『風の谷のナウシカ』王蟲(オーム)の正体が衝撃的……!モデルとなった虫や鳴き声の秘密に迫る
『風の谷のナウシカ』といえば、なんといっても印象深いキャラクターは王蟲(オーム)ではないでしょうか。幼少期に本作を観て、恐怖を覚えたという人も少なくないでしょう。 今回は正体やモチーフ、鳴き声など、王蟲の生態に迫っていきます! ※この記事には『風の谷のナウシカ』の重要なネタバレが含まれます。作品を未鑑賞の方はご注意ください。
『風の谷のナウシカ』王蟲(オーム)の概要
『風の谷のナウシカ』の陰の主役とも言える、実に意味深な存在の蟲・王蟲(オーム)。腐海に生息する生物は、昆虫類を指す「虫」と区別され、「蟲」の漢字が使われています。 中でも王蟲は最大級の大きさを誇り、腐海に住む蟲たちの主的な存在です。見た目はダンゴムシ状で、十数の体節からなる濃い緑色の体に無数の脚を持ちます。 成長過程で脱皮を繰り返し、成体は体長80mに達するほど巨大に!14個の眼の色は普段は青色ですが、怒りを覚えると赤くなり、「王蟲の怒りは大地の怒り」と人間から恐れられているほどです。また、口から出すたくさんの金色の触手には、不思議な力が備わっています。
不思議な王蟲の生態を
シネマコミックでチェック
映画では描かれなかった王蟲の正体
映画では王蟲の正体について詳しく描かれていませんが、原作漫画では終盤、実は人工生物であったという衝撃の事実が明らかになっています。 映画でのナウシカとの交流シーンに留まらず、原作では巨神兵と同等レベルで、相手の表情や言動から人間を理解する言動を見せた王蟲。その知能の高さは、巨神兵と同様に人工のものである、という事実を裏付けています。 ナウシカと「念話」を駆使して会話するのも、とても象徴的なシーンと言えるでしょう。
謎に包まれた王蟲の正体を
王蟲のモデル・モチーフとは
王蟲のモデル・モチーフについては、公式にはっきりとは明言されていません。 最も有力な説が「ゴジラ」シリーズに登場する怪獣のモスラではないかというものです。蛾の怪獣であるモスラの幼虫のときの姿が、王蟲に似ているというのです。たしかに、大きいイモムシという意味では似ていますね。 一方で、三葉虫やダイオウグソクムシがモデルだとする説も。どちらも硬い殻を持っており、見た目だけでなく王蟲の固い皮膚と一致する特徴があります。 さらにちょっと珍しい説では、オーストラリアのオルガ山にあるカタ・ジュタではないかとする説もあります。カタ・ジュタはエアーズロックに次ぐ、世界で2番目に大きい一枚岩。ここは宮崎駿のお気に入りの場所であり、付近には「風の谷」と呼ばれる場所があることから、こちらの説を支持する声もあります。
ナウシカの剣は王蟲の殻を利用している
王蟲が脱皮を繰り返した後の殻は、超硬質セラミック以上の強度を持っています。 殻はとりわけ弾性に優れ、軽量であることから、戦闘機や武具の材料に使用されていました。つまりナウシカが使う剣も殻から作ったものなのです。透明なドーム状の目の部分は、ガラスやレンズの代用品として重用されています。 原作において、古代エフタル王朝の武器商人が王蟲を乱獲していたのも、内戦勃発に伴う武器需要の増大に備えるためでした。
ナウシカと王蟲の奇妙な関係
王蟲が決して有害な蟲ではなく、尊ぶべき愛しい存在だと訴えていたナウシカ。彼女は密かに城の地下で腐海の植物を育て、その謎を解明しようとしていました。そして生物や植物全体の、本当の存在理由にも気づいていたのです。 映画版では、幼いナウシカが小さな王蟲を可愛がっていたことを示す回想シーンや、お互いに心が通じているとわかる描写が何度も描かれます。王蟲が金色の触手を通じてナウシカと意志疎通するシーンは、感動的でした。 原作ではさらに進んで、テレパシーのような「念話」を使って、両者がはっきりと会話するシーンすら存在しています。
ナウシカと王蟲の
不思議なつながりを
怒らせると怖すぎる!王蟲の性格
高度な知性を備え、深い精神文化をも持っているとされる王蟲。それゆえに、14個の目の色をルビーのような赤に変え、怒ったときの攻撃性は非常に強力です。大群をなして暴走し、人間の居住地に大変な被害をもたらすことも……。 原作では、古代エフタル王朝時代、武器商人によって乱獲が行われていました。その結果として王蟲の怒りを買い、大海嘯(だいかいしょう)の引き金になったとされています。大海嘯とは、王蟲の群れが腐海を飛び出し、あらゆるものを破壊しながら力尽きるまで暴走し続ける現象のことです。 王蟲に畏怖の念を抱き、宗教的な意味合いから神聖視する人びとも存在します。
恐ろしい王蟲激怒シーンを
腐海とはいったいどんな場所?
