2025年9月16日更新

映画『国宝』永瀬正敏演じる立花権五郎の生き様を解説!死亡シーンは息子・喜久雄と重なる?

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『国宝』 宮澤エマ 永瀬正敏
©吉田修一/朝日新聞出版 ©2025映画「国宝」製作委員会

原作小説と映画の違いを紐解くと、どの登場人物にも背景が見えてくる奥深い作品『国宝』。この記事では、主人公・喜久雄の父親で長崎の任侠一家の親分・立花権五郎について深掘りしていきます。 映画『国宝』の重要なネタバレを含みます。未鑑賞の方はご注意ください。

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『国宝』永瀬正敏演じる立花権五郎のプロフィール

ここからは、立花権五郎が映画ではどのように描かれていたのかをプロフィールなどから紹介していきます。

立花権五郎のプロフィール

『国宝』 宮澤エマ 永瀬正敏
©吉田修一/朝日新聞出版 ©2025映画「国宝」製作委員会

立花権五郎は戦後に長崎で一大任侠一家となった立花組の組長で、吉沢亮演じる喜久雄の父親です。喜久雄の産みの母は亡くなっており、宮澤エマ演じる立松マツを後妻に迎えた家族構成。 立派な口髭をたくわえ、アイロンパーマをかけたヤクザの親分で、背中から両腕と胸に広がる和彫りも印象的です。

背中に広がる刺青!巨大な龍と不動明王

『国宝』 吉沢亮
©吉田修一/朝日新聞出版 ©2025映画「国宝」製作委員会

権五郎の背中には不動明王、胸には左右に1匹ずつ巨大な龍が刺青で描かれています。龍には立身出世や成功、強さや勇気などの意味があり、不動明王は「いかなる時も動じない心」を表しているよう。 戦後の長崎で名門一家となった立花組をまとめ上げるため、誰よりも強さを求め、その上で冷静沈着でいようとする頼もしさと決意が彼の彫り物からうかがえます。 息子の喜久雄は背中にミミズクの刺青を彫っていました。映画・小説ともにミミズクは受けた恩を忘れないという話が出てきますが、喜久雄は「恩を忘れない人間」になりたいとミミズクを選んでいます。

喜久雄は自身に流れている立花組の血を恨んでいる!?

本作のテーマは「芸」か「血」かというもの。芸道を極めようとする喜久雄は自分に歌舞伎役者の血が流れていないことに苦しみ、その血筋を持つ俊介に「血が欲しい」と訴えていました。 しかし実は喜久雄も任侠一家の坊ちゃんであり、その世界では“血に恵まれている”という立場。この物語は芸道と極道という2つの「道」を極める者たちの物語でもあるのです。

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立花権五郎の衝撃的な死亡シーンや原作における顛末を紹介!

権五郎が登場するのは映画の序盤。後に喜久雄の師匠となる歌舞伎役者の花井半二郎が、立花組の新年会に顔を出すところから物語が始まります。そこで敵対している組の敵襲に遭い、権五郎は組の者たちを守るために矢面に立ちました。 和やかな新年会から急転、抗争の緊張感と迫力がスクリーンいっぱいに展開。映画冒頭から息をのむ演出となっています。

喜久雄と視聴者の脳裏に焼き付いた死亡シーン

権五郎は中庭に1人出ると、ひらりと着物を脱ぎ捨て、背中の和彫りを見せて日本刀をかざし、戦おうとした矢先に銃で撃たれてしまいます。権五郎は出て行く前に、喜久雄に「よく見ておけ」とだけ伝えていました。それは自分の生き様=死に様を目に焼き付けておけという意味だったのでしょうか。 喜久雄の眼には、白い雪が舞う中で戦う父の姿、そこに広がる赤い血が生涯焼き付いていたのかもしれません。

白い雪が舞う情景は喜久雄が最後に見る景色と類似している!

喜久雄は「ずっと探している風景」を物語の最後に目にします。それは、舞台に舞う紙吹雪が照明を通してキラキラと輝いている様。その様子はまるで、喜久雄が見た父の最期の風景のようでした。 喜久雄が探していたのは、生を全うしようとする死の直前の煌きだったのかもしれません。彼はそれを自身が到達した芸の極み「鷺娘」の舞台後に見ることができたのです。

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原作小説での結末は⋯⋯

原作小説での権五郎の最期は映画とは違ったものでした。映画では権五郎を撃ったのが誰かはわかりませんでしたが、小説では彼の弟分である辻村が抗争に紛れて銃弾を撃ち込んでいます。 辻村は立花組の兄弟組織「愛甲会」の若頭で、権五郎は彼を可愛がっていました。その辻村がなぜ権五郎を撃ったのか、それは組織内での権力争いの末だったのかもしれません。もともと辻村は喜久雄の才能を買っていて、花井半二郎を新年会に呼んだのも彼でした。 小説ではさらに、辻村が権五郎亡き後の立花組を仕切って組に貢献していく様子も描かれています。実は歌舞伎役者になった喜久雄を援助し続けており、後に喜久雄に権五郎を殺したのは自分であることを告白した際も、恩を感じていた喜久雄は話を逸らしていました。

冒頭の一瞬で観客を惹きつけた名俳優・永瀬正敏

永瀬正敏

映画冒頭シーンのみに登場し、強烈な印象を残した立花権五郎を演じたのは、写真家としても活動する俳優の永瀬正敏。 映画『ミステリー・トレイン』(1989年)や「私立探偵 濱マイク」シリーズなどで知られ、2024年には安部公房の小説を原作とした『箱男』で浅野忠信とともに主演を務めました。2025年は劇場版「THE オリバーな犬」や映画『おーい、応為』に出演しています。

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永瀬正敏が映画『国宝』に掛ける強い思い

権五郎を演じるに当たって、初めてのヒゲ&アイパー姿で挑んだという永瀬正敏。映画公開1カ月後の自身のInstagram投稿には、「最後の(喜久雄の)舞を見るまでずっとずっと心が痛かった、苦しかった」と綴っています。 この文面からはいかに強い思いを懸けて本作に取り組み、喜久雄の父親として生きた時間を大切にしていたかがわかります。

映画『国宝』永瀬正敏ら脇役も光る作品!主人公以外の生き様にも注目!

冒頭の一瞬だけでもこんなにも印象的で魅力的な人物が登場し、サブキャストの背景までも入念に作り込まれた映画『国宝』。まだまだ大ヒット上映中ですので、細部まで楽しむためにぜひ劇場で何度でも鑑賞してみてください!