2020年7月17日更新

『風の谷のナウシカ』を都市伝説と振り返る!腐海はどうしてできたの?原作との違いは?

風の谷のナウシカ
© Studio Ghibli/Walt Disney Pictures

おそらく誰もが見たことのあるであろう、日本を代表するアニメ映画の傑作『風の谷のナウシカ』。まことしやかに語られる驚きの都市伝説を振り返りつつ、その真相に迫ります。

目次

都市伝説と共に振り返る『風の谷のナウシカ』!原作との違いや、気になるポイントを網羅

風の谷のナウシカ
©Studio Ghibli/Walt Disney Pictures

宮崎駿監督が手がけた長編アニメーション映画の2作目『風の谷のナウシカ』。1984年に公開されて話題を呼び、その後のジブリ映画の基礎となった作品です。 「人と自然との共存」が大きなテーマとなる本作は、大人も子どもも楽しめる作品であり、見応え抜群。本記事では、あらすじや都市伝説を追いながら、ジブリ映画『風の谷のナウシカ』の魅力をお伝えします! ※この記事は映画『風の谷のナウシカ』や原作のネタバレを含みますので、ご注意ください!

ジブリ映画『風の谷のナウシカ』のあらすじとは?

風の谷のナウシカ
©Studio Ghibli/Walt Disney Pictures

最終戦争「火の7日間」により大地は錆とセラミック片に覆われ、生き残った人類は死の瘴気を放つ腐海とそこに住まう巨大昆虫の脅威に晒されていました。しかし、森と風に守られた辺境の集落「風の谷」の民は穏やかな農耕生活を送っています。 人々が忌み嫌う王蟲(オーム)と心を通わせることのできる、「風の谷」族長の娘ナウシカは、腐海を調査して瘴気の無害化を探っていました。そんなある日、谷に軍事大国トルメキアの輸送機が墜落します。荷に積まれていたのは、「火の7日間」で世界を滅ぼした兵器「巨神兵」でした。 トルメキアの女王クシャナは、巨神兵を以て腐海を焼き払うといいます。トルメキアに捕虜として捕らえられ、輸送機で谷から連れ去られるナウシカ。そこへ少年が操縦する戦闘機が襲いかかり、トルメキア空中艦隊が壊滅状態に陥った隙に、ナウシカは小型飛行機で脱出。戦闘で撃墜された少年を助けに向かいます。少年の名はアスベルといい、トルメキアに敵対する国の者でした。 谷ではトルメキアに対する反乱が起きていました。クシャナの指揮で復活させつつある巨神兵の前には、囮で呼び寄せられた王蟲の大群が押し寄せるなか、ナウシカは身を挺して大群の前に降り立ちます。

主人公ナウシカの都市伝説!モデルとなったのは誰?どうして胸が大きいの?

ナウシカの胸が大きい理由は、「安心して死ねる」ため

特に男性の方はお気付きの方も多いかもしれませんが、主人公のナウシカ、実は胸が大きいんです(特に映画版)。 これは決して男性ウケを狙ったわけではなく、仲間や城オジ、お婆さんたちが死んでいくときに安心して死ねるように抱きとめてあげられるような胸でなくてはならない、という意味を込めて大きくしたとジブリオフィシャルブック『風の谷のナウシカ (ジブリ・ロマンアルバム)』内のインタビューで宮崎駿自身が語っています。

ナウシカのモデルその1「ナウシカア王女」

ナウシカの名前の由来といわれているのは、バーナード・エヴスリンの『ギリシア神話小事典』に登場するナウシカアであると、宮崎駿と高畑勲の対談の中で語られています。 優しく、美しいナウシカアの望みは、オデュッセウスを助けてその彼の妻になることでした。彼女は念願通り彼を助けますが、自分の故郷に帰ることを彼自身は望んでいました。そのことを知った彼女は、自分の気持ちを抑えて身を引くのです。 そして別れの際には「さようなら、よそのお方……国に帰っても私の事を忘れないで下さい。あなたを助けた私の事を」とつぶやきます。 二人ともどちらも”人への優しさ”を忘れない部分は共通しています。またナウシカアいい大人になっても色恋に走らず竪琴を弾き、海辺を走り回る女性だったようです。この辺りのイノセントさを保ったまま大人になるという人物像はナウシカっぽさがありますね。

