員会

吉沢亮が主人公を務め、李相日がメガホンを取った映画『国宝』。大ヒットとなっている本作で、主人公・喜久雄と親密な仲になった芸妓の藤駒(見上愛)とは、どんな女性なのでしょうか。 この記事では、『国宝』の藤駒について解説していきます。 映画『国宝』の重要なネタバレを含みます。未鑑賞の方はご注意ください。

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『国宝』藤駒は喜久雄が幼少期に出会った女性

『国宝』 黒川想矢 越山敬達
©吉田修一/朝日新聞出版 ©2025映画「国宝」製作委員会

藤駒は京都の芸妓で、喜久雄が初めて俊介とお茶屋に出かけたときに出会いました。そのとき彼女は、喜久雄に「私を2号さんか3号さんにしてよ」、つまり愛人にしてほしいと言います。 藤駒は喜久雄との間に娘を産みますが、しあわせな日々は長くはつづきませんでした。歌舞伎役者として高みを目指す喜久雄にとって、芸姑である自分は結婚相手にふさわしくないと思っていたのでしょう。 その後、喜久雄は後ろ盾を得るために、歌舞伎役者の吾妻千五郎の娘・彰子と結婚します。藤駒と喜久雄は縁を切ったようで、彼女は1人で娘を育てました。

藤駒の娘・綾乃は喜久雄の子ども

『国宝』 吉沢亮
©吉田修一/朝日新聞出版 ©2025映画「国宝」製作委員会

藤駒と喜久雄の間には綾乃という娘がいます。藤駒と喜久雄は結婚していませんでしたが、綾乃が幼いうちは、足しげく彼女たちのもとに通い、認知はしていないながらも父親としての役割も果たしていました。 しかし喜久雄は、三代目花井半二郎を襲名するタイミングで藤駒とは縁を切ったようです。お披露目の道中で喜久雄を見つけた綾乃は、人力車に乗った彼に「お父ちゃん、お父ちゃん」と呼びかけながら追いかけますが、喜久雄は見向きもしませんでした。 しかしのちに、人気絶頂だった喜久雄は「愛人と隠し子がいる」と週刊誌に暴露されてしまい、人気が低迷していきます。

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藤駒と娘・綾乃のその後を解説

『国宝』
©吉田修一/朝日新聞出版 ©2025映画「国宝」製作委員会

喜久雄と縁を切った藤駒は、1人で綾乃を育てました。しかし娘とともに度々歌舞伎鑑賞に出かけていたらしく、綾乃は花井半二郎が父であると認識していたようです。人気芸妓だった彼女は、喜久雄と別れた後、そして芸妓を引退した後も生活に困窮することはなかったのだと思われます。 喜久雄はスキャンダルがきっかけで一度は歌舞伎界を追われ、全国の宴会場などを妻の彰子とともにドサ回りしていましたが、その間藤駒や綾乃がどのような生活をしていたのかは明らかにされていません。 藤駒は喜久雄と縁を切った後、二度と彼の前に現れることはありませんでした。しかし綾乃は、喜久雄が人間国宝になったときのインタビューで、取材チームのカメラマンとして彼の前に現れます。彼女は自分と母を捨てた喜久雄を恨んでいたと口にしますが、歌舞伎役者としての彼は認めていたようです。

藤駒は喜久雄をどう思っていた?

『国宝』 吉沢亮 寺島しのぶ 渡辺謙
©吉田修一/朝日新聞出版 ©2025映画「国宝」製作委員会

藤駒は自分と娘を捨てた喜久雄のことを、特に恨んではいなかったと思われます。先述の通り、彼女は娘を連れて彼が出演する歌舞伎を何度も観に行っていたようですし、綾乃にも彼への恨み言を吹き込んだりもしていなかったのではないでしょうか。 初めて出会ったときに彼女が言ったとおり、芸妓という立場から、もともと喜久雄と結婚したいとか、結婚できるとは思っていなかった藤駒ですから、いつか彼が自分から離れていくことは覚悟していのでしょう。

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原作では藤駒ではなく「市駒」という名前だった?

喜久雄の娘を産んだ芸妓の名前は映画では「藤駒」ですが、原作では「市駒」となっています。実はこれは、「市駒」という名前の芸妓が実在していたことから、映画化にあたって祇園関係者からその名前は避けた方がいいのではないかとの声が上がったため変更されたと言われています。 『京都花街はこの世の地獄~元舞妓が語る古都の闇~』(竹書房)の著者の1人で、元舞妓のフリーライターである桐貴清羽の舞妓時代の名前が「市駒」だったそうです。 彼女はこの著書で花街の性被害などを告発しているので、そうしたネガティブなイメージが映画に持ち込まれるのを避けたかったのかもしれません。

原作と映画の藤駒の描かれ方は違う?

原作の「市駒」から、映画では名前が変更された藤駒ですが、物語上の役割は原作と違いはありません。 彼女は喜久雄との間に娘を授かり、彼が花井半二郎を襲名するタイミングで縁を切って1人で娘を育て、喜久雄の前に二度と現れることはありませんでした。 『国宝』は基本的に歌舞伎という男だけの世界の物語であり、藤駒に限らず、女性キャラクターたちは多くを語らず、ある意味で都合の良い存在として描かれています。

『国宝』藤駒は喜久雄との娘を大切に育てた芯の強い女性

藤駒は喜久雄との間に娘の綾乃を授かり、彼と別れた後は1人で娘を育てた強い女性です。もともと喜久雄との結婚は考えていなかった彼女は、彼が離れていっても「捨てられた」とは思っていなかったのかもしれません。 『国宝』を観るときには、こうした女性キャラクターたちに注目して観るのも面白いかもしれませんね。