『名無し』城定秀夫監督に聞く生涯ベスト映画3選―劇場で10回以上鑑賞した1本とは?
佐藤二朗原作・脚本・主演、名もなき“怪物”の正体と狂気を描く、唯一無二のサイコ・バイオレンスが誕生。2026年5月22日(金)より公開された映画『名無し』。本作の公開を記念して、城定秀夫監督へのインタビューを実施しました! 映画の原体験や、映画にのめり込んだきっかけ、最近鑑賞して印象に残った作品など、城定監督の“映画観”に迫る貴重な内容となっています。 さらに、城定監督に「生涯ベスト映画」3本も選出いただきました。ぜひチェックしてみてください! ※インタビュー取材の模様を撮影した動画コンテンツをYouTubeのciatr/1Screenチャンネルで公開中!
映画『名無し』作品概要
| 公開 | 2026年5月22日(金) 全国公開 |
|---|---|
| 原作・脚本・主演 | 佐藤二朗 |
| 漫画 | 永田諒 |
| 監督 | 城定秀夫 |
| 出演 | 佐藤二朗 , 丸山隆平 , MEGUMI , 佐々木蔵之介 ほか |
| 配給 | キノフィルムズ |
| 公式サイト | 公式サイトはこちら |
鬼才・佐藤二朗が映画化を見据えて執筆しながらも、過激なテーマゆえにお蔵入り寸前だったオリジナル脚本「名無し」。永田諒の作画で漫画化され大きな反響を呼び、ついに映画化が実現しました。名もなき怪物と化した男の希望と絶望、そして狂気を描くサイコバイオレンスです。
城定秀夫監督プロフィール

1975年9月2日生まれ、東京都八王子市出身。武蔵野美術大学映像学科で学び、ピンク映画やVシネマの現場を経て2003年に監督デビュー。 これまでに100本以上を手がけ、ピンク大賞の作品賞を4年連続で受賞。2020年の『アルプススタンドのはしの方』がミニシアターで大ヒットを記録。近年も『ビリーバーズ』(2022)、『銀平町シネマブルース』(2023)などを発表しています。
城定秀夫監督が選ぶ生涯ベスト映画3選
Q.城定秀夫監督の生涯ベスト映画を3本ご紹介ください 城定監督 時期によっても違いますが、強いて3本挙げるなら、という形で選んでいます。
生涯ベスト映画①『アマルコルド』(1973)
1本目はフェデリコ・フェリーニの『アマルコルド』です。高校のときにリバイバルでやっていて、すごく感動して。期間中に劇場へ10回程度は観に行った記憶があります。魅力を聞かれると難しいのですが、ぜひ観てほしいですね。はっきりした魅力がある、そういう映画でもないと思うので。
『フェリーニのアマルコルド』作品概要
フェデリコ・フェリーニ監督による1973年製作のイタリア映画。1930年代のイタリアの海辺の町を舞台にした半自伝的な群像劇です。少年ティッタと個性豊かな住民たちの記憶を、郷愁や笑い、官能、ファシズム時代の不穏さを交えて描きます。誇張された人物造形と、ニーノ・ロータの音楽も魅力です。
生涯ベスト映画②『肉弾』(1968)
2本目は日本映画で、岡本喜八監督の『肉弾』です。古い日本映画を観ていく中で、自分のなかで娯楽のテンポが一番合うのが岡本監督でした。そのなかでも本当に一番好きな映画です。ちょっとシュールなところや、思いっきり反戦映画なのに全然暗くなっていない、おおらかな感じ。そういうところが好きですね。
『肉弾』作品概要
岡本喜八監督・脚本による1968年製作の戦争映画。敗戦直前の日本で、名もなき若い兵士が特攻任務へ送り出される姿を描きます。寺田農演じる青年の純粋さと滑稽さを通して、戦争が個人の命や青春をいかに軽く扱うかを浮かび上がらせます。ユーモアと虚無感が同居する、岡本喜八らしい反戦の寓話です。
生涯ベスト映画③『トト・ザ・ヒーロー』(1991)
3本目はベルギーのジャコ・ヴァン・ドルマルという監督のデビュー作で、『トト・ザ・ヒーロー』という映画です。 これまでの2本は古いですが、今作は本当に自分の世代の映画で。高校生ぐらいのときに観て、この作品がおそらく生涯劇場で一番たくさん観ている映画です。10回以上は観ていますね。あまり知られていないかもしれませんが、当時は話題になっていたと思うので、観ていない方がいたらぜひ観てほしい1本です。
『トト・ザ・ヒーロー』作品概要
ジャコ・ヴァン・ドルマル監督の長編デビュー作。老いたトマが「自分の人生は隣家の少年に奪われた」と信じ、少年期から老年期までの記憶をたどるベルギー映画です。現実、空想、思い込みが入り混じる語り口で、嫉妬や家族への愛、喪失感、人生への執着を描きます。カンヌ国際映画祭カメラ・ドール受賞作です。
【映画の原体験】巣鴨の名画座と、並木座で観た黒澤明

Q.城定監督の映画の原体験をお聞かせください 城定監督 幼少から中学ぐらいまでは、普通の人の映画の関わり方とそんなに変わらず、家族や友達で観に行くくらいでした。一人でたくさん観るようになったのは高校に入ってからですね。 巣鴨の高校に通っていたのですが、近くに名画座がすごくたくさんあって。池袋に行くと文芸坐とか、2本立てで800円くらいで観られる映画館が都内にたくさんありました。そういう所で、古い映画も新しい映画もとにかく何でも観ていました。 原体験と言われると、銀座の並木座——もう今はないですけど——で観た昔の日本映画ですね。黒澤明。それと岡本喜八、川島雄三。その辺の古い映画で「古い映画って面白いんだ」というところから入って、わりと最近のものまで観るようになっていきました。
【観る頻度】映画はすべて劇場で
Q.映画を観る頻度と鑑賞する作品の傾向をお聞かせください 城定監督 どうしてもこういう仕事をやっているので、楽しんで映画を観るというのがなかなかできないのですが、劇場で映画を観るという体験そのものは、未だに楽しいというか。映画を観ること自体が職業なので少し複雑な思いはあって。だから家で配信で映画やドラマを観るのは、ほぼゼロに近いです。 仕事で観なければいけないものは別ですが、映画はすべて劇場で観ています。だから今はあまりたくさんは観ていないですね。作品は割と時間が合えば何でも観ます。 小さい作品の方を好んで観るとは思いますが、時間が空いていればハリウッド作品も観ますし、気が向けばキラキラ映画も観ます。なるべくいろいろなものを観ようとはしていて。映画館のスケジュール表を見て、合えば観る、という関わり方ですね。
【最近観た一本】『木挽町のあだ討ち』

Q.最近鑑賞されて印象に残っている作品をお聞かせください 城定監督 最近一番面白かったのは『木挽町のあだ討ち』ですね。東映太秦の底力を感じる作品というか、本当に時代劇のよいところを全部詰め込んだ作品で。プロの作品だという感じがして、すごく感動しました。
【監督として一番幸せな瞬間】お客さんが映画を観て喜んでいると感じたとき
城定監督 ちょうど今日(取材日)が完成披露試写会なんですけど、今日みたいな場で「お客さんが喜んでいるな」と感じるのが——本当にベタですけど。そこを喜ばなきゃいけないのが映画監督かな、と思っています。
▼取材・文:増田慎吾