ナウシカのモデルその2「蟲めづる姫君」

ナウシカのモデルとなったのは、平安時代の物語集である『堤中納言物語』の中の「蟲めづる姫君」という語の主人公の蟲愛づる姫だと言われています。 美しく気高い姫は化粧もしない、お歯黒もつけずゲジゲジ眉毛のままという変わった方でした。ひらがなを書くこともせず、可憐なものも好まない、唯一“毛虫”が好きだったのです。 普通であれば、誰しも花や蝶など見た目に美しい生命を好むのが一般的だと思いますが、姫君は先入観を持たず“自然”を自分の目でよく見て、虫の成長を観察することを大切にしています。虫を自分の手のひらにのせて、毛虫の歩く様子を観察し楽しんでいます。 そんな彼女を、女房や母親たちは化粧もせず虫を触って外聞が悪いと叱ります。しかし“自然”が一番な彼女にとって、化粧は自然でなくなってしまう、素の姿が一番“自然”だと考えは変わりませんでした。でも、そんな姫にも行為を持ってくれる男性がいたのです。 その男は「彼女はちっとも醜くなんかない。華があって、鮮やかで、気高くきれいだ」と言います。男はさらに彼女に宛てて「毛虫によく似たあなたの眉毛の先ほども、美しい女性はこの世におりません」と詩を残します。 蟲への愛に溢れているところや、美醜にこだわらない性格など、ナウシカの片鱗が感じられますね。

巨神兵の都市伝説!巨神兵を作ったのは○○だった?

兵器としての巨神兵

映画版では自立型の生体兵器で、自らの意思があるような描写の「巨神兵」ですが、原作では人型で知性のない生体兵器として描かれています。また、原作ではこの巨神兵には「オーマ」という名前がついています。 クシャナが腐海を焼き払うために復活させようとする巨神兵は、旧世界の人類が創造した巨体と圧倒的な武力を持つ最終兵器。ナウシカが生きる時代には、「火の7日間」を起こして旧世界の文明を焼き尽くした恐るべき神と語り継がれています。

エヴァ初号機に似てる……巨神兵のキャラデザインは庵野秀明

作品に登場するキャラクターの中でも特に強烈なインパクトを放つ人口生命体「巨神兵」。このキャラクターの感じ、他の作品で見たことはないでしょうか。実は、この「巨神兵」のデザインを任されていたのは『エヴァンゲリオン』で有名な庵野秀明氏だったと言います。 宮崎駿氏のスタジオを突然訪れた庵野氏は「巨神兵」イラストを宮崎氏に見せ、共同作業をする機会をもらったそうです。 後年に『巨神兵東京に現わる』(2012年)を監督したのも自然な流れですね。

東亜工廠という名の企業が巨神兵を作った?

巨神兵を作ったのは誰か?と言う問題の答えとしてささやかれている説がこちらです。漫画原作には、巨神兵の歯に「東亜工廠」と書かれた商標ラベルの存在を見つけることができます。 この東亜工廠は、火の七日間に至る前の旧世界の巨大産業文明の中で存在した、ある日系企業なのではないか?とする説が有力です。 工廠(こうしょう)とは、軍隊直属の軍需工場という意味の言葉です。軍需工場は武器・弾薬などを開発、製造したり、修理、貯蔵する施設のこと。なので「東亜工廠」は国営もしくは軍直属の機関であった可能性が高そうです。

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なぜ腐海は生まれたのか?その存在意義を考察!

腐海とは一体何?

風の谷のナウシカ
©Studio Ghibli/Walt Disney Pictures

本作の主な舞台ともいえる「腐海」とは、多種多様な菌類によって形成されている巨大な森です。そこでは昆虫に似た巨大生物「蟲」が腐海を守っています。旧世界の文明崩壊後に腐海は生まれました。 腐海の菌類は「瘴気(しょうき)」と呼ばれる毒ガスを発生し、人間がガスマスクなしで腐海に入ると5分で肺が腐ってしまいます。腐海は徐々に人間が住む領域を侵食していき、ナウシカが住む風の谷の人々も瘴気と蟲に怯える日々を過ごしていました。

腐海の存在意義はなんだったのか?

そもそも腐海はなぜ生まれたのでしょうか?映画の中で語られていることは、「火の7日間」の後に“自然発生的に”腐海が生まれ、人間の住む領域を侵し続けていること。 しかし腐海の菌類を独自に研究していたナウシカは、偶然にも腐海の最深部に落ちた時、腐海の役割が「浄化」であることに気付きます。旧人類たちが取り返しのつかないほど汚染した世界を、腐海は長い時をかけて浄化し続けていたのです。 本作には原作漫画がありますが、そこではさらに驚きの事実が!実は巨神兵や腐海は旧人類の遠大な計画の一つであり、巨神兵が焼き尽くした旧世界を腐海によって浄化することが目的だったことが物語終盤で明かされます。 つまり映画では自然発生したと考えられていた腐海は原作では人工的に造られた一種の「浄化装置」であり、巨神兵も「裁定の神」として荒廃した世界を平らにするために創られたのです。

『風の谷のナウシカ』の原作は、宮崎駿の漫画だった!漫画と映画の違いは?