王蟲の統べる腐海。不思議な蟲たちが生息する腐海とは、巨大な菌のような樹木が生い茂った深い森のことです。名前の由来はクリミア半島にある干潟で、その地は「シュワージュ(腐った海)」と呼ばれています。 腐海は旧時代の文明が滅亡し、汚染された不毛の大地に生まれた新しい生態系を形成。徐々に面積を拡大しながら、人間の生存を脅かす存在にもなっています。 森全体からは「瘴気(しょうき)」と呼ばれる猛毒が空気中に放出されており、それを人間が吸い込むと5分で肺が腐り、命を落としてしまうのです。そのため人間が腐海に入る際には、頑丈なマスクを装着しなければなりません。
腐海で暮らす蟲たち
ウシアブ
ウシアブは翅蟲(はむし)の一種で、赤紫色のずっしりとした体に2対の翅を持ち、空を飛ぶことができます。 顔にある触手のようなものが生えた4つの突起と、横1列に並んだ複眼が特徴的です。危険を感じると顎を噛み鳴らし、触角を震わせながら仲間を呼ぶというハチに似た性質も持つウシアブ。その顎の力は、セラミック装甲を噛み砕くほど強いとされています。 映画版では、ウシアブが風の谷に落下したトルメキア王国の船に潜んでおり、ナウシカが蟲笛を使って森に帰していましたね。
大王ヤンマ
ウシアブと同じ翅蟲の一種で、体長は人間と同じくらいという大王ヤンマ。作中では、大きな蟻にトンボの羽が生えたような姿と表現されていました。 青緑色の体に大きな4枚の翅を持ち、クチバシ状の口には舌のようなピンク色の器官を持ちます。群れで行動することが多く、腐海に異変があった時も自ら戦うことはありません。他の蟲を呼び集める性質から、「腐海の見張り番」とも呼ばれています。
ヘビケラ
ヘビケラはムカデや蛇、あるいは竜のように細長く平らな体に2対〜4対の翅を持つ巨大な翅蟲で、全長数10mに達すると言われています。 脚はなく、頭部に鋭い大きな牙を備えており、尻尾の先にはオレンジ色の突起が!映画版では、この尻尾でメーヴェを墜落させました。優雅に空を飛び、飛行速度はトルメキア王国が保有する航空機「バカガラス」よりも速いとされています。 幼生であるミノネズミは体毛が生えており、空を飛ぶことができない地蟲の一種です。
王蟲の鳴き声はギターの音だった!
2011年2月ミュージシャンの布袋寅泰が、自身のTwitterで「ナウシカのオームの鳴き声は僕のギターなんですよ!」というツイートを投稿しました。ファンから好きなジブリ映画を尋ねられ、その質問に対する答えのなかで判明したのですが、驚きの新事実にネット上は話題騒然! 映画の音楽を担当した久石譲からの依頼だったそうで、「久石譲さんに呼ばれてギターで泣いてくれと頼まれました。ずいぶん昔の話です」と振り返っています。 奥深い王蟲の魅力は、公開から30年以上が経っても興味がつきませんね。
布袋寅泰のギターによる
王蟲の鳴き声を聴く!
『風の谷のナウシカ』王蟲を知ればもっと映画が面白くなる
見た目にインパクトがあるだけでなく、ストーリー上も重要な存在である王蟲。その正体から意外な鳴き声まで紹介したこの記事で、王蟲のことがバッチリわかったのではないでしょうか。 謎の多い存在ですが、コミックでは、映画よりも王蟲の生態が詳しく描かれているので、興味がある人は読んでみてください。