2017年7月6日更新

フランス版『美女と野獣』(2014)をネタバレ解説【エマ・ワトソン版と徹底比較も!】

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『美女と野獣』 フランス

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フランス版『美女と野獣』(2014)を徹底解説!

2017年4月、エマ・ワトソンが主演を果たした実写版『美女と野獣』が公開となり、世界中で空前の大ヒットを記録しました。 実はおよそ3年前の2014年、『美女と野獣』はフランスを代表する女優レア・セドゥを主演に迎え実写化されていたのです。 原作はフランスのボーモン夫人が書いた童話です。それをディズニーがアメリカに持ち込んだのですが、本国フランスでも1946年に詩人のジャン・コクトーが実写映画化しています。 もともとは教訓を秘めた、異類婚姻譚だったのですが、近年ではロマンチックなラブストーリーとして受け入れられているようです。そんなフランス生まれのおとぎ話をフランスで実写化しよう、という企画が本作。 実際、物語の冒頭と最後に、母が子供たちにおとぎ話を語っているというシーンが描かれて、童話という起源をはっきりと意識しています。ディズニー版とはひと味違う、元祖『美女と野獣』の魅力を探っていきましょう。

フランス版『美女と野獣』(2014)のあらすじ

時代は1810年。ある商人がその船の遭難が原因で破産してしまい、6人の子供たちとともに田舎に引きこもります。末の娘のベルは、気立てが良く、優しい少女でした。 商人は商用で旅をしているうちに、恐ろしい目に逢い、野獣の不思議な古城にたどり着くのですが、薔薇泥棒の罪で死刑を言い渡されます。「薔薇をお土産に」とせがんでいたベルは罪悪感を感じて、父の身代わりになろうと決めるのです。 ところが、野獣の宮殿にやって来ても、ベルは危害を加えられませんでした。毎晩、野獣はベルに求婚するのですが、ベルは拒絶します。しかし、ベルは謎めいた野獣の秘密には興味をもつのです。 睡眠時に見る夢の中で、ベルは野獣の真実、悲劇を知ります。そして、野獣の呪いを解こうと決心するのです。それは真実の愛の発見でもありました。

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映画を彩るキャスト

ベル/レア・セドゥ

主人公ベルを演じるレア・セドゥは1985年パリ生まれで、祖父はフランスの映画配給会社パテの社長、大伯父は映画製作会社ゴーモンの会長という映画人家系なのです。 2006年に映画『メ・コピン(原題)』で女優デビュー。2009年、タランティーノ監督の『イングロリアス・バスターズ』でハリウッドに進出します。 2013年の『アデル、ブルーは熱い色』では、スピルバーグ監督らから特別に彼女自身にもパルム・ドールが贈られたことで話題を呼びました。 その後も、『007 スペクター』(2015)、『たかが世界の終わり』(2016)に出演と、フランスを代表する女優と言っても良い存在に成長しました。

野獣/ヴァンサン・カッセル

野獣役のヴァンサン・カッセルの父親は『素晴らしきヒコーキ野郎』(1965)などの名優、ジャン=ピエール・カッセルです。サーカス学校やニューヨークのアクターズ・インスティテュートで演技を学び、1991年に『レ・クレ・デュ・パラディ(原題)』で映画デビューします。 マチュー・カソヴィッツ監督の『カフェ・オ・レ』(1993)、『憎しみ』(1995)に出演し、特に『憎しみ』で注目されます。その後も、『クリムゾン・リバー』(2000)、『ジェヴォーダンの獣』(2001)など順調に活躍し、『ブラック・スワン』(2010)などのアメリカ映画にも出演しました。 私生活では女優のモニカ・ベルッチと結婚していて、ギャスパー・ノエ監督の『アレックス』(2002)などで共演もしていましたが、2013年に離婚しています。

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監督は『ジェヴォーダンの獣』のクリストフ・ガンズ

メガホンをとったクリストフ・ガンズ監督は、1960年フランスのアンティーブ出身で、幼少時から映画が大好きでした。高等映画学院で映画制作を学び、マリオ・バーヴァやダリオ・アルジェントに捧げた短篇などを作っています。 1993年にオムニバス映画『ネクロノミカン』の1編を監督し、2001年の『ジェヴォーダンの獣』はアメリカでも高く評価されました。 マリオ・バーヴァ、ダリオ・アルジェントという系譜からも分かるように、『サイレントヒル』(2006)のようなホラー作品が本領なのですが、本作ではジャン・コクトーの『美女と野獣』や宮崎駿作品に触発されたそうです。

主題歌はヨアン・フレジェが歌う『ソラ・チュ・メメ (原題)』

音楽担当は『パリ、ジュテーム』(2006)などのピエール・アデノ。エンディングテーマは『ソラ・チュ・メメ(原題)』、「私を愛すことができるのか?」というような意味のタイトルで、歌詞もまさに『美女と野獣』の野獣の心情を謳ったものです。 歌うのはフランスの歌手ヨアン・フレジェで、1988年生まれです。ヨアン・フレジェは幼少時から音楽の才能を発揮していたのですが、3歳頃から吃音に悩んでいました。テレビのオーディション番組『ザ・ヴォイス(原題)』で見出され、声の美しさには定評があります。 2011年にはアメリカの歌手、エリカ・バドゥのツアーに参加しています。

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『美女と野獣』(2014)のネタバレ【閲覧注意】

野獣の城で、ベルは夢を見ます。それは野獣の過去に関する夢でした。 城主である王子は黄金の牝鹿を射止めたいと思っていたのですが、婚約者である王女はなぜか、それをやめるように約束させます。やがて王女は世継ぎを身ごもるのです。 狩りにのめり込んでいた王子は王女との約束を忘れて、つい黄金の牝鹿を仕留めてしまいます。獲物に近づいて見ると、それは王女でした。王女は実は森の精霊で、父親である森の神に「愛がどんなものか知りたい」とせがんで、人間に姿を変えていたのでした。 王女が息を引き取ると、森の神は怒って、王子に呪いをかけてしまいます。こうして王子は野獣となり、人間世界と隔離されてしまったわけです。

レア・セドゥ版とエマ・ワトソン版『美女と野獣』はここが違う、7ポイント!

ここからは、レア・セドゥが主演を務めたフランス版とエマ・ワトソンが主演のアメリカ版『美女と野獣』を7つの視点から徹底比較していきます。

1.野獣にかけられた呪いの原因

美貌の王子が呪われるという点はどちらも同じなのですが、ディテールが微妙に違っています。 エマ・ワトソン版では、困っている老女を助けなかったわがままな王子なのですが、フランス版では、王子はむしろ犠牲者とも言えます。 かつて王子と婚約していた女性は、実は森の精霊で、牝鹿に姿を変えているときに王子によって矢で射られてしまいます。これに怒った、父である森の神に呪われて野獣の姿になってしまうのです。

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2.薔薇のもつ意味

薔薇も両者に登場しますが、その目的が異なっています。エマ・ワトソン版の薔薇は、その花びらが全て散るまでに誰かに愛されなければ、野獣の呪いを解くことができなくなるというものです。 フランス版の薔薇は事件の発端となります。ベルの父は商用の旅の途中、野獣の宮殿に迷い込みます。その庭に生えていた薔薇を見て、ベルに薔薇一輪を土産にと頼まれていたことを思い出し、彼は薔薇をつい摘んでしまいます。 そこを野獣に見とがめられて、薔薇を摘んだ罪で殺されるか、娘の1人を身代わりによこすかと迫られるのです。

3.ガストンの役割

ずる賢いガストンは原作に存在しません。実は、野獣に呪いをかける精霊を除けば、ガストンのような悪役は出てこないのです。 また、野獣を殺そうとして暴徒と化す村人も登場しません。舞台は野獣の宮殿とベルの実家のみに限定されているのです。 ただし、フランス版のペルデュカスという人物がガストンに近い役割を担っているのかもしれません。

4.ガストンの手下、ル・フウ

ガストンがフランス版に登場しない以上、ル・フウという忘れがたい脇役も出てきません。エマ・ワトソン版に現れるル・フウはガストンの手下なのですが、どこか憎めないキャラクターです。 ル・フウとはフランス語で「愚か者」という意味なので、ジョーカー的な意味を担っているのかもしれません。ただし、ゲイを想起させるシーンがあるため、各所で物議を醸しています。

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5.歌う召使い

枝つき燭台のルミエール、置き時計の姿をしたコグスワースらは、フランス版には登場しません。ベルを助ける野獣の召使いたちは、呪いによって家具に姿を変えられているのですが、彼らの代わりにフランス版では鳥や猿が登場して、ベルにかしずくのです。 フランス版での野獣の召使いたちは、宮殿の中で彫像のように動けなくされています。野獣のことを外の世界に知らせないためにです。

6.求婚のプロセス

エマ・ワトソン主演の『美女と野獣』において、かなりの時間を2人きりで過ごしながら、ベルと野獣はゆっくり恋に落ちます。やがてベルは野獣の中に善人を感じ取るようになるのです。 ところが、フランス版『美女と野獣』では、事情がかなり違います。2人はほとんど話さないのです。毎晩、野獣はベルにおやすみを言いに来て、求婚し、拒絶される、ということを繰り返します。 レア・セドゥ演じるベルは、夢の中で美しい王子を見て、それが野獣の正体ではないかと疑い、野獣に惹かれていくわけです。

7.野獣の正体の扱われ方

野獣が実は美しい王子でした、という、アメリカ版『美女と野獣』でのクライマックスは、フランス版では映画の半ばほどで示されてしまいます。 どちらにおいても、ベルの愛の言葉によって野獣の呪いが解けるわけですが、その時初めてエマ・ワトソンのベルは野獣の真の姿を目にするのです。ところが、レア・セドゥのベルは予め夢の中で王子の姿を見ていました。

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フランス版『美女と野獣』(2014)の海外評価感想

最後に、本作の海外の評価感想をご紹介します。

恋愛部分が不満?

この映画はよく知られてる美女と野獣の物語のほとんど完璧なバージョンと言っていいよ。ただ、気にかかるのはベラが野獣に対して愛を育んでいく過程を観ている方が感じないってこと。でも、結局のところこの映画はよい家族向けの映画だよ。映画の雰囲気は小さい子供には少し暗いかもしれないけど、常に美しい、いつものガンズ監督の作品と同じでね。
引用:www.imdb.com
完璧とは程遠いけど観るに値する作品だと思うよ。良い部分は美しさとオリジナルのストーリーを少し変えてるとこだね。ベラの父親が本当に嫌な役でよかったよ。ほかのストーリーだと罰を受けるのが不当にすら思えるからね。でも、面白くなかったのは余計な話が多かったこと。背景の話が多いせいでベラと野獣の恋愛部分が少なくなってる。だからベラが恋に落ちるのがあんまりピンとこないんだ。
引用:www.imdb.com
美女と野獣は典型的で素晴らしいラブストーリーのひとつなのにこの作品はロマンチックさに欠けてる。主人公二人の間になんの情熱も感じない

映像美を絶賛!

フランスバージョンの美女と野獣にほとんど満足したよ。映像とキャラクターの設定はとっても美しい。野獣誕生の秘密も気に入ったよ。でもこの映画は完璧ではないんだ。この話はすでに何回も映画になっているけど、今回の演出はだらだらしているイメージ。まあ、観ることをおすすめするよ、その美しさだけをね。
引用:www.imdb.com
もっと昼間のシーンが多くてもいいんじゃないかと思ったんだけど、たぶん作ってる人たちはこの物語の暗い部分を強調したかったんだろうな。音楽はまあまあだったんだけど、プロデューサーはもっとよい仕事をできたんじゃないかな。 でも総合的には家族と観に行ける美しい映画だったよ
引用:www.imdb.com
とってもきれいだったし、面白かった!映像はきれいだし、音楽もロマンチックで俳優たちは素晴らしかった。でもこの映画の問題はそのペースかな。監督と脚本家がベラの背景の説明に時間を割きすぎて、野獣に話がなかなか結び付かない
引用:www.imdb.com

クリストフ・ガンズ監督に賞賛の声

物語がもうとっても良かった。画像も何もかも綺麗でオスカーを狙えるくらいだと思ったよ。クリストフ・ガンズはフランスのピーター・ジャクソンかスティーヴン・スピルバーグだね。僕はこの映画がアメリカの誰かの目に留まることを祈るよ。だって彼にアメリカの本を渡してまたこれみたいに素晴らしい映画を作ってもらわなきゃいけないからね。 
引用:www.imdb.com
ガンズ監督が映画をもっと作らないのは残念。彼の作風が好きなのに…ただこれだけ彼の新作を待ったからもっと内容の濃いものを期待してたな
引用:www.imdb.com

CGIが不評?

CGIがとっても不自然だからテレビで観るべきって言ようかと思ったくらい。でも、俳優の演技は良いし、野獣の背景は同情するような良い話だったし、ベラ役のレア・セドゥの優雅さ、美しさ、演技力は素晴らしかったから総合的には観て損はない作品
引用:www.imdb.com