『風の谷のナウシカ』の原作の漫画と映画はこんなにも違う!

その内容が非常に気になる原作は、1982年から1994年の間にアニメ情報誌「アニメージュ」に連載された漫画で、監督の宮崎駿自身が描いたものなのです。 漫画は映画製作のため一時中断されており、映画は単行本2巻中盤までの物語に脚色を加えた内容となっています。その後、単行本は全7巻が刊行されました。 映画も面白いのですが、原作漫画はもっと深くて面白い!ここからは、原作と映画の違いをあらすじや設定から紹介していきます。また、原作漫画がどのような経緯で生まれたのかにも触れてみましょう。

原作漫画『風の谷のナウシカ』あらすじ

最終戦争「火の7日間」から1000年後、死の瘴気を振りまく「腐海」とそれを守る「蟲」の脅威に晒された世界。生き残った人類はトルメキアと土鬼(ドルク)の二大列強国と点在する小国に分かれ、明日をも知れぬ日々を送っていました。 その中でも穏やかな農耕生活を送る「風の谷」は、病床の父の代理で王女ナウシカが国を治めていました。そんなある日、集落の近くでペジテ市の輸送機が墜落。乗っていたラステル王女は、亡くなる前にナウシカに秘石を託します。それはかつて世界を滅ぼした最終兵器「巨神兵」を起動する鍵でした。 巨神兵の復活を目論むトルメキアの王女クシャナは、秘石を奪取しようと風の谷へ。しかし旅の戦士ユパの仲裁によって撤退し、ほどなくしてトルメキアと土鬼の戦争が始まってしまいます。 トルメキアの同盟国として数名の臣下を連れたナウシカも参戦する中、トルメキア空中艦隊がラステルの兄アスベルの奇襲に遭遇。墜落するアスベルを助けに腐海に飛び込んだナウシカは、人類に恐れられた腐海の真の機能を知ることとなります。

原作漫画『風の谷のナウシカ』では殆ど登場しない風の谷。しかし実際に存在した?

映画では風の谷が最終的に王蟲の攻撃目標にされていますが、原作では序盤以降はほとんど物語に登場することはありません。タイトルにもなっているのに、不思議ですね。そんな風の谷ですが、一説によるとモデルが存在するとか! 実際にジブリから元ネタとして公表されたことはありませんが、中央アジアの乾燥地帯にあるパキスタンのフンザという村が、風の谷によく似ているといわれています。 この村はパキスタンの北西部に位置しており、アジアの横断ルートの途中にあって標高7000メートルを超えるパミール高原に面しているため、景観が良くバックパッカーなどに人気がある観光スポットだそう。 フンザの景色は「伝説の地」や「桃源郷」などとも褒め称えられるほどで、4月にはピンク色の花で一面が覆い尽くされる圧巻の景色が広がるようです。

原作漫画に登場する土鬼(ドルク)国の削除

原作では東のトルメキアと西の土鬼(ドルク)の2大大国がしのぎを削るという世界の勢力図ですが、映画版では削除されおり、地図上の位置関係も原作ではトルメキアは風の谷の東方という設定ですが、映画では風の谷の遥か西方に位置することになっています。

ナウシカの敵となる土鬼の不在

映画版には登場しない土鬼ですが、原作では重要な役割を担っています。 「その者蒼き衣を纏いて金色の野に降りたつべし。失われし大地との絆を結び、ついに人々を清浄の地に導かん。」という、映画版でババ様が語る言い伝えは、実は原作ではドルクの族長が言った台詞なのです。

ナウシカのペットのテトは原作では死んでしまう

風の谷のナウシカ
©Studio Ghibli/Walt Disney Pictures

ナウシカの相棒として活躍するキツネリスのテト。最初は生意気ながらナウシカと心を通わせていく可愛いキャラクターです。映画では最後までナウシカと共に付き添い闘うテトですが、なんと原作では旅の終盤で力尽き、死亡してしまいます。

クシャナについてのドラマが削ぎ落されている

映画版でナウシカと対立するトルメキアの第4皇女、クシャナ。非常に印象的なキャラクターですが、原作では彼女について関連する様々なストーリーが展開されています。兄が3人いることや、王としての資質を身につけて行く流れなどは漫画版にしか描かれないものです。 マンガを読んでから映画を観ると、彼女の見え方にも違いがあるかもしれませんね。

