『アバター』が世界で興行収入1位を獲得した理由を解説!日本でヒットしきれなかった背景とは?

2009年に公開され、その美しい映像と壮大な物語で観客を魅了した『アバター』。同作は興行収入の面でも人々を驚かせました。 この記事では、そんな「アバター」シリーズの興行収入について解説します。その成功の理由や続編『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』が日本で伸びなかったわけも考察していきます。
最新興行収入ランキング!約4兆円に達し記録を更新した『アバター』

1位 | 『アバター』(2009年):約29億2300万ドル |
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2位 | 『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019年):約27億9900万ドル |
3位 | 『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』(2022年):約23億2000万ドル |
4位 | 『タイタニック』(1997年):約22億6400万ドル |
5位 | 『ナタ 魔童の大暴れ』(2025年):約21億1300万ドル |
2009年に公開された『アバター』は興行収入約27億8800万ドル(約4兆円)を記録し、これまで『タイタニック』が12年間保持しつづけてきた歴代興行収入1位の座を獲得しました。また本作は興行収入20億ドルを超えた初めての作品でもあります。 その後、2019年に『アベンジャーズ/エンドゲーム』に抜かれるも、2021年の中国での再上映分が上乗せされ、合計約29億2300万ドルを獲得し1位を奪還。 つまり、『アバター』は「世界で一番ヒットした映画」となりました。
なぜ『アバター』は世界を熱狂させたのか?
①新時代の没入体験を提供
『アバター』はデジタル3D映画として公開され、その映像への没入感が高い評価を獲得しました。2010年代初頭の3D映画ブームの火付け役であり、『アバター』のヒットにともなって、3D形式を導入する作品も増えていきました。 しかし『アバター』がそのなかでも抜きん出ていたのは、壮大な世界観です。新たな惑星パンドラに、主人公ジェイクと同じように飛び込んでいくような、まさに「映像体験」といえる没入感がヒットの要因となりました。
②『タイタニック』ジェームズ・キャメロン監督のブランド力

『アバター』は、『タイタニック』でアカデミー賞11部門を制したジェームズ・キャメロン監督が、まさに『タイタニック』以来12年ぶりにメガホンをとった作品です。 この「巨匠ジェームズ・キャメロン監督作」というブランドそのものが、多くの人が劇場に足を運ぶきっかけになりました。 それまで『タイタニック』は世界歴代興行収入1位を保持していましたが、キャメロンは自ら『アバター』でそれを上回る結果を残すことになりました。
③環境問題×家族というテーマが心を掴んだ

『アバター』のストーリーは、もはや人間が住めなくなってしまった地球に代わり、人類が移住する惑星としてパンドラが候補に上がることから始まります。つまり、『アバター』は環境問題をテーマにしているのです。 1990年代から世界中で注目を集めてきた環境問題ですが、あまりに規模が大きすぎて、多くの人がその実害を実感するまでに長い時間がかかりました。そんななか、『アバター』は環境問題と「家族の絆」という多くの人に身近な話題を組み合わせて人々の心をつかみました。
④SNS前でも口コミが増やしたリピーター

『アバター』が公開された2009年には、まだSNSは一般的に普及しきってはいませんでした。にも関わらず、口コミで興味を持つ人が増えていき、大ヒットにつながったのです。 また、その世界に魅了された熱狂的なファンも生み出し、彼らがくり返し劇場に足を運んだことも、ヒットの要因の1つになりました。
『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』が日本ではヒットしきらなかった理由
続編『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』(2022年)は、世界歴代興行収入では現在第3位と世界規模では大ヒットを記録しました。しかし日本では前作の興行収入が約150億円だったのに対し、「ウェイ・オブ・ウォーター」は約42億円と、大きく数字を下げることになってしまいました。 なにがその要因となったのでしょうか。
①3Dの衝撃が薄れた

前作が大ヒットした結果、その後3D映画は数多く作られるようになりました。しかしその多くが娯楽大作で、『アバター』のような深いドラマを持った作品は少なかったのは否定できません。 さらに3D映画が量産されたため、その映像の衝撃は薄れてしまい、3D映画は衰退の一途を辿っていきました。 また3D映画と同時期に普及し始めたIMAXがその後巻き返し、急速に広がっていったことも3D映画衰退の要因の1つとなったと思われます。
②人間ドラマが魅力の競合作品の影響

『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』は、前作以上に人間ドラマに重点を置いた作品で、2022年12月16日に公開されました。 しかし当時日本では、12月3日から公開された『THE FIRST SLAM DUNK』が大ヒットとなっており、また11月に公開された『すずめの戸締まり』もロングランヒットをつづけていました。 これらも人間ドラマを丁寧に描いた作品で、市場が飽和状態だったことも「ウェイ・オブ・ウォーター」が興行を伸ばすことができなかった要因の1つと考えられます。
③異文化コミュニケーションというテーマと日本の相性の悪さ

『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』では、「森の民」ナヴィであるジェイクたち一家と「海の部族」メトカイナ族の異文化交流と相互理解が大きなテーマの1つになっています。 さまざまな民族が共生するアメリカなどの諸外国とは違い、基本的に単一民族国家である日本では、日常生活レベルでの異文化交流というテーマは、あまりピンとこないものだったのではないでしょうか。 結果、観客の共感を得られずヒットにつながらなかったのかもしれません。
3作目『アバター:ファイア・アンド・アッシュ』は2025年12月公開
そんな「アバター」シリーズは5部作になることが発表されており、第3作『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』が2025年12月19日に公開されます。 この機会にこれまでのシリーズを復習して、新作に備えたいですね!