整形がテーマの映画5選 行き過ぎた美の追求はもはやホラー?
整形が人生を左右する映画を紹介
竹内一郎のベストセラー『人は見た目が9割』を読んだことはありますか?口が達者な割に信用できない人と口数少なくても説得力のある人、その違いは「見た目」にあると提唱した「非言語コミュニケーション」の入門書です。顔つきを含め、人の見た目がコミュニケーション能力を大きく左右することは間違いありません。 かといって、外見を整形しただけで人の中身まで変わるものでしょうか?この記事では、そんな疑問に答えを与えてくれるかもしれない「整形」をテーマにした映画を紹介します。 さらに記事の後半では、ciatrがおすすめする異色整形ホラー映画をピックアップしました。
『カンナさん大成功です!』(2007年)
整形美人の恋と成長を描くラブコメ漫画を韓国で映画化
鈴木由美子の同名漫画を韓国で実写映画化したラブコメディ。韓国では主人公カンナをハンナに変え、演じたキム・アジュンは韓国のアカデミー賞とされる大鐘賞映画祭で主演女優賞を受賞しました。 身長169センチで体重95キロもあるハンナは、舞台裏でスター歌手のゴーストシンガーを務めていました。その外見に関わらず、音楽の才能を認めてくれたプロデューサーのサンジュンを密かに慕っていたハンナは、彼を振り向かせるため全身整形することを決意します。 整形大国で音楽業界が活況な韓国ならではの題材のチョイスとアレンジで、公開した2006年の興収第1位の大ヒットを記録しました。単なる美容整形コメディではなく、ハンナがサンジュンとの恋を通して成長していく様子を丁寧に描いた点が評価されたようです。
『モンスター』(2013年)
高岡早紀が完璧な整形美人に変身する「モンスター」を熱演
百田尚樹の同名小説の映画化作品で、高岡早紀が整形で美しい姿を手に入れる醜い容貌を持つ女性を特殊メイクを施して演じました。 あまりにも醜い容姿のため「モンスター」と呼ばれ、親にすら愛されず育った田淵和子。初恋の相手への歪んだ想いによってある事件を起こして町を追われた和子は、東京で風俗嬢をしながら全身整形で理想の姿を手に入れていきます。 美容整形の世界を覗き見ることができる本作ですが、外見を美しくしただけで人は本当に変われるのでしょうか。その奥にあるテーマは、心の闇の深さと本当の美しさとは何かということかもしれません。
『絶対の愛』(2007年)
韓国の鬼才キム・ギドク監督作!愛する人のために整形した女
『嘆きのピエタ』でベネチア国際映画祭金獅子賞を受賞したキム・ギドク監督によるミステリアス・ラブストーリー。愛を保つため顔を整形する女性セヒをソン・ヒョナ、その恋人ジウをハ・ジョンウが演じています。 交際して2年になるセヒとジウ。しかしジウがいずれ自分に飽きてしまうかもしれないという不安から、セヒは整形を決意します。突然姿を消したセヒを探し疲れたジウは、その半年後スェヒという美女に出会って恋に落ちますが……。 奇想天外な物語が特徴のキム・ギドク作品。今作でも愛するが故に整形し、もう一度関係を築こうとするセヒと、それに対するジウの突飛な行動には驚かされます。これも整形が当たり前の国・韓国ならではの展開なのでしょうか。
『私が、生きる肌』(2012年)
完璧な肌を求めた形成外科医の禁断の実験
『アタメ』(1989年)のペドロ・アルモドバルが監督・脚本、アントニオ・バンデラスが主演を務めたサスペンス・スリラー。ティエリ・ジョンケのミステリー小説『蜘蛛の微笑』が原作となっています。 最愛の妻ガルを全身火傷で亡くしたことで、完璧な肌を持つ人工皮膚の開発に執念を燃やしていた形成外科医ロベル・レガル。しかしそれは、ベラという女性を監禁して実験台にし、ガルそっくりな女性を作り変えることが目的でした。 中盤から矢継ぎ早に展開する意外すぎる事態についていくのが大変!前半の人工皮膚を用いた全身整形が主題かと思っていたら、まんまと騙されます。マッドサイエンティスト系ホラーにも近い変態的な世界です。
『あの日のように抱きしめて』(2015年)
顔が変わった妻とそれに気づかない夫の愛の行方
ユベール・モンテイエの小説「帰らざる肉体」を原作としたサスペンス・ドラマ。『東ベルリンから来た女』のクリスティアン・ペッツォルトが監督、ニーナ・ホスが主演を務めたドイツ映画です。 ナチスの強制収容所から奇跡的に生還したネリーは、大怪我を負った顔を整形手術して、夫ジョニーの元に戻ります。しかしジョニーはネリーは死んだものと思い込んでおり、彼女をネリーだと気づきません。その上、ネリーになりすまして遺産を手に入れようと持ちかけられます。 果たして顔が変わっただけで、妻だと気がつかないものでしょうか。仕草や記憶、好みや癖などは変わらないはず。夫を信じたいネリーと妻を本心で愛していなかったジョニー、二人の心のすれ違いが切ないドラマです。
ciatr厳選!整形ホラー映画
ここでは、ciatr編集部が厳選してお勧めするオーストリアのサイコホラー映画『グッドナイト・マミー 』を紹介します。整形とホラーがまさかの合体!整形した母親が本物か疑う双子の少年が引き起こす悲劇を描いています。
『グッドナイト・マミー』(2016年)
美容整形で人格まで変わった母!双子の少年が起こす惨劇
『グッドナイト・マミー』は2014年のシッチェス・カタロニア国際映画祭でグランプリを受賞した話題作。日本では2016年に未公開作品を集めた「未体験ゾーンの映画たち 2016」で上映されました。 田舎の一軒家で母親の帰りを待っていた双子の兄弟は、帰ってきた母親の顔が包帯で巻かれていたことに衝撃を受けます。しかも性格まで冷たくなって、まるで別人のよう。この人物が本物の母親なのか疑った兄弟は、正体を暴こうと彼女を試し始めます。 整形手術後で、包帯で隠れて顔が見えないという点をフルにサイコホラー要素として使っています。後半はただただ痛々しい恐怖に震えますが、何より怖いのはやはり子どもの妄想力と純粋な残酷性でしょうか。
整形で顔が変わっても、中身までは変わらない?
整形をテーマにした映画はジャンルも様々あり、「顔が変わる」ということに意外と奥深いものを感じたのではないでしょうか?顔が別人になっても、その人の中身までは変わらないと信じたいところですが、それも自信がなくなってくるほど見た目は重要です。 整形で性格まで変わったというプロットを巧みに使ったホラー『グッドナイト・マミー』や、顔が別人で妻と判別できないことをサスペンスに仕上げた『あの日のように抱きしめて』など、整形という要素がホラーやサスペンスにこんなにも合致することは新たな発見でした。 もしも身近な人がある日突然別人の顔で現れたら、あなたはその人を判別することができるでしょうか?