実はナウシカたちは人造人間だった

風の谷のナウシカ
©Studio Ghibli/Walt Disney Pictures

上記の通り腐海を作り出したのは旧人類ですが、浄化にかかる時間は果てしないものでした。そこで彼らは自ら冬眠のような状態になり、浄化が完了するのを待つことにしました。そして浄化が終わった時に彼らを起こす役割として新たな人類を生み出します。そう、今を生きる全ての人々は人口生命体(人造人間)だったのです……。 原作で明らかになりますが、実はナウシカたちは適度な毒がないと生きられない身体なのです。 要するに数千年後、腐海による大気と土壌の浄化が完全に終了した際には、ナウシカたち人造人間は生存することができません。これは旧人類との対立を避けるために意図的にプログラムされたのではないかと考えられます。そして今の人類が腐海を敵視しているのは、その状況で生きていけないことを本能的に知っているからだ、ということなのだそうです。

『風の谷のナウシカ』のラストシーンの原作との違い

原作では王蟲の大群が押し寄せる場所は風の谷ではなく、クシャナが駐屯する野営地であり、ラストシーンでナウシカが着ている服は、原作では土鬼のマニ族の服ですが映画版ではペジテ国の服。 映画版で「青き衣を……」の台詞を言うのは大ババ様ですが、原作では土鬼(ドルク)の一部族にあたるマニ族の僧正が言います。

都市伝説を一挙紹介!クシャナの名前に隠された秘密は?ラピュタとの関係は?

クシャナという名前はナウシカのアナグラムになっている

風の谷のナウシカ
©︎ ciatr

画像のように、なんとクシャナの名前はナウシカのアナグラムで構成されています!前述の通り、ナウシカの名前は「ナウシカア王女」から取られている可能性が高そうです。なのでクシャナの方が後付けのようですね。 ナウシカとクシャナが対の関係にあると言う意味が込められているのでしょうか?クシャナは物語終盤では、かなりナウシカの精神性に近づいていった印象ですが……。

ナウシカはメビウスの影響を受けていた!

「世界の宮崎」こと宮崎駿も、『風の谷のナウシカ』の制作にあたっては実はあるフランス漫画の影響を受けていたといいます。 その作品というのはメビウスという漫画家による『アルザック』というSFファンタジー作品。巨大な架空生物が空を飛び回ったり、火星のような場所を登場したりとなにかと共通点が多いのです。 宮崎駿氏はこの作者であるメビウスことジャン・ジロー氏と対談を行っており、互いに認め合う間柄なのです。 二人の対談は、『ハウルの動く城』のDVDに収録されています。

『天空の城ラピュタ』と世界線が同じ説

ラピュタには「ラムダ」というロボット兵が出てきますが、巨神兵にかなり造形が似ています。それもそのはず、ラムダも庵野がデザインしたキャラクターなのです。作家が同じだと似てくるのはしょうがないですね。双方素敵なキャラです。 ちなみにラムダ、巨神兵とも、古代文明の遺産という位置付けが共通しています。宮崎駿自身は世界線の同一性については言及していないようなのでファンとしてはあれこれ推測して楽しみたいところです。

オームの鳴き声は布袋寅泰のギター

映画に登場する王蟲は特徴的な鳴き声をしていますが、実はこの鳴き声は布袋寅泰がギターで演奏していました。音楽を手掛けた久石譲からギターで泣いてくれ、と頼まれ演奏したそうです。 ちなみに王蟲の登場するシーンで流れる「ランランララランランラン」というフレーズが有名なこちらの曲は、「王蟲(オーム)との交流」というタイトルなのですが、歌っていたのはなんと、作曲した久石譲氏の当時4歳の娘だったそうです。

『風の谷のナウシカ』のゲーム化に宮崎監督が激怒!?

宮崎駿
©︎Orban Thierry/MCT/Newscom/Zeta Image

『忘れじのナウシカ・ゲーム』というタイトルで、作品がゲーム化されていたことをご存知でしょうか?これだけでも少し驚きなのですが、内容はメーヴェ(小型飛行機)に乗ったナウシカが王蟲や蟲をシューティングで倒していくというもの。 対し宮崎駿氏は「虐殺するなんて何事だ!」と激怒し、それ以降というものスタジオジブリ作品がゲーム化されることはなくなったと言われています。 しかし、実際のゲーム内容は原作漫画に忠実なもので、ナウシカが土鬼(ドルク)と戦うシューティングゲーム。王蟲を攻撃すると風の谷が襲撃され、ゲームオーバーになってしまうそうです。

原作と比べてみても楽しい名作『風の谷のナウシカ』をもう1度!

風の谷のナウシカ
© Studio Ghibli/Walt Disney Pictures

映画『風の谷のナウシカ』はこれまでも何度もテレビで放映されてきたジブリの名作ですが、2020年6月にはリバイバル上映が実現!36年経っても色褪せないテーマ性も魅力で、多くの人が劇場に足を運びました。 様々な都市伝説さえ生み出した「ナウシカ」ですが、映画と原作のあらすじや設定の大きな違いにも驚きます。その後のジブリ作品の基礎を作ったともいえる本作、何度見ても新たな発見があるに違いありません。