『風の谷のナウシカ』と『天空の城ラピュタ』は同じ世界でつながっている?キツネリスや時系列を深掘り
宮崎駿監督によるアニメ映画『風の谷のナウシカ』と『天空の城ラピュタ』は、共通した世界観を持っていることが度々話題に上ってきました。 この記事では、そんな数ある共通点を洗い出し、解説していきます。同じ世界でつながっているのか、時系列はどうなっているのか、キツネリスはなぜ両作品に登場するのか考察していきます。
『風の谷のナウシカ』と『天空の城ラピュタ』映画公開の時系列は?

1984年公開の『風の谷のナウシカ』は、当時まだスタジオジブリは設立されておらず、「トップクラフト」で制作されています。スタジオジブリが設立されたのはナウシカ公開後の1985年で、『天空の城ラピュタ』はスタジオジブリ制作の第1作目として1986年に公開されました。 『風の谷のナウシカ』は宮崎駿監督がアニメ雑誌『アニメージュ』で漫画連載したものを自身で映画化しており、続く『天空の城ラピュタ』も宮崎駿監督がスタジオジブリを設立して制作した作品です。
『風の谷のナウシカ』と『天空の城ラピュタ』公式では別世界

『風の谷のナウシカ』と『天空の城ラピュタ』は公開年が近く、高度な人類文明が崩壊・滅亡した後の世界を描いているという舞台設定が特徴であり共通点。ナウシカは超未来の科学文明が崩壊した後、ラピュタは空中技術を極めた人類が滅亡した後の物語です。 しかしジブリ公式は、この2つの作品の世界は繋がっていないと発表しています。では、それでもなお2つの作品の世界観が繋がっていると言われ続けているのでしょうか。
「ラピュタ」と「ナウシカ」同じ世界でつながっていると言われる理由は?
理由①高度文明のバランスが崩れ自然が勝つという流れが似ている

どちらの世界も、人類が築いた高度文明がバランスを失い、最終的に自然の力が勝つという流れが共通しています。 両作とも強大すぎた過去の科学文明を最終的に回収・内包するのは「圧倒的な植物の力」です。「ナウシカ」では、人間が汚した世界を「腐海」が数百年かけて浄化しています。「ラピュタ」では、ラピュタ城の核にある巨大な樹木が飛行石を包み込んで城を空高くへと連れ去りました。 また両作の結末は、「人間はどれだけ科学を発展させても、土(自然)から離れて生きることはできない」という同じメッセージに帰着しています。ナウシカは、腐海の植物が「汚れた土」のせいで毒を出しているだけで、綺麗な水と土で育てれば無害であることを突き止めました。「ラピュタ」でも「土に根を下ろし、風と共に生きよう」というゴンドアの谷の詩が、まさにラピュタが滅びた理由そのものを表しています。 さらに、巨神兵やロボット兵など「最終兵器」が自然の一部に還るビジュアルも共通しています。
理由②キツネリスがでてくる

両作に架空の動物「キツネリス」が登場しているのも、よく挙げられる共通点。キツネリスは人間と自然が調和しているか、あるいは対立しているかを測るバロメーター(象徴)として描かれています。 「ナウシカ」のテトは最初は人間を警戒してナウシカの指を強く噛みますが、ナウシカが恐怖を与えず「怖くない」と受け入れたことで心を開き、生涯の相棒になります。 「ラピュタ」のキツネリスたちはラピュタの空中庭園で、苔むしたロボット兵の肩や頭の上を自由に駆け回っています。パズーやシータが近づいても逃げないのは、彼らが自然を脅かす存在ではないと本能で理解しているからです。
理由③巨神兵とロボットの兵が似ている

「ナウシカ」の巨神兵と「ラピュタ」のロボット兵のビジュアルや造形が似ている最大の理由は、宮崎駿監督が1980年に『ルパン三世』のTV第2シリーズ最終回「さらば愛しきルパンよ」でデザイン・演出したロボット「ラムダ」にあります。細長い手足、鳥の翼のように広がる独特の腕、顔のレーザー砲など、ラムダのデザインがベースになっているよう。 どちらも人が創り出した人工生命体であり、高度文明の最終兵器でありながら、巨神兵は「文明の破壊者」、ロボット兵は「自然の守り人」となっている対比もまた興味深いところです。
理由④主人公が似ている

両作のヒロイン、ナウシカとシータは2人とも「文明の残骸」と向き合いながら、自然と心を通わせる存在です。 どちらも「王女」でありながら「土(自然)」を愛する少女であり、自然の声を聴こうとする優しさを持っています。また宮崎アニメのヒロインはただ優しいだけでなく、大切なものを守るための「凄まじい強さと怒り」を秘めており、そこも2人の共通点です。 ナウシカの持つ「風を読み空を飛ぶ才能」を引き継いでいるのが、「ラピュタ」のもう1人の主人公であるパズー。つまりナウシカという1人の完璧な主人公が持つ要素を、2人に分担して描いたのが「パズーとシータ」といえます。
「ナウシカ」キツネリスが「ラピュタ」に登場した理由は?

当時「ラピュタ」の制作進行担当をしていた木原浩勝著の『もう一つの「バルス」』によれば、「この作品は失敗できない」作品であり、制作期間もわずか10カ月と厳しいスケジュールだった模様。「ラピュタ」は「ナウシカ」の成功を受けて設立されたスタジオジブリの第1作目であり、興行的に失敗すれば次はないというプレッシャーがありました。 そのため、「ナウシカ」で好評だったキツネリスのキャラクターを「ラピュタ」にも登場させ、動員のフックにしようと考えたよう。つまり、テトと「ラピュタ」のキツネリスたちは同じキャラクターなのです。
【時系列】「ナウシカ」と「ラピュタ」の時代設定は?どっちが先?

「ラピュタ」は現実世界の産業革命期のヨーロッパをモデルにした世界観です。作中に登場する機関車や飛行船などの技術から、19世紀後半から20世紀初頭の近代が舞台と推測されています。また亡き父が撮ったというパズーの小屋の写真には「1868年」とありました。 地上では石炭を使ったSLや自動車が走り始めたばかりですが、かつて遥か昔に飛行石の技術を持った「ラピュタ人」が地上を支配し、その後滅びて地上へ降りてきたという歴史を持っています。 「ナウシカ」の時代設定は1000年後の超未来であり、現代よりも遥か先の高度な科学文明が一度完全に滅びたあとの遠い未来の地球が舞台。現代文明の極致であった「火の七日間」と呼ばれる最終戦争から、さらに1000年が経過した世界です。 一度世界が滅びたため、人類の技術は中世レベルに逆戻りしています。ガンシップや巨神兵などかつての高度文明の遺物を発掘してどうにか使っている状態です。西暦で推測すると3800年頃と考えられます。 物語の舞台としては「ラピュタ」の方が19世紀頃で、「ナウシカ」の方が数千年末の地球で遥か先ということになります。
【番外編】「ナウシカ」とも「ラピュタ」ともつながりがある『シュナの旅』
1983年に宮崎駿監督が発表したオールカラーの絵物語『シュナの旅』は、「ナウシカ」と「ラピュタ」、さらには『もののけ姫』へも繋がっている「ジブリの原点」といえる作品。当時アニメ化の目処が立たなかった宮崎駿監督が、自身の脳内にあるイメージやテーマをすべて注ぎ込んだ作品だと考えられます。 主人公シュナの衣服や、砂漠化した不毛の大地、滅びかけた人類という設定は、ナウシカの「風の谷」やアスベルなどの登場人物とよく似ています。またシュナが乗って旅をする「ヤックル」は、後にそのまま『もののけ姫』にも同じ名前・同じデザインで登場していました。 さらに「高度文明のバランスが崩れ、自然が勝つ」というテーマの最も生々しいビジュアルが、すでに『シュナの旅』で描かれています。シュナが旅の途中で訪れる「神人の土地」には、かつての高度文明が残した「植物に覆われて朽ち果てた、超巨大な飛行船の廃墟」が登場。これはラピュタの原型と思われ、ロボット兵や巨神兵などの世界観とも繋がっています。
『風の谷のナウシカ』と『天空の城ラピュタ』はつながっていないが似ている
公式には両作の世界に「繫がりはない」とされていますが、数々の共通点から「似ている」と考えられている『風の谷のナウシカ』と『天空の城ラピュタ』。なぜ似ているかがわかると、制作当時の状況や作品に盛り込まれたテーマなども深掘りできて興味深く、また両作とも観たくなりますね